投資以前のリテラシー

今週アタマの日経紙社説では「SNSを使った投資詐欺への対策を急げ」と題し、最近問題になっているSNSなどのインターネットサービスを悪用した投資詐欺が昨年でも総額で約277億円にのぼるなどその被害が広がっている旨が書いてあった。この辺に絡んでは直近でもSNSの詐欺広告で画像を悪用されている著名実業家らが、自民党本部で開かれた詐欺広告に関する会合に出席し問題提議している。

確かに今日もTVで著名経済アナリストを語った輩により約7億円という巨額の投資詐欺に遭った女性の話が報じられていたが、先週も兵庫県でこの手の被害者続出がニュースになっていた。15日には西宮市の男性が、16日には神戸市の女性2名が、18日にも同じ神戸市の男性が、また同じ日には神崎郡の男性が、それぞれ誰もが知る著名実業家、著名経済アナリスト、著名ジャーナリストを語る人物により約200~4500万円の詐欺被害が報じられている。まさにオレオレ詐欺が流行った時並みの被害ラッシュだが、失礼ながら毎度こうした報道を見るに何故にこんな稚拙なモノに引っかかってしまうのか理解に苦しむ。

そもそもこの手の著名人がマンツーマンで投資指南などやるはずもなく、他にも断定的判断の提供しかり、仮に入り口に入ってしまってもいざ振り込みの段階で個人口座とか有り得ない話でいくらでも我に返り引き返せるというものだが。しかし以前は無かったインスタにF・Bからマッチングアプリまでフル活用されている点に時代を感じる。これにより幅広い年齢層が狙え、はたしてインスタやF・Bは40~60代、マッチングアプリは20~30代がホイホイ餌食になっている。

そういえばちょうど先週には警視庁生活経済課がキャノンマーケティング本社で新入社員ら向けに投資詐欺被害対策の講座を開いていたが、幅広くこの手の啓蒙が急務ではないかのような気もする。おりしも今月は国民の金融リテラシーを高める活動を行う組織として「金融経済教育推進機構」が発足しているが、貯蓄から投資への流れに水を差したくないならHOW TOよりもっと以前の段階こそ重要ではないかと思う。ゴールデンウィーク中に投資の検討などする向きも居ると思うが,くれぐれもこの手の投資詐欺には注意されたし。


社会変化への柔軟性

久し振りにセブンイレブンに行ったが、冷食コーナーの品揃え拡充に少し驚いた。このセブンだが、単身や共働き世帯の増加で中期的に高まる冷凍食品の需要に対応すべくコンビニの店頭に置く新型の冷凍庫を本格導入する旨が日経MJ紙などで報じられている。PBモノはじめ、スペース問題が改善されることでグループのファミレス「デニーズ」ブランドの冷食もおけるようになるという。

世相を反映した今年の一皿にも選ばれた冷食だが、快進撃が止まらない。日本冷凍食品協会が発表した2023年の冷凍食品の生産・消費統計では家庭用と業務用を合わせた全体で、値上げにより数量は減少したものの出荷額は過去最高となった。以前書いたイオンの日本最大級の冷食専門店@FROZENは首都圏で6店舗を展開、先日銀座の三越や松屋の地下を一寸見てみたがフローズンコーナーの充実ぶりはセブンよろしく数年前とは様変わりになっていた。

保存性もありフードロス削減など旬?なSDGsの観点に加え、所謂タイパの部分までをもカバー出来るこの冷食は社会変化に対応出来るモノの中でも断トツで上位に位置するのではないか。まさに商機だが本日は円相場が1990年6月以来の1ドル=155円台に突入、加えて中東情勢など地政学リスクは予断を許さない状況なだけに今後の物価上昇圧力が販売に影響してくるか否かこの辺の動向には注視しておきたいところ。


レセプト分析調査研究

本日の日経紙経済政策面では「保湿薬の自己負担増」と題し、乳幼児やアトピー性皮膚炎の患者に処方される保湿塗り薬の「ヒルドイド」について10月から患者の窓口負担を引き上げる旨の記事が出ていた。この塗り薬といえば、今から7年くらい前だったか一部の女優やモデルが挙って美容効果を謳ったということで美容クリーム代わりに処方してもらう動きが問題視されたことがあったなと。

