4ページ目   雑記

新体制下の初会合

さて、植田新総裁になって初めての日銀金融政策決定会合が明日から行われるが、やはり最大の関心事はYCC(イールドカーブ・コントロール)なる長短金利操作の修正がいつ為されるかだろう。新総裁は就任直後の記者会見で、「現状の経済物価金融情勢を鑑みると現行のYCCを継続することが適当。」と述べていたもののマーケットのさがで何らかの動きを期待するフシもある。

一部の外資系銀行ではドル円への影響を仮に4月にYCCの10年債のレンジを0.5%から上限1%に拡大した場合は約5%の円高、長期金利の操作対象年月を5年から7年に変更した場合は約6%の円高、YCCを撤廃した場合は約9%の円高に振れると試算している。ただ今回はGW直前なだけにマーケットの混乱等を避ける意味でも現行継続は適切との発言を撤回してまで決行するような可能性はさすがに低いか。

ましてや欧米での金融システム不安や、先の日銀短観で大企業製造業景況感が5期連続で悪化している事などもあり何らかの動きがある可能性としては6月という向きが多い。しかし米の実体経済の悪化、リセッション入りの足音も聞こえはじめているだけに金融政策の正常化への舵を切るタイミングもなかなか難しいところではあるが、ともあれ目先は明日からの初会合に大注目としたい。


夢の国40年の軌跡

昨日は統合型リゾートを取り上げたが、リゾートといえば「東京ディズニーリゾート」が先週開業40周年を迎えている。40周年のイベント「ドリーム・ゴー・ラウンド」は来年まで続くが、お昼のパレードは5年ぶりに新しく生まれ変わりこのパレードでは休止していたダンサー達がおよそ3年ぶりに復活、ディズニーシーでも40周年限定の水上グリーティングが開催されている。

しかし30周年がついこの間の事のようにも思えるほど時が経つのは早いもので、40年前のたしか雨天だった開業当日に当時の高橋社長が挨拶していた姿が今更ながら思い出される。いまのZ世代が当時のパークを体験したとしたらアトラクションの少なさに驚くであろうが、それでもその当時は異空間の夢の国に誰もが酔いしれたものだった。

それから2年後にはエレクトリカルパレードがスタート、更に2年後にはビッグサンダーマウンテンが登場しこの年にはマイケルジャクソンも同園を訪れている。そして90年代に入ってもスプラッシュマウンテン、ミートミッキーの登場など進化を続け、2000年にはシンデレラ城前をダンスフロアにしてキャラクター達とパラパラを踊ったイベントも懐かしい思い出だ。

ところでよく緊急時の対応含めホスピタリティーが賞賛されるディズニーリゾートだが、確かに落とし物など見つかれば綺麗に梱包されたものが自宅に届けられたほか、園外でもオフィシャルホテルに宿泊した際にはチェックインでフロントスタッフから「もしよろしければいかがですか?」とコーナースイートにアップグレードサービスを行ってくれた事も感動した思い出として残っている。

そういった感動体験の憶えから東日本大震災の時はリゾートの復活に期待し急落していた株に恐る恐る買い注文を出したが、その後株価が倍になるのにさほど時間はかからなかった。今も保有していればの話と悔やみながら言うが、分割等を経てその株価は買い値から10倍以上を示現しこちらも夢の国らしい。リゾートの拡張戦略はキャパの都合で一区切りの段階といわれているものの、今後も様々な戦略で人々に感動を与え続ける夢の国であるのは不変だろう。


IR認定

さて、先週政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致に関するIR推進本部で大阪府と大阪市の整備計画を認定すると決定している。統一地方選の結果を受けてのタイミングという感だが、これが実現するとなると日本では初めてのカジノ併設施設となるわけで大阪府などは早ければ2029年秋から冬の開業を目指すことになる。

いつもながら気になるのはその経済効果だが、報じられているところの予想では年間来訪者数は約2000万人、近畿圏だけでその経済効果は年間1兆1,400億円が見込まれるという。とはいえあのUSJの最高来場者でさえ年間1500万人弱ということで、この見積もりにやや無理があるとの一部指摘もあるがこの辺は蓋を開けてみなければというところか。

いずれにせよこうした胸算用にいち早く反応するのは株式市場、米ベガスにカジノ関連の子会社があるテックファームHDや貨幣識別機械製造の日本金銭機械など関連銘柄の本命は政府認定と前後し揃って年初来高値を更新してきている。インバウンド需要の活性化にも期待がかかり、折に触れ二番煎じの物色対象も広がりを見せるか。

カジノだけにギャンブル依存症への対策が先ず立ちはだかり収益構造もそのカジノに依存する構図など当然ながら課題も多いが、大阪万博と並びその経済活性化の起爆剤として期待は大きい。今回いち早く政府認定された大阪だが、先行事例の成功が後を左右するため文字通りIR政策の試金石となるか。


弁済順位逆転の衝撃

先週末の日経紙一面では「AT1債、国内富裕層に」と題し、先の経営危機に陥ったスイス金融大手クレディ・スイス・グループの無価値となったAT1債(永久劣後債)を三菱UFJモルガン・スタンレー証券が約950億円分、国内富裕層の個人投資家などに販売していた旨の記事があった。

近年の低金利下で引き合いが多かった劣後債のリスキーな面が改めて露呈してしまった格好だが、国内ではこの三菱UFJモルガン・スタンレー証券以外でもまだ数社がこのAT1債を販売していたとみられる。余談ながら胡散臭い外資に買収された後に経営破綻の道を辿った某取引員も最後の頃は高利率の劣後債を一部顧客に勧めていたのを思い出した。

ところで教科書的な弁済優先順位を無視した処理の副産物が後々マーケットに影響してくるか否かとCSの破綻時に書いていたように、クレディスイスブランドのファンドからは既に約7500億円が流出したほかAT1債の発行コストが上昇し欧州では一部銀行も早期償還の見送りを決めるなどの影響が広がっている。

とはいえ斯様な逆風下で三井住友FGは明日起債予定のAT1債の発行に向け先週から本格的な需要調査に入っているほか、三菱UFJFGも5月下旬以降にAT1債の起債を予定しているなど果敢に新規発行を目指す動きも出ている。はたして日本の大手行によるこれらの発行が世界のAT1債市場回復のトリガーとなるかどうか注目しておきたい。


日経紙で思い出す怖い絵

さて、今週の日経紙夕刊の文化面「こころの玉手箱」はドイツ文学者の中野京子氏の連載だが、第一回目の10日付け月曜日には中野氏が監修した美術展について書かれていた。2017年に上野の森美術館にて開催された「怖い絵展」がそれだが、当時はこの美術館に隣接する上野動物園もつい最近中国に返還したパンダのシャンシャン誕生に沸いていたのを思い出す。

その辺は兎も角も、文中で最初に出てくる目玉作品としたわずか9日間の女王を描いたドラローシュの大作「レディ・ジェーン・グレイの処刑」、末尾の方に書かれていたアートショップで販売された布製ブックカバーの表紙に使われたという「オデッセウスに杯を差し出すキルケー」などの不倫モノ?等々、いずれもホンモノの迫力を前にしばし見入ってしまったのを思い出す。

他にも複数存在するといわれるクレオパトラの毒蛇を使った自害を描いた艶めかしい絵や、主人公が居ない空間を描いたシッカートの「切り裂きジャックの寝室」など、本で見ていたモノと実物とではやはり全く別モノと実感したものだ。願わくは作品の背景から怖さを味わい、作品に恐怖を読み解くヒントがあるという中野氏の視点から選りすぐられ世界中から作品を集めた美術展の第2弾が待ち望まれる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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