AI跛行色

本日の日経平均はソフトバンク株に翻弄されるかっこうでプラス圏とマイナス圏に大きく振らされ、引けは同社の下げ幅が縮小するのに合わせて反発して引けた。そんな中で三井海洋開発が純利益の大幅上方修正から後場にストップ高まで急騰し上場来高値を更新、同じく三井では三井金属も26年3月期に連結純利益が従来予想から上方修正するとの発表で急騰しこちらも上場来高値を更新、値上がり率ランキングで2位、3位に揃ってランクインした。

上記の三井金など銅市況の高騰にAIデータセンターのサーバー需要も相俟って関税ショックで付けた安値から本日の大引けまでその株価は実に約6倍まで大化けしているが、同じAI関連でも代表格のソフトバンクなど昨日発表した純利益は前年同期比2.9倍の2兆9240億円と同期間としては過去最高であったものの冒頭の通り株価は肩透かし?の反落となり、ひところのAIモノ総嵩上げから本日の市況を見るに跛行色が出てきた感もある。

かつてのITバブルを経た学習効果なのかどうか、何でもかんでも買い続ける姿勢からAI括りでも堅めの実需を選別する姿勢が出ているのが興味深い。いずれにしても冒頭の三井金属は本日の急騰ではれて“1兆円倶楽部”の仲間入りとなったが、近年の「AI」というテーマを背景に各大台更新でそれぞれの“大台倶楽部”も今年一年でその景色が大きく変わることになるか。


IP株も躍進

本日の日経紙投資面には「純利益 市場予想超え6割」と題し、AI(人工知能)向けなどデジタル投資の拡大や円高一服、強みの製品の販売増を背景に2025年4月~9月期の業績が全体の6割の企業で純利益が市場予想を上回った旨の記事があった。自動車大手が米関税の影響で軒並み打撃を被る中にあってトヨタ自動車はHVの販売が好調でこの強みが光り市場予想との差は1300億円以上になっていた。

同紙には上記のトヨタをはじめ最終損益を市場予想を上回った企業のランキングが出ていたが、強みといえば7位にランクインした任天堂はちょうど昨日当欄で書いたように日経トレンディの“2025ヒット商品”の3位にランクインした「Nintendo Switch 2」の好調から純利益は8割増えている。また堅めな想定為替レートも相俟って来年3月期の純利益見通しも当初予想から500億円引き上げている。

そういえばこの“2025ヒット商品”で上記の「Nintendo Switch 2」を上回り2位にランクインしたのは「国宝」であったが、「鬼滅の刃」と共に本日発表になったソニーGの純利益を大きく押し上げている。ソニーGもソフトバンクほどの派手さは無いものの先月は上場来高値を更新し時価総額ランキングでベスト5に入ってきており、1位の自動車然りお家芸のIPも加わった新たな日本の基幹産業にはまだ期待が出来るか。


ヒット商品2025

今年も残すところあと2か月というところだが、先週日経トレンディが発表したこの時期恒例の「今年のヒット商品」は昨年同誌がヒット予測として挙げていた「ジャングリア沖縄」が意外?に下の方の29位にランクイン、上のほうに目を移しベスト3を見てみると3位には「Nintendo Switch 2」、2位は「国宝」、そして1位に輝いたのが「大阪・関西万博withミャクミャク」となっていた。

1位の大阪・関西万博、当初はどこも不評であったがふたを開けてみれば2500万人が訪れ、ミャクミャクなどの関連グッズの売り上げも後押しして一転して230億円を超える黒字となり、その経済効果も軽く3兆円を超えるともいわれている。そして2位の「国宝」、歌舞伎界を舞台にしたこの興行収入は22年ぶりに100億円を超えて先月末段階で166億円を突破、実写日本映画歴代興行収入1位も見えてきている。

