ストックオプション考

本日の日経紙・学びのツボでは「働く意欲と報酬を左右」と題し、スタートアップなどの一部で優秀な人材を確保するためのツールの一つとしてのストックオプション解説の記事があった。ストックオプションは言わずもがな予め決められた(権利行使)価格で自社の株式を購入できる株式購入権の一種だが、近年ではテスラやスペースX率いるイーロン・マスク氏の巨額ストックオプションが話題になったりした。

同頁ではこのストックオプションでもいくつかの種類がある旨が書かれていたがこれらに伴う税金の取り扱いにも言及していた。しばしば外資系での勤務経験がある役員クラスがこのストックオプションを行使して所得を得た際にその扱いを巡って国税当局とバチバチやり合っている事件を目にするが、通常の累進課税扱いから金融課税扱いまでさまざまで発行側もその辺の多様化が進む。

そういえば今日の株式市場では東証プライム市場のネクセラファーマが急反発し年初来高値を更新していたが、これは業績連動型ストックオプションの導入を発表したことが好感されたもの。昨年東証に上場した企業では実に約9割がストックオプションを導入している旨もこの頁に書いてあったが、就職や転職組に限らず投資家目線でこうした部分に着目して各企業を見るのも一考か。


脱デフレ下の転嫁術

本日の日経平均はAI・半導体関連銘柄の一角への売りで続落となっていたが、そんな地合いのなかですかいらーくHDやサイゼリヤ等の外食大手が買われていた。先の衆院予算員会で食料品の消費減税関連法案を巡って外食産業の需要喚起策が検討していると明らかにされたことが背景だが、上記のサイゼリヤといえば今月末より上場来初となる本格的な値上げに踏み切ることが話題だ。

外食の値上げでは他に先週から松屋が牛丼を値上げしているが、他に本日の日経紙ビジネス面にもあったようにファーストリテイリング傘下のカジュアル衣料品店「ユニクロ」が19日までに一部商品を値上げする。このユニクロにしてもサイゼリヤや松屋もいずれもがデフレの象徴かのように君臨?してきたわけだが、こうしたところが続々と値上げに踏み切っているあたり改めて脱デフレへの景色を感じる。

値上げの報は時にマーケット上で明暗だが、本日のファーストリテイリングも急反発しており、サイゼリヤもこの値上げの報があった翌日は14%以上の急騰を演じている。直近でも値上げ表明した大手食品系で炎上したところもあったが、価格転嫁の苦慮する企業が多いなか以前にも少し書いた通りアドの時代から関係性の時代へ差し掛かっており、“与党”をどう増加させるか各社の戦略が問われよう。


金にも戸籍証明?

昨日の日経紙一面では「流通元不明の金、輸出禁止」と題し、金の密輸に絡む問題で加工後に再輸出する手口の横行を踏まえ、流通経路の不明な金の輸出を差し止める仕組みを2027年度にも導入する旨の記事があった。関税法や関連する政令の改正を検討し税関の権限を拡大する意向で、有識者でつくる財務省の審議会に来月にも素案を示し年内に改正の内容をまとめるという。

こうした法制度改正で流通経路が不明な金の輸出を阻止して組織的な金の密輸をたたく狙いで、金の密輸に関してはこれまで当欄でも何度か取り上げてきた通り輸入量と輸出量の乖離が激しい。同紙では昨年の貿易統計の正規輸入量は10トンだが輸出量の方は228トンと実に20倍以上の開きがある旨が書かれていたが、国庫の損失は想像に難くないか。

そういえば今日は大阪市水道局が昨年匿名の人物から寄付された計21キロの金地金を先週末に売却したとの発表が為されていたが、この売却に関しても今年に入ったあたりから金地金類の買い取りに対して厳しくなってきているというのを聞く。上記の寄付された金地金は写真を見るに国内一流ブランドのものが確認できるが、こちらもまた金密輸等を背景とした事実上のブランド規制というような形になってくるか。

