マーケットと政治

本日午後に石破内閣は衆議院を解散した。15日公示、27日投開票の日程となるが、この選挙に向け政治資金収支報告書に不記載があった議員など合わせて12人を公認しないと発表している。衆院選は2021年以来3年ぶりのことだが、ちなみに今回の衆院解散は石破総理が今月就任して1週間そこそこの解散となり、総理就任から解散までの期間は戦後最短となった。

一方本日の日経平均は340円高と反発となったが、日経平均といえば先週は石破氏の「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」とのコメントで約1000円の上昇を演じた経緯がある。併せて「株価の日々の動向について私からコメントすることはしない。株価の動向というのは冷静に見て行きたいと考えている」ともコメントしているが、衆院選を前にして株式市場を冷やしたくないという思いも垣間見えた。

この辺は思えば「バイ・マイ・アベノミクス」と訴えた安倍政権時から特に株式市場への配慮の重要度が増してきた感もあるが、利上げ方針など政治優先の踏み込み過ぎたこの一連の光景は日銀の独立性を損なう恐れもあるという市場関係者は多かった。金融政策に踏み込むといえばそういえば米でもトランプ前政権時にFRBに利下げを求めFRB議長を罵倒した一件が思い出されるもの。

斯様に米の場合、資産に占める株式保有比率は半分以上にもなるだけにいまだ10%台の日本とは違い、マーケットに配慮した発言や政策を取らざるを得ない構図になっているのは解るが日米共に金融政策の独立性は確保されるべきだろう。今後日本もこの比率が上がるにつれ、市場が発する警鐘含めマーケットとの対話が重要になってゆく構図に変貌してゆくか。


来年の太陽フレア

本日は北海道各地で「低緯度オーロラ」が観測された模様。これは太陽フレアに伴う磁気嵐に因るものだが、太陽フレアといえば今月1日夜と3日に相次いで大規模な太陽フレアが発生し地球の方向へのコロナガス放出も観測されている。特に3日のそれは7年ぶりの規模でこの影響から長距離通信などに障害が発生する可能性も指摘されていたが、先週末の日経紙社会面でも「太陽フレア 通信障害恐れ」と題した記事が載っていた。

太陽フレアの規模は5段階あって(A、B、C、M、X)で表されるが今回発生したのはその中でも最も大きい規模の分類となっている。国立天文台・太陽観測プロジェクトのXアカウントによればXに分類された今回の規模は史上15番目の大きさだったという。Xばかり出てくるがもう一つのX絡みでは、年明けの能登半島地震でも活躍したスペースX社のスターリンクも太陽フレアの被害に遭った経緯がある。

スペースXは2019年以降、スターリンク向けに多数の衛星を打ち上げてきたが、2年前に新たに打ち上げた小型衛星49基のうち太陽フレアが原因で40基以上が機能停止に陥ったことがあった。試算では太陽フレア等による経済損失は最悪の場合世界で650億ドル、日本円で10兆円以上とされている。太陽の活動は11年周期で活発になったり弱まったりするが、来年くらいに次の活発なピークが来ると予測されているだけに関係各所はこれらに向けた備えが求められるか。


ノーベル賞ウィーク2024

今週はノーベル賞ウィークだ。初日の本日は生理学・医学賞の発表があり、日本では免疫細胞を抑制する制御性T細胞を発見した大阪大学の坂口志文特別教授や、小胞体ストレス応答を解明した京大高等研究院の森和俊特別教授らが受賞候補に挙がっていたが、今年は遺伝子制御で重要な役割を果たす微小な生体分子マイクロRNAを発見した米マサチューセッツ大のビクター・アンブロス教授と米ハーバード大のゲイリー・ラブカン教授の受賞が決定した。

スケジュールとしては明日の物理学賞、9日は化学賞、10日は文学賞、11日は平和賞、そして来週はこれまで唯一日本人が受賞した事が無い経済学賞と続くが、今後日本人に受賞の期待がかかるのは物理学賞では今話題の次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」を開発した桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が候補に挙げられ、化学賞では自己組織化を応用した研究で東京大学の藤田誠卓教授や京都大学の北川進特別教授も共同受賞の可能性が期待されている。

