消えるあの時代の渋谷

さて、店頭で“その日まで”とカウントダウンを設けていた「西武渋谷店」が昨日に58年の歴史に幕を下ろした。同店はA館・B館・ロフト館・シード館からなる構成であったが、セブンアンドアイHDがそごう西武をフォートレストに売り渡した過程で地権者の再開発計画の協議も難航続きだったという。還暦?クラスの同店は当時の親会社だったセゾングループ創始者の肝煎りで誕生したが、同じく肝煎りだったホテル西洋銀座の後を追い消える事になる。

同店への思い入れは世代で全く違ったものになってくると思うが、思えばアパレル一つ取ってもDCブランドの火付け役は此処であったし、エルメスやアルマーニをいち早く導入したのもまた此処であった。これがバブル期を経て渋谷の客足も新たなトレンドの方へ向い、近年では駅周辺に行われている大規模大開発で次々と新たなコンセプトの商業施設が誕生、そういった中でトレンドを生み出す街に居続ける意義も次第に失せていったのかもしれない。

しかし渋谷の百貨店といえば共にしのぎを削ってきた東急東横店や東急百貨店本店などのアイコン的存在だった大箱も既に閉店しているが、この大箱といえば更に来月にはこの西武渋谷店に続いてあの“ハンズ渋谷店”も閉店してしまう。これまた西武A館B館ではないが、各フロアをABC分けするスキップフロアが特徴だった。いずれにせよ大規模再開発の裏でお役御免の大箱が消えゆく姿は、青春時代を此処で過ごした向きには寂しいものだ。


金利収益の旨味

本日の日経紙グローバル市場面には「信用買い個人、金利高の影」と題し、直近で東証から公表された投資家の信用取引の買い残高の約6.4兆円などが信用取引のコスト上昇などで重荷になる可能性が出てきた旨の記事があった。複数の大手証券では日銀の利上げで短期市場からの資金調達コストが膨らんでおり、これに伴い信用買いの買い方金利の引き上げに動いている模様だ。

同紙では上記の買い残の約6.4兆円をもとに足元の買い方金利の水準を年間約3%と仮定しての計算では、個人投資家全体の金利負担が約1900億円にのぼるという。もちろんこのマル信の性質上ダラダラと期日まで引っ張るパターンは誰もがエントリー当初は想定していないだろうが、先に書いた信用評価損益率のプラス浮上などに惑わされ気が付けば塩漬けの罠にはまっている向きも少なくないか。

さて張る側は泣き笑いの明暗があっても、こうした対で証券会社は恩恵を被る。先の大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には各社共に信用取引の金融収支が貢献し収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。日銀利上げのペース以上に貢献している間は良いが、今後の利上げに何処まで付き合えるのかこの辺にも注視しておきたい。


背徳と健康

今でもそうなのか少し前まで「ギルティフード」がやたらと流行っていた感じがしていた?が、スーパーに買い物に行った際にサントリーのNOPEギルティがいまだギチギチに棚に並んでいたのを見た。こういった一方で昨日の日経MJでは米のプロテイン人気の流れなども背景にして森永乳業が高タンパク質の商品を身近な商品を中心に拡大している旨の記事を見かけた。

ところで森乳といえば海外の子会社だったか、ホエイの精製に強みを持つ企業だけにこういった部分に商機を見つけるのは自然な流れだったか。同社といえば営業利益の構成でも海外の比率が高いだけに今後はこうした部分の舵取りにも注目しておきたいが、その辺は兎も角も同社のたんぱく質を打ち出した商品の今年3月の売上高は20年3月期比で約2倍にも拡大しているという。

厚労省の方でも日本人の食事摂取基準で1日当たりのたんぱく質接種の推奨量など設けているが、森乳の調査でもこれが十分に取れていないと回答している向きは約7割にも上るという。“ギルティ”人気で増殖した?GLP―1受容体作動薬常用者増加などもあるだけに、そうした向きの対策とも相まって“対”の部分への商機を各社まだ模索する展開が続くだろうか。


宝探し再び

本日の日経紙・インサイドアウトの頁では「金高騰、産金国目覚める」と題し、ゴールドを産出する新興国の間で近年の金価格高騰を自国経済の発展につなげようとする動きが活発化している旨の記事があった。またこうして広がり始めたところの金をめぐる資源ナショナリズムは、今後長い目で見れば金価格の新たな上昇要因となる可能性が十分にあるという。

