IPの伸びしろ

先に当欄で取り上げていた日経トレンディが発表した「今年のヒット商品」で2位にランクインしたのは映画「国宝」であったが、今週に東宝が発表したところによると同映画の国内興行収入が今週アタマ時点で173億7千万円を超え、2003年公開の「踊る大捜査線THEMOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」の興行収入を抜いて22年ぶりに実写邦画の歴代首位が交代することとなった。

東宝といえば今から70年以上も前の1954年から看板シリーズの「ゴジラ」を抱えているが、昨年には米映画界最大の祭典であるアカデミー賞において視覚効果賞を受賞している。かつては米市場にリメーク権や商品化権を渡していたがこれらも買い戻し布石を打ってきているが、こうしたIPモノの映画も任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」も世界興行収入がアナ雪を抜くなどゲームを実写にしてもほとんど差がないという世界も出来つつある。

冒頭の「国宝」はそれとして国内興行収入で1位と2位を独占しているのはいわずもがな「鬼滅の刃」シリーズだが、これを擁しているがソニーGで洋画では「スパイダーマン」や「ヴェノム」を擁する。以前にも書いたが、今や国内上場企業の時価総額ランキングでもIPビジネスで躍進する企業がどんどん順位を上げてきておりこのソニーGなどは2位の三菱UFJFGに次ぐ3位までに浮上してきている。

IPといえばほかにカルビーも自社スナック菓子のキャラクターなどをIPとして活用するマーケティングに取り組んでおり、菓子メーカーでは他に「たべっ子どうぶつ」のギンビスもこれを活用した映画などを展開している。飲食料系ではアサヒ飲料の「カルピス」など上記のゴジラの70年をも抜く106年のロンングセラーコンテンツだが、政府は33年までにこれらコンテンツの海外市場規模を現在の約3倍規模に高める目標を掲げており、新たな基幹産業の地位を固めつつあるIPモノは今後も要注目だ。


拠り所の変遷

本日の日経紙金融経済面には「投資 先生はSNSの功罪」と題し、資産形成の機運が高まりNISA(小額投資非課税制度)の口座数が6月末時点で約2700万にのぼるなか、金融(Finance)とインフルエンサー(Influencer)を組み合わせた「フィンフルエンサー」がXやTikTokで発信した情報をみて投資に踏み出す若者が多くなっているなどデジタル化の浸透から投資判断で頼る先が変質している旨の記事があった。

かつて80年代のバブル期には兜町に街の投資助言業者が犇めいていた時代で、今やその言葉さえ知らない向きも多い「ダイヤルQ2」などでも銘柄推奨などしていた時期もあったが、そう考えるとこれらの媒体変遷は隔世の感を禁じ得ない。従来投資助言業者は金融庁が登録制として確認してきたものだが、これらSNS等を媒体としているもの等は実際の部分が曖昧なものが多くグレーゾーンとも見える。

新NISAで投資機運が高まっているなか今は斯様に多様な選択肢がある一方で、投資詐欺の類のツールにも使われるなど弊害も並行して急増している。以前に行った金融庁の金融リテラシー調査では金融教育経験について、受ける機会は無かったが75.7%、わからないが15.4%という数字があり嵌める標的予備軍が世にあふれているだけに、投資環境の制度が形骸化しないで本来目標としてきた実効性を持たせるようにする為に基本を押さえた金融リテラシーが不可欠などは言うまでもない。

同頁で「ネット系金融を利用する若者の情報源」として挙げられていたものではトップが冒頭の通りSNSで51%、次に動画サイトが44%であったが上記の金融教育に力を入れる大手勢も、若い世代やマーケット情報に馴染みの無い人にも身の回りのものから投資関連の情報に気軽に接してもらう等の工夫が今以上に今後必要になってこようか。


インバウンド関連の憂鬱

さて高市総理が所謂「台湾有事」をめぐる件で、集団的自衛権の行使の前提となる「存立危機事態」に該当すると答弁したことに中国が猛反発を強め事態収束が一向に見えてこないが、そうしたなか懸念されるのが経済への影響か。早速中国のSNSではやはりというか日本製品の不買を呼びかける内容の投稿が激増、「北京日報」は日中関係の緊張が続けば中国はパンダの新たな貸出を停止し日本でパンダが見られなくなるとし、一部で“バシー海峡”封鎖思惑まで出る始末だ。

