インボイスの憂鬱

インボイス制度開始まであと数日というところだが、昨日は首相官邸前にフリーランスなど多数の人々が集まりインボイス制度導入に反対する集会が開かれていた。周知の通りこの制度、10%やら8%やら複数ある消費税の税率を明確にするため現行の請求書に登録番号や税率、税額を追加したインボイス(適格請求書)を導入するもの。

この制度により現在は消費税の納税が免除されている免税事業者が課税事業者となってインボイスを発行しなければ発注元の事業者が消費税の仕入れ額控除が出来なくなり二重課税で負担が増えてしまうワケだが、課税事業者となれば当然ながら今まで払ってこなかった消費税を払わなくてはいけなくなる事で税負担が増える構図になる。

そうなると現状維持という手もあるものの、領収書の問題もあるので替えの利く事業者が複数ある場合は契約減少や、取引価格の引き下げ要求が為されるリスクも同時に付いてくる。実際に東京商工リサーチが都内企業に方針をヒアリングしたところではこれまで通りが57.9%、取引しないとの回答が7.2%、取引価格の引き下げが4.6%となっていた。

事業者によっては進むも地獄退くも地獄といったところも出てこようが、これらを鑑みて国としても激変緩和措置として課税業者に転換した向きの消費税の暫定期間軽減措置や、課税事業者に対しても免税事業者から仕入れ分についての暫定期間減免措置などを講じる模様だが、いずれにせよ来月からはこのインボイスはじめ最低賃金からふるさと納税、新型コロナに関する支援まで生活や家計に影響が及ぶ制度変更が予定され各所の対応が求められる。


サウジが買うもの

先週末の日経紙マーケット面には「オイルマネー、日本株照準」と題し、足元の原油価格の上昇で運用規模が膨らんだ中東のSWF(政府系投資ファンド)などオイルマネーが、日本株の本格買いに向けてSWFの日本拠点の開設や日本人のリクルートなど含め準備を進めている旨などが書かれていた。

当欄ではこのSWFの中でもサウジアラビアのPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)が保有し買い増ししている銘柄を今年始めに取り上げていたが、先週末の日経紙に載っていたこれらの保有銘柄を見ると、買い増しを続けてきた任天堂の保有比率が更に伸びこれ以外にも挙げた東映やネクソン、コーエーテクモなど他の銘柄群もその保有比率をそれぞれ当時より増やしている。

以前にも書いたが将来的に避けられない脱石油依存を見据えた国興しの多角化の狙いが見えるが、そういった意味で日本株と共にPIFの爆買い?が目立つものにサッカー選手がある。昨年のC・ロナウドに続き、今年はネイマールなど超の付く大物選手をPIFが買収したクラブチームがそれまでの数倍の破格な年俸で次々と獲得している。

近年サウジは女性のサッカー観戦を解禁したり映画館も約35年ぶりにオープンさせるなど開放路線を取ってきているが、東映株の買い増しや著名選手獲得などこの辺を背景にしているか。そういえばこの夏に岸田首相が同国を訪問していたが、脱石油依存を見据えた経済的パートナーとしての日本のプレゼンスは高まって来ているだけに引き続き同国の今後の動きには注視しておきたい。


究極のサブスク

さて、知人が海外留学している娘に会いにひと月ほど留守にするというので頼まれて彼女の愛犬を預かることになったのだが、ペットといえば明日からエリエールで有名な大王製紙がペット用品事業に本格参入する。人間用のオムツの製造過程で出る端材なども活用し、猫のトイレに敷く砂や犬用のおむつなど、犬17品目、猫14品目の商品を販売開始するという。

2年ほど前だったかコロナ禍の中での国内のペット事情を取り上げた際に新規で飼い始められた数として20年は前年比で犬が14%増、猫は16%の増加を見せ過去5年間で伸び率は最も高かった旨を書いていたが、米でも飼われているペット数はパンデミック中に急増し22年11月時点での数字は2019年比で約500万匹の増加を見せている。

