到達から定着へ

周知のように先週末に日銀は基調的な物価上昇率が2%に達した旨を認めている。前任の黒田総裁は当初この目標達成が2年もあれば出来ると嘯いていた記憶があるが、フタを開けてみれば結局ここまで13年もかかったということになった。とはいえ既に世間での肌感覚では2%どころではないのは言わずもがなで、飲食料品などここ数年で倍かそれ以上になったものは数えきれないくらいある。

飲食料品といえば恒例の帝国データバンクの主要食品メーカーによる値上げ動向では今月は1477品目が値上げされることとなり2000品目を下回るのは5か月ぶりというものの、昨年の11月は150品目であったから今年は約10倍の規模と高水準が続く。分野別では調味料が644品目で最多、次いで飲料・酒類が417品目となっているが、ほぼ毎日使うこの二分野だけで7割を超えてくる計算になる。

インフレが長期化し食品メーカーにとっても値上げの改定は避けられない事態とはなっているものの、日経MJでは消費者の視線が特に厳しくなっている項目で“ステスル値上げ”などが挙がってきている。先に某大手加工品メーカーが値上げに絡んで炎上騒ぎに遭ったが、こうした価格改定に絡んでは十分な説明が為されない変更はブランドに対する不信感につながるリスクを孕む。

飲食料品はそれとして、いずれにせよこの日銀の言うところの“基調的な物価上昇率”が目標に届いた事で金融政策の重点事項はインフレ抑制に移行してくることになるが、今後も混迷を極める中東情勢と併せ円安の動向などに注視しつつ、到達の次の“定着”に向けた政策の舵取りに引き続き注目しておきたいところ。


関西最大地銀へ

週明けにはスペースXとテスラの経営統合を取り上げたが、国内でもっとローカルなところでは滋賀銀行と大阪地盤の池田泉州HDが経営統合に向け協議する事で基本合意したことが本日報じられている。現在関西の主要地銀で総資産トップは約12兆円の京都FGとなっているが、3位の滋賀銀行と5位の池田泉州HDの統合が叶えば両行合わせて14兆円を超えてくる計算でこの京都FGを抜いて域内で最大となる見通しだ。

地銀統合といえば今年は5月に愛知県地盤のあいちフィナンシャルグループと三重県の三十三FGが経営統合で基本合意との発表があったがわずか4か月で白紙となりこの経営統合は破談となった経緯がある。背景には持ち株会社の方向性での見解の相違があった模様でこれが地銀再編に水を差すことになるのかとの懸念もあったなか、今月に入って東北では青森みちのく銀と秋田銀、岩手銀で経営統合協議開始が報じられている。

これで東北でも3県をまたぐ広域連合が動きだすわけだが、この3県といえば人口減少率のワースト3県である。3県にまたがる地銀グループといえば現在総資産30兆円以上でトップのふくおかフィナンシャルグループ、他には山口フィナンシャルグループが挙げられるが、人口減少が追い打ちをかけ経営環境が厳しさを増す中でこうした動きが加速しているといえようか。

斯様にこうした再編の流れの中で有力といわれる地銀間でも再編圧力はかかっている。以前にも書いたが総じて地銀は上記のように人口減少に加え預貸率の上昇という問題も浮上してきており、預金獲得など一層の基盤強化に迫られていることからもこのスケールメリットを出せる規模の拡大を目指した動きは不可逆的なもので今後も各行の動きには注目しておきたい。


生保運用の潮流変化

昨日の日経紙金融経済面では「生保、国内債の購入活発」と題し、明治安田生命保険が国内債券において利回りの高い銘柄への入れ替えを加速し、第一生命保険も期初計画に比べて入れ替え額が1兆円超に増える見通しになるなど各社とも低利回りの債券から高利回りの債券への入れ替えペースを速める動きが広がっている旨の記事があった。

