裏原系デザイナー創業が上場

先週末に東証グロース市場には株式投資型クラウドファンディングを展開する「FUNDINNO」がはれて上場の運びとなった。米では既にイーーロンマスク氏率いるスペースXなどの超が付く未上場ユニコーン企業株式の売買を仲介する整備が進んでいるが、未上場株取引を主力とする新興企業が上場するのは日本では初のこと。注目の初値は公開価格620円を42%上回る883円となりあと続伸し900円で引けたが2日目の今日は急反落となっている。

IPOでもう一つユニークなところで上場後も堅調持続しているのは、先月末に同じく東証グロース市場に上場したデザイナーのNIGO氏が創業したストリート系ファッションを代表するブランド「HUMAN MADE」か。アパレル以外にも雑貨から飲食事業まで手掛けるが、こちらの注目の初値は公開価格3130円を9.9%上回る3440円となり、今月に入ってからは上場5日目に4900円の高値まで買われている。

NIGO氏といえば90年代には裏原系のファッションブームもけん引した人物だが、HUMAN MADEの前にはAPEなども大ヒットさせている。斯様に一デザイナーが主導し上場までこぎつけた様を見るに、東証スタンダード市場に上場するフレンチレストランのひらまつが頭に浮かぶ。ここも料理人の平松氏が西麻布のレストランからJASDAQ、そして東証二部から東証一部にまで順次昇格させてきた企業だ。

HUMAN MADEはこれまでコカ・コーラ社やアディダスなど著名なカジュアルブランドから20年にはヴィトンなどラグジュアリーブランドともコラボを行ってきたが、コロナ明けから今年までその売り上げは6倍以上に伸びてきている。上記のヴィトンも擁するラグジュアリー複合企業よろしく、同社の事業の多角化が上場後にうまく回せてゆけるかどうか今後も株価と共に注目しておきたい。


mNAV急低下

さて、QUICKは22日からビットコインのリアルタイムの価格指数の算出・公表を開始する模様だが、ビットコインといえば先に高値を付けたあと先月から下落が著しい。サイバー攻撃による資金流出疑い、世界最大のビットコイン保有企業であるストラテジー社による売却懸念、中国が再度暗号資産規制の強化に出る等々次々と悪材料が取りざたされる中、今月に入るや否や85000ドル台まで急落し、先の史上最高値から約3割安の水準まで一時沈んだ。

こうなると所謂“ビットコイン・トレジャリー・カンパニー”の類も急落の憂き目は避けられない。上記の米ストラテジー社は同日12%急落し今年の高値から6割以上下落しほぼ1年ぶりの大幅安を記録している。これらの企業に使われるところの企業の時価総額をその企業が保有する仮想通貨の価値で割って算出する「mNAV」は同日には1.1倍に低下、投資対象としてのリスクが懸念される1倍割れの懸念も指摘され始めている。

では国内勢はどうだろうか?度々取り上げた指標格の東証スタンダード市場のメタプラネットは6月高値1930円から今週は350円台まで実に80%以上の急落を演じmNAVは1倍を切った。また同じくスタンダード市場のANAPホールディングスも7月高値1835円から今週は410円台まで急落しこちらも約78%の急落、リミックスポイントも2月の高値848円から今週は243円と年初来安値を更新し約70%の急落と、どれも米ストラテジー社を上回る暴落を演じている。

これらはまたビットコインの代替投資先にもなってきたが、上記に見られる通りその下落率やビットコインをはるかに上回りオルタナティブとして飛び付いた投資家は厳しい現実に直面している。新株予約券を駆使した“錬金”の事業モデルは「mNAV」が低下した局面では当然ながら分が悪く逆回転に注視しなければならないが、既にmNAVが1倍を割ってきている企業がNAVの維持をどう図ってゆくのか、ビットコイン価格と共に引き続き注視してゆきたい。


完全養殖が急務

さて、今年の「丑の日」あたりから懸念されていたEU(欧州連合)などが提案していたところのニホンウナギを含むウナギ全種の国際取引の規制強化案が先週のワシントン条約締結国会議で否決されている。明後日の本会議で正式に決めるが、賛成が35、反対が100、棄権が8ということで反対が大きく上回りひとまずほっと一安心という感じか。

