ポイントバーゲンセール化

周知のようにポイントを付与する仲介サイトを通じた自治体のふるさと納税の寄付募集が来月から禁止となることで、通常では年末に見られ光景である駆け込みが増加してきた。ポータルサイト各社もこれを最後の商機とみて、先月辺りから相次いでキャンペーンやPRイベントを打ち出すなどしており、残すところわずかとなった今月に入っても競争が激化している。

ザッと挙げても先月は「JRE MALL」が期間限定でJRE POINTを最大12.5%還元キャンペーンを展開、「ふるなび」はPayPay・Amazon・楽天・dポイント等と交換可能な(ふるなびコイン)を最大100%還元、今月は明日から月末まではふるなびWEEKで通常より寄付金額が安い返礼品がある。また「Yahoo!ふるさと納税」は先月に続く第2弾として抽選で付与されるポイントが今月末まで最大80%に拡大され、「さとふる」は今月末まで抽選で最大1000%付与(上限10万P)を展開している。

斯様な各社のキャンペーン効果でふるさと納税の比較サイトが今月アタマに発表した調査では、先月8月の寄付件数は前年同月比で1.35倍、寄付単価も1.37倍に伸びているという。ポイント廃止を控えての駆け込み需要が数字に表れた格好だが、今月も引き続き各社のキャンペーンやPR効果もあってこの先月の数字を更に上回る寄付件数が見込まれる可能性が高いか。

この数字的なものでは総務省が7月に発表した昨年のふるさと納税による寄付総額では、前年に続いて1兆円の大台を超えて5年連続でまたも過去最高を塗り替えている。またふるさと納税を利用した人数も1080万人とこちらも過去最高となっている。今回の駆け込み狂騒曲が終わった後の業界勢力図に変化は出てくるのか、また今後自治体に及ぼす影響は如何ほどになるかこの辺が興味深い。


基準地価2025

この時期恒例で日経紙第二部では今年の基準地価特集が折り込まれている。というわけで国土交通省がまとめた今年7月1日の土地取引の目安となる基準地価は、全国平均がプラス1.5%と昨年に続き上昇しこれで4年連続の上昇となった。用途別では住宅地がプラス1.0%、商業地がプラス2.8%といずれもバブル崩壊で下落した1991年以降で最大の上昇率となっている。

商業地上昇率トップでは昨年は台湾の半導体メーカーTSMCの工場進出で熊本県大津町であったが、今年も半導体絡みで次世代半導体の国産化を目指すラピダスが進出した北海道の千歳市がプラス31.4%でトップに躍り出た。同じく北海道では富良野市が住宅地の上昇率トップとなったが、こちらはインバウンド向けの別荘など住宅需要の増大が要因となっている。ちなみに全国最高地価地点は不動の「明治屋銀座ビル」となり、これで20年連続である。

都内の住宅地も港区赤坂1丁目では昨年比で15.6%上昇したが、インバウンド増加も密な関係で今年上半期の海外投資家による不動産への投資額は05年以降で最大となっている模様だ。円安や金利水準を背景とした“お買い得”感からその勢いは衰える気配を見せていないが、同じ港区の三田ガーデンヒルズなど外国勢力が暗躍し現在の価格は一昨年の分譲価格からはや約2倍に化けるなどしており、過度な投機には規制も検討すべき時に来ているのかもしれない。


注目案件の続々上場

当欄では6月に米IPO復調の旨を書いていたが、そこで4月に関税政策の影響で上場を延期し今後注目と書いていたBNPL(後払い決済)大手の「クラーナ」が先週10日にはれて上場を果たした。注目の初値は52ドルで公開価格の28ドルを30%上回りその後も一時57ドル超えまで上昇する好スタートとなったが、その調達額は13億ドルを超え夏に上場したサークルやフィグマに続く大型案件となった。

翌日11日には三菱UFJFGが2020年から出資している企業でもあるブロックチェーンを活用した融資プラットフォームを提供する「フィギュア・テクノロジーズ」がナスダックに上場しており、更に12日には暗号資産プラットフォームを提供するジェミニ・スペース・ステーションもナスダックに上場している。こちらの方は公開価格28ドルに対して37.01ドルで初値を付けその後は45.89ドルまで急騰するなどボラタイルな展開になった。

米IPOが急増した年といえばSPACを上場させ後に事業会社を買収するというSPAC型が流行った2021年が記憶に新しいが、今年の米IPOによる調達金額は既に昨年に匹敵する水準になっており今年はこの2021年以来で最高の年になるともいわれている。ただその盛り上がりを見せたSPAC型は、当時の当欄でも取り上げ“白紙小切手?”と書いたように高リスクが伴い株主に損失を齎した例が数多あった。

