3ページ目   雑記

枯れ木に花?

先の日曜日の日経紙・TheSTYLEでは「よみがえるゴールドラッシュ」と題し、現在も稼働中の鹿児島県伊佐市にある住友金属鉱山の菱刈鉱山を取り上げていた。同鉱山は生産開始から今年でちょうど40年、これまでの産金量は273トンに上るがこの驚異的な産金量の背景には同鉱山の鉱石が世界主要鉱山平均の4~6倍にもなる1トンあたり平均20グラムもの金含有量を誇るからに他ならない。

ところでこの金鉱山といえば昨年の9月に一度取り上げたところの1962年に閉山した北海道の静狩金山周辺はどうなっているのだろう?ここはオーストラリアの採鉱企業であるキンギンエクスプロレーションの子会社が同金山の採掘再開に向けて試掘権を取得したとかだったが、他にもカナダなどの一部企業が日本の金山開発に向けて調査を進めている旨なども耳にする。

ただ上記の静狩鉱山など再開発計画に関する住民説明会を開催したものの、水資源などの環境汚染懸念から事業反対の声が相次いだ経緯がある。史上最高値を更新してきているゴールド、今後も価格が上がって行くという前提であればこれまで採算ラインに乗らないとみられていた鉱脈にも新たな注目が集まろうというものだが、そもそも鉱脈が生きているのかどうか、また住民の理解などジパング再来への道のりは遠いか。


宇宙ベンチャーの試練

今年の1月にスペースXのロケットで打ち上げられた宇宙ベンチャー、アイスペースの月面着陸船“レジリエンス”だが、月面着陸予定だった先週末に関係者が固唾をのんで見守るなか着陸直前に通信が途絶え着陸は失敗したと発表された。同社は一昨年の4月にも月面着陸に失敗しているが、この時に次いで2度目となった今回の日本の民間企業として初の月面着陸という挑戦も果たす事は出来なかった。

これを受け東証グロース市場に上場するアイスペース株は、週末のストップ安に続き週明けの本日も終日にわたり売り気配を切り下げ比例配分のストップ安と続急落し、引け後もなお1000万株近い売り物を残している。また同社以外にもグロース市場に上場するSynspectiveなど他の宇宙ベンチャーまで週末に続いて続落するなどこの失敗が飛び火する格好となった。

ところでこの度の計画にはJAXAの「SLIM」同様にオールジャパン体制で三井住友銀行や日本航空、高砂熱学にスズキからシチズンなど、名だたる大手企業が10社超えで参画している。先に政府も宇宙基本計画の重点事項を決定し、民間の宇宙事業を促進するため宇宙活動法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を示しており日本としても国際競争に劣後しないよう技術開発や実証等を強力に支援する必要性を強調している。

今回の失敗で上記の国際競争における劣後という部分が懸念されるところではあるが、今回の件も前向きに考えれば民間企業の将来のビジネスを見据えた経験の蓄積と捉えると貴重な経験だったともいえるか。いずれにせよ月面ビジネスの市場は2040年までに累計で約24兆円に成長する見込みとの試算がある。2027年には3回目となる次の打ち上げの計画があるというが、これら見据え一層の官民連携の重要性が今後も問われるか。


茶葉も高騰体勢?

過日知人よりシンガポール「TWG」の限定品を貰ったのだが、これがなかなかレアなフレーバーだけあってとても美味しく頂いた。ところでこの紅茶と言えば先週の日経紙夕刊・値札の経済学では、主要生産国の干ばつや大雨による洪水被害等の異常気象や茶葉の病害、主要生産国の経済危機などを背景にして紅茶の平均価格はここ5年間で1割上昇している旨の記事を見かけた。

お茶といえば紅茶に限らず国内でも抹茶葉の価格が上昇傾向にある。上記の紅茶と同じくここ数年で見てみると2020年はキロ当たり2168円だったものが以降毎年続伸し、2023年は3141円と3割ほど上昇してきている。こうしたことにより煎茶生産量が5年間で4割ほど減少してきている影響を受け、当の煎茶もまたキロ当たり取引価格は昨年の14271円から今年は16637円と前年比で約2割上昇してきているという。

