返り咲き?

さて世界が注目している米大統領選だが、既に各社メディアが報じているように共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が結果を左右するペンシルベニア州含む激戦7州のうち4週を制し当選が確実視されている。仮にこのまま勝利した場合、米大統領選の失敗後に返り咲くのは132年ぶりの事となるが、この開票状況を睨みながら本日の金融市場もトランプ・トレードが加速している。

開票直後から接戦州でのトランプ氏の優勢が伝えられると、ドル円は早速151円台から約3か月ぶりの円安水準の154円台へ。それに伴い日経平均も寄り付き近辺を安値としスルスルと上昇し前日比1000円以上の大幅続伸を演じたが、夜間の先物取引でもその流れを継いで一時4万円の大台を超えてきている。

個別では日本に防衛費増額を迫るとの見方で三菱重、川崎重、IHIといった防衛関連の重工各社が買われる展開となったほか、三菱UFJFGや三井住友FGにみずほFGなどのメガバンク勢から地銀勢にも買いが入り、TOPIX銀行業指数は業種別指数の中で上昇率トップとなった。財政支出を伴う同氏の政策によるインフレ圧力の高まりから金利上昇への期待を背景に一斉に物色の矛先が向った格好だ。

また同氏が暗号資産に好意的なことで仮想通貨関連も物色されたが、代表格のビットコインは史上最高値を更新、トランプ氏が要職起用を検討するとしたイーロン・マスク氏が支持するドージコインもまた昨日から約20%の急騰を見せた。斯様にトランプ・トレードに賭けていた向きにはニンマリの一日になったワケだが、米国債利回りの急上昇はじめ各所の市場変動は或る意味警鐘と警戒する向きも多く、今後も各所の動向から目が離せない。


値下げ合戦&デフレ脱却

11月入りとなったが、月初め恒例の今月の値上げ状況は帝国データバンクによる主な食品メーカー195社における今月の飲食品値上げは、先月からは大幅減少となったものの前年同月比では倍増の282品目となっている。加工食品や“ビーンショック”が長く影響して菓子では引き続き定番人気のチョコレート関連商品の値上げなどが目立つ。

この手ではロッテがチョコレート関連71品目を値上げや内容量を減らすステルス値上げを実施、「コアラのマーチ」や「パイの実」などの定番モノは8月に続く再値上げとなり、他社も明治やカヤバ食品などこれらチョコ菓子の一部を値上げする。しかしこのチョコも定番のハイカカオ商品はじめとした値上がり加速には辟易するが、体感ではオリーブオイル並みになって来た。

斯様に容赦なく上げ続けるモノあれば、先月の今年最多の値上げから価格転嫁に対する企業の慎重な姿勢も一部見られる。イオンはPBなど実質値下げを敢行し、外食も吉野家をきっかけに大手各社が挙って値引き合戦に突入、またIKEAも昨年11月から今年に入って4度の値下げを敢行し5度目の先月は家具・雑貨など70点値下げを始めているなど各所で値下げの動きが顕著になってきた。

たしか自民党の公約ではデフレからの完全脱却を謳っていたが、こうなるとデフレに逆戻りするのではという感覚にもなってくる。先月末の日銀金融政策決定会合では現在0.25%としている政策金利を据え置くことを全員一致で決定しているが、果たしてこうした環境下で日銀が何処まで利上げを敢行出来るのか?その辺も今後は気になるところだ。


アップサイクル新ステージ

当欄では今月アタマに日経平均構成銘柄の入れ替えを取り上げていたが、日経平均同様に日本経済新聞社が算出する指数に「日経平均気候変動1.5度目標指数」がある。同指数のこの秋の定期見直しではコマツとダイキン工業が外れる一方で、日経平均構成銘柄でも新規採用された野村総合研究所と良品計画に加え、環境面で評価が改善した高島屋も採用されて本日より反映されている。