そして文学賞にはもう10年以上になる常連?の村上春樹氏に加え今年はドイツ在住の多和田葉子氏や小川洋子氏の名前が挙がる。ところでかつてのノーベル賞ウィークであれば受賞候補の関連銘柄群の突飛高が風物詩だったものだが、ここ数年はオワコン?なのか全く動意を見せなくなって久しい。いずれにしても日本人のノーベル賞受賞は全部門においてこの2年間無いわけだが、はたして今年は3年ぶりに日本人受賞となるかどうか期待して残りの発表を見守りたいところである。


伝統工芸展2024

先週に終了したが、今年も日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的に日本工芸会が開催する日本工芸の技と美が集結する公募展「伝統工芸展」の第71回が開催され過日これを観て来た。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の一般公募作品1000点以上から選ばれた作品が一堂に展覧されていたが、今年は特別招聘の審査委員に脳科学者の中野信子氏の名があったのが目を惹いた。

今年は1000点を超える応募作の中からその頂点に輝く日本工芸会総裁賞を取ったのが石川県の金工の象嵌花器であったが、他も朝日新聞社賞を取った螺鈿の裏側にまで色をつけ多彩な色あいを表現する“伏彩色”を駆使した螺鈿の箱や、日本工芸会保持者賞を取った銀泥を施した磁器なども枯れた鬼灯の色絵が白と黒とで二分された背景によって違った鬼灯の表情が見えるなんとも幽玄な美しさであった。

また、今から10年以上前の当欄でも伝統工芸展作品の漆芸の美しさを取り上げたことがあったが、これらは今年も日本工芸会新人賞を取った城端蒔絵飾箱の太陽が月に覆われた日食の瞬間を表現した“Eclipse”なる作品や、日本工芸会奨励賞を取った輪島塗の蒔絵箱“盛夏”などよく見ると佇む睡蓮の葉脈を金粉で浮き立たせて表現している芸の細かさに感心させられた。

ところでこの重要無形文化財に指定されている輪島塗といえば直近で石川県能登地方を襲った豪雨の影響が懸念される。今年1月の地震で工房が被害に遭ったことで7月に仮設工房が完成し今月から作業を再開したばかりであったが、今回の水害で工房の8割が浸水被害に遭い作品や道具が泥水に浸かる被害を受けた模様。1年で2度の大災害で離散した職人も多いと聞き、こうした伝統工芸展等への影響も次第に顕著になって来るのが懸念されるが、何とか伝統技術の灯を絶やすことなく継承していって欲しいと切に願う。


秋の値上げ彼是

本日から10月入り、帝国データバンクによれば主な食品メーカー195社における飲食品値上げは今月が年内最大の値上げラッシュになるとしている。その数は2911品目を数え、分野別では全体の46.8%を占めた酒類・飲料が全食品分野で最も多い1362品目となったが、“ビーンショック”が引き続き影響し菓子では10月値上げとなる237品目のうち半数超がチョコレート関連商品で占められているのも目立ったところ。

定番人気のきのこの山やたけのこの里も昨年から数度にわたる値上げが続くが、シャトレーゼもチョコレート関連商品の28品目を今月から値上げするという。先月に当欄でも取り上げた業務用チョコレートで世界3位の生産量を誇る不二製油Gも更なる値上げを検討しているが、比較的安価な植物性油脂等を使ったチョコを提供する事で需要を喚起してゆきたいとしている。

定番人気といえば“うまい棒”も今日から値上げとなり、9月の東京23区消費者物価指数ではコシヒカリを除くうるち米が4割以上の上昇をみせ高止まりが続いたこともあり既に外食ではすかいらーくHDがライス関連商品の値上げが実施されているが、亀田製菓も今日からコメを原料としたこれまた人気の“ハッピーターン”等を値上げする。今月は他にも電気料金やガス料金から郵便料金まで暮らしにかかわるものの値上げや制度変更も多いが、引き続き年末に向けての動向が注視される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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