100ページ目

試金石のIPO

本日の日経紙マーケット面には「貯蓄から投資促せるか」と題して、来月に上場する調達額が国内IPOで最大の2.64兆円となるソフトバンクグループの通信子会社のソフトバンクの配当性向に着目し、これまで貯蓄から投資の受け皿として期待された過去の大型上場はそれを満たせなかったものの同IPOにこの辺を託し期待が出来る旨が書いてあった。

ソフトバンクのIPOについては数回当欄で取り上げているが、やはりこの頁でも親子上場となる形態について指摘されていた。誘致合戦の最中、緩めの間口で競合するアジアの取引所を横目で睨みながら東証としても今年の春先に当欄で述べたようにジレンマに陥ったのは想像に難くない。

そうした背景は兎も角も、貯蓄から投資といえば最近では日進月歩のフィンテックが投資に関するハードルを下げるのにほんとうに貢献しているなとの感が強い。スマホから容易に投資できる資産運用アプリなどの発達によって、これまでハードルの高さを感じ逡巡していた若年層向けの裾野を広げたのは大きく今後ももう一段新たな層の開拓が期待される。


カリスマの功罪

さて、昨年から日産自動車やスバル、神戸製鋼所など大手企業の品質検査問題など不正が次々と明るみに出てきたが、昨日は不正問題でもこの日産自動車のカルロス・ゴーン会長が東京地検特捜部に金融商品取引法違反で任意同行されたとのショッキングなニュースが飛び込んできた。

この報を受けて欧州市場では仏ルノー株が一時15%安となるなどいち早く反応、明けた東京市場でも当の日産自動車が年初来安値を更新し約2年3ヵ月ぶりの安値に沈んだのをはじめ、同氏が会長を兼務する三菱自動車も大幅続落し10月の年初来安値まで指呼の間と迫り、他の関連銘柄も軒並み安の憂き目に遭った。

パンク寸前だった一昔前の日産をわずか数年で黒字転換、有利子負債完済とV字回復に導いた立役者だっただけに、同法の違反容疑適用に関してはいろいろと憶測も飛び交っているようだが、たしかにこれまでの所謂長年の統治の負の遺産とよくいわれるような大企業病のなかでも発覚した他の事件とは一寸毛色が違う。

しかし、自動車の三社連合も同氏の求心力で成り立っていた事でその前提が崩壊したとすれば今後の混乱次第では暗雲が漂うことになるが、いずれにせよこの一件でまたもや日本のコーポレートガバナンスは大丈夫なのかとの不安を外人投資家に与えてしまうことになるのは想像に難くないか。


ブランド売り彼是

先週末の日経紙企業面には「ゴディバ強気の1000億円」と題して、トルコ食品最大手ユルドゥズ・ホールディングが傘下であるあのチョコレートのゴディバの日本事業の売却手続きに入った旨の記事があった。この件は既に9月くらいから報じられていたが、その背景にはトルコリラの急落による債務圧縮のための切り売りと見られる。

そのブランドバリューから当初は15億?とも報じられていたのでディスカウント感が強いとはいえ、それでも1000億円規模の金額から国内菓子大手は早々に諦め結局三菱商事や投資ファンドが興味を示しているという。最近はウチの近所でもアランデュカスの店ル・ショコラがオープンするなど高級チョコ市場は成長性が見える事でここから狙う各社思惑が交錯しそうだ。

ところで有名ブランドの身売りといえばチョコレート以外でも最近では米マイケル・コースHDによる伊ヴェルサーチの買収報道もあった。余談だがこの買収報道の一カ月ほど前だったか日曜日に放映している「ゲゲゲの鬼太郎」で、砂かけババアが地上げ屋の着ていたジャッケットを「〜あの趣味の悪さはヴェルサーチ〜」と発言するシーンがありヤレヤレと思ったがほどなく身売り報道が出るとは驚きであった。

マイケル・コースといえば昨年はジミー・チューにも食指を動かしていたが、これと併せいよいよ高級化路線で活路を見出すということになる感じ。また14年にヴェルサーチを取得したブラックストーンなどこれでイグジット成功となる計算だが、斯様に投資ファンドもブランド買収の背後に常に見え隠れし虎視眈々と機を窺う動きが見られる。


ボージョレ・ヌーヴォー2018

さて、例年この時期恒例のフランス産ワイン新種であるボージョレ・ヌーヴォーが昨晩午前0時に解禁された。この近所の甘酒横丁の酒店では例年この日は深夜にこの一角だけが賑わう光景が定番となってきているが、平成最後となる今年もまた多くのワイン愛好家が集い同様の賑わいを見せていた。

このボジョレー・ヌーヴォー、昨年は販売量減少を背景に輸入量の減少が続いていると書いたが結局2017年実績は約582万本であった。確かにピークの2004年の約1252万本からはほぼ半減というところだが、依然として日本は2位のアメリカや3位のカナダを大きく引き離しダントツの1位をキープしている。