国内のウナギの供給の約7割を輸入に頼っているが現状の日本では、輸出に際して許可証の発行が必要になるということになるとこれまでより国際取引に時間がかかる可能性も浮上し供給量減少のケースでは価格高騰の恐れがあった。というわけで目先の急騰リスクは一先ず回避となったが、とはいえ国際社会から向けられる厳しい視線に変わりはなく、乱獲の疑義がかかる中国はじめ東アジアでの資源管理の強化は欠かせない。

この辺に絡んでは完全養殖の商業化もキーになってくるが、東洋水産は独自に完全養殖に成功し、ゼンショーHDも養殖の生産性向上の技術開発に着手、また前回も書いたが水産研究・教育機構は完全養殖のウナギを量産するのに必要な基幹技術の特許を取得し大手民間企業や大学も協力し連携を図っている。資源保護と食文化の両立を図るべく官民挙げて完全養殖の高い壁を乗り越えようとする動きに今後も期待したいところだ。


再編スケールメリット

今年の定時株主総会で可決されていた通り、昨日はイオン傘下のウエルシアホールディングスとツルハホールディングスとが経営統合を果たしている。今後はイオンがツルハHDに対してTOBを実施し、持ち分比率を高めて同社を連結子会社化する運びとなるがこの話、もともとは2027年メドにした統合を目指しての協議であったものの当初計画を約2年前倒しての実現となった。

これまでのドラッグストア業界といえば売り上げベスト3がいずれも1兆円規模で横並びという印象であったが、この度の統合で実に2兆円規模のドラッグストアが誕生することになる。同業界では今から4年前に経営統合した3番手に位置するマツキヨココカラ&カンパニーが統合後の飛躍的な経営効率上昇で話題になった経緯があるが、今回の統合ではイオンのインフラも活用し3年間で500億円のシナジー効果を見込むという。

とはいえ日経紙ではこの統合する両社の営業利益率が上記のマツキヨココカラ&カンパニーに見劣りする旨の指摘があったが、なるほどマツキヨのそれは直近で7.4%、対してツルハHDは同5%台、ウエルシアHDは同3%台となっている。郊外立地や食品に強みを持つ4位のコスモス薬品も数年前から関東圏に進出著しく侮れない存在となろうが、さて思惑通りにスケールメリットが生かせるかどうか統合後のガリバードラッグストアに注目である。


クリスマス前の高騰

週が明けてみればもう師走だが、月初め恒例の帝国データバンクによる今月の値上げ動向は食品メーカー195社でチョコレート菓子や大豆加工品、調味料など217品目を数えている。単月の値上げ品目数としては2か月連続で1千品目を下回り2025年内では先月に次いで2番目の低水準と値上げラッシュ一服とはなってはいるが、今年値上げされた食品数は結局のところ2年ぶりに2万品目超えとなっている。

師走はホリデーシーズン入りで値上げによる買い控えが警戒されることで各社それなりに抑える動きもあると思われるが、先に総務省が発表した10月の全国消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数が112.1と前年比で3.0%上昇し伸び率は2か月連続で拡大、生鮮食品を除く食料は7.2%上昇するなど秋口までの値上げが多くとても一服感という状況にはない。

斯様に秋は価格を改定する動きが相次ぎ幅広い食料品が値上がりしていて、特にコーヒー豆が53.4%、コメ類が40.2%と大幅に上昇した。また11月の東京23区消費者物価指数も然り、クリスマスを前にケーキ素材関連が高騰しチョコレートなど32.5%アップと鎮静化の兆しも見えない。ダラダラとした円安も長期化の様相を呈しており、包装材や容器など今冬以降も順次値上げされる見通しから再値上げの可能性も十分にあり今後も物価高の行方が注視される。


IPの伸びしろ

先に当欄で取り上げていた日経トレンディが発表した「今年のヒット商品」で2位にランクインしたのは映画「国宝」であったが、今週に東宝が発表したところによると同映画の国内興行収入が今週アタマ時点で173億7千万円を超え、2003年公開の「踊る大捜査線THEMOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」の興行収入を抜いて22年ぶりに実写邦画の歴代首位が交代することとなった。