斯様な過剰反応を見るに2012年に日本が「尖閣諸島」を国有化した時の騒動をどうしても思い出してしまうが、この時には中国人観光客は約3割の減少を見た。日本政府観光局が先週に発表したところの1~10月までの累計訪日客数は約3500万人であったが、うち中国人訪日客数は820万人と国別ではトップ。その消費額は1.6兆円超とされているが、野村総研では渡航自粛が続いた場合、その経済損失は1兆7900億円にものぼると試算されている。

この辺を嗅ぎ取り株式市場でも関連株は急落の憂き目に遭った。インバウンド減少懸念から百貨店大手では三越伊勢丹、高島屋にJフロントリテイリングが揃って急落、冒頭の不買懸念では中国の売り上げ比率の高い資生堂をはじめとしてファストリに良品計画も急落、外務省が呼びかけた渡航自粛から航空券のキャンセルが54万件以上に上っていると報じられており日本航空にANAHDも揃って下落、他にもマツキヨに壽スピリッツから東宝等々挙げればきりがない。

懸念していた日本産水産物も事実上の全面輸入停止が判明するなど日に日に攻撃的な姿勢が強まっているが、日本に比べて切るカードが多い中国側は非難合戦で輸出規制とか次のステージに入ってくる可能性もある。とはいえ台風一過となった先を見据える動きもあり上記銘柄の急落が絶好の拾い場であったということになるのか否か、今後の動向も引き続き注視しておきたい。


高付加価値財の格差

昨日の日経紙投資面には「安全通貨 独走」と題し、スイスフランが株価調整リスクや経済への不透明感がくすぶる中、下落する円を尻目に唯一の安全通貨としてユーロなどの主要通貨に対しても連日で過去最高値を付けている旨の記事があった。スイスフランに関しては今からちょうど2年前に当欄では「堕ちた円?」として取り上げた事があったが、これを書いた時のスイスフランが168円台でそこから現在は更に30円近くも水準を切り上げている。

この時には一昔前にチューリッヒ国際空港で買い物をした時のフラン相場が80円台であった旨も書いていたが、日経紙にも書いてあったように2000年ごろに比べ円に対するフランの価値は3倍強になっている。各国の経済力を図るための指数でよく使われるところのマックのビッグマックはスイスで現在は日本の約2.9倍、スタバのアイスコーヒーも日本の約3.2倍であるが賃金の差がそれ以上で割高感は全くない。

労働生産性の高い企業が集まる中心地ジュネーブあたりの最低賃金は4000円台に乗っており、日本は最低賃金引上げが騒がれてなお全国加重平均で1100円台とそれでもなおスイスには3~4倍の差がある。ちなみに上記のフラン80円台の時の2004年の平均年収は日本が466万円、米が450万円と日本が米を上回っており、スイスは698万円と日本の1.5倍であったが、この20年で米にもスイスにも倍以上の差をつけられてしまった格好だ。

近年の円安がこの格差に貢献?している部分もあるが、スイスの生産性の高さを背景にした恒常的な貿易黒字国の構図はやはり大きな違いか。日経紙でも主要輸出品は医薬品と精密機器と書いてあったが、薬品ではノバルティスにロシュ、時計ではいわずもがなロレックスからオーデマ・ピゲ等々高付加価値のブランドが挙がり、このフラン高でも稼げる強みがある価格転嫁が容易な財での差別化戦略を改めて思い知らされる。


円安で変わるボージョレ・ヌーボー

さて、明日はボージョレ・ヌーボーの解禁日である。ボージョレといえば毎度「〇〇年に一度の」「〇〇年で最高」と最高の評価が恒例となっていたものだが、今年はこうした評価も聞こえないなか主要輸入元のサントリーでは「日当たりに恵まれ甘濃い味わい出来栄え」とのコメント。同社の輸入は前年比で2%減だそうだが、店頭想定価格は前年から据え置く模様だ。

