各々の軸

久し振りにマツキヨで買い物をしたが、マツキヨといえばここは先週にオーガニック化粧品のジョンマスターHDを買収すると発表している。もともとNY創業の企業だがリーマンショック前に日本には上陸、22年からPEファンドのアスパラントグループ傘下となっているが、この買収で同社はラインナップを拡充するほか製造コストの抑制にも繋げたい意向だ。

これまでも他企業とのコラボで共同開発するなどPBに力を入れているマツキヨだが、そういえばこのジョンマスター買収の前にも同社はアサヒGとも提携し新たなPBを展開する旨も発表している。アサヒGといえばサプリなどで圧倒的な研究開発の実績を持っているが、消費者の場偉大なデータを持っているマツキヨとしては同社と組む事で消費者が欲しがっているものをいち早く作成出来るというわけだ。

M&Aに大手との提携と精力的な動きを見せているが、ドラッグストア業界では大手イオンなど強力な対抗軸が構築されている。そういった中で各社は食品構成比を高める向きありこのマツキヨのように美容・ヘルスケア構成比を高める向きありと各々が舵を切っている。昨年末に当欄では「マツキヨは統合後の飛躍的な経営効率上昇で話題になった経緯がある」と書いていたが、今回もM&A成功例として語られるかどうか注目しておきたい。


ダイエット熱で価格は肥満化

先週末の日経紙夕刊グローバルウォッチでは「プロテイン人気、チーズに商機」と題し、世界的なプロテイン人気でチーズの生産が増えこれが世界市場に駆り立てている旨の記事があった。プロテインの原料になるホエイ(乳清)がチーズの製造過程で生まれるためにチーズの生産が増えていることが背景というが、チーズは兎も角このプロテイン人気で製品の値上がりが近年著しい。

昨日は帝国データバンク調査の9月の食料品値上げ動向を書いたが、大手の明治も今月から主力のザバスで価格は据え置きながら容量を減らす“ステルス値上げ”を実施する。此処に限らずプロテイン製品は他のブランドも含めて数年で約2倍近くに化けている感覚だが、もともと健康志向の高まりからジワジワ来ていたこれらの上昇のピッチに弾みがついたのはやはり糖尿病治療薬が世界的にダイエット目的で横行し始めたあたりか。

米金融大手ではこの手の“GLP―1受容体作動薬”などを含むインクレチン関連薬の世界市場規模が2030年までに2000億ドル(約32兆円)に達するとの予測を出しているが、これら常用者の栄養不足等の副作用対策でまだこの傾向が続くとすれば価格の一服は暫く望めず、以前より真摯にボディメイクに取り組んでいる向きにはとんだとばっちりだろうか。


タイムラグの波

総務省が先週に発表した8月の東京23区消費者物価指数は生鮮食品を除く総合が前年同月比1.8%の上昇となり、3か月連続で上げ幅を拡大させた。食料は3.9%上昇し全体を押し上げているが、我々の身近なモノでは夏野菜が高騰するなかこれらの“お供”ともいえるドレッシングも15.2%の上昇を見せており、この辺は帝国データバンクによる9月の価格改定動向でも見て取れる。

同社の調査によれば9月の飲食料品値上げは合計で4531品目となったが、単月で4000品目を超えるのは23年の10月以来のこと。食品分野別ではこのドレッシングはじめソースやマヨネーズなど「調味料」が1892品目で最多となり、それに冷凍食品などの加工食品が1818品目と続くが、これら購入頻度をなかなか落としにくいモノだけで9月全体の約8割を占めている。

先の“ナフサ不足”を受けて食品包装のフィルムやトレーなどの資材が急騰したが、それらの影響で価格変更に迫られた商品値上げのタイミングがちょうどこの期に集中しているというが、今後も食料品、日用品など幅広い品目で値上げの動きが本格化することが見込まれ、冒頭のコアCPIの上昇率は秋口に2%台、今年末にかけて3%台まで高まることが予想されている。

先に政府は食料品の消費税率を2年間の暫定措置で現在の8%から1%に引き下げる方針を閣議決定しているが、年間数兆円にも上る財源の確保には不透明感漂う。こうした懸念を背景とした構造的な円安圧力が続き斯様な暫定措置も“焼け石に水”にならぬかどうか、粛々と進む食品値上げと並行しこれらも注視しておく必要がある。


輸入ETF襲来?