東宝といえば今から70年以上も前の1954年から看板シリーズの「ゴジラ」を抱えているが、昨年には米映画界最大の祭典であるアカデミー賞において視覚効果賞を受賞している。かつては米市場にリメーク権や商品化権を渡していたがこれらも買い戻し布石を打ってきているが、こうしたIPモノの映画も任天堂の「スーパーマリオブラザーズ」も世界興行収入がアナ雪を抜くなどゲームを実写にしてもほとんど差がないという世界も出来つつある。

冒頭の「国宝」はそれとして国内興行収入で1位と2位を独占しているのはいわずもがな「鬼滅の刃」シリーズだが、これを擁しているがソニーGで洋画では「スパイダーマン」や「ヴェノム」を擁する。以前にも書いたが、今や国内上場企業の時価総額ランキングでもIPビジネスで躍進する企業がどんどん順位を上げてきておりこのソニーGなどは2位の三菱UFJFGに次ぐ3位までに浮上してきている。

IPといえばほかにカルビーも自社スナック菓子のキャラクターなどをIPとして活用するマーケティングに取り組んでおり、菓子メーカーでは他に「たべっ子どうぶつ」のギンビスもこれを活用した映画などを展開している。飲食料系ではアサヒ飲料の「カルピス」など上記のゴジラの70年をも抜く106年のロンングセラーコンテンツだが、政府は33年までにこれらコンテンツの海外市場規模を現在の約3倍規模に高める目標を掲げており、新たな基幹産業の地位を固めつつあるIPモノは今後も要注目だ。


拠り所の変遷

本日の日経紙金融経済面には「投資 先生はSNSの功罪」と題し、資産形成の機運が高まりNISA(小額投資非課税制度)の口座数が6月末時点で約2700万にのぼるなか、金融(Finance)とインフルエンサー(Influencer)を組み合わせた「フィンフルエンサー」がXやTikTokで発信した情報をみて投資に踏み出す若者が多くなっているなどデジタル化の浸透から投資判断で頼る先が変質している旨の記事があった。

かつて80年代のバブル期には兜町に街の投資助言業者が犇めいていた時代で、今やその言葉さえ知らない向きも多い「ダイヤルQ2」などでも銘柄推奨などしていた時期もあったが、そう考えるとこれらの媒体変遷は隔世の感を禁じ得ない。従来投資助言業者は金融庁が登録制として確認してきたものだが、これらSNS等を媒体としているもの等は実際の部分が曖昧なものが多くグレーゾーンとも見える。

新NISAで投資機運が高まっているなか今は斯様に多様な選択肢がある一方で、投資詐欺の類のツールにも使われるなど弊害も並行して急増している。以前に行った金融庁の金融リテラシー調査では金融教育経験について、受ける機会は無かったが75.7%、わからないが15.4%という数字があり嵌める標的予備軍が世にあふれているだけに、投資環境の制度が形骸化しないで本来目標としてきた実効性を持たせるようにする為に基本を押さえた金融リテラシーが不可欠などは言うまでもない。

同頁で「ネット系金融を利用する若者の情報源」として挙げられていたものではトップが冒頭の通りSNSで51%、次に動画サイトが44%であったが上記の金融教育に力を入れる大手勢も、若い世代やマーケット情報に馴染みの無い人にも身の回りのものから投資関連の情報に気軽に接してもらう等の工夫が今以上に今後必要になってこようか。


インバウンド関連の憂鬱

さて高市総理が所謂「台湾有事」をめぐる件で、集団的自衛権の行使の前提となる「存立危機事態」に該当すると答弁したことに中国が猛反発を強め事態収束が一向に見えてこないが、そうしたなか懸念されるのが経済への影響か。早速中国のSNSではやはりというか日本製品の不買を呼びかける内容の投稿が激増、「北京日報」は日中関係の緊張が続けば中国はパンダの新たな貸出を停止し日本でパンダが見られなくなるとし、一部で“バシー海峡”封鎖思惑まで出る始末だ。

