GPIFと政治

一昨日の日経紙投資面・一目均衡では「GPIF、予期された政治介入」と題し、7月の財務大臣の「GPIFをはじめとする年金基金により日本の金融資産にさらなる投資をしていただく方向で後押ししたい」との発言などから、GPIFの比率変更がある場面では世間が年金受給者ではなく政治のための変更だと受け止めかねず、はたして「自主性や創意工夫」を発揮できるのかとした旨の記事があった。

この辺に絡んでは先月も「官製相場色」として当欄で一度取り上げているが、うっかりなのか確信なのかGPIFを引用?した事でいまだ思惑が交錯している。現在のGPIFの配分比率は国内株式・外国株式・国内債券・外国債券で25%ずつだが、プラスマイナス6%までは許容範囲とされている。6%とはいえ約300兆円を誇る運用資産だけに1%変更だけでも約3兆円が動くことになるだけにそのインパクトは大きい。

実際にアベノミクス時代には債券から株式比率を増やしたことで円安・株高構図を創造した“実績”がある。冒頭の「自主性」という面ではその運用方針に合致すればその配分は独自に決められるが、政治利用に世間が敏感なのは前回も一寸だけ書いたようにバブル崩壊後にこのGPIFの前進を使って所謂“PKO”で株価を買い支えた苦い記憶があるからにほかならない。

ただ現在のポートフォリオは昨年の4月に始まったばかりで次のプロセスまでは時間がかなりあるが、そもそも論でGPIFのポートフォリオはあくまで年金積立金を増やすことが目的なわけで経済政策の援護射撃が目的ではない。先週末に公表された今年6月末の構成比率はほぼ基本ポートフォリオに沿った結果であったが、秋に公表される第2Qの資産構成にも注目しつつ今後も各所での官製相場を匂わす発言等には注意を払っておきたい。


AIインフレで跛行色の非鉄

さて日々情報が交錯するイラン情勢を睨み原油価格の乱高下も常態化してきたが、このコモディティーでは先週末の日経紙グローバル市場面で「銅、最高値迫る」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が1トン14369ドルまで上昇し、1月に記録した最高値に肉薄した旨の記事もあった。

足元でデータセンターなどAIインフラに向けた需要が伸びるなか、産出国であるコンゴが銅精鉱の輸出を禁止する報が伝わり供給懸念から買いが広がっており同じ非鉄のアルミ等が低迷するなか対照的な動きをしている。そんな背景もありAI投資コストによるインフレが警戒されているが、昨年前半などもこの銅価格が上昇するなかこれらが懸念されAI関連株が軒並み調整したのが記憶に新しい。

日曜日の日経紙NewsForecastで“AIインフレ”にも注目とあったが、上記のデータセンター建設や先端半導体需給逼迫でインフレ圧力も意識されてきている。先月のFOMCでは政策金利の据え置きが決まったが、FRB内ではインフレ圧力を睨んで金融引き締め論も出てきており日銀が陥っているようなビハインド・ザ・カーブを警戒する声が高まっているのは想像に難くない。

そういったところで先ずは今晩に発表される米7月CPI(消費者物価指数)や13日の米PPI(生産者物価指数)に関心が向かう。市場予測からの乖離具合で“タカ”になるのか?はたまた“ハト”で落ち着くのか?利上げ折り込みが加速するとなると、一旦は決算を受けて“コツン”とした感のあるテック関連も再度場味が変わってくるだけに先ずは上記指標の発表に注目しておきたい。


単位引き下げ再要請

さて皆が注目したキオクシアHDの2026年7~9月期の連結純利益だが、先週の発表は事前の市場予想平均こそ下回ったものの前年同期比31倍になる見通しとなり、1株を3株にする株式分割も併せて発表している。しかしながらこの3分割でも最低単元を購入するのに今日の終値でも480万円以上が必要と東京証券取引所が望ましいとする「50万円未満」にはほど遠い。

当欄ではかつてNTTの25分割も取り上げたが、同社など分割前でも最低単元を買うのに東証の望むところの50万円以下であったものだが、ふたを開ければ驚きの25分割をやってのけ最低単元購入は数万円から可能になった。そう考えるとキオクシアHD株もそうだが、最低単元買うのに1000万円近くの資金が必要になる値嵩株の分割は他社も控えめなものが多い感もある。

とはいえこのキオクシアHD株、一時は上場来高値ベースで、最低単元買うのにも実に1100万以上もの資金が必要だったことを考えれば、曲がりなりにも購入のハードルは下がったのか?そういえばこのキオクシアHDの分割発表の数日前には、東証が所謂「根嵩株」と呼ばれる投資単位の大きい上場企業約270社に向けて株式分割の再要請を通知した旨が報じられている。