さて世界の株式市場が落ち着きを取り戻している旨の日経紙の記事を見たが、背景には投機色の強いレバ型ETF取引の後退があるという。この手の選好物色に沸いた第一幕を経て慎重姿勢も強まったものと思われるが、ついこの間は複数の米運用会社がSECにキオクシアHDの連動レバ型ETFの上場承認を申請した旨の報もあった。

この個別株のETFに関しては上記の第一幕で先にお隣の韓国が上記のキオクシアHDよろしく同じ半導体関連のSKハイニックスやサムスン電子に連動する個別ETFが解禁されているが、なにせこの2銘柄だけでKOSPI(韓国総合株指数)構成比の約半分を占めていただけに、市場のボラティリティーが過度に増幅し当局が証拠金引き上げなどの規制強化に乗り出さざるを得ない状況に追い込まれた経緯がある。

そんなETFだが日本ではやはりというかこの手のETFはまだ解禁されてはいない。ましてやこの韓国の事例を鑑みればなおさらNOが突き付けられそうだが、一方で米ではETFの新規設定が過去最多であった昨年を上回るペースで相次いでおり、主要指数連動が既に大手アセット中心に飽和状態になってきている事もありこれらレバ型ETFが米国設定の約4分の1を占めるという。

上記の通り日本では解禁していないETFだが、アセット側が金融庁に届けを出せば外国投信扱いで提供出来る可能性はある。そういえばこれら個別ETFとは違う商品ながらかつては個別株オプションのようなカバードワラントが取引されていた時期もあったなと思い出すが、単一銘柄で枝葉を広げた商品が無くなってしまった現在、“逆輸入”の個別株型には一定の需要があると思われるだけに今後の展開には注視しておきたい。


甘すぎた需給見通し

昨日から日経紙総合面の迫真では「コメ・クライシス」と題し2026年のコメの民間在庫が過去最大となる243万トン、1年後には最大で16%増える見通しで在庫の適正水準180万~200万トンを大幅に超える等の記事があった。見出しの通り政府が備蓄米を過剰に放出し、放出当時から多くの識者が指摘し懸念されていた市場のバランスを著しく崩した結果が具現化したというところか。

そういった事もあってジャブジャブな昨年米だが、今日もクイーンズ伊勢丹に一寸立ち寄った際に特売?コーナーに名の知れたブランド米が2000円台の値札で出ており何とも急落したものだと思ったのだが、他の所でも既に新米が出回る数か月前から某倉庫型チェーンストア等では各コメどころのブランド米を含め、投げ売りではと思わるほど安価な値札が付いていた光景も見た。

更に新米の出回りが謳われる今の時期、直近で話題になっているのが今年の新米は昨年から1000円以上も安い2000円台が続出、去年のコメよりも下鞘になる価格の逆転現象も彼方此方で見られるなど値崩れの中にあって追い打ちをかけているということ。出元の集荷・コメ卸業者の厳しい事情は想像に難くないが、はたしてというか最近は各所でこうした業者の破綻の報も聞こえ始めた。

一方で高いコメの買い控え等で我慢を強いられてきた消費者は、足元を見てまだ損切り米は安くなるのではと手ぐすね態勢。来月早々に政府は備蓄米の買い戻し方針を諮る模様だが、需給見通しの誤りは各所に暗い影を落とす結果となった。

“需給は全ての材料に優先する”


財政懸念で輝き再び?

さて米財務省が償還期間10年以上の国債買い入れ消却“バイバック”を倍増するとの発表でドル指数は下落したが、8月に入ってからV字型回復を見せていた金は3か月ぶりの高値を示現、またプラチナも2か月半ぶりの高値を付けるなど貴金属はこれを機に一段高、また代表的な暗号資産であるビットコインも先週には8万ドルに肉薄するまで戻り週間上昇率は約2年半ぶりの大きさを記録した。

足元では日本も先週には長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが1996年10月以来、約30年ぶりの高水準となる2.945%にまで上昇しているが、財政悪化や先の見えない軍事衝突などを背景に米でも先週は30年債の利回りが約19年ぶりの水準にまで上昇、同様の環境を懸念する声が多くこのバイバックが拡大してゆくのか否か関心が向かう。

ソブリンリスクが意識される局面では無国籍通貨の続面を持つビットコインや金などが選好されるのが定番だが、久し振りに教科書通りのパターンというかマーケットでも貴金属系のETFなど先週末から商いを集めている。いずれにせよこれら今後の金融政策次第となってくるが、そういった意味でも今週末にかけてのジャクソンホール会議やFRB議長の発言には注目しておきたいところ。


個人株主誘致合戦

先週末の日経紙投資面では、3月期決算企業を対象に有価証券報告書に記載された単元株主数の「個人その他」を個人株主とみなして26年3月末時点の数と1年前からの変化を調べた結果が出ていた。かつてトヨタ自動車が株式分割を実施した後に株主数が急増した時の当時の記事を思い出すが、昨年の首位となったのは若年層を取り込み3割強の増加となったソフトバンクであった。