斯様な過剰反応を見るに2012年に日本が「尖閣諸島」を国有化した時の騒動をどうしても思い出してしまうが、この時には中国人観光客は約3割の減少を見た。日本政府観光局が先週に発表したところの1~10月までの累計訪日客数は約3500万人であったが、うち中国人訪日客数は820万人と国別ではトップ。その消費額は1.6兆円超とされているが、野村総研では渡航自粛が続いた場合、その経済損失は1兆7900億円にものぼると試算されている。

この辺を嗅ぎ取り株式市場でも関連株は急落の憂き目に遭った。インバウンド減少懸念から百貨店大手では三越伊勢丹、高島屋にJフロントリテイリングが揃って急落、冒頭の不買懸念では中国の売り上げ比率の高い資生堂をはじめとしてファストリに良品計画も急落、外務省が呼びかけた渡航自粛から航空券のキャンセルが54万件以上に上っていると報じられており日本航空にANAHDも揃って下落、他にもマツキヨに壽スピリッツから東宝等々挙げればきりがない。

懸念していた日本産水産物も事実上の全面輸入停止が判明するなど日に日に攻撃的な姿勢が強まっているが、日本に比べて切るカードが多い中国側は非難合戦で輸出規制とか次のステージに入ってくる可能性もある。とはいえ台風一過となった先を見据える動きもあり上記銘柄の急落が絶好の拾い場であったということになるのか否か、今後の動向も引き続き注視しておきたい。


高付加価値財の格差

昨日の日経紙投資面には「安全通貨 独走」と題し、スイスフランが株価調整リスクや経済への不透明感がくすぶる中、下落する円を尻目に唯一の安全通貨としてユーロなどの主要通貨に対しても連日で過去最高値を付けている旨の記事があった。スイスフランに関しては今からちょうど2年前に当欄では「堕ちた円?」として取り上げた事があったが、これを書いた時のスイスフランが168円台でそこから現在は更に30円近くも水準を切り上げている。

この時には一昔前にチューリッヒ国際空港で買い物をした時のフラン相場が80円台であった旨も書いていたが、日経紙にも書いてあったように2000年ごろに比べ円に対するフランの価値は3倍強になっている。各国の経済力を図るための指数でよく使われるところのマックのビッグマックはスイスで現在は日本の約2.9倍、スタバのアイスコーヒーも日本の約3.2倍であるが賃金の差がそれ以上で割高感は全くない。

労働生産性の高い企業が集まる中心地ジュネーブあたりの最低賃金は4000円台に乗っており、日本は最低賃金引上げが騒がれてなお全国加重平均で1100円台とそれでもなおスイスには3~4倍の差がある。ちなみに上記のフラン80円台の時の2004年の平均年収は日本が466万円、米が450万円と日本が米を上回っており、スイスは698万円と日本の1.5倍であったが、この20年で米にもスイスにも倍以上の差をつけられてしまった格好だ。

近年の円安がこの格差に貢献?している部分もあるが、スイスの生産性の高さを背景にした恒常的な貿易黒字国の構図はやはり大きな違いか。日経紙でも主要輸出品は医薬品と精密機器と書いてあったが、薬品ではノバルティスにロシュ、時計ではいわずもがなロレックスからオーデマ・ピゲ等々高付加価値のブランドが挙がり、このフラン高でも稼げる強みがある価格転嫁が容易な財での差別化戦略を改めて思い知らされる。


円安で変わるボージョレ・ヌーボー

さて、明日はボージョレ・ヌーボーの解禁日である。ボージョレといえば毎度「〇〇年に一度の」「〇〇年で最高」と最高の評価が恒例となっていたものだが、今年はこうした評価も聞こえないなか主要輸入元のサントリーでは「日当たりに恵まれ甘濃い味わい出来栄え」とのコメント。同社の輸入は前年比で2%減だそうだが、店頭想定価格は前年から据え置く模様だ。

上記のサントリーのように継続しているところもあれば前にも書いていた通り、採算が悪化したとのことで今年はキリンホールディングス傘下でワイン大手のメルシャンが自社輸入販売からの撤退を決めている。また他の大手ではアサヒビールもすでに昨年に撤退しているほか、サッポロビールも2年連続で休売しており事実上撤退という感じだ。