もうこの件は忘れかけていたころに目にした今日の記事だったが、確かに当時は健保組合連合会が公表したレセプトの分析調査でこの美容目的の保湿剤を巡っては年間93億円の薬剤費が無駄に支出されていたことが明らかになっていた。ヒルドイド一つ取ってもこの規模であるから、これら以外の似たケースを集計すると自ずと可也の額になるのは想像に難くない。

斯様に処方箋が要る薬の部類では今でもこのヒルドイド以外でも美容に限らずその費用対効果の高さが謳われているモノが幾つもある。第2第3のヒルドイド予備軍は数多あるだけに今後も折に触れこうした問題が浮上する可能性が高いが、本来は自由診療の領域が不正に利用され医療保険財政を圧迫してゆく要因になるものは必要に応じ是正されるべきか。


第1の力再浮上?

先週末に米ワシントンで講演した日銀の植田総裁だが、「基礎的な物価の上昇が続けば金利を引き上げる可能性が非常に高くなる」と具体的な時期は明らかにしなかったものの自身の考えを改めて示していた。折しも外国為替市場では日米金利差が意識され記録的な円安が進行中、3月CPIも発表されたがここからは日銀が理想とする所謂第2の力が足踏みする間に円安による輸入物価の上昇など第1の力が再浮上する構図が浮かび上がる。

日銀が言うところのこの第1の力といえば、電気・ガス等の補助金が来月で終了するが、イスラエルとイランは対立激化の真っ最中でエネルギー価格の先行きも予断を許さない状況が続いておりコストプッシュ型インフレが再燃する可能性がある。そういった方向に傾斜しそうな中ではたして追加利上げを敢行するのか否かだが、目先の会合では現行の金利政策を据え置く公算が大きいとのコンセンサスで一致している。

そういえば冒頭の日銀総裁講演より少し前の財務相会合では、同じく自国通貨安に喘ぐお隣韓国と最近の急速な円安・ウォン安への深刻な懸念を認識するとの共同声明もまとめていたが、こうした一連の動きを見るにインフレ以上に通貨動向も無視できない状況になってきているようにも見える。追加利上げを巡る発言に市場の関心が高まっているが、いずれにせよ先ずは今週の日銀金融政策決定会合に注目としたい。


休眠基金

さて、政府の有識者会議は先月末に経済・財政一体改革の検証結果を報告しているが、国と地方のPB(プライマリーバランス)は目標とする2025年度の黒字化に近づくものの、基金乱立といった歳出膨張が税収増効果の足を引っ張るとしている。この辺に関しては中長期的な政権推進のため積み立てた基金の総点検を巡り事業が事実上停止している約10の基金を廃止する方向で調整に入った旨が報じられている。

ちなみに廃止予定の基金は週明けに取り上げたEV(電気自動車)の充電設備を設置する「省エネルギー設備導入促進基金」、農林漁業者が発電事業を行う「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立基金」、東電福島第一原発事故で企業立地が落ち込んだ地域を支援する「環境対応車普及促進基金」などが並んでいる。

財源はほとんどが国債だが、斯様に借金?で賄っているこの基金はコロナ禍以降もここ数年で30兆円以上が確保され国が所管する基金の数は180超に膨らんでおり、その残高も2022年度末時点で計16兆6000億円と巨額なカネが使われずに残っているのが現状だ。とはいえこれらその運営には人件費などの管理費が発生、本来の事業を全く行わずに管理費だけがかかっている休眠基金など本末転倒だろう。

おそらくは使い勝手が良くその規模も大きなものになるので経済対策としてはアピールし易いという側面があるのだろうが、上記の廃止予定以外のモノでも例えば地方自治体のデジタル化を進めるための「デジタル基盤改革支援基金」はその執行率が5%、新技術の研究を支援するための「経済安全保障重要技術育成基金」の執行率はわずかに2%など5%にも満たないモノがゴロゴロしておりPB黒字化には更なる見直しが求められるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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