この首位のソフトバンクは24年に株式の10分割を実施しているが、2位のNTTも25分割と大幅分割を実施しており、3位の日本製鉄も昨年秋に株式の5分割を実施するなどこのランクインした一覧を見ると分割実施企業が多くみられる。これ以降も4位にランクインした株主数が2倍になった伊藤忠商事も年明けに株式の5分割をやっており、25年に株式の7分割を実施した9位のIHIも株主数が3倍になった模様だ。

分割と併せて各社優待も見直す向きも多い。上記3位の日本製鉄は分割と併せてこれまで株主から要望の多かった“工場見学会招待”の枠を拡大するなど見直しを進めている。8位にランクインしたサンリオも集計後ながら今年は株式の5分割を実施しているが、株主優待の長期保有制度を導入しており、若年層にはややハードルが高い株数ながら株主限定の“アクリルスタンド”や“株主限定のぬいぐるみな”どの提供を用意している。

以前に当欄では“ファン株主”を書いたことがあるが、こうしてみると分割しかり優待しかり総じて個人へのメッセージが熱い。一部外資系証券では株主優待導入企業の株価リターンがTOPIXを上回る旨のリポートも出ているが、斯様に外人勢も注目し始めるなかで株主優待導入企業の比率は7年ぶりに最高になっており今後も各社の“ファン株主”獲得の施策には注目しておきたい。


制度変更続くふるさと納税

さて、ふるさと納税仲介サイトから10月の制度変更に伴う返礼品への影響等の案内が来ていたが、先週末の日経紙総合面では「自治体、窮余の独自サイト」と題しこうした民間の仲介サイトが主流のなか、ふるさと納税の寄付を直接受け付ける自治体独自の“官製サイト”も広がりつつある旨の記事があった。背景には仲介サイトへの手数料問題や国による経費規制の強化があるといい、総務省は経費率の上限をこの秋から段階的に下げる。

2.5%ずつの下げで2029年には50%から40%になる見込みとなるが、既に民間の仲介サイトが顧客や知名度が定着した中ではたしてどの程度利用者を囲い混むことが出来るのかこの辺は甚だ不透明と言えようか。そんな中、直近では総務省が返礼品に海外ワインを地域のトンネルや海底で貯蔵・熟成したものを地場産品として扱う自治体の実態調査に乗り出す旨の報があった。

これで思い出したのが今から3年ほど前だったか、これまで総務省と何度となくバチバチやってきた大阪の泉佐野市の人気の返礼品だった「熟成肉」を総務省が返礼品として認めない旨の通達を出した件か。この海外やほかの都道府県のモノを自治体で独自の付加価値を付ける構図は今回のワインと全く同じで、たしかにこれが野放しにされていたらこれを奪われた?泉佐野市も黙っていないのは想像に難くないか。

こうしたふるさと納税を巡る総務省と自治体の“いたちごっこ” の裏で昨年の全国の寄付額は過去最高ながらその伸び率は鈍化したという。冒頭の経費率の引き下げは更なる返礼品のお得感を低下させるものだが、これでふるさと納税は転機を迎えてしまうかには疑問符か。富裕層にとってたったの実質2000円で高額返礼品もいただき放題と魅力的な面には変わりなく今後もいたちごっこは妙な均衡を保ちつつ継続されるだろうか。


再挑戦のルルレモン

本日はカナダ発のスポーツアパレル大手の「ルルレモン・アスレティカ」が原宿で日本初となる旗艦店をオープンしている。昨日はこれに先行し開業イベントを開いていたが、私の周りでも昔からここのウエアは人気でその愛用者は少なくない。SNSで俄かファンになった向きも多いと思うが、かつては20年以上も前に日本進出を果たしたものの撤退の憂き目に遭った経緯がある。

店舗の再挑戦など意気込みは十分なものの、株式市場の方では関税の影響なども影響し今年に入って4割超も下落するなど低迷している。こうした傾向は同社に限ったことではなく、スポーツアパレルで世界シェアトップを誇る「ナイキ」の株価も同様に安値低迷に甘んじて米&P500に対する相対的な弱さは約25年ぶりの水準にあるのが現状だ。ちなみにこの原宿の旗艦店はナイキの跡地に建つあたりが何か因縁を感じる。

そういった意味では最近「オニツカタイガー」の事業部を分社化した「アシックス」は今秋に入ってからも上場来高値を更新と破竹の勢いといえようが、スポーツアパレルの株価も長年追いかけているといろいろ業界模様が垣間見られてなかなか面白い。いずれにせよこの店舗、プロダクトのみならずアートやコミュニティを通じ同ブランドの価値観を体験出来る空間に仕上がっており再挑戦の試金石として興味深い。