そう見ると今年のそれはその調達規模だけにとどまらず収益性も高い成長戦略がしっかりしている企業が目立つ印象だ。先週のIPO組のようにフィンテックものは米の関税政策の影響を受けにくいうえに、トランプ政権の金融市場における一部規制緩和も追い風になるとも思われるだけに今後もこれらの動向には注目しておきたい。


東証要請にファンドの影

先週末の日経紙夕刊では日経ヴェリタスから「マイクロ株に隠れた好機」と題し、日本の上場会社4000社のうち時価総額が300億円に満たないマイクロ株が6割を占める旨など書いた記事があったが、マイクロといえば次期東証改革ではグロース市場に適用する時価総額基準の厳格化があり、上場から5年経ってなお時価総額が100億円未満だった場合は上場廃止にする方針としている。

今年の3月末時点でこれに該当する企業は400社以上にものぼるが、中には株価2桁台からビットコイン事業に舵を切ってその株価が四桁台にまで大化けしたメタプラネットのような銘柄が出てきた事でこの手の財務活動が注目されている動きも見られるという。同社の場合は第三者割当で新株予約権をファンドに発行、株価上場時に新株を取得し市場売却した資金を払い込まれた企業がこれを以て再度ビットコインを購入する構図だ。

ちなみにこのケイマン諸島籍のファンドはエボリューション・ファイナンシャル・グループだが、商品先物業界とも縁があり代表的な案件としてはかつてジャスダックに上場していたあの「エース交易」を2013年末に傘下に収めている。その辺は兎も角も他のポストでも女性アパレル、ANAPホールディングスもビットコイン現物による第三者割当増資を国内初の事例として実施するなどファンド絡みの案件が目立つ。

新興勢が上場後に成長を着実に積み重ねてゆくとしても上記の東証が要請する基準に5年という期間では到底時間が足りないケースの場合、業種を広げてM&Aなどで時価総額を上げてゆこうという所謂ロールアップの動きの顕著化も一部予想されているが、ファイナンスを駆使したファンドが絡む財務戦略も出てきた事で今後も基準未満の銘柄群の動きが注目されるか。


爆益ETFの行方

本日の日経紙投資面には「日銀、ETF売却へ前進か」と題し、先週の日銀副総裁の公演で日銀が保有するETF(上場投資信託)の処分について触れていたことでこのETFの処分時期が近付いたとの思惑が書かれていた。これまではこの件に関して「時間をかけて検討する」との答えであったが、今回の講演ではこうした部分が無かった事でより一層思惑が募ったようだ。

7月に日銀絡みのETFについて書いた時にはその簿価で37兆円、3月末時点では時価にして70兆円と書いていたが、その時価もその後の株価上昇もあって先月末では初めて80兆円を超えている。上記の通りその簿価から見て含み益は40兆円以上と倍化しているわけだが、同紙では現在進めている重要な作業であるところの利上げが一段落した後に処分を始める観測が書かれている。

その扱いに関してはこれまでも野党の一部から子育て支援案を絡めたものや別機関への移管・分離案から個人への譲渡案など数多の案が出ているが、いずれにせよ先に日銀は金融システム安定策の一環として銀行から買い取ってきた2兆4000億円あまりの株式の2016年からの継続売却を完了させており、嫌でも次の一手に関心が向かうところ。


独自路線を評価

本日の日経紙投資面には東証プライム市場の西武ホールディングスが不動産を核とした成長戦略に期待が向けられ上場来高値を更新した旨が出ていたが、本日も日経平均が反落するなか同社株は続伸し連日で上場来高値を更新してきている。今年は虎の子の「東京ガーデンテラス紀尾井町」を米ファンドに売却しているが、株の方も上手い具合?に空売りを誘う格好になっているだけにこれも上げの原動力となっている格好か。

バブル世代には思い出深いあの“赤プリ”が鎮座していたところもすっかり様変わりして久しいが、再開発などでその価値を上げてイグジットするパターンでは此処は超ド級クラスの案件として話題になったものだ。鉄道業界も少子高齢化の煽りをうけ輸送人員減少などで先細りが懸念されるなか、私鉄大手各々の戦略が注目されるところだが同社の場合いち早く独自路線に舵を切った格好だ。

“西武”といえば上記とは関係ないが、ヨドバシが買収した西武百貨店の方も先に1700㎡のフロアに47ブランドを擁し国内最大の“美のテーマパーク”を誕生させている。面積は改装前の1.4倍、売上目標も同率で増やすべく美容部員も1.6倍に増やし客の買い物をサポートする。コスメ市場もコロナ禍でEC化が広がったが、5類移行でコト消費型のニーズが強くなっているだけにこちらも戦略が奏功するか見ておきたい。