上記のサントリーのように継続しているところもあれば前にも書いていた通り、採算が悪化したとのことで今年はキリンホールディングス傘下でワイン大手のメルシャンが自社輸入販売からの撤退を決めている。また他の大手ではアサヒビールもすでに昨年に撤退しているほか、サッポロビールも2年連続で休売しており事実上撤退という感じだ。

斯様に大手各社が挙ってボージョレ・ヌーボーから撤退するなか国内モノを推す光景も見られ始めた。このボージョレの時期にシャトレーゼは今年収穫の「甲州ヌーヴォー」なるワインを販売、以前の日本ワインは割高なものが多かったが、今やこの円安で輸入ワインの価格が上鞘になるという皮肉な現象も出ており量販店などで特設コーナーを設ける向きも出てきている。昨年の輸入量がピークの04年の7分の1まで落ち込んでいるなか、国産の品質向上や為替要因などで各社の舵取りも変わりつつあるようだ。


関税影響と個人消費

昨日内閣府が発表した2025年7月から9月までのGDP速報値は物価変動の影響を除いたところの実質で前期比マイナス0.4%であった。1年続いた場合の年率換算ではマイナス1.8%となり、6四半期ぶりにマイナスに転じることとなった。個別ではGDPの半分以上を占める「個人消費」はプラス1%で猛暑の影響で飲料が伸びたものの、秋物衣料の販売が振るわず小幅な伸びにとどまった模様。

さて個人消費といえば日本でもブラックフライデーの告知が彼方此方で見られるが、米でもホリデーシーズンとなりやはり年末商戦の動向が気になるところ。売り上げ予想ではやはりトランプ関税政策による物価上昇への警戒があり、前年実績のプラス4.0%からマスターカードではプラス3.6%、ICSCがプラス3.5~4.0%と、昨年の伸びと比べてわずかに減速するといわれている。

またビザではホリデーシーズン販売予想を名目で今年は前年比4.6%増と昨年の4.3%を上回る予想としているが、この伸びにはインフレが大きく貢献するとしておりこのインフレ調整後の所謂実質でもって見れば今年は2.2%と前年から減速する見通し。冒頭のGDPも先送りされてきたトランプ関税の影響が表れた形になったが、今回の数字が政府の財政運営に影響する可能性もあるなか本日も長期金利の利回りも約17年半ぶりの高水準で推移しており今後の日銀の動向とも併せ注視しておきたい。


今やカタリストに

先週末の日経紙総合面には「アクティビスト、日本で稼ぐ」と題し、資本効率の改善など株主提案を通じて企業価値の向上を求める“物言う株主”のアクティビストの投資対象となった企業の株価上昇で、今年のヘッジファンドのリターンは世界平均の1.7倍に達するなどその戦略が奏功して儲けが急増している旨の記事があったが、IRジャパンの纏めでは日本に参入するアクティビストはここ5年で6割増加している模様だ。

アクティビストといえばかつての「ブルドックソース事件」くらいまで“ハゲタカ”呼ばわりでネガティブ視されていた時代ももう懐かしくなってきているが、株主を意識した経営が普及していなかった市場は彼らにとってかっこうのターゲットだったのだろう。ただ近年は徹底したボトムアップリサーチで企業改革やガバナンスに踏み込んだ提案が企業の変革を促す原動力の一つともなってきており、これが併せて機関投資家の賛同をも誘っている。

こうした効果もあってTOPIX構成銘柄のうちPBRが1倍以上の割合は東証の企業改革要請があった一昨年の約47%から先月段階では約63%にまで増加してきており、ROEなどを見ても約9%近くまで改善してきている。とはいえ米S&P500では4割の企業でROEが20%を超えている現状があり、こうした部分ではこれらの指標面でも伸びしろはまだまだ残しているといえるか。

これまで当欄では日本の証券取引所を2010年代には「インサイダー天国」、その後に「アクティビスト天国」と形容していたが、インサイダー天国はかつての手薄な証券取引等監視委員会から今やマンパワーや技術も充実してほぼ挙げられるようになり、アクティビストも上記のようにかつての“ハゲタカ”時代から近年の東証の改革要請の追い風もあり今やカタリストとしてウィンウィンの構図を企業と共に創造しているあたりかつてのマーケットから隔世の感を禁じ得ない。