都内でも抹茶専門店などここ数年で客層がガラリと変わり今や店内は殆どがインバウンド客で溢れかえっているが、こうした需要に答えるべく農水省は先月に抹茶生産量を増やす方針を発表している。茶農家が煎茶から次々に碾茶(抹茶)へ移行しているのを見るに、近年東南アジアでも中国人による悪魔の果物”ドリアン需要の高まりによりコーヒー農家のドリアン転作が増加しロブスタ種の高騰に拍車がかかっている旨を思い出した。

転作といえばもう一つ、最近のコメの高騰を受けて日本酒を作る原料の酒造好適米が食用米に対し3000円以上下回る逆鞘減少となった事などを背景に、酒造好適米を作っていた農家も更に高く売れるという事で食用米への転作を図る向きも多いという。嗜好傾向や市況如何で斯様に生産の変化が彼方此方で起きているが、今後もこれらの動向に注視しつつ市況の推移に注目しておきたい。


人手不足の継続性

先に総務省が東京都区部の消費者物価指数を発表し2年4か月ぶりの高水準となっていたが、恒例の主要な食品メーカーにおける今月の飲食品値上げ動向の方は帝国データバンクによれば1932品目と前年同期比から約3倍に急増、これで年明け以降は6か月連続で前年同月を上回り連続増加期間としては記録的な値上げラッシュの1年となった一昨年の6月以来、2年ぶりの長さになったという。

食品分野別では調味料の962品目が最多となり、次いで加工食品の755品目となるが、ここではやはりコメの高止まりを受けサトウ食品はじめとして各社パックご飯の値上げが目立ち、コメ関連では他には味の素の御粥や岩塚製菓の煎餅も値上げされる。高騰といえばカカオ関連も一向に落ち着く気配がなく、明治など1日出荷分からチョコレートなど9~36%値上げする。

先月も一寸触れたが値上げ要因では原材料の価格高騰や物流費の上昇、人手不足による労務費の上昇などが複合的に重なっている模様だが、この全体の53.6%を占める人件費は同社が要因別集計を開始した2023年以降で最高となったという。天候状況如何で落ち着く原材料費等と違い人手不足が落ち着くのは至難の業、今年の値上げは2年ぶりに年間2万品目を超える可能性が高いとみられるが、この辺の値上げ要因の動向には引き続き注意しておきたい。


本当だったドコモの買収話

さて、先週はNTTドコモが「住信SBIネット銀行」を買収する方針を固めたとの報があった。当欄では昨年12月にこの住信SBIネット銀行をNTTドコモが買収との一部報道を取り上げていたがやはりというか具現化することとなった。携帯大手といえばこれまでKDDIやソフトバンク、楽天などがそれぞれ銀行業に参入しておりこれで通信大手全社が傘下に自前の金融機関を持つことになる。

これに伴い先月30日からNTTドコモが行っている同社へのTOB価格は4900円ということで、先週末の同社株は2300万株以上もの買いを残して比例配分のストップ高で引け、本日も同価格へのサヤ寄せで日経平均が大幅続落するなか続伸していた。その口座数825万口座、預金残高は約9兆8千億円を誇る同社だが、一昨年のスタンダード市場への上場からこのTOB成立をもってわずか2年で上場廃止となる見通しだ。

思えば住信SBIネット銀行が上場した際に、当欄では異業種のサービスを既存の金融サービスと連携出来る新たなプラットフォームとして注目されているBaaSの領域で先行している同社は或る意味アドバンテージになるかと書いていたが、これでNTTは金融サービスのインフラ企業へと一歩踏み出し一層BaaS時代の到来も近づくことになる。

斯様に通信事業も携帯利用料だけで稼ぐ時代は終焉を迎え、銀行など解約に繋がりにくい長期契約を見込める業種と連携することで客を囲い込み、その経済圏を如何に拡大させられるかが勝負所となって来ている。こうした金融サービスを巡る競争激化の動きは当然なはら証券やメガバンク等に取っても脅威となるわけで、今後は彼らにもいろいろな動きが出てくるのは想像に難くなく引き続きその陣取り合戦が注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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