この投資単位引き下げ努力?は今から4年ほど前に東証が分割要請したものだが、それ以降は確かに分割が急増し昨年の分割発表件数も前年度比で36%増加し2025年度末の上場企業平均の最低投資額は21万円と20年前の半分以下になっている。とはいえ近年の株高効果で分割してなお分割前水準に上昇してくる企業も珍しくなく、個人投資家が期待するという10万円以下水準のハードルも高くなってきているだけに今後の各社動向が注目されるところだ。


購買意欲を刺激 

本日の日経紙投資面では、日清食品ホールディングスの2026年4~6月期の連結決算で国内外での値上げが浸透し純利益が前年同期比18%増の132億円だった旨が出ていた。国内では「カップヌードル」等が販売を伸ばした旨が出ていたが、同社のカップヌードルといえばCMもなかなかのバズり具合で今年はシーフードヌードルのそれが某美容クリニックのオマージュ?でなかなか笑える。

このシーフードヌードルは昨年も同じく“霊長類最強”と謳われたレスリングの吉田沙保里氏が某バラエティー番組で話題になった連続風船割りをオマージュしたものが話題になっていたが、こうなると次は何を出してくのか待ち遠しい。またこのカップヌードルでは数年温めていた製法を確立し直近で「冷やし」も販売に踏み切るなど攻めた戦略が奏功している。

ところで食品系で話題を呼んだモノといえば、今年は他にナフサ不足を逆手に取ってカルビーが白黒パッケージにしたポテトチップスを売り出した件もあったが、こちらは話題を集めた当初こそ前週比45%増だったものがその後は4週連続で落ち込み、ピークからの減少幅は直近1年で2番目となったという。価格転嫁に苦闘する食品業界だが、レーティングも明暗で今後も各社の戦略には注視してゆきたい。


ブランディングとPBR

本日の日経平均は202.63円高と反発となったが、個別では昨日に市場予想平均を上回る連結純利益と27年3月期通期の業績予想も上方修正しストップ高比例配分となったカシオ計算機は本日も続伸し年初来高値を更新していた。これに限らず“時計株”は好調でシチズン時計は先月末に上場来高値を更新し、またセイコーGも本日は年初来高値を更新してきている。

このセイコーGだが、先週末の日経紙投資面には「セイコーG、ヴィトン並み」と題し、同社のPBRが3倍を超えて欧州高級ブランドの仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンに追い付いた旨が出ていた。このPBRは本日の終値では既に4倍をも超えてきているが、ブランド戦略が奏功し高付加価値な腕時計の販売を世界で伸ばし高級ブランド企業に変貌してきたという。

確かに「GS」も近年では大きく成長し「クレドール」も一昔前とは価格帯が随分と変わったなと感じるが、日本企業のブランディングに関してはもう10年以上も前に当欄で「ブランド構築の重要性」と題して書いたことがあり、当時の時計市場の金額シェアは国内勢の23%に対してスイスなどは66%と史上を席巻していたといっても過言ではなかった。

世界最大級の時計見本市である「バーゼルワールド」が高額な出展料を背景に出店企業数が半減する中でも、ブランドイメージを浸透させる必要性からGSはブース設置を敢行してきたものだが、このバーゼルワールドは事実上消滅してしまったものの当時の地道な努力が実りつつあるといえ、今後も株価指標と共に度の動向には注視しておこう。


消費税減税が値上げトリガー?

周知のように先週末に首相は現在8%となっている食料品の消費税率を、来年の4月から2年間の限定措置で1%に引き下げる意向を表明しているが、食料品といえば今月も値上げ喧しく帝国データバンクによれば主要食品メーカーにおける今月の値上げは2311品目にのぼる。値上げ品目の2000品目超えは先月に続いて2か月連続となり、前年同期比では80%増加となる模様。

依然として中東情勢の緊迫化でホルムズ海峡混乱を背景としたナフサなど石油製品高騰によるトレーやフィルムなどの資材費上昇などが影響しているが、今月の最多は加工食品の1419品目で加工肉大手の日本ハムやプリマハム、それに缶詰大手の極洋やはごろもフーズなどが1日出荷分や納品分から値上げする。

また円安による輸入コスト高も恒常的になっているが、斯様に二重三重の値上げ圧力がかかっているなか、この度の食料品消費税減税という買い控えを防ぎ易いタイミングに歩調を合せ、企業側の中には値上げする動きも想像に難くないか。そういった意味でもはたして狙い通りに物価上昇に即効性のある対策となったのかどうか、その辺の行方も見ておく必要があるか。