斯様に大手各社が挙ってボージョレ・ヌーボーから撤退するなか国内モノを推す光景も見られ始めた。このボージョレの時期にシャトレーゼは今年収穫の「甲州ヌーヴォー」なるワインを販売、以前の日本ワインは割高なものが多かったが、今やこの円安で輸入ワインの価格が上鞘になるという皮肉な現象も出ており量販店などで特設コーナーを設ける向きも出てきている。昨年の輸入量がピークの04年の7分の1まで落ち込んでいるなか、国産の品質向上や為替要因などで各社の舵取りも変わりつつあるようだ。


関税影響と個人消費

昨日内閣府が発表した2025年7月から9月までのGDP速報値は物価変動の影響を除いたところの実質で前期比マイナス0.4%であった。1年続いた場合の年率換算ではマイナス1.8%となり、6四半期ぶりにマイナスに転じることとなった。個別ではGDPの半分以上を占める「個人消費」はプラス1%で猛暑の影響で飲料が伸びたものの、秋物衣料の販売が振るわず小幅な伸びにとどまった模様。

さて個人消費といえば日本でもブラックフライデーの告知が彼方此方で見られるが、米でもホリデーシーズンとなりやはり年末商戦の動向が気になるところ。売り上げ予想ではやはりトランプ関税政策による物価上昇への警戒があり、前年実績のプラス4.0%からマスターカードではプラス3.6%、ICSCがプラス3.5~4.0%と、昨年の伸びと比べてわずかに減速するといわれている。

またビザではホリデーシーズン販売予想を名目で今年は前年比4.6%増と昨年の4.3%を上回る予想としているが、この伸びにはインフレが大きく貢献するとしておりこのインフレ調整後の所謂実質でもって見れば今年は2.2%と前年から減速する見通し。冒頭のGDPも先送りされてきたトランプ関税の影響が表れた形になったが、今回の数字が政府の財政運営に影響する可能性もあるなか本日も長期金利の利回りも約17年半ぶりの高水準で推移しており今後の日銀の動向とも併せ注視しておきたい。


今やカタリストに

先週末の日経紙総合面には「アクティビスト、日本で稼ぐ」と題し、資本効率の改善など株主提案を通じて企業価値の向上を求める“物言う株主”のアクティビストの投資対象となった企業の株価上昇で、今年のヘッジファンドのリターンは世界平均の1.7倍に達するなどその戦略が奏功して儲けが急増している旨の記事があったが、IRジャパンの纏めでは日本に参入するアクティビストはここ5年で6割増加している模様だ。

アクティビストといえばかつての「ブルドックソース事件」くらいまで“ハゲタカ”呼ばわりでネガティブ視されていた時代ももう懐かしくなってきているが、株主を意識した経営が普及していなかった市場は彼らにとってかっこうのターゲットだったのだろう。ただ近年は徹底したボトムアップリサーチで企業改革やガバナンスに踏み込んだ提案が企業の変革を促す原動力の一つともなってきており、これが併せて機関投資家の賛同をも誘っている。

こうした効果もあってTOPIX構成銘柄のうちPBRが1倍以上の割合は東証の企業改革要請があった一昨年の約47%から先月段階では約63%にまで増加してきており、ROEなどを見ても約9%近くまで改善してきている。とはいえ米S&P500では4割の企業でROEが20%を超えている現状があり、こうした部分ではこれらの指標面でも伸びしろはまだまだ残しているといえるか。

これまで当欄では日本の証券取引所を2010年代には「インサイダー天国」、その後に「アクティビスト天国」と形容していたが、インサイダー天国はかつての手薄な証券取引等監視委員会から今やマンパワーや技術も充実してほぼ挙げられるようになり、アクティビストも上記のようにかつての“ハゲタカ”時代から近年の東証の改革要請の追い風もあり今やカタリストとしてウィンウィンの構図を企業と共に創造しているあたりかつてのマーケットから隔世の感を禁じ得ない。