ボジョレー・ヌーヴォーに限らず近年のインスタ映えを狙ってボトルに趣向を凝らしたりするモノも増えてきたが、昨年に当欄でも取り上げたEPAが来年に発効するのを受け大手スーパーなどでは先行し欧州産ワインの値下げ機運が出ている。確かに近所のスーパーや百貨店などではここチリ産のワインなどがグンと増えてきたような気もしていたが、価格競争と共に消費者の注目も再度高まってゆくのかどうかこの辺が注目されるところ。


面子と格

さて、ここ数日は老舗すし屋の「久兵衛」が来年9月を予定するホテルオークラの建て替えに伴って「オークラ東京」のメインエリアから片隅に追いやられ高級飲食店の格を著しくおとしめたとして、オークラ側に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした事がTV等でも話題になっている。

ここでいうメインエリアとは新生オークラがトップブランドと位置付ける高客室単価のヘリテージウイングの事と思うが、此処へは従前より写真館を挟み同じエリアで店を構えて来た「山里」が入る予定。一方で片隅としているのはオフィスフロアも入る高層棟のプレステージタワーのショッピングアーケードの事か。

加えて山里には久兵衛出身者らの競合店も入るとかでその辺も話を複雑にしているが、久兵衛といえばそのネームバリューから公私問わず行った事のある向きも多いと思う。今年の夏には日経紙・人間発見の項でも連載記事を掲載していたのを思い出すが、その2回目ではホテルオークラやホテルニューオータニに出店した経緯も綴られていた。50年共に持ちつ持たれつ来た仲に一体何が起こっているのかだが大人の事情は当事者にしかわからない。


今年最大のIPO

本日の日経紙一面を飾っていたのは「ソフトバンク投資会社に」と題し、ソフトバンクグループが昨日東証からIPOの承認を受けた旨の記事であった。12月10日に正式価格を決め19日に東証に上場のはこびとなる予定だが、その証券コードはかつての日本テレコムの(9434)と懐かしい。

今年8月には当欄でも新たなベンチャーファンドと題し、「〜ソフトバンクグループも投資会社としての色合いが一段と濃くなってきた感もある。」と書いていたが、果たして今回の上場で携帯子会社の経営を独立させると同時に、本体としてはやはり投資会社としての性格を強めてくることになるか。

さて、親子上場という長年の日本の特異な慣行にあってその上場後もグループが6割強の株式を保有する筆頭株主に君臨する訳でいろいろと東証もジレンマがあっただろうが、JPXの自主規制法人が上場承認した背景にはソフトバンクの経営の独立性は担保されているとの判断があったのだろう。何れにせよ逆風下の成熟市場で、今後投資と配当のバランスなどどう図ってゆくのかが注目される。


サイダーと純投資

週明け本日の日経平均は先週末の米株式の急反落を受け寄り直後は売られたものの、あと円安や上海総合指数の反発を支えに切り返す展開となった。個別では決算を手掛かりにストップ高するもの、大幅続落となるものなどあったがミネベアによるTOB価格にサヤ寄せしたユーシンは当然ながら上限での往来相場となっていた。

ところで同社株に関しては、先週末の日経紙投資情報面にて「ユーシン株 不自然な動き」と題し、TOB実施を発表する引け後より前の前場から一気に動意付いたのが不自然視されJPX傘下の自主規制法人が同社株に買いを入れた証券会社から顧客データを取り寄せるなど具体的な調査に着手、不正が疑われる場合には証券取引等監視委員会への報告などを視野に入れている旨が載っていた。

前回は富裕層に対して国税庁などが次々と包囲網を張ってきている旨を取り上げたが、証券市場における確信犯的な売買も昨今は次々と暴かれてしまう確率が高くなってきた。何故か漏れる情報を基にインサイダー売買がヤリ放題だった古き良き?時代は今は昔、ここ数年で割に合わない違法行為の一つになってきている。

ところで同社といえば旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、2ヵ月ほど前に保有比率を5.00%から6.03%に買い増した変更報告書を提出しており、かつての立飛企業MBOに乗じた売り抜け成功を思い出したが、今回も業績急降下やトップ辞任という想定外の障害があったもののまたまた上手くイグジットを決めたなという感じである。


国税包囲網

さてちょうど一週間前の日経紙だったか「税逃れにけん制効果」と題し、国税庁が約100ヵ国・地域が自国内の金融機関にある外国居住者の口座情報を交換する新制度により、先月末時点で日本居住者が海外に持つ口座情報約55万件を入手したとの発表がなされた旨の記事があった。

国税庁としては長年にわたって所謂富裕層の海外資産の把握には苦心が続いており、これによって税務調査や課税・徴収が大きく前進するのはもとより脱税していた向きにも適正申告や修正申告を促す効果が出て来るのかどうかというところだが、直近では国内でも高級外車を巡る売却益隠しや申告漏れが炙り出されるなどなかなか厳しくなって来た。

この高級外車のケースでは約20の法人と個人が東京国税局などから指摘を受けたようだが、この手の一部富裕層は知ってか知らぬか購入する車種もなかなかその価値が下がらないモノを見抜く選択眼を持っているのか否か、往々にして売却した際に減価償却で減りゆく帳簿価値とその売却価格とが大きく乖離するケースも多いことがその背景か。

