密輸金の入札

さて、昨日は大阪税関が昨年までの4年間に空港や港で摘発した密輸事案で押収した金100キロを売却すると発表している。金の密輸といえば消費税分の差額狙いが目的だが、足元では国際価格の高騰にこの円安も背景に史上最高値を更新してきており、今回入札分の時価は約12億9千万円相当となり全額国庫に納められることになる。

斯様に金価格の右肩上がりの上昇に歩調を合わせるように落札金額もうなぎ登りで、22年は大阪税関で約87キロが約7億5千万円、昨年の東京税関では約150キロが約18億7500万円となっている。ところでこの金、WGC発表の世界金需要ではETF向けからの流出超過が目立つ一方で個人が保有する地金やコインが増加、特に中国の68%増やインドの19%増等が目立つ形となった。

また依然として各国中央銀行が基軸通貨ドルの代わりに金保有を増やす動きも継続され、純購入量は第一四半期としては過去最大となり、こちらでも中国人民銀行の4月の金保有が18ヵ月連続で増加するなど中国の動きが目立つ。この中国では現物価格にプレミアムまで乗っている状態というが、何層もの複合的な要因で高止まりする金価格は分断と世界経済の不安を映すバロメーターとして今後も注視が怠れない。


最近の金

さて、昨日は「銀」を取り上げたが本日は「金」である。今週アマタまで日本橋高島屋で開催されていた「大黄金展」で先週に販売価格約1040万円の純金製茶碗が盗まれた事件が話題になっていたが、高島屋といえば昨年のクリスマスにはネット販売したケーキが800個以上も崩壊し大騒ぎになったものの原因が謎のままだったり、京都店の限定商品が1人に全て買い占められたり、羽生結弦展で販売された限定グッズがネットで40倍以上の高値で転売されたりと何かと話題を提供する百貨店だなと。

その辺は兎も角もこの「大黄金展」では確か昨年も窃盗被害が報じられていた記憶があるが、近年の市況高も喧伝されており自ずとその注目度も高くなるというものだ。当の金価格は直近でも国際指標となるNY先物価格やロンドン現物価格が初めて1トロイオンス2400ドルの節目を突破しており、国内価格も指標の田中貴金属工業の販売価格は今週に入って1g13000円の大台を超え史上最高値を更新してきている。

ところで冒頭の盗まれた黄金茶碗は江東区の買い取り店にてたったの180万円で売却したと供述しているというが、盗まれた約1040万円の24金製の黄金茶碗は380gのシロモノ。18金製でもなく単純計算でもモノの価値としては当日相場で490万円以上ある。という事は金工作家等のプレミアムが倍以上も乗っている計算になるが、それを実勢の約4割弱で買い叩いたこの店もさぞやニンマリだっただろう。しかしそれを売る方も売る方で単にリテラシーが無かったのか?はたまたワケありの両者合意だったのかこの辺は当事者にしか分からないか。

しかし金価格も一寸遡ってコロナ禍前からでも当時の1g5000円台からはや2倍以上の化け具合だ。そういえば思い出すのがまだ1g1000円台だったバブル期の金装飾品を数年前にGINZA TANAKAへ売りに行った際に、当日のたいへんな混み具合を嫌気し売却を諦めた事か。そのまま金製品は再び家で眠ることになったが、今ではその時に手放さずに良かったとつくづく。昨今の斯様なゴールドラッシュでは家庭内で眠る金製品がいつの間にかそこそこの資産価値を持っている可能性もあるだけに、思い当たる向きは探してみてはどうだろう。


貧者の金

本日の日経紙グローバル面には「金に続き銀にもマネー」と題し、金価格の高騰を受け金より割安な銀へのマネー流入が加速し、銀の国際価格の指標となるニューヨーク先物が約3年3か月ぶりの高値圏に上昇している旨の記事があった。これまで地政学リスクのプレミアムが付いてきた金とは逆に銀は産業用需要の側面から景気減速懸念で長らく日の目を見なかったものだ。