キティも保有増

本日の日経紙総合面では「海外投信、日本買い急増」と題し投信情報会社モーニングスター・ジャパン協力調査で、グローバル株式を運用対象とする世界の投資信託のうちアクティブ型の動向では、2026年1~6月の保有純増額が289億ドル(約4兆5000億円)と半期で過去最大規模になった旨の記事があった。

個別では個人でも物色人気が盛り上がったAI・半導体関連株で保有の増加が目立ったが、このAI・半導体関連株への物色偏重でダラダラと売られていた中でもしっかり積み増されているものがこちらでも明らかにされている。例えばサンリオ、好業績に分割発表でストップ高の後の続伸で高値から半値にまで落ち込んだ後のV字戻りが期待されたが、三日天下で急騰前水準をも割り込んだ。

ちょうどこの時期にはIP関連のETFも設定された時期でもあり、強固なIPを持ち好業績なうえにキャッシュリッチまで三拍子揃った同社は魅力的な存在であったものの、それ以上に意味不明なまま年初来安値を更新する様が気持ち悪く映ったものであったが、やはりというかそういった不気味なところでしっかりと腰が据わった買いが入っていたのがわかる。

同頁で載っていた保有株増加銘柄の中にはこのサンリオ以外でもそうした軌跡を辿った銘柄が散見されるが、こうした海外長期マネーの矛先はこの手の伸びしろのある銘柄を常に虎視眈々と狙っている。そういった意味でも今後振るいに遭う局面においては場味に惑わされない胆力も必要になってくるか。


Win-Winいつまで

さて、当欄では先月に株式市場で信用取引の買いがかつてないほど活況を呈し過去最大水準に膨らんでいると書いた事があったが、先週の日経紙総合面では「個人の株信用取引123兆円」と題し、7月の信用取引の売りと買いの合計額が123兆円と半年で2倍になり、現金取引を含む個人の売買代金に占める信用の比率は同月に83%と最高になった旨の記事があった。

以前に当欄でキオクシアHD株をマル信枠で目一杯張っている向きをチャレンジャーと称したことがあったが、このキオクシアHDの買い残高は今月上旬段階で1323万株、実に時価で6000億円以上にのぼっている。マル信はコストに金利が乗っている分、通常は現物よりも利食いを早めに入れる傾向があり信用評価損益率はマイナス圏で推移することが多いが、6月はプラス圏に浮上したというから異例だ。

それだけ上手く回転が効いたということだろうが、波に乗れた投資家だけでなくこれら信用の活況は胴元の証券各社にも収益をもたらしている。今月アタマに出揃った大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には信用取引の金融収支が貢献し各社これが大幅増加、収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。

かつて手数料の引き下げ競争で遂にはゼロまで行き着き“不毛な戦い”ともいわれた時期があったが、当時はこの活況を誰が想像しただろうか?とはいえ需給面では過度な膨張はボラティリティーにも響くリスクも孕んでいるがこの辺は相場次第か。今後は米市場の23時間取引対応も年末から始まるが、いずれにせよ各社の更なる収益を睨んだ舵取りが注目されるところだ。


GPIFと政治

一昨日の日経紙投資面・一目均衡では「GPIF、予期された政治介入」と題し、7月の財務大臣の「GPIFをはじめとする年金基金により日本の金融資産にさらなる投資をしていただく方向で後押ししたい」との発言などから、GPIFの比率変更がある場面では世間が年金受給者ではなく政治のための変更だと受け止めかねず、はたして「自主性や創意工夫」を発揮できるのかとした旨の記事があった。

この辺に絡んでは先月も「官製相場色」として当欄で一度取り上げているが、うっかりなのか確信なのかGPIFを引用?した事でいまだ思惑が交錯している。現在のGPIFの配分比率は国内株式・外国株式・国内債券・外国債券で25%ずつだが、プラスマイナス6%までは許容範囲とされている。6%とはいえ約300兆円を誇る運用資産だけに1%変更だけでも約3兆円が動くことになるだけにそのインパクトは大きい。

実際にアベノミクス時代には債券から株式比率を増やしたことで円安・株高構図を創造した“実績”がある。冒頭の「自主性」という面ではその運用方針に合致すればその配分は独自に決められるが、政治利用に世間が敏感なのは前回も一寸だけ書いたようにバブル崩壊後にこのGPIFの前進を使って所謂“PKO”で株価を買い支えた苦い記憶があるからにほかならない。

ただ現在のポートフォリオは昨年の4月に始まったばかりで次のプロセスまでは時間がかなりあるが、そもそも論でGPIFのポートフォリオはあくまで年金積立金を増やすことが目的なわけで経済政策の援護射撃が目的ではない。先週末に公表された今年6月末の構成比率はほぼ基本ポートフォリオに沿った結果であったが、秋に公表される第2Qの資産構成にも注目しつつ今後も各所での官製相場を匂わす発言等には注意を払っておきたい。