第一生命保険は上振れする入れ替えにおいて「超長期債」など償還までの期間が20~40年の国債など中心になる見込みだが、長期金利の上昇は保有国債の含み損につながる。ここ上昇一服のタイミングで動く生保が増えてきているわけだが、同頁に出ていた生保10社の2026年度下期の運用計画を見るとこの国内債や外債と並んでオルタナ資産を各社共に増加させている点が注目される。

国内生保は資産・負債の総合管理の観点から利息を生まない金への運用は消極的だったものだが、昨今の中東情勢の先行き不透明感など地政学リスクやインフレ圧力を背景として伝統的資産に対する分散を狙ってきたあたりが潮流の変化を感じる。こうした第一生命のような巨額資金を運用する向きの参入がマーケットにまた新たな流れを起こすのかどうか今後も注視しておきたい。


レバレッジもセルボラ系も

本日の日経平均はAI開発のアンソロピックがIPOに向けた目論見書を開示したのをきっかけに投資家心理の改善から値嵩のAI・半導体関連株が買われ1078.72円高と4営業日ぶりに急反発となった。そういったなかにあってすっかりひところの勢いを失ってしまっているのが主力級だったキオクシアHD株で、他のAI・半導体株が5%前後値を飛ばすなかでわずか0.44%高に終わっている。

同株はAI・半導体関連の中でも予てより信用買い残の重さが指摘されてきたが、全体が急反発する好地合いのなかにおいてもやれやれ売りで上値を抑えられている。そういえばお隣韓国でもAI・半導体関連株の急騰局面では値動きが2倍などになるレバレッジ型ETFから、最近では当面は大きな株高を見込みにくいとした向きがレバレッジ型からカバードコール系のETFにシフトしている旨の記事を先週の日経紙で見た。

カバードコールETFは相場膠着局面で有効な商品となるが、オプションの売りを組み合わせておりデリバティブに疎い向きでも手軽に取り組めアジア諸国ではこの手の規制緩和が進んでいる。日本のETF市場もここ3年増加し続け昨年の純資産残高も100兆円を超えてきているが、幅広いアセットクラスに小額から投資出来るのが魅力なETFもまだコンサバな部分が感じられるだけに日本もより一層の規制緩和と幅広維ラインナップが望まれるところ。


ガリバー同士の統合

さて、先週にはイーロンマスク氏率いる宇宙事業のスペースXと、米EV(電気自動車)のテスラとで経営統合を協議しているという報があった。マスク氏自身もスペースXの決算説明会にて統合のための特別委員会を両社に設置したことを明らかにしているが、仮にこれが実現した場合は“ガリバー”同士のM&Aでほぼ時価総額ではマイクロソフトと肩を並べる規模となりアマゾンを抜いて世界5位に位置することになる。

スペースXといえば先週は7~9月期売上高が前年同期比2.6倍に増加し最終損益が黒字転換したとの発表があったばかりが、もともとこのスペースXがIPOする前からこの両者の統合話は一部アナリストなどから出ていた。テスラの蓄電池システム等の供給でスペースXの事業拡大がテスラにも恩恵をもたらすわけでテスラ側にも統合効果が大きいが、このガリバー同士の統合には議決権の問題やら持ち分低下の問題などハードルは低くない。

この辺はマスク氏が株主をどう納得させてゆくかにも注視したいが、商業打ち上げビジネスなどでほぼ独占状態のスペースXの価値はその期間や人によってどう捉えるか賛否両論だ。一部で2030年の企業価値が2兆5000億ドル(約400兆円)になるともいわれるまでの道のりの実現速度を、これまた今後イーロンマスク氏がどうマーケットに訴求してゆくかこの辺も見ておきたい。

スターシップなど商業的な打ち上げを行い一段の宇宙開発へと続けば米が主導する形で宇宙の“ルール”が築かれ、覇権争いにおいても先行することになるか。いずれにせよこれが実現することになれば、AIと宇宙という国家戦略上でも極めて重要な二つの成長分野をカバーするガリバー級のプラットフォームが誕生することになるだけに今後のなりゆきには要注目である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2026

11

月 火 水 木 金 土 日
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30