しかしこの消費税減税、自民党内でも賛否両論となっている模様だが財源の確保は特例公債(赤字国債)に頼ることなくとはしているものの現状で詳細は不明、今後もこの辺の不透明が拭えないと金融市場が判断すれば、捨て身の介入で150円台に戻った円も再度円安の憂き目に遭い金利上昇と併せこれが物価高となる可能性も秘めているだけにこの辺の政府発信にも注視しておきたい。


地銀再編の波

さて、先週末には愛媛銀行と愛媛県地盤で伊予銀行を傘下に置くいよぎんホールディングスが、経営統合で基本合意した旨の発表があった。これによりいよぎんHDは2027年4月をめどに愛媛銀行を完全子会社化するということだが、2020年に可決・成立した地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする2030年までの特例法の適用を申請する見通しという。

両行の経営統合予定は上記の通り2027年4月めどというが、地銀関係ではこの2027年4月には群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループが経営統合を予定しているほか、千葉銀行と千葉興業銀行の経営統合、それからあいちフィナンシャルグループと三十三フィナンシャルグループも経営統合で基本合意している。

冒頭のいよぎんHDの背景には政府が重点分野に位置付ける船舶関連の旺盛な資金需要があるというが、両行の経営統合後の総資産は12兆円規模となり愛媛県内で7割超のメインバンクシェアを持つ地銀グループが誕生する。この規模は上記の統合予定の地銀勢の中では、あいちフィナンシャルグループと三十三フィナンシャルグループの統合後総資産11兆7520億円とほぼ同等となるか。

政府が重点分野に位置付ける経済安保強化の動きでは、いよぎんのような造船関連だけでなく今後活発化してくるであろうところのAIや半導体産業関連にも新たな資金需要が生まれてくるのは想像に難くない。加えて地銀は預貸率の上昇という課題も浮上してきている事で、これに絡む預金獲得など一層の基盤強化の動きからの次なる再編劇の動きに注目しておきたい。


モメンタムが振り回す

令和8年熊本地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。


本日の日経平均は昨日の2566.27円安に続く大幅続落となり5月中旬以来、約2か月ぶりの安値となった。これでも本日の安値から戻した感はあるものの、ザラバではお隣の韓国市場でKOSPIにサーキットブレーカーが発動される場面があり、こうした局面での日経平均の下げ幅は1900円を超えあわや6万円台の大台割れ寸前まで急落する場面があった。

昨日の日経紙でも「日中2%超、3か月連続」として、日中変動率が今月は平均2.5%と先月の2.6%に続き変動率が高い状態が続いている旨の記事があったが、これらの背景にはやはりAI・半導体関連株の寄与が高いが、筆頭ともいえるキオクシアHDなどついこの間の上場来高値から7割弱も暴落し先の決算発表後の急騰分が“往って来い”となっている。

しかしこれら構造的な変化も大きいだろう。上記の韓国市場では単一銘柄のレバレッジやインバース型のETFが新たに誕生、日本市場でも昨今ではマル信買いがかつてないほど活況を呈し過去最大水準に膨らんでいるのが現状で、“落ちてくるナイフ”を掴みにゆく向きが急増した証左でもあるか。

そんなこんなで曲りなり?にも先月に国内時価総額で1位に躍り出たばかりのキオクシアHD株だったが、本日の終値でははや9位に転落している。同社は明後日に4~6期決算発表を控えているがさてこれで株価がどうなるか?この内容には耳目が集中するのは想像に難くないが、なんともヒリつく局面の先をまずは見てみたい。


形式から実質へ一歩

昨日の日経紙社説では「企業は統治指針を自ら生かして成長を」として、金融庁と東京証券取引所によるコーポレートガバナンス・コードの5年ぶりの改定が書かれていた。今回の改定で目に付くのは先ず原則そのものの数が大きく減らされていることで、これまでは基本やら補充やらと何層?もの構造で80以上もあったものが、今回の改定では半分以下の30まで大きく減らされていることか。

より形式から実質を問うようにしたかっこうだが、例えば5月にも当欄で一度書いたように現預金などを含めた経営資源の配分による投資促進など取締役会に検証を求める項目など企業に積みあがった現預金の有効活用などこのインフレ下において成長投資もタイムリーな突っ込んだ内容になっている。また取締役会といえばこれまた守りから攻めへ進んだ構図になっている。

この辺は社外取締役が積極的に議題に関われるようにするなど取締役会の強化を謳っているが、これで所謂“お飾り”からの脱却も少し促進されようかというもの。こうした改定を重ねるごとに企業側と投資家のズレも埋まってくるか否かだが、有報開示などまだハードルの高い部分の項目などもあるだけにそうした部分の対話も今後の課題だろうか。


