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消えるあの時代の渋谷

さて、店頭で“その日まで”とカウントダウンを設けていた「西武渋谷店」が昨日に58年の歴史に幕を下ろした。同店はA館・B館・ロフト館・シード館からなる構成であったが、セブンアンドアイHDがそごう西武をフォートレストに売り渡した過程で地権者の再開発計画の協議も難航続きだったという。還暦?クラスの同店は当時の親会社だったセゾングループ創始者の肝煎りで誕生したが、同じく肝煎りだったホテル西洋銀座の後を追い消える事になる。

同店への思い入れは世代で全く違ったものになってくると思うが、思えばアパレル一つ取ってもDCブランドの火付け役は此処であったし、エルメスやアルマーニをいち早く導入したのもまた此処であった。これがバブル期を経て渋谷の客足も新たなトレンドの方へ向い、近年では駅周辺に行われている大規模大開発で次々と新たなコンセプトの商業施設が誕生、そういった中でトレンドを生み出す街に居続ける意義も次第に失せていったのかもしれない。

しかし渋谷の百貨店といえば共にしのぎを削ってきた東急東横店や東急百貨店本店などのアイコン的存在だった大箱も既に閉店しているが、この大箱といえば更に来月にはこの西武渋谷店に続いてあの“ハンズ渋谷店”も閉店してしまう。これまた西武A館B館ではないが、各フロアをABC分けするスキップフロアが特徴だった。いずれにせよ大規模再開発の裏でお役御免の大箱が消えゆく姿は、青春時代を此処で過ごした向きには寂しいものだ。


背徳と健康

今でもそうなのか少し前まで「ギルティフード」がやたらと流行っていた感じがしていた?が、スーパーに買い物に行った際にサントリーのNOPEギルティがいまだギチギチに棚に並んでいたのを見た。こういった一方で昨日の日経MJでは米のプロテイン人気の流れなども背景にして森永乳業が高タンパク質の商品を身近な商品を中心に拡大している旨の記事を見かけた。

ところで森乳といえば海外の子会社だったか、ホエイの精製に強みを持つ企業だけにこういった部分に商機を見つけるのは自然な流れだったか。同社といえば営業利益の構成でも海外の比率が高いだけに今後はこうした部分の舵取りにも注目しておきたいが、その辺は兎も角も同社のたんぱく質を打ち出した商品の今年3月の売上高は20年3月期比で約2倍にも拡大しているという。

厚労省の方でも日本人の食事摂取基準で1日当たりのたんぱく質接種の推奨量など設けているが、森乳の調査でもこれが十分に取れていないと回答している向きは約7割にも上るという。“ギルティ”人気で増殖した?GLP―1受容体作動薬常用者増加などもあるだけに、そうした向きの対策とも相まって“対”の部分への商機を各社まだ模索する展開が続くだろうか。


基準地価2026

先週はこの時期恒例で国土交通省から2026年の基準地価が公表されている。大型再開発やインバウンドの増加などにより住宅地、商業地、全用途共に上昇していずれも5年連続での上昇となっていたが、全体をけん引したのは三大都市圏で全国最高地価地点は不動の21年連続トップで明治屋銀座ビルの1平方メートル当たり5250万円、一昨年の4210万から実に1000万円以上も上昇している。

この東京だが商業地地価の平均は1平方メートルあたり平均がピークのバブル期1993年以来、33年ぶりの高水準になっているという。コロナ禍後の出社回帰などを背景に旺盛なオフィス需要から需給バランスが取れた適正な空室率の目安である5%を下回り、日経紙では都心の5区では大規模オフィスの平均空室率は6月末時点で0.8%と出ていた。

今後の5年間の供給ペースは低水準で空室率の低下基調は27年まで続き、これにより受給バランスは一層逼迫しオフィス賃料相場の上昇は続くとも書かれていたが、それにしてはREITの弱さが際立っている。東証REIT指数は年初来で13%安に沈みREITのNAV倍率(株式でいうところのPBR)に至っては上昇している全銘柄が1倍未満の水準に甘んじている。

もっとも足元での金利上昇傾向を背景に利益成長の側面から上記の低迷は致し方なく、高品質オフィスの利回りは2%台半ばぐらいになってきている一方で新発10年物国債の利回りはこれを上回ってきており、であればわざわざという構図も否めない。“陰極まれば~”という相場格言もあるが、今後は金利上昇やインフレを当該不動産が生み出すキャッシュフローがどの程度上回ってくるかも焦点となって来ようか。


あの店のあの味

昨日の伝統工芸展に行った際に三越本店近辺を歩いていて思い出したのが、先月の日経紙ヒットのクスリの頁で「名店の味、MA&で承継」と題し、名店の味がなくならないようにレシピや屋号などを継承するミニM&Aを手掛ける企業を取り上げた記事。この冒頭では、東京・日本橋にツタが絡まった建物でスープ状のカレーを出す店があったが閉店しもう食べられなくなり“ロス”になった旨の書き出しであったが、これを読んで懐かしい想いが蘇った。

今のマンダリンオリエンタル東京とコレド室町テラスとに挟まれたとんでもない一等地にあったこの店は近所で私も何度か行ったことがあったが、同紙でも“ツタのカレー店”と「通称」で書いている通り建物の内外に店名が無く、外看板には「珈琲」と書かれていたものの店内でコーヒーを呑む客を一度も見たこともなく、店内は座ると否応なし?にカレーが出される一択のなかなか癖のある店だった。

斯様に日本橋には無くなってしまった名店が幾つもあるが、ここ数年でも幾つも思い浮かぶ。近所にあった「都寿司」は軽く創業100年を超える老舗であったものの5代目婿養子が起こした不祥事で突然閉店、鮪は言わずもがなランチの“にもの丼”も忘れられない味だった。TCATにあった唯一無二の味の担々麺が人気だった「龍鳳」も人手不足に苦しんでいたが力尽き、住宅街のクラシックな佇まいの中で海軍ゆかりのフレンチを堪能出来た老舗の「スコット」も消えた。

他にも創業家の内部分裂で本家の味の継承者が独立してしまったパターンや、名前は残っているが同業に買収され移転した例など日本橋には数多ある。これらは辛うじて同じ味を味わうことが出来るが、確かに上記の“消えた名店”の味の再現店がこの先現れるのか未知数だ。こうした無形資産だけを継承対象とする手法はこれまでにない新手といえようが、普及すれば“ロス”の寂しさも半減することになろうか。


伝統工芸展2026

昨日で終了したが、日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的に日本工芸会が開催する日本工芸の技と美が集結する公募展「伝統工芸展」の第73回が開催され先週これを観て来た。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の一般公募作品1071点から選ばれた作品と“人間国宝”の最新作を含む約550点を一堂に展覧していた。

2年前の伝統工芸展で「輪島塗」に当欄で触れた際には、ちょうど年明けの大地震で工房が被害に遭ったことから仮設工房で作業再開するも続いて能登地方を豪雨が襲いその影響が懸念される旨を書いていたが、今年も石川県からは輪島塗ほか素晴らしい作品が数多く出品されていて一先ず安堵した。被災地といえば直近では熊本大地震もあったが、この熊本からも素晴らしい作品が出品されていた。

そういえばこの熊本、この7月に発生した大地震の復興を後押ししようと各所で支援の動きが見られるが、ラグジュアリーホテルなどではホテルニューオータニが熊本県産の栗を使ったモンブランを販売したり、帝国ホテルでも熊本県産の商品を展開している。いずれにせよこうした支援の輪のもとに日本が世界に誇る伝統技術の灯を絶やすことなく継承していってほしいものだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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