タワマンの節税も或る意味こうした評価額の乖離を利用したものだが悪気無くその辺の誤認という部分も一部あろうが、いずれにしても近年はビットコイン等の仮想通貨で「億り人」なる思わぬ所得を得たニワカ成金も話題になってきたこともあり、国税側も次々とその包囲網を張るのに余念がない。


二頭の脅威

本日の日経紙マーケット面には「クジラ再浮上の思惑」と題して、ここ久しく話題に上らなかったクジラことGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株買い観測が先月の株価急落を経て以降先週あたりから出回っている旨の記事が載っていた。

GPIFといえば9月に今年度の運用方針の変更を決定、厚生年金基金の代行返上や解散の加速を背景に短期資産が増加しておりこの辺のシフト思惑というところもあろうが、両者共にそのイグジットに関しては毎度憶測を呼び現況でも大企業の大株主となっている現状に関して間接的利益相反やらモラルハザードに絡んだ議論が毎度喧しい。

週明けの当欄では日銀のETF買いを書いたが、大規模な金融緩和策とポジティブな運用姿勢の結果としてGPIFとの両者で上記の通り多くの大企業の大株主に名を連ねる構図が起きている。コーポレートガバナンスコードの導入で持ち合い解消機運が昨今は盛り上がりつつあるが、反面こういったところが大株主に躍り出てくる様はやはり外から見るに特異に映るのは否めないか。


季節の味覚が危うい

昨日の日経紙夕刊一面では「冬の食材、カニ最高値」と題して、温暖化の影響で水産資源が年々減少する一方、中国と韓国の輸入量が4年間で3倍に増えるなどアジアでのカニ人気の高まりからズワイガニとタラバガニの輸入価格が過去最高値となっている旨が載っていた。

ズワイガニはちょうど本日、日本海側の地域で漁が解禁となったが、上記のような背景の一部に朝日紙では日本海区水産研究所は資源調査に基づき今年は昨年並みの水上げが期待できるものの、来年以降は未成熟の稚ガニ数が少なく資源量減少から3年後には今年の二分の一程度まで激減するとの予測を出している旨の記事を見た。

そんなワケでズワイガニに関してはここ5年で値段が2倍以上になったというが、資源量減少で長らく云われているウナギの高騰からここ数年は異常気象やカニ同様のアジアの嗜好傾向からサンマもその値段が不安定になるなど、夏のウナギから秋の味覚のサンマ、それに続いて冬の味覚も次第に高根の花になりつつある危うさを秘めている。


メジャー&マイナー

週明け本日の日経平均は、先週末の米10年債利回りが10月10日以来の高値水準となった事を嫌気し米株式が4日ぶりに急反落していた事を受け急反落となったが、安値揉み合いに終始した後場は日銀によるETF買い入れ観測も出ていた。この日銀によるETFだが、先週末の日経紙・この数字の項にあった8700億円という数字が目についた。

この数字だが、日銀が買い入れているETFの月間購入額が米国株の急落に連れ日経平均も軟調を余儀なくされた事などから、10月度は8700億円と過去最大級になったという。購入メドなど柔軟にしたがこのペースだと年末には購入額の残高が6兆円を上回る可能性が高いといいまたいろいろと物議を醸し出しそうだ。

ところでETFといえば、投資家層を広げる狙いから楽天証券は三菱UFJ系の16本を、マネックス証券は3本を、SBI証券は一部ETFの手数料を3か月間無料にするとの旨も同紙のマーケット面で見た。さすがに国内個人の主力となっているレバ系はドル箱だけに対象外となっているようだが、曲がりなりにも初日の売買代金は増えた模様で先のマーケットメイク制度導入と併せ裾野が広がる一助となるか否か今後に期待したい。


2018ハロウィーン

周知の通り昨日はハロウィーン本番であったが、昨年台風22号の影響で不完全燃焼となった鬱憤晴らしもあってなのか、渋谷のスクランブル交差点やセンター街あたりでは平日にもかかわらず一層節度の無い激しさを増した行動が報じられていた。

昨年の今頃に当欄でハロウィーンを取り上げた時には、テーマパーク以外でも特に商材を選ばないので様々な業種・業界がビジネスとして参入し易い素地を持っていると書いたが、果たして今年は帰宅困難者向け配車サービスやハロウィーングッズのリサイクル等々イベント後にまで商機を見出したサービスも出てきている。

とはいえここ数年でバレンタインの市場規模を上回って来た事が話題になったハロウィーンだが、その上ザヤに転じた一昨年の1345億円から昨年のそれは1305億円と減少し、今年は減少幅も更に大きくなって1200億円台にまで減少するという推定も一部で報じられている。

10月の恒例イベントとしては定着したともいえるが、過日見たニュースでは今年ハロウィーンの予定がある人は何所で過ごすかという調査では約8割が家で気楽に過ごすと答えており、冒頭のように街中に繰り出すという向きは16.9%止まりであった。ハロウィーンは仮装さえしてしまえばあとは何をやっても良いという点のビジネス楽観論もあったが、今後の消費創造はこうした向きの取り込みもキーとなってくるだろうか。