ここでは膨大な埋蔵量を誇るラオス政府による国内貴金属市場インフラの急ピッチな立ち上げや、インドネシアが金輸出に対し最大15%課税し国外流出を抑えようとする姿勢、また中銀の金購入を進める中国やマダガスカルなどの動きが挙げられていたが、日本でも金価格高騰を背景に海外企業や国内企業が新たな金鉱脈を調査したり金属回収の動きを活発化させている。

2年ほど前だったか当欄では、北海道でかつて栄えた静狩金山周辺で豪州のキンギンエクスポレーションの子会社であるジャペックスが金鉱脈を見つけようと採掘調査計画が持ち上がっている旨を書いたことがあるが、同じく北海道の雄武町ではプライム市場上場のJX金属はカナダの鉱物探査会社アービング・リソーシズが金鉱脈の調査を継続している動きがある。

また東京オリンピックの時の「都市鉱山から作るみんなのメダルプロジェクト」で見られた通りこうしたお家芸の技術もさることながら、最近では新日本電工が焼却灰からの回収設備を拡張したりIHIは海水から金を採取する技術の実用化を目指したりしているという。金価格の動向が世界で資源ナショナリズムを刺激し、カンフル剤の一部となってゆくのかどうか今後も注目である。


基準地価2026

先週はこの時期恒例で国土交通省から2026年の基準地価が公表されている。大型再開発やインバウンドの増加などにより住宅地、商業地、全用途共に上昇していずれも5年連続での上昇となっていたが、全体をけん引したのは三大都市圏で全国最高地価地点は不動の21年連続トップで明治屋銀座ビルの1平方メートル当たり5250万円、一昨年の4210万から実に1000万円以上も上昇している。

この東京だが商業地地価の平均は1平方メートルあたり平均がピークのバブル期1993年以来、33年ぶりの高水準になっているという。コロナ禍後の出社回帰などを背景に旺盛なオフィス需要から需給バランスが取れた適正な空室率の目安である5%を下回り、日経紙では都心の5区では大規模オフィスの平均空室率は6月末時点で0.8%と出ていた。

今後の5年間の供給ペースは低水準で空室率の低下基調は27年まで続き、これにより受給バランスは一層逼迫しオフィス賃料相場の上昇は続くとも書かれていたが、それにしてはREITの弱さが際立っている。東証REIT指数は年初来で13%安に沈みREITのNAV倍率(株式でいうところのPBR)に至っては上昇している全銘柄が1倍未満の水準に甘んじている。

もっとも足元での金利上昇傾向を背景に利益成長の側面から上記の低迷は致し方なく、高品質オフィスの利回りは2%台半ばぐらいになってきている一方で新発10年物国債の利回りはこれを上回ってきており、であればわざわざという構図も否めない。“陰極まれば~”という相場格言もあるが、今後は金利上昇やインフレを当該不動産が生み出すキャッシュフローがどの程度上回ってくるかも焦点となって来ようか。


あの店のあの味

昨日の伝統工芸展に行った際に三越本店近辺を歩いていて思い出したのが、先月の日経紙ヒットのクスリの頁で「名店の味、MA&で承継」と題し、名店の味がなくならないようにレシピや屋号などを継承するミニM&Aを手掛ける企業を取り上げた記事。この冒頭では、東京・日本橋にツタが絡まった建物でスープ状のカレーを出す店があったが閉店しもう食べられなくなり“ロス”になった旨の書き出しであったが、これを読んで懐かしい想いが蘇った。

今のマンダリンオリエンタル東京とコレド室町テラスとに挟まれたとんでもない一等地にあったこの店は近所で私も何度か行ったことがあったが、同紙でも“ツタのカレー店”と「通称」で書いている通り建物の内外に店名が無く、外看板には「珈琲」と書かれていたものの店内でコーヒーを呑む客を一度も見たこともなく、店内は座ると否応なし?にカレーが出される一択のなかなか癖のある店だった。

斯様に日本橋には無くなってしまった名店が幾つもあるが、ここ数年でも幾つも思い浮かぶ。近所にあった「都寿司」は軽く創業100年を超える老舗であったものの5代目婿養子が起こした不祥事で突然閉店、鮪は言わずもがなランチの“にもの丼”も忘れられない味だった。TCATにあった唯一無二の味の担々麺が人気だった「龍鳳」も人手不足に苦しんでいたが力尽き、住宅街のクラシックな佇まいの中で海軍ゆかりのフレンチを堪能出来た老舗の「スコット」も消えた。