そもそも金の魅力といえば無国籍通貨と言われるくらい万国共通でどこでも換金性に優れていたのが“売り”であったものだが、こうした部分である意味パラダイムシフトしてきているということになるだけに今後の規制の行方にも注視しておきたい。


直美問題

Netflixの「ダウンタイム」を見た。ネトフリのシリーズを見るのは一昨年の「地面師たち」以来のことだったが、ネトフリが選ぶテーマが相変わらず鋭く面白い。所謂“ダウンタイム”期間が確保できるチャンスの広がりなどでコロナ禍から俄かにその体験者も広がった美容整形業界だが、“美”を追い求める人々の欲望に双方の裏側に潜む光と闇を境目なく描き出し人間の本質をあぶり出すさまはいろいろと考えさせられる。

この美容医療といえば先の日曜日の日経紙一面のチャートは語るでは「美容医療に流れる医師」と題し、都市部を中心に美容医療機関が集中し地方の他の診療科の勤務医が高給などの好待遇に惹かれ転職が増加してくれば医師不足問題も出てくる可能性を指摘していた。もう一つ書かれていたのは医学部卒業後2年間の臨床研修を終えそのまま美容クリニックに就職する所謂“直美”問題。

ちょっと前のデータになるが、厚労省が2022年に行った調査ではこの“直美”がここ10年で約12倍にも急増していることが明らかになっている。美容医療はほぼ自由診療なのでなにしろ客(患者)単価も高く、報酬面でもこれが顕著に表れて初年度でも一部では2000万円を軽く超えるといわれる年収目当ての向きがほとんどだ。

ところで総務省が先に発表した全国841の公立病院の昨年の決算では81.2%が経常赤字となっており、5年前の42.8%からほぼ倍増している計算になる。直美の背景もあり特に人材確保が難しくなっているというが、私の知人の医師も指摘していたところで直美の経験値の少なさを危惧する声も多い。赤字や直美問題解決には診療報酬はじめ労働環境まで諸問題山積みだが、今後の医療のバランスを考える上でも喫緊の課題か。


1.5度目標の行方

今日は少し雨が降ったとはいえ暖かく湿った空気の影響もあって日中の気温も各地が25度以上と東京は今日で9日連続の夏日となった模様で、10月にここまで夏日が続くというのは統計史上初めての事とか。気温といえば世界的にも9月の平均気温が16.27度と、同月として過去2番目の高さだったと昨日の日経紙夕刊が一面で報じている。気候変動対策の「1.5度目標」を2か月連続で超えたという。

また今年は毎月のように台風が発生しているが、これまた統計開始以来数回しかないことだとか。こういった年はスーパーエルニーニョ現象が発生しているというが、今回のエルニーニョは史上最大規模になるという。9月、10月と高温の影響もあり野菜から食肉まで各種の生育不良が相次ぎ“猛暑インフレ”の様相を呈していたが、今年も豪雨などもありそれに輪をかけ野菜はじめ生育不良が各所で報じられていた。

こういった気象を鑑みアパレル各社も1年を二季として定義するなど商品構成を細分化する動きやナイトタイムエコノミーの伸びしろを探る動きも各所で広がっているが、上記のように“猛暑インフレ”も今後ますます加速する可能性がある。冒頭の1.5度以内に抑えるには2035年に2019年比で60%の温暖化ガス削減が必要とされているが、生態系にさえ関わってくる事だけに不可逆的なものとして各所の取り組みが注目される。


持ち合い解消包囲網

先週末の日経紙一面には「持ち合い株売却 8.8兆円」と題し、日経紙が3月期決算の上場企業約2300社の有価証券報告書集計において、政策保有株の売却額が8兆8900億円と過去2番目の高水準であった旨の記事があった。予てよりコーポレートガバナンス報告書等で東証プライム市場上場企業の約7割が持ち合い株を削減する方針を示していたが、アクティビスト等の圧力も背景にはあろうか。