これに伴いペット関連ビジネスも多様化し、犬の散歩代行をするドッグウォーカーや飼い主が留守中の間の世話をするペットシッター事業などを運営する会社等は好決算を発表、ペット用のネット通販大手もペット用保険事業を立ち上げ処方箋薬購入やオンライン診療を受けられるサービスを開始し、動物向け医薬品大手もFDAから2つの治療薬が承認されるなどペット向け医療の成長期待も高まっている。

昨日に年初来高値を更新してきた冒頭の大王製紙は、グラフィック用紙等が年々減少しているのに抗えない部分がありそれを補い代わるものとして近年市場規模が伸びているペット事業・産業に参入としているが、米ペット製品協会でもペット関連売上高は年平均で約1%成長しているという。年を重ねるほど愛着が深まってくるペット消費は、その命が続く限り無くなることはない究極のサブスクともいえる。


半導体に沸く地価

昨日は国土交通省がまとめた今年7月1日時点の土地取引の目安となる基準地価が発表されていたが、住宅、商業、工業地などを合わせた全用途平均で昨年より上昇幅を拡大させ1%上昇となりこれで2年連続の上昇となった。これまで地価上昇の流れは大都市中心であったが、地方圏も0.3%上昇し31年ぶりにプラスとなるなどこの流れが地方にも広がっている。

地方といえば今年はさながら半導体バブルの様相を呈しており最も地価が上昇したのは北海道の千歳市でトップから3位までを独占、ココは次世代半導体の国産化を目指すラピダスの工場エリアだが1位と2位は昨年比で実に30%も上昇した。また商業地で最も地価が上昇したのは熊本県菊池郡大津町でココもまた30%以上の上昇となっていたが、こちらも台湾の半導体メーカーTSMCの工場建設が大きく影響している。

また、全国で最も地価が高かったのは1平方メートルあたり4010万円の東京銀座「明治屋銀座ビル」であったがこれで此処は18年連続となった。銀座といえば今年はあのH&Mが路面店を再オープンと5年ぶりに銀座に戻ってきたが、コロナ禍真っ只中の頃に空きが出ていた好ロケーション物件も虎視眈々と狙っていた向きですっかり埋まりまた優勝劣敗の新陳代謝が始まるか。


富裕層さまさま

本日はパレスホテル東京から豊穣の秋を祝うとして旬のレストランメニューやペストリーショップ新作から宿泊プランなどの案内が来ていたが、このパレスホテル東京といえば今月アタマの日経紙に平均客室単価が海外の高級ホテルの目安とされる10万円を最需要期3~4月に初めて超えた旨の記事があったのを思い出した。

ちなみにこのホテルの近所に位置する帝国ホテルも「ホテル御三家」と言われている割には外資勢との比較で料金の安さは否めないとかねてより指摘されてきたが、こちらも上記最需要期には平均客室単価が6万円近くまで上昇しコロナ前の3万円台から比較すれば随分と回復したものだ。

これら総じてインバウンドの回復に伴う富裕層の消費に則したものだが、冒頭のパレスホテル東京といえば富裕層の取り込みを推進するべくコロナ禍にスイートルームを増設していたが、首都圏に限らず栃木県の老舗、日光金谷ホテルなども富裕層を取り込むべく1973年以来の別館改装でスイートルームを新設している。

Gotoトラベルで都内のラグジュアリーホテル勢がほぼ半額で泊まれたのも今は昔、春にオープンしたブルガリホテル東京など一泊最低25万円からと現在では欧米富裕層に買い負け?てなかなか気軽に手を出せる値段ではなくなってきている。経済を考えるに喜ぶべきか悲しむべきか複雑な想いだが、今の円安を考慮すればまだまだ上昇曲線を描きそうで各施設の今後の動きも引き続き注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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