日本株再評価へ

さて、年に数回の見直しがある株価算出大手の米MSCIの全世界株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」だが、先週にキオクシアや荏原など4銘柄を追加すると発表している。また除外は3銘柄だが、MSCIといえばちょうど昨年の今頃には当欄で「オルカン除外」と題して5月、8月、11月と大幅に除外銘柄が顕著になっている旨を書いたのを思い出す。

今回は上記の通り4銘柄追加の3銘柄除外と差し引き1増となったが、日本株組み入れが純増になるのは3年9か月ぶりの事とこれを報じた先週の日経紙にも出ていた。今回組み入れられた銘柄はやはりというか“旬”の半導体銘柄が多いが、発表後に荏原は本日も大きく上昇して上場来の高値を更新、またキオクシアも今週は年初来高値を更新しているが、同社など直近わずか3か月で株価は実に5倍近くにも化けている。

ちょうど1年前は「このまま除外が続くようであれば海外勢の日本株離れの一因にもなりかねないだけに歯止めをかけたいところ~」と書いていたが、日経平均を為替レートで割りドル建てでみた今年の相場は米S&P500を大きくアウトパフォームしているものの、バリエーションは予想PERでみれば米S&P500のそれよりまだ水準は割安と報じているのをあちこちで目にする。

そういったことも背景に海外投資家による日本株買いも先月には月間で最大の買い越しとなっているが、MSCIの日本株の組み入れ比率は“失われた30年”で約5分の1にまで減少してきている。先月に日経平均は史上初の5万円大台乗せを実現したが、同指数に連動するパッシブ運用資金も巨額で需給に与える影響も少なくないだけに今後どの程度比率が回復してくるかこの辺には注視しておきたい。


AI跛行色

本日の日経平均はソフトバンク株に翻弄されるかっこうでプラス圏とマイナス圏に大きく振らされ、引けは同社の下げ幅が縮小するのに合わせて反発して引けた。そんな中で三井海洋開発が純利益の大幅上方修正から後場にストップ高まで急騰し上場来高値を更新、同じく三井では三井金属も26年3月期に連結純利益が従来予想から上方修正するとの発表で急騰しこちらも上場来高値を更新、値上がり率ランキングで2位、3位に揃ってランクインした。

上記の三井金など銅市況の高騰にAIデータセンターのサーバー需要も相俟って関税ショックで付けた安値から本日の大引けまでその株価は実に約6倍まで大化けしているが、同じAI関連でも代表格のソフトバンクなど昨日発表した純利益は前年同期比2.9倍の2兆9240億円と同期間としては過去最高であったものの冒頭の通り株価は肩透かし?の反落となり、ひところのAIモノ総嵩上げから本日の市況を見るに跛行色が出てきた感もある。

かつてのITバブルを経た学習効果なのかどうか、何でもかんでも買い続ける姿勢からAI括りでも堅めの実需を選別する姿勢が出ているのが興味深い。いずれにしても冒頭の三井金属は本日の急騰ではれて“1兆円倶楽部”の仲間入りとなったが、近年の「AI」というテーマを背景に各大台更新でそれぞれの“大台倶楽部”も今年一年でその景色が大きく変わることになるか。


IP株も躍進

本日の日経紙投資面には「純利益 市場予想超え6割」と題し、AI(人工知能)向けなどデジタル投資の拡大や円高一服、強みの製品の販売増を背景に2025年4月~9月期の業績が全体の6割の企業で純利益が市場予想を上回った旨の記事があった。自動車大手が米関税の影響で軒並み打撃を被る中にあってトヨタ自動車はHVの販売が好調でこの強みが光り市場予想との差は1300億円以上になっていた。

同紙には上記のトヨタをはじめ最終損益を市場予想を上回った企業のランキングが出ていたが、強みといえば7位にランクインした任天堂はちょうど昨日当欄で書いたように日経トレンディの“2025ヒット商品”の3位にランクインした「Nintendo Switch 2」の好調から純利益は8割増えている。また堅めな想定為替レートも相俟って来年3月期の純利益見通しも当初予想から500億円引き上げている。