他にも創業家の内部分裂で本家の味の継承者が独立してしまったパターンや、名前は残っているが同業に買収され移転した例など日本橋には数多ある。これらは辛うじて同じ味を味わうことが出来るが、確かに上記の“消えた名店”の味の再現店がこの先現れるのか未知数だ。こうした無形資産だけを継承対象とする手法はこれまでにない新手といえようが、普及すれば“ロス”の寂しさも半減することになろうか。


伝統工芸展2026

昨日で終了したが、日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的に日本工芸会が開催する日本工芸の技と美が集結する公募展「伝統工芸展」の第73回が開催され先週これを観て来た。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の一般公募作品1071点から選ばれた作品と“人間国宝”の最新作を含む約550点を一堂に展覧していた。

2年前の伝統工芸展で「輪島塗」に当欄で触れた際には、ちょうど年明けの大地震で工房が被害に遭ったことから仮設工房で作業再開するも続いて能登地方を豪雨が襲いその影響が懸念される旨を書いていたが、今年も石川県からは輪島塗ほか素晴らしい作品が数多く出品されていて一先ず安堵した。被災地といえば直近では熊本大地震もあったが、この熊本からも素晴らしい作品が出品されていた。

そういえばこの熊本、この7月に発生した大地震の復興を後押ししようと各所で支援の動きが見られるが、ラグジュアリーホテルなどではホテルニューオータニが熊本県産の栗を使ったモンブランを販売したり、帝国ホテルでも熊本県産の商品を展開している。いずれにせよこうした支援の輪のもとに日本が世界に誇る伝統技術の灯を絶やすことなく継承していってほしいものだ。


普及のカギ

本日の日経紙グローバル市場面では金(ゴールド)が裏付けとなる暗号資産「金トークン」が、今年7月に成立した改正金融商品取引法で暗号資産が金商法の規制対象に位置付けられる事になったことで、法律上明確に位置付けられることを契機に売却益にかかる税率がETF(上場投資信託)なみまで下がる公算が大きくなる旨の記事があった。

つまり現在は雑所得として扱われ住民税込みで最大55%の税率が適用されるものが、ETF並みの約20%まで下がるということ。冒頭の金トークンについては今から4年ほど前に当欄でも三井物産のものを取り上げたことがあり、ブロックチェーン技術を用いて金価格に概ね連動する暗号資産の「ジパングコイン」が発行されており、今年6月末の発行残高は25億7400万円となっている。

こうしたことを鑑み暗号資産取引所の中には今年から新たに上記のジパングコインの取り扱いを開始しているところもある。またジパングコインは発行体の破綻に備えた銀行による保証の仕組みがあるが、金融商品としての取引が可能になってくると斯様に様々な事態に備えて投資家保護のために補償や救済の基金制度などの整備が行われ、これら整備の進展で投資のアクセスもまたし易い環境が整ってくればこの手の普及も期待出来るか。


消える選択残る選択

さて、先週は日経平均が調整色を強める中でも2日連続ストップ高の後も続騰していたのが東証プライム上場のアルビスであったが、これは周知のようにスーパー大手のライフコーポレーションがTOBを実施すると発表しその買い付け価格の3780円にサヤ寄せしたもの。当のアルビス側は賛同意見を表明しており、このTOB成立後に上場廃止となる見込みだ。

このスーパー業界では春先にスタンダード市場上場のオリンピックもドンキが買収し上場廃止の道を辿ったが、TOBといえば先月もハウス食品工業が子会社の壱番屋の売却検討の報があり、組み込みソフト開発のイーソルのMBOも報じられておりいずれも株式の非公開化を検討する。斯様に非公開化の選択が増加しているが、ちょうど1週間前の日経紙一面でも東証への上場を廃止する企業が3年連続で過去最多を更新する旨を報じている。

非公開化に向かうケースでは上記のようなパターンもあれば、市場改革により上場維持基準を満たせなくなったパターンもある。昨年末には要請期間内に条件クリアする方策として所謂ロールアップなどの動きや、ファンドが絡んでファイナンスを駆使した時価総額拡大計画の動きなども予測されると書いていたが、ふるいにかける経過措置もいよいよ終了し条件のクリアが難しい10社が来月に上場廃止となる予定だ。

しかしこんなグロース市場やスタンダード市場でなくとも、東証一部からプライム市場に長らく君臨してきたところの「大正製薬」や「久光製薬」など誰もが知る“定番企業”まで非公開化を選択するのを見るに上場を前提としない新たな形が垣間見える。今後もこうした“前向きな退出”が中心になってくることが予測されるだけに、引き続きポスト別に注視しておきたい。


