悲願のETF承認

ビットコインの現物ETFを巡っては当欄でも度々取り上げてきたが、先週にSEC(米証券取引委員会)は、同ETF上場を申請していた米運用会社大手ブラックロックやフィデリティ、アーク・インベストメンツ等の10本をはじめ、グレースケール・インベストメンツが求めていたビットコインで運用する未上場投資信託のETF化も認めている。これまで20軒以上の申請が却下されてきただけに悲願だった関係者の想いもひとしおだろうか。

そういえば上場承認の前にはSECのX公式アカウントがハッキングされ「同ETFの申請を承認した」との偽情報が流れ、当のビットコイン相場は急騰した後に急落する乱高下の憂き目に遭っていたが、はたして初日の取引額は今後半減期も迎えるだけに合計で45億ドルを超え早くも次期期待からイーサリアムなども2割近く上昇する場面も見られた。

ビットコインはデジタルゴールドとも言われているが、ゴールドといえば金ETFがNYに初めて上場した時はこれをポートフォリオに含めるハードルが下がり金需要を高めるまでになったが、このビットコインETFがその先例である金ETFに匹敵し暗号資産業界に大きな変化をもたらす可能性のあるモノになるか否かは未知数。とはいえこの時同様に投資家のハードルは一気に下がる事になるだけにどの程度彼らを呼び込めるかがキーとなって来るか。


先物も1万円大台超

このところ堅調相場が続くゴールドだが、先週末のNYでは金先物が20年8月に付けたこれまでの最高値2069.40ドルを抜き、約3年4か月ぶりに過去最高値を更新した。この流れを受けJPX(日本取引所グループ)の大阪取引所でも週明けに先物の中心限月がザラバで10028円を付け1982年の上場以来、初の1万円大台を超えて最高値を更新してきた。

1日のFRB議長の講演では早期利下げ観測の牽制と取れる発言が聞かれたが、これより先の先月末のFRB理事の講演で積極的なタカ派とみられていた同氏が利下げに言及していたこともあって市場は現在の金融引き締めは緩和に向かうとの思惑が広がっている。これで米長期金利も4.1%台と約3か月ぶりの水準まで低下、ショートカバーも巻き込み金に矛先が向かった格好だ。

現物や先物が最高値更新ならETFもまた然り、国内現物保管型の三菱UFJ信託の純金上場投信、ワールドゴールドのSPDRゴールドシェア、野村のNEXT金価格連動型上場投信、WisdomTree金上場投信等々、多いもので商いを前日比9倍近くも増加させていずれも軒並み年初来高値を更新してきている。

目先はちょうど1週間後に始まるFOMCに注目というところだが、折しもイスラエルとハマスは交渉決裂で交戦が再開しこれにウクライナ侵攻と依然燻る地政学リスク、分断の深まりで基軸通貨ドルの信認低下には歯止めがかからずドル指数も3か月ぶり安値を示現、米ドル保有のリスクを意識した中銀の金買いなど今の金は複合要因が背景にある点がこれまでと構図を異にする事を認識しておきたい。


初の1万円大台超え

本日、田中貴金属工業が発表した金の販売価格が1グラム10,001円(買取が9,886円)となり史上最高値を更新している。中国経済の減速懸念をはじめインフレ圧力が根強く残る米の金融引き締めが長期化するとの観測から日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いも続いていること等が背景だが、1万円の大台に乗ったのはこれが初の事である。

これでまたTVでは金製品などを中古品買い取り店に売りに来る客の姿を報じる光景が増えそうだが、売り急ぎが目立つ本邦勢とは逆にWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)がまとめたところによると4~6月の金地金・金貨の需要でトルコと中東が80トンと昨年2~3月比で2.7倍に増えている旨が報じられている。

このトルコといえばインフレのなか、足元で通貨リラの下落も止まらず過去最安値圏での推移が続いていることで国民が安全資産として主軸の金を買い進めている。後者の中東もエジプトなど先月の物価上昇率が過去最高となり、通貨のエジプトポンドも対ドルで1年半前に比べ半分の価値に沈んでいるなどトルコと構図を同じにしている。

所謂肌感覚で資産防衛の意識が染みついているといったところだが、各国中銀の純購入量も6月時点で2月以来、4か月ぶりの買い越しに転じている旨を上記のWGCが報じている。特に増加が目立ったところでは8か月連続で保有量を増加させている中国に、ポーランドやウズベキスタンも金買いを進めている模様で、この各国中銀の動きも引き続き注視してゆきたい。


脱米ドル依存?

一昨日は米地域金融機関の連鎖破綻を取り上げたが、そうした事も一部背景にあり安全資産とされる金が2000ドルの大台超え後も堅調持続している。この辺は先の日経紙総合面でも取り上げられていたが、ここでは特に新興国中銀を中心にした金買いが顕著で、先週発表された23年1~3月期の金買いは1~3月期としては10年以降で過去最高を記録している旨が書かれていた。

足元では特にトルコや中国の金の積み増しが目を惹くが、上記日経紙の文中では中国の3月時点の金の総保有量は約2068トンで過去5か月の間に100トン以上保有を増やした旨が書かれていたが、7日に発表された直近の保有量は約2076トンと更に8トン増加とこれで6か月間連続の増加でこの期間に6.6%積み増した旨が明らかになっている。

斯様に米と一定の距離を置く国は米ドル中心の既存の通貨の覇権に挑み脱米ドル依存を鮮明にしてきているが、確かに実質金利が上昇しているにもかかわらず金が史上最高値を舐めに行く動きを見せているのはこうした要因以外でも何らかのリスクプレミアムを乗せているともいえる。上記の背景以外にも目先では米債務上限問題等も控えているだけに、今後も折に触れ物色の矛先が金に向かう素地が整っているのは間違いの無いところか。


堂島限日取引始動

今週から堂島取引所では金、銀、白金の先物「限日取引」がスタートしている。先物取引には通常限月が存在するが、これは限月制ではないので決済期限が無く無制限に売買のポジションを持ち続けることが出来る。貴金属先物といえばJPX傘下のOSE(大阪商品取引所)が知られたところだが、こちらは取引単位を更に小口化しているのが特徴となっている。

限日取引は上記のOSEでも「東京ゴールドスポット100」が8年前からスタートしているが、限日取引自体はこれより更に5年前に「日経・東工取指数」がこの取引形態で上場していた事がある。ただ残念ながら値洗いにおいて理論価格との乖離が著しくなるなどでリクイディティーの低下を招き、限月取引へ回帰するも結局は上場廃止となってしまった経緯がある。

それは兎も角もこの堂島取引所、周知の通り2011年にコメ先物の試験上場を開始し以降10年にわたり5回の期限延長してきたものの結局農水省の認可を得られず事実上の取引ゼロ状態であった。このコメ先物の再上場も目指す同取引所だが、先ずは再始動となるこの貴金属の限日取引がコメ先物に代わる柱となり得るかどうか今後に注目したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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