そういえばこの“2025ヒット商品”で上記の「Nintendo Switch 2」を上回り2位にランクインしたのは「国宝」であったが、「鬼滅の刃」と共に本日発表になったソニーGの純利益を大きく押し上げている。ソニーGもソフトバンクほどの派手さは無いものの先月は上場来高値を更新し時価総額ランキングでベスト5に入ってきており、1位の自動車然りお家芸のIPも加わった新たな日本の基幹産業にはまだ期待が出来るか。


ヒット商品2025

今年も残すところあと2か月というところだが、先週日経トレンディが発表したこの時期恒例の「今年のヒット商品」は昨年同誌がヒット予測として挙げていた「ジャングリア沖縄」が意外?に下の方の29位にランクイン、上のほうに目を移しベスト3を見てみると3位には「Nintendo Switch 2」、2位は「国宝」、そして1位に輝いたのが「大阪・関西万博withミャクミャク」となっていた。

1位の大阪・関西万博、当初はどこも不評であったがふたを開けてみれば2500万人が訪れ、ミャクミャクなどの関連グッズの売り上げも後押しして一転して230億円を超える黒字となり、その経済効果も軽く3兆円を超えるともいわれている。そして2位の「国宝」、歌舞伎界を舞台にしたこの興行収入は22年ぶりに100億円を超えて先月末段階で166億円を突破、実写日本映画歴代興行収入1位も見えてきている。

そして3位の「Nintendo Switch 2」、今年6月に発売されわずか4日間で世界累計販売台数350万台を突破し、9月末までに1000万台を突破、従来販売台数予想を1500万台から1900万台に引き上げた。そういったことで来年3月期純利益の見通しを当初予想から500億円引き上げた3500億円に修正しているが、同社の想定為替レートもドルもユーロも堅めなラインに置いているのでこの辺は期待が持てよう。

そして来年のヒット商品予測としては、“時短”や“苦労キャンセル”がキーワードらしく日本初の行列型スキップ型優先入店サービスの「SuiSui」や、1位に選ばれた「多言語リアルタイム翻訳」等が挙げられていたが、9位には暗号資産のステーブルコインがランクイン。米はステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立、日本でも先月から日本初となる円建てステーブルコインが発行されているが、さてこれが来年のヒット商品にランクインしてくるのか否か興味深い。


親子上場36年ぶり低水準

さて2週間ほど前の日経紙投資面では「親子上場解消第2章へ」と題し、来週から決算発表が本格化するがこの時期には“親子上場”の解消の動きもまた年間で最も活発になる時期との旨の記事があったが、先週は29日に住友商事が東証プライム上場のSCSKを完全子会社化すると発表、翌30日には住友電気工業が同じく東証プライム上場の住友理工の完全子会社化を発表している。

親子上場の現状としては先月末で168社となっているが、ピークだったリーマンショック前の2006年度からは6割減少して実に36年ぶりの低水準となっている模様だ。上記の住友系以外でも当欄で5月に取り上げた三菱食品やNTTデータG以降、先月末で上場廃止になったアヲハタはキューピーが完全子会社化し、翌月には日本製鉄が黒崎播磨の完全子会社化を発表するなど今年3月末から9月末にかけては11社減少と加速している。

上記対象銘柄はいずれも子会社化報道から急騰しているが、日経紙ではこうしたTOB期待の思惑買いには過熱感があるとして投資家の一部では持ち分法適用会社の子会社化や売却の動きを探る動きがあるという。ここでは英系ヘッジファンドのオールド・ピーク・グループが保有する椿山荘運営の藤田観光や、先月に出光興産から完全子会社化を目指すとされた富士石油が挙げられていたがこれらいずれも株価は大きくアウトパフォームしている。

他にも関西電力の持ち分法適用会社のきんでんも今年は大きく株価を切り上げているが、冒頭の住友電工は住友理工の完全子会社化と同時に子会社の住友電設の大和ハウス工業への売却を発表している。コングロマリットディスカウント解消組の株価はその削減数が多いほど株価のアウトパフォームが鮮明なこともあり、今後もこうした向きは持ち分法適用会社含めその関係が再度問われる事になるか。