夢の国の試金石

先週末の日経紙夕刊ビジネス面で東京商工リサーチまとめの2025年度のテーマパーク・遊園地などの運営企業の売上高合計が、インバウンド消費や国内訪問客増加などの寄与により1兆931億円と24年比3%増となり4期連続で増収だった旨の記事を見た。ちなみに売上高首位は東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドで5881億7100万円と2.9%増となっている。

さてこの東京ディズニーリゾートといえば「東京ディズニーシー」が先週に開業25周年を迎えている。はや25年かと開業当時を思い起こせば何とも時の流れの早さを感じるものだが、この辺は料金にも表れている。当時6000円もしなかった1デーパスポートは今やほぼ2倍に、既に年パスやファストパスも消え、更にこれが来月から新たに高価格帯も追加導入されて大人の1デーパスポートは最大12400円が登場する予定だ。

思えばシーのエリア内に「ファンタジースプリングス」がオープンしたあたりから高額化政策が顕著になってきたようにも感じる。同施設を楽しむ迄のハードルの高さもさることながら、新エリアにオープンした直営ホテルも最上位のラグジュアリーの位置づけで開業している。このホテル事業も直営の稼働率は26年3月期で実に95%を叩き出しており、おの売上高と営業利益も揃って過去最高をはじき出している。

高単価路線が業績には奏功しているかというところだが、株価の報はこのファンタジースプリングス開業の年をピークに翌年には半値以下にまで沈む憂き目に遭っている。いろいろ挙げればきりがないが、要は“成長に対する天井感”を反映しているか。パーク拡張の土地の限界も見据え数年後にはクルーズ事業を開始する予定の同社だが、どこまで脱落しないファンを誘致し続けられるか今後の戦略の一つ一つが試金石になるか。


ドクターカッパーの捉え方

本日の日経紙グローバル市場面では「銅、7か月ぶり高値」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が7日に1トン14533ドルまで上昇し、1月に記録した過去最高値の14527.5ドルの最高値を上回った旨の記事があった。依然として供給懸念が継続しているうえ、米の関税発動に対する警戒感も強いことが背景となっている模様だ。

こうした国際相場の伸びは加工した素材製品である伸銅品の国内価格にも波及し、伸銅品のうち最も生産の多い「銅条」の今月の価格は昨年末時点に比較して31%高の水準となっている旨も先週の日経紙で見かけた。これら伸銅品の価格はJX金属発表の銅建値の動きに連動するというが、その建値も先月に最高値更新し5年で2倍強にまで水準を切り上げている。

この建値が最高値更新したあたりで東証の「WisdomTree ETF」も年初来高値を付けているが、当のJX金属の株価は5月に付けた上場来高値から現在は約3割安の水準で推移している。さて今後どうなる銅価格だが、上昇が続けば広範囲なインフレ誘発の懸念も出てくる。経済動向をいち早く映すとして多用されてきた「ドクターカッパー」の公式も、近年のAI投資の集中等で従前との温度差は否めずその捉え方もまた変わってくるだろうか。


睡眠市場の伸びしろ

さて、気温の変化が急で睡眠のリズムも狂いがちな日々だが、先週3日は「睡眠の日」であった。OECD(経済協力開発機構)で昔からいわれていることだが日本人の睡眠時間は主要国の間でも最も短時間らしく、大谷翔平選手が一日約10時間の睡眠を確保している旨などを聞くにそこまで寝るのは不可能とも思えるが、実際に欧州の知人などと話すとこの程度の睡眠時間がみんな普通らしい。

そういった事で健康の為に費やす平均金額の伸びと共に東京ビッグサイトなどで「健康博覧会」や「SPORTEC」等の開催を見るが、睡眠というところではリカバリー服の“BAKUNE”シリーズを展開するTENTIALは昨年に東証グロース市場への上場を果たしている。こうしたリカバリー服の市場規模は一昨年の189億円から今年は500億円を超える見込みといい、更には2030年には1700億円規模にまで成長が予測されている模様だ。

十分な睡眠は業務の効率性からも重要なのは間違いないが、冒頭のOECDでは睡眠不足による損失が約20兆円にものぼるという。こうなってくると企業にとって労働者の睡眠の確保などもまた経営課題にもなりそうだが、既に仮眠環境を整える企業など大手中心に増加しつつあり今後の市場の伸びしろには注目しておきたい。