猛暑でナイトタイムシフト

さて、先週末の日経紙夕刊の一面には「涼しく運動 楽しまナイト」と題し、連日の猛暑で熱中症の危険が増すなか各種ナイトスポーツを楽しむ旨の記事があった。ナイトスポーツといえば昨日は3回目となる有明の東京ビッグサイト周辺道路を封鎖しての「フォーミュラE・東京E-Prix」が開催されたが、今年のこれは日本初のナイトレースでの開催となった。

またナイトレジャーといえば今月は夏恒例のナイトプールが続々と始まっており、東京プリンスホテルのCanCamナイトプールはじめ、業界で初めてナイトプールを展開したニューオータニ系は深夜帯のミッドナイトプールを投入しグループ初となる空調を備えた屋内シートも新設、プールの見える室内に日差しや暑さを避けながら過ごせるシート席を設ける。

街では三菱地所が丸の内で「MARUNOUCHI SUMMER FEST」を展開、夕方から座って楽しめるボードゲーム遊具を設置するなど限定スペースを設け、夏の夜に合うノンアルコールカクテルも提供されている。三菱地所は日が落ちた後に夏の夜を楽しめる仕掛けを作ることで周辺店舗へ回遊させる狙いで、丸の内エリア全体に経済効果を波及させたいという。

他にも水族館やサファリパークなど営業時間の延長を試みている向きもあるが、最近出来た商業施設なども夜に観劇が出来るスペースを設けるなどナイトタイムエコノミーの活性化を図る意図での構造となっている。インバウンドのナイトタイムエコノミーの国内市場規模も9兆円に迫る規模という試算もあり、この40年ぶりの円安のおり各所でこの伸びしろに賭ける動きがまだ出てきそうだ。


土用の丑2026

さて今週末の「土用の丑の日」に向けて街の店から大型スーパーまでウナギ商戦が盛り上がっているが、4月の“春の丑の日”でも書いたように今年の場合は昨年豊漁だった稚魚が成長して市場に出回り国産ウナギの月別卸売り平均価格は昨年の4月が5307円であったものが、今年4月には2983円と4割も安くなっている事などを背景に消費者には優しい価格が彼方此方で見られる。

とはいってもこのウナギ、国内のウナギ供給の約7割を輸入に頼っている状況で漁獲量もやはり天然資源に依存しているだけにその安定感は安穏としたものではない。そういった事で養殖など官民挙げて精力的に取り組んでいるが、水産庁は卵から育てた世界初となる完全養殖のウナギの試験的一般販売も始めてお5月には三越日本橋などでこの試験販売を開始している。

ただその価格は冒頭のウナギなどと比較するに約2.5倍となかなかの設定。では生産コストはといえばこの稚魚1尾あたりの生産コストは現在のところ水槽の自動給餌器等の工夫もあり約1800円だが、10年前にはこれが実に40000円であったから飛躍的に下がっているが、それでもなお天然モノの約3倍にもある。

この辺も今後は現在の半分以下までコストダウンを図りたいとの努力目標らしいが、更なる工夫などを図り完全養殖ウナギが一般に手の届き易い価格に収れんしてゆくのかどうか、そんな想いも馳せながらとりあえず“お得な価格”で食べられる今年の美味しいウナギに感謝しながら舌鼓を打ちたい。


崩れる“時間の壁”

先週末の日経紙一面には「米株23時間取引、12月開始」と題し、NYSE(ニューヨーク証券取引所)にナスダックなど米市場に上場する株式を対象とした23時間取引が12月6日から始まる旨の記事が載っていた。一昨年にNYSEの通常取引時間延長計画を書いたことがあったが、この時間外取引延長で祝日を除く日曜から金曜にかけ午後9時から翌日午後8時までの取引も提供することとなる。

先に世紀のイベントといわれたスペースXのIPOがあったが、これまで米株に手を出したことがなかった多くの投資家も挙ってこの知名度抜群のIPOに参加するなど米国株式に関心を持つ向きが急増している。そうした中でのタイミングでの発表となったが、同時になんといってもポイントはこれで東証の前後場通じての取引時間中に売買が可能になるという点か。

これらが奏功してアジア圏からの米市場への投資が今後増加してくるとなると、IPOを考える企業の中にはより一層米への上場に関心を持つ向きも出てくるのは想像に難くないか。この辺に絡んでは今年の春先にスマートフォン決済大手のPayPayが米ナスダック市場に新規上場しているが、実際に9億ドル近くの資金調達に成功しており今回の件と併せて今後米市場に傾斜する動きが出てくるのかどうかこの辺も注視しておきたい。