当欄ではこれまでトヨタグループはじめとしてアシックス、大手損保なども政策保有株ゼロを打ち出してきた旨を書いていたが、今回の纏めで業種別に売却額が多かったのが保険と銀行で互いの政策保有株圧縮が表れているか。企業別で売却額が大きかったのも東京マリンでその資金を買収原資に充てるといい、上記アシックスも資金活用が奏功しかつての赤字から今や売上高1兆円超が目前に迫る。

先にTOPIX見直し第2弾を書いたが今回は年間売買代金回転率と共に浮動株時価総額でもふるいにかけられ、政策保有株はこれにカウントされないので自ずとこういった部分においても解消促進効果はあるか。まさに各所から包囲網といった感じだが、かつてはこの持ち合いも適正化水準まで10年以上かかるともいわれていたものがこれらで各段に進むと思われるだけに今後もその推移を見守りたい。


ジェンダーギャップ指数2026

さて、簗(やな)農水相の過去の失言を巡り国会で“嫌な”農相だと激しい追及で絶賛盛り上がっているが、彼は先の内閣構造役員人事において初入閣した人物。この度の人事だが留任組が8人に上り初入閣はこの失言農相を含め7人となっており、もう一つ女性閣僚であるが当の首相を除くと上記の8人の中に入るところの片山財務相と小野田経済安全保障相の2名で新たな起用は行わないという形になっている。

ところでこの内閣改造と同じく先月にはWEF(世界経済フォーラム)が2026年版の「ジェンダーギャップ指数」を発表しているが、昨年の10月には当欄で、「自民党立党70年で初の女性総裁が誕生したことでこのジェンダーギャップ指数の政治分野が寄与して少しでも格上げされるのか?」と書いていたが、はたして日本の総合順位はといえば145か国中で117位であった。

昨年が一昨年と同じで118位であったから1位ほど順位を上げた形になるが、結局ここ3年でほとんど変動がないという感じある。この数年で女性役員登用も目立って来ていたがこの動きも一巡したことで経済分野などは後退、政治分野の前進と相殺?か。政権骨格維持の思惑もあり新たな女性起用も見送り、女性役員登用も一巡感のあるなかで今後の浮上の芽はあるや否やだが、引き続き各項目各所の取組に注目してゆきたい。


ノーベル賞ウィーク2026

今週は10月恒例のノーベル賞ウィークだが、既に5日の生理学・医学賞を皮切りに翌日の物理学賞と順次発表されておりここまで有力候補で挙がっていた日本人の受賞はなかったが、本日7日は化学賞の発表があり各メディアではどこも上位候補に挙げていなかった東京理科大名誉教授の硤合憲三氏と、パリ南大のアンリ・カガン氏の2名が受賞することとなった。

同氏は「不斉自己触媒反応」を発見した功績というが、この化学賞の受賞が決まるのは昨年この賞を受賞した京都大学の北川理事に続き2年連続の快挙となる。明日は文学賞だが、もう10年以上も有力候補常連として挙がっている村上春樹氏が悲願の受賞なるか注目され、明後日の平和賞、そして来週はこれまで唯一日本人が受賞したことがない経済学賞と続くがはたしてどうなるか。

ところでノーベル賞といえば近年は従前ではその“枠”としてはみなされていなかった分野でも受賞する例が出てきているという。冒頭の物理学など5年前の日本人受賞の時の気候変動のような地球科学分野や、他にもこの後には最近賛否両論のAI含む情報科学分野の受賞があり、この辺はより今後重視してゆくべき現代の社会課題を示唆した方向性も感じられるか。