そして3位の「Nintendo Switch 2」、今年6月に発売されわずか4日間で世界累計販売台数350万台を突破し、9月末までに1000万台を突破、従来販売台数予想を1500万台から1900万台に引き上げた。そういったことで来年3月期純利益の見通しを当初予想から500億円引き上げた3500億円に修正しているが、同社の想定為替レートもドルもユーロも堅めなラインに置いているのでこの辺は期待が持てよう。

そして来年のヒット商品予測としては、“時短”や“苦労キャンセル”がキーワードらしく日本初の行列型スキップ型優先入店サービスの「SuiSui」や、1位に選ばれた「多言語リアルタイム翻訳」等が挙げられていたが、9位には暗号資産のステーブルコインがランクイン。米はステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立、日本でも先月から日本初となる円建てステーブルコインが発行されているが、さてこれが来年のヒット商品にランクインしてくるのか否か興味深い。


親子上場36年ぶり低水準

さて2週間ほど前の日経紙投資面では「親子上場解消第2章へ」と題し、来週から決算発表が本格化するがこの時期には“親子上場”の解消の動きもまた年間で最も活発になる時期との旨の記事があったが、先週は29日に住友商事が東証プライム上場のSCSKを完全子会社化すると発表、翌30日には住友電気工業が同じく東証プライム上場の住友理工の完全子会社化を発表している。

親子上場の現状としては先月末で168社となっているが、ピークだったリーマンショック前の2006年度からは6割減少して実に36年ぶりの低水準となっている模様だ。上記の住友系以外でも当欄で5月に取り上げた三菱食品やNTTデータG以降、先月末で上場廃止になったアヲハタはキューピーが完全子会社化し、翌月には日本製鉄が黒崎播磨の完全子会社化を発表するなど今年3月末から9月末にかけては11社減少と加速している。

上記対象銘柄はいずれも子会社化報道から急騰しているが、日経紙ではこうしたTOB期待の思惑買いには過熱感があるとして投資家の一部では持ち分法適用会社の子会社化や売却の動きを探る動きがあるという。ここでは英系ヘッジファンドのオールド・ピーク・グループが保有する椿山荘運営の藤田観光や、先月に出光興産から完全子会社化を目指すとされた富士石油が挙げられていたがこれらいずれも株価は大きくアウトパフォームしている。

他にも関西電力の持ち分法適用会社のきんでんも今年は大きく株価を切り上げているが、冒頭の住友電工は住友理工の完全子会社化と同時に子会社の住友電設の大和ハウス工業への売却を発表している。コングロマリットディスカウント解消組の株価はその削減数が多いほど株価のアウトパフォームが鮮明なこともあり、今後もこうした向きは持ち分法適用会社含めその関係が再度問われる事になるか。


保護からイノベーションに?

本日の日経紙金融経済面では「株式トークン、日本でも」と題し、デジタル資産のインフラ開発を手掛ける3メガバンクが出資したプログマが24時間1円単位で上場企業の株式を取引できるシステムを業界横断で構築し来年中の運用開始を目指す旨の記事があった。これが叶うと最大のインパクトはやはり取引時間制約の緩和だろうか。仮想通貨よろしく24時間取引で決済も同時に実行できることで資金効率も格段に上がる。

もう一つの利点として単元株扱いと違ってこちらは1円単位で売買できるデジタル証券、これまでも当欄で単元株問題を取り上げてきたがこれも選択肢が大きく広がることになる。とはいえ株式トークンとして流通させるには企業側の同意が必要となるなどの高いハードルがあり、現在一元管理を担っている所謂「保振」との共存をどうやってゆくのかこの辺もまだはっきり見えない。

ところで「株式トークン」といえば、米では以前に当欄でも取り上げたオンライン証券大手の「ロビンフッド」が先行しており欧州で既に提供が開始されている。未公開株までラインナップしいろいろ物議も醸し出しているようだが、この辺にイノベーションを優先する欧米と投資家保護が最優先の日本との差が色濃く表れているか。欧米とでは障壁の相違から課題も多いだろうが、この実現が叶えば景色も可也変わってくるだけに今後の進展を見守りたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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