デジャヴ感

衆院選、都議選、そして先の参院選と歴史的な3つの大敗でもなおこれまで続投の姿勢を崩さなかった石破首相だが、本日に予定されていた自民党総裁選を前倒しするかを判断する手続きギリギリのタイミングで自民党総裁を辞するとの表明をした。ちなみに次の総裁選にも出馬しない考えで、分断を避けるべく後進に道を譲る決断と聞こえはいいが政治空白が長引いた感は否めない。

一方でマーケットの方は自民党総裁選を巡る混乱がひとまず収束に向かった事や、次期政権が野党の協力を得る為に大規模な経済対策を打ち出すとの観測も高まり一気にリスクオンの流れから3日大幅続伸となった。個別でも双璧と言える次期首相候補で防衛力強化を訴える高市氏関連では三菱重工やIHIが大幅高、もう一人の小泉氏関連では同氏地盤で百貨店を展開するさいか屋が一時ストップ高まで買われる大幅高となっていた。

そういえば今回首相の説得に動いたのが菅副総裁小泉農相であったが、菅氏の時もやはり説得されての一転退陣表明だったなと。この時も日経平均は大幅に6日続伸し、TOPIXに至っては約31年ぶりの高値となったのが記憶に新しい。今回と併せてデジャヴ感だが、財政拡張への不安も一部出て超長期債は3日に付けた最高水準に並ぶなどしており後任候補の政策如何でまたこの辺にも注意が必要になろうか。


NISA変容期

先週に金融庁は2026年度の税制改正や組織再編を含む機構・定員に関する要望案を自民党部会などで説明しているが、NISA拡充が柱となり対象年齢を18歳未満の子どもにも拡充したい方針であることが報じられている。NISAに関してはこれまでも投資額の上限が引き上げられるなどしてきたが、子育て支援の一環としてこの年齢制限の撤廃などを提言している。

この辺はこれまで年80万枠で19歳以下の子どもを持つ親向けにジュニアNISAなるものがあったが、これは一昨年に撤廃されている。少子高齢化に伴う資産形成ニーズの多様化もあり形を変えての復活なるかというところだが、NISA創設当初の縛りから比べるに本当に緩く?なってきた感がある。このまま拡充の枝葉でそれこそ特定や一般との損益通算までやってくれるとありがたいがさすがにそれは無理か。

しかし新NISAになりそれなりに参入層の幅も出て来たのかその買い付け銘柄も当初の高配当一辺倒から最近ではベスト5に当欄でも取り上げたビットコインに賭ける東証スタンダード市場のメタプラネット株もランクインしている。ビットコイン高騰に歩調を合わせて取った6月の高値からはや今週アタマには半値以下にまで下落しているが、過去には破綻し上場廃止になった銘柄まで買い付け上位に入っていたこともある。

ひと昔前のように株式市場では派手な仕手戦は無くなったものの、SNSの発達で斯様なミーム株に人気が集中する現象も出て来た近年ならではといえるが、同じくSNSを駆使しNISAをネタにした投資詐欺も横行している折、制度自体が形骸化しないでしっかりとした実効性を持たせるようにするためにはやはり基本を押さえた金融リテラシーは最低限不可欠といえるか。


グミの日

さて本日9月3日は“グミの日”とか。グミといえばその市場が近年急拡大していると聞き及んでいるが既に販売金額は21年にはガムを抜いている。思えばガムを抜いたこの年はちょうど東京オリンピックで選手村のメインダイニングで餃子と並んでこのグミが大人気と彼方此方で取り上げられていたのを思い出すが、そういった背景もあってインバウンドの土産ニーズも高まっての数字か。

また今年上半期ではスーパーやコンビニなどのグミの販売金額が初めて飴の販売額を抜いている模様といい、昨年の市場規模は前年比17%増加の1138億円と初めて1000億円を突破し17年比でほぼ2倍になっているという。今年上半期でも665億円と昨年554億円だった上半期の数字を抜いてきており過去最高更新が既に既定路線になっている。主流の系統も今後は変化するだろうが世の嗜好の変化を感じる。

ところでグミといえば中には大麻由来成分のCBD等含有しているモノも一部流通しているが、直近ではサントリーHD会長が購入したCBD入りサプリに関して警察当局の捜査が入ったとして同氏が会長職を辞任した報が入っている。同氏はこのほか経団連と並んで経済三団体の一つ「経済同友会」の代表幹事も務めているだけに何ともショッキングなニュースだが、何が出てくるか分からない世の中になったものだ。


初の18000円台

さて先に発表されたPCE(米個人消費支出)が市場の予想通りとなる一方、景況感指数が予想を下回った事でFRBの今月の利下げ観測が一段と強まり金利を生まない金に矛先が向いその価格がまたしても史上最高値を更新している。NYのCOMEXの先物は終値で初めて3,500ドルの大台を超え3週間ぶりに最高値を更新、国内でも小売価格の指標として昨日には初めて節目の1g18,000円の大台を超えて来た。