そんなワケで今年の1月には金銀比価が1時90倍を超えていたものだが、さすがにこの倍率は行き過ぎとの自律反発なのかどうか2月に入ってから水準訂正が始まり、3月に入ってからは好調・不調の境目である50を昨年末から連続で下回っていた中国のPMIもこの50を半年ぶりに上回るなど経済停滞からの回復期待も一段の上昇の原動力となった。

しかし銀といえば思い出すのが、数年前にミーム株などを次々と物色していたロビンフッダーなる米のイナゴ集団がこの銀までターゲットにしてNY先物が8年ぶりの高値まで急騰したのが記憶に新しい。当時はインフレ調整後の銀価格は1000ドルが妥当とか無茶苦茶な煽りがあったものだが、出遅れ感のあった「貧者の金」の「金」への連動は今回どこまで持続性があるのか見ておきたい。


悲願のETF承認

ビットコインの現物ETFを巡っては当欄でも度々取り上げてきたが、先週にSEC(米証券取引委員会)は、同ETF上場を申請していた米運用会社大手ブラックロックやフィデリティ、アーク・インベストメンツ等の10本をはじめ、グレースケール・インベストメンツが求めていたビットコインで運用する未上場投資信託のETF化も認めている。これまで20軒以上の申請が却下されてきただけに悲願だった関係者の想いもひとしおだろうか。

そういえば上場承認の前にはSECのX公式アカウントがハッキングされ「同ETFの申請を承認した」との偽情報が流れ、当のビットコイン相場は急騰した後に急落する乱高下の憂き目に遭っていたが、はたして初日の取引額は今後半減期も迎えるだけに合計で45億ドルを超え早くも次期期待からイーサリアムなども2割近く上昇する場面も見られた。

ビットコインはデジタルゴールドとも言われているが、ゴールドといえば金ETFがNYに初めて上場した時はこれをポートフォリオに含めるハードルが下がり金需要を高めるまでになったが、このビットコインETFがその先例である金ETFに匹敵し暗号資産業界に大きな変化をもたらす可能性のあるモノになるか否かは未知数。とはいえこの時同様に投資家のハードルは一気に下がる事になるだけにどの程度彼らを呼び込めるかがキーとなって来るか。


先物も1万円大台超

このところ堅調相場が続くゴールドだが、先週末のNYでは金先物が20年8月に付けたこれまでの最高値2069.40ドルを抜き、約3年4か月ぶりに過去最高値を更新した。この流れを受けJPX(日本取引所グループ)の大阪取引所でも週明けに先物の中心限月がザラバで10028円を付け1982年の上場以来、初の1万円大台を超えて最高値を更新してきた。

1日のFRB議長の講演では早期利下げ観測の牽制と取れる発言が聞かれたが、これより先の先月末のFRB理事の講演で積極的なタカ派とみられていた同氏が利下げに言及していたこともあって市場は現在の金融引き締めは緩和に向かうとの思惑が広がっている。これで米長期金利も4.1%台と約3か月ぶりの水準まで低下、ショートカバーも巻き込み金に矛先が向かった格好だ。

現物や先物が最高値更新ならETFもまた然り、国内現物保管型の三菱UFJ信託の純金上場投信、ワールドゴールドのSPDRゴールドシェア、野村のNEXT金価格連動型上場投信、WisdomTree金上場投信等々、多いもので商いを前日比9倍近くも増加させていずれも軒並み年初来高値を更新してきている。

目先はちょうど1週間後に始まるFOMCに注目というところだが、折しもイスラエルとハマスは交渉決裂で交戦が再開しこれにウクライナ侵攻と依然燻る地政学リスク、分断の深まりで基軸通貨ドルの信認低下には歯止めがかからずドル指数も3か月ぶり安値を示現、米ドル保有のリスクを意識した中銀の金買いなど今の金は複合要因が背景にある点がこれまでと構図を異にする事を認識しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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