波乱への構え?

昨日の日経紙グローバル市場には「新興国の中銀、金買い再び」と題し、WGCの集計では中銀や公的機関の4~6月の金の購入量が1~3月に比べて5割増加し200トンとなるなど、新型コロナウイルス禍で中断していた中央銀行の金買いがタイやハンダリーなど新興国中心に再度活発化してきた旨が出ていた。

新興国といえばこの頁の1~6月の金準備増減一覧の増加率上位でインドの29トンの次に25.5トン増でランクインしているウズベキスタンなどは昨年ロシアと共に準備資産の一部として保有していた金の売却の動きが目立っていたものだが、世界の中銀で昨年最大の買い手となっていたトルコは継続増加でこのウズベキスタンの次に位置している。

他に首位のタイの金準備残高は過去最高を更新し、ブラジルの金準備残高も2000年11月以来ほぼ21年ぶりの高水準となるなど新興国の積極購入が目立つところだが、米のテーパリングも現実味を帯びてきているだけに国境を越えたマネーの動きなど通貨波乱に備え各国の身構える動きが一層顕著化している構図だろうか。


投機逆回転

さて、トヨタショックとでもいうべきか今月はトヨタ自動車が新型コロナウイルスの感染拡大や半導体不足などを背景に、9月の世界生産を計画から4割減らす方針を先に明らかにしている。これを受け需要冷え込みへの懸念からこの週は、自動車の排ガス浄化などに使用するパラジウムの国際価格が先週初めに約6か月半ぶりの安値に沈んでいる旨が先週末の日経紙商品面に出ていた。

パラジウムといえば春以降の急騰で5月には史上最高値を更新し、他メタルも同じく自動車の排ガス浄化触媒装置に使うロジウムなど3月には史上最高値を更新し前年同期比で実に5倍近雲の急騰を見せたものだが、上記のパラジウム同様に足元でははやくも半値水準に近いところまで沈んでいる。

トヨタ自動車の減産は世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で4割以上減産した昨年6月以来の規模となるものの、2022年3月期通期の生産計画930万台など据え置きとし株価も先週は小戻ししていたが、この度の連動に見られるように他のメーカー含めた生産動向に工業用メタルも斯様に敏感になってきている。

またこれらの親玉?プラチナもEUのディーゼル車全廃方針や米金融緩和の縮小観測などを受け今月上旬には約8か月ぶりの安値まで下落している。ただこちらには燃料電池車需要や、この度の東京五輪で見せ場を作った「水素」生成の絡みの潜在需要も控えている事でこの辺をどう織り込んで来るのかというところで、今後はPGM系も跛行色が顕著になってくるかどうかこの辺にも注目しておきたい。


コメのガラパゴス化

さて、今から10年前に試験上場が始まりこれまで2年ごとの期限延長を続けてきたコメの先物取引だが、先週末には大阪堂島商品取引所から本上場への移行が農林水産省に認可されなかったとの発表が為されている。試験上場として72年ぶりの復活であったが、4回にわたる延期も取引所として市場継続性を担保したいとの判断もあっただろうがこれ以上はメドもつかないと完全撤退を判断した格好か。

当欄でもこれまで約10年この経緯を追ってきたが、予てより上場企業大手の会員資格取得に続きSBIとも提携して売買システムの提供を受けいろいろ紆余曲折もあったものの、今年に入ってからはこのSBIHDが主要株主となり株式会社化を実現、取引量など各所では改善傾向にあったのも虚しく本上場申請の度に認可条件が変えられるなど守旧派の壁を崩すには至らずであった。

上記の通り認可基準も曖昧で生産者側も農水省の納得のゆく説明も無いと批判する声も多いが、言わずもがなJAグループや自民党の農林族には守旧反対派が幅を利かせており次期衆院選が近いなかJAなどへアピールを狙った動きとも取れなくもない。いずれにせよこれでまたコメ産業の競争力向上どころか、市場競争を避ける旧態依然の形態が継続される事となるか。


物価上昇の良し悪し

一昨日の日経紙・グローバル市場では「銅価1万ドル時代」と題し、代表的な非鉄金属である銅の国際価格がLME(ロンドン金属取引所)の先物価格で先月1万ドル超となり2011年2月に記録した史上最高値を10年ぶりに更新したが、脱炭素の気運から世界のグリーン革命を背景にして一時的な高値示現では無いとする見方が書かれていた。

世界需要の半分を占めるようになった中国の需要が前回の波なら、今回の波はその需要に匹敵か上回る可能性があるグリーン革命によるものという。ところで銅が高値の波を作る度に起こる社会現象として銅合金製品を狙った盗難事件多発というものがあるが、果たして今回も度々TVや紙面を賑わす盗難劇がぼちぼち出て来るのだろうか?

その辺は兎も角、直近では牛肉がこの中国需要の波に呑み込まれ国内外食企業や中小のスーパーなど急遽対応を余儀なくされている模様だが、気になるのは斯様に脱炭素と共に世界景気回復の流れから冒頭の銅はもとより原油に穀物、木材から上記の牛肉などの商品価格が軒並み急騰している点か。

既に食用油は今年に入って大豆相場の高騰を背景に一部で値上げが3回目となり、大豆に連れ高となった小麦の影響で小麦粉やパスタなども一部値上げが発表されている。原料価格高騰が価格改定を上回るケースで企業が更なるコスト高の転嫁を進めれば上昇圧力も自ずと強まる事になるが、物価上昇もロケーションで良し悪しが二分されるだけにアフターコロナに向けこの辺も注視しておきたい。


強弱材料併存

さて、今月に入ってから早々に金価格は1800ドルを回復し先週も一段と水準を切り上げはや1900ドルも指呼の間となっているが、先週末の日経紙商品面にも「金ETF、資金流入超に」と題し世界の金ETFが保有する金現物の残高が5月に入り2週間連続で増加し第2週の流入超幅は13.1トンと1月8日以来約4か月ぶりの高水準となった旨が出ていた。

とはいえこの金といえば米の長期金利上昇等を背景としてWGCによれば今年1月〜3月は95億ドルの流出超過となり、四半期では13年4月〜6月以来の大幅流出を演じていた。これが景気回復期待等を背景に市場が予想する将来の期待インフレ率が上昇、その結果名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利が低下し金利が付かない逆相関関係の金には追い風となっている構図。

ただ上記の約1兆円にも及ぶ流出超過の裏で金嗜好の強いインドの輸入関税引き下げや、双璧である中国の春節が需要を喚起するなどの背景からアジアでは残高が増加、欧米投資家の売りにこれらが受け皿として効いた格好といえるか。上記のように強弱材料が併存している下で方向性は見極め辛いものの、何れにせよ環境に左右され難い実需の買いが下支えとして効いている構図には変わりないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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