社会変化への柔軟性

久し振りにセブンイレブンに行ったが、冷食コーナーの品揃え拡充に少し驚いた。このセブンだが、単身や共働き世帯の増加で中期的に高まる冷凍食品の需要に対応すべくコンビニの店頭に置く新型の冷凍庫を本格導入する旨が日経MJ紙などで報じられている。PBモノはじめ、スペース問題が改善されることでグループのファミレス「デニーズ」ブランドの冷食もおけるようになるという。

世相を反映した今年の一皿にも選ばれた冷食だが、快進撃が止まらない。日本冷凍食品協会が発表した2023年の冷凍食品の生産・消費統計では家庭用と業務用を合わせた全体で、値上げにより数量は減少したものの出荷額は過去最高となった。以前書いたイオンの日本最大級の冷食専門店@FROZENは首都圏で6店舗を展開、先日銀座の三越や松屋の地下を一寸見てみたがフローズンコーナーの充実ぶりはセブンよろしく数年前とは様変わりになっていた。

保存性もありフードロス削減など旬?なSDGsの観点に加え、所謂タイパの部分までをもカバー出来るこの冷食は社会変化に対応出来るモノの中でも断トツで上位に位置するのではないか。まさに商機だが本日は円相場が1990年6月以来の1ドル=155円台に突入、加えて中東情勢など地政学リスクは予断を許さない状況なだけに今後の物価上昇圧力が販売に影響してくるか否かこの辺の動向には注視しておきたいところ。


レセプト分析調査研究

本日の日経紙経済政策面では「保湿薬の自己負担増」と題し、乳幼児やアトピー性皮膚炎の患者に処方される保湿塗り薬の「ヒルドイド」について10月から患者の窓口負担を引き上げる旨の記事が出ていた。この塗り薬といえば、今から7年くらい前だったか一部の女優やモデルが挙って美容効果を謳ったということで美容クリーム代わりに処方してもらう動きが問題視されたことがあったなと。

もうこの件は忘れかけていたころに目にした今日の記事だったが、確かに当時は健保組合連合会が公表したレセプトの分析調査でこの美容目的の保湿剤を巡っては年間93億円の薬剤費が無駄に支出されていたことが明らかになっていた。ヒルドイド一つ取ってもこの規模であるから、これら以外の似たケースを集計すると自ずと可也の額になるのは想像に難くない。

斯様に処方箋が要る薬の部類では今でもこのヒルドイド以外でも美容に限らずその費用対効果の高さが謳われているモノが幾つもある。第2第3のヒルドイド予備軍は数多あるだけに今後も折に触れこうした問題が浮上する可能性が高いが、本来は自由診療の領域が不正に利用され医療保険財政を圧迫してゆく要因になるものは必要に応じ是正されるべきか。


第1の力再浮上?

先週末に米ワシントンで講演した日銀の植田総裁だが、「基礎的な物価の上昇が続けば金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と具体的な時期は明らかにしなかったものの自身の考えを改めて示していた。折しも外国為替市場では日米金利差が意識され記録的な円安が進行中、3月CPIも発表されたがここからは日銀が理想とする所謂第2の力が足踏みする間に円安による輸入物価の上昇など第1の力が再浮上する構図が浮かび上がる。

日銀が言うところのこの第1の力といえば、電気・ガス等の補助金が来月で終了するが、イスラエルとイランは対立激化の真っ最中でエネルギー価格の先行きも予断を許さない状況が続いておりコストプッシュ型インフレが再燃する可能性がある。そういった方向に傾斜しそうな中ではたして追加利上げを敢行するのか否かだが、目先の会合では現行の金利政策を据え置く公算が大きいとのコンセンサスで一致している。

そういえば冒頭の日銀総裁講演より少し前の財務相会合では、同じく自国通貨安に喘ぐお隣韓国と最近の急速な円安・ウォン安への深刻な懸念を認識するとの共同声明もまとめていたが、こうした一連の動きを見るにインフレ以上に通貨動向も無視できない状況になってきているようにも見える。追加利上げを巡る発言に市場の関心が高まっているが、いずれにせよ先ずは今週の日銀金融政策決定会合に注目としたい。


最近の金

さて、昨日は「銀」を取り上げたが本日は「金」である。今週アマタまで日本橋高島屋で開催されていた「大黄金展」で先週に販売価格約1040万円の純金製茶碗が盗まれた事件が話題になっていたが、高島屋といえば昨年のクリスマスにはネット販売したケーキが800個以上も崩壊し大騒ぎになったものの原因が謎のままだったり、京都店の限定商品が1人に全て買い占められたり、羽生結弦展で販売された限定グッズがネットで40倍以上の高値で転売されたりと何かと話題を提供する百貨店だなと。

その辺は兎も角もこの「大黄金展」では確か昨年も窃盗被害が報じられていた記憶があるが、近年の市況高も喧伝されており自ずとその注目度も高くなるというものだ。当の金価格は直近でも国際指標となるNY先物価格やロンドン現物価格が初めて1トロイオンス2400ドルの節目を突破しており、国内価格も指標の田中貴金属工業の販売価格は今週に入って1g13000円の大台を超え史上最高値を更新してきている。

ところで冒頭の盗まれた黄金茶碗は江東区の買い取り店にてたったの180万円で売却したと供述しているというが、盗まれた約1040万円の24金製の黄金茶碗は380gのシロモノ。18金製でもなく単純計算でもモノの価値としては当日相場で490万円以上ある。という事は金工作家等のプレミアムが倍以上も乗っている計算になるが、それを実勢の約4割弱で買い叩いたこの店もさぞやニンマリだっただろう。しかしそれを売る方も売る方で単にリテラシーが無かったのか?はたまたワケありの両者合意だったのかこの辺は当事者にしか分からないか。

しかし金価格も一寸遡ってコロナ禍前からでも当時の1g5000円台からはや2倍以上の化け具合だ。そういえば思い出すのがまだ1g1000円台だったバブル期の金装飾品を数年前にGINZA TANAKAへ売りに行った際に、当日のたいへんな混み具合を嫌気し売却を諦めた事か。そのまま金製品は再び家で眠ることになったが、今ではその時に手放さずに良かったとつくづく。昨今の斯様なゴールドラッシュでは家庭内で眠る金製品がいつの間にかそこそこの資産価値を持っている可能性もあるだけに、思い当たる向きは探してみてはどうだろう。


貧者の金

本日の日経紙グローバル面には「金に続き銀にもマネー」と題し、金価格の高騰を受け金より割安な銀へのマネー流入が加速し、銀の国際価格の指標となるニューヨーク先物が約3年3か月ぶりの高値圏に上昇している旨の記事があった。これまで地政学リスクのプレミアムが付いてきた金とは逆に銀は産業用需要の側面から景気減速懸念で長らく日の目を見なかったものだ。

そんなワケで今年の1月には金銀比価が1時90倍を超えていたものだが、さすがにこの倍率は行き過ぎとの自律反発なのかどうか2月に入ってから水準訂正が始まり、3月に入ってからは好調・不調の境目である50を昨年末から連続で下回っていた中国のPMIもこの50を半年ぶりに上回るなど経済停滞からの回復期待も一段の上昇の原動力となった。

しかし銀といえば思い出すのが、数年前にミーム株などを次々と物色していたロビンフッダーなる米のイナゴ集団がこの銀までターゲットにしてNY先物が8年ぶりの高値まで急騰したのが記憶に新しい。当時はインフレ調整後の銀価格は1000ドルが妥当とか無茶苦茶な煽りがあったものだが、出遅れ感のあった「貧者の金」の「金」への連動は今回どこまで持続性があるのか見ておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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