もう一つ、注目されているのはトランプ大統領によるFRB理事の一人の解任を巡る混乱か。既に法廷闘争に発展しているが、ハト派的な新しい理事の氏名も予想されるなか思惑通りに一連のことが運びこれが通ってしまえば中央銀行の独立性が脅かされることとなり、国債やドルへの信認が低下するという事に繋がりかねずこれまた安全資産への注目度が増すというもの。

ところで金以上に上昇しているのが金鉱株で世界最大手の米ニューモント株やカナダのアグニコ・イーグル・マインズなどは昨年末から金価格の上昇ペースを上回る勢いで高騰してきている。これまでも大手テックの「FANG株」ならぬ金鉱株の頭文字を取った「BAANG株」のベンチマークを上回るパフォーマンスが何度も報じられてきたのを思い出させてくれる。

近年は株式と相関性の低い商品に分散する狙いで金を組み入れた投信も多彩になってきたが、株式の高騰も同時進行の場面が多く上手く“両取り”が回っているのは想像に難くない。予測不能なトランプ氏の言動で今後も先行き不透明感が拭われる事は想像し難く、安全資産への注目継続からこうした金を組み入れた新商品の投入もまだまだ続きそうだ。


猛暑インフレ

過日に7月の消費者物価指数が発表されているが、依然とした高止まりで伸び率は3%を超えこれがかれこれ8か月連続となっていた。変動の大きい生鮮食品は含まれてはいないがこれらの伸びはひと際顕著で、今年の猛暑で野菜から食肉まで各種の生育不良が相次ぎ所謂“猛暑インフレ”の様相を呈している。

これら食品にとどまらず今月も引き続き多くの食品値上げが行われる。帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける飲食料品の値上げは先月の1010品目に続いて今月は1422品目にのぼるが、値上げが前年を上回るのは9か月連続となり、単月の値上げ品目数としては4ヵ月連続で1000品目を超えている。

主な品目では調味料が427品目と最も多く、次いで冷凍食品などの加工食品が338品目、そしてオリーブオイル並みに価格が倍増しているチョコレートなど菓子が291品目と続くがこの猛暑の時期、ガリガリ君はじめピノやパルムにMOWから雪見だいふくまで皆に人気の需要が高い定番アイスもまたどれもこれも軒並み値上げとなる。

飲食料品の値上げは人件費に起因したものが一昨年は9%台だったものが昨年は26%超に、そして今年は50%を超えるとの予測が出ており、既に内部要因による物価上昇に起因したものにシフトしている。食品以外でも電気やガスは政府の補助金が減少し大手各社は値上げ予定、当の食料品も10月の値上げ予定品目数は今年の4月以来となる3000品目超えとなる見通しで、“食欲の秋”の到来が近いものの猛暑インフレと併せその食欲も減退しそうだ。


攻めのバランス

さて定期的に起きる広告モノの炎上騒ぎだが、今月もひと騒動が起きた。スイスの時計メーカー、スウォッチでモデルが目尻を両手で引き上げている画像を使った広告がそれで、これに対し同社が謝罪し全世界で関連素材を取り下げたもの。同社は収益の約3割を中国(香港・マカオ)から得ているというが、最近の不況や米関税騒動も加わりその株価も16年ぶりの安値に沈んできているなかでの騒動勃発だ。

ところで中国絡みで問題になるのはイタリア勢が多い覚えがある。中国向けに流した広告で中国系モデルが箸でイタリア料理を食べる様が馬鹿にしていると炎上、たった数時間でECサイトから製品が引き上げられ上海での大規模ファッションショーも中止され巨大マーケットを失った「ドルチェ&ガッバーナ」など記憶に新しいが、その1年後には「ヴェルサーチ」がTシャツデザインを巡って炎上、アンバサダーを務めていた中国系女優がモデルの契約解除を申し出ている。

このヴェルサーチの炎上と同じようなパターンでは、一昨年には「ブルガリ」が海外のウェブサイトで台湾を中国からの独立国のように扱っていると炎上してしまった件もあったなと。今回の冒頭の騒動でも早速スウォッチ製品のボイコットを求める声が広がったというが、伝統的?に中国の消費者は自分達の文化を侮辱されたり国益を脅かされたりしたと感じた際には不買運動を実施する傾向が強い。

こうした騒動があるたびに政府と国民が一体化し連動している踏み絵のような市場という事を思い知らされるが、そういえば今月は米アパレルのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズのジーンズ広告も炎上騒ぎを起こしている。どれもこれもひと昔前なら“Cool!”の賞賛で片付いていた一寸攻めた広告も今や直ぐに炎上、不買運動に発展する何かこう世知辛い世の中になったとも感じるがこれも時代なのだろう。