環境面で評価が改善したとある高島屋だが特に近年アパレル系でサステナに力を入れており、今月9日からスタートしたサステナブルウィークスでは「RETURN TO SENDER」と称し、先進国からアフリカに寄付・輸出され飽和状態となっている古着をデザイナーが再デザインしアップサイクルしリメイクウェアのうち1点を一般商品として販売、もう1点を提供した顧客分として渡すユニークな取り組みを行っていた。

今回の試みは服をデザインするプロセスに、古着素材の提供として客を巻き込みながら循環の輪を回すアップサイクルの提案になっているところがポイントか。そういえばこれまで当欄で取り上げた東京オリンピックのメダル作成において一般から携帯など都市鉱山を募ったり、年末の風物詩イルミネーションの一部でも家庭内で出た廃油を原料にした燃料を使用するなどの巻き込みと同様のものといえるか。

以前にも書いたが、世界で排出される二酸化炭素の約1割はアパレル産業によるものとされ、石油産業に次いで地球にやさしくない環境汚染産業ともいわれている。昨年は経産省でもアパレルの再生や再利用に関する課題と改善策を纏めた報告書を公表しているが、斯様な顧客巻き込み型等の形態が何処まで広がり、またサステナで先行している欧州勢に何処まで近づけるかも注目しておきたい。


変わりゆく儀礼行事

さてこの時期お歳暮の案内も喧しく商戦も本格化してきた。歳暮といえば本日は三越日本橋が店頭のギフトセンターを開設しているが、此処はこれに先駆けて今年の歳暮商戦に向け顧客向けの商品試食会を開催していた。これまで主流であった取引先や上司宛に送る歳暮はピーク時の半分ほどにその市場が縮小しているのが現状だが、試食会のテーマを“自分へのご褒美”として前年並みの売り上げを目指すという。

そのテーマ通り今年1年頑張った自分への“ご褒美”にと新たな切り口でもって若年層への需要喚起も狙っている。この試食会では近江かど萬の近江牛少量すき焼きセットが人気であったがこうした傾向は他の百貨店でも顕著で、例えば松屋銀座なども今年のお中元で好評だった下鴨茶寮のあんかけ丼や、和久傳のスイーツを自宅用商品向けとするなどそうしたアイテム数を去年の1.6倍に増やして対応している。

ところでバレンタイン商戦など「サロン・デュ・ショコラ」の大人買いに見られる通り、今や主流は人に贈るものから“自分へのご褒美”がすっかりトレンドになっているが、このお歳暮も今年は人に贈るものから“自分へのご褒美”を各社共にテーマに打ち出してきている。これらの儀礼的な行事も時代と共に徐々にその形態も変化してきているという事の証左か。


またもアノマリー崩れ

注目された今回の衆院選であったが、はたしてというか自民連立政権は過半数割れの大敗となった。今回の振るわない結果においては週末から週明けのマーケットへの影響が懸念され市場関係者は戦々恐々であったものの、蓋を開けてみれば日経平均は小安く寄ったもの灰汁抜けからそこが寄り切りの格好になってあと切り返し、691.61円高と急反発で引けた。

とはいえ今回の衆院選では以前にも書いた、実に1969年からの解散・総選挙で選挙期間中に17回連続の株高実績という所謂「総選挙は買い」というアノマリーが初めて崩れることとなった。期間中も1992年以来の11日連続陰線を引いており何とも心もとない動きであったが、結局解散前日の引け8日の38937.54円から週末の引けは1000円以上も下落した。

それにしても今年は相場に絡むアノマリー崩れが続く。先のオリンピックでも1968年以降のオリンピックで金メダルを10個以上取った夏の大会期間中の日経平均は上昇するというアノマリーがあったものの、周知のように今年は史上最大の暴落の前にこれが脆くも崩れた。それはともかくも自民党内での石破総裁体制は今後どう動いてゆくのか?

選挙後の記者会見で石破氏は国民の厳しい審判だとしながらも続投に意欲を示したうえで野党との連立は現段階で検討していないと述べ、一部の野党も連立を組む気はないと明言している。というわけで今後は政策ごとにそれぞれの野党と連携を模索するという形になるかどうかが焦点となろうが、いずれにせよ来年の参院選まで相場は視界不良の場面が多くなりそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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