サイバー攻撃たけなわ

昨年にアサヒグループHDがサイバー攻撃に遭い、大規模なシステム障害と個人情報流出が世間を騒がせたのが記憶に新しいが、シルバーウィークを挟んだあたりから各所へのサーバー攻撃が目立つようになってきている。その先月にはロート製薬やニチレイなどの大手、東京メトロや京王電鉄に、大規模なところでパーク24・タイムズが免許証等含む個人情報約660万件が漏洩した恐れがある。

またこうしたサイバー攻撃の動きは今月に入ってからも止まらず、先週は第一ライフの個人情報が、その翌日にはアパレルのアバハウス、一昨日には日経新聞から個人情報が、そして昨日は大和証券の顧客情報と焼肉きんぐの個人情報が、そして今日はシチズン時計から個人情報が漏洩する異常事態になっている。これら以外でも大学等の事例もあり、まさに満遍なく幅広い業種にこうした魔の手が伸びてきている。

進化したAIの関与がいわれているが突然の急増の原因はいまだ不明、こうした不正アクセス等の被害は先月末時点で昨年超えの600件と過去最多ペースで推移しているという。個人でも過去何処かで既に流出しているであろう自分のメールアドレスに頻繁に届く怪しいメールを削除する日々は続いているが、これら2次被害もまた懸念されるところで各企業の対策は喫緊の課題か。


データとの乖離感

物価高騰が進むなか今月から暮らしに密接にかかわる価格や制度などが変わる。先ず恒例の帝国データバンクの飲食料品の値上げ動向だが今月は合計で3153品目、単月値上げ品目数が2か月連続で3000品目を超えたのは3年3か月ぶりの事という。先月分と合わせると8000品目超の値上げとなっているが、分野別では酒税改定の影響もあり酒類・飲料が1年ぶりに最多となり、これに先月最多であった調味料が続くかっこうとなっている。

斯様に食品もさることながら今月は家計負担軽減のため使用量の増える期間の政府の補助金が終了することもあって電気料金は大手10社で値上げ、電力小売り会社が払う送配電網の利用料である託送料金も物価高で値上がりしたことも重なりいずれの企業も料金は過去最高となり、また燃料価格の高騰が影響してガス料金も大手4社で値上げする。

こういった値上げと賃金の兼ね合いも気になるところだが、厚労省が発表しているところの実質賃金は2021年8月以来、7か月連続のプラスとなっている。とはいえある大手生保のアンケートでは物価上昇に賃金が追い付いているとした向きはわずか14%台、追い付いていないや変わらない逆に減っているが計70%以上というのも見た。上記に加え他にも首都高の値上げ等もあり斯様な“乖離感”はまだまだ続くか。


消えるあの時代の渋谷

さて、店頭で“その日まで”とカウントダウンを設けていた「西武渋谷店」が昨日に58年の歴史に幕を下ろした。同店はA館・B館・ロフト館・シード館からなる構成であったが、セブンアンドアイHDがそごう西武をフォートレストに売り渡した過程で地権者の再開発計画の協議も難航続きだったという。還暦?クラスの同店は当時の親会社だったセゾングループ創始者の肝煎りで誕生したが、同じく肝煎りだったホテル西洋銀座の後を追い消える事になる。

同店への思い入れは世代で全く違ったものになってくると思うが、思えばアパレル一つ取ってもDCブランドの火付け役は此処であったし、エルメスやアルマーニをいち早く導入したのもまた此処であった。これがバブル期を経て渋谷の客足も新たなトレンドの方へ向い、近年では駅周辺に行われている大規模大開発で次々と新たなコンセプトの商業施設が誕生、そういった中でトレンドを生み出す街に居続ける意義も次第に失せていったのかもしれない。

しかし渋谷の百貨店といえば共にしのぎを削ってきた東急東横店や東急百貨店本店などのアイコン的存在だった大箱も既に閉店しているが、この大箱といえば更に来月にはこの西武渋谷店に続いてあの“ハンズ渋谷店”も閉店してしまう。これまた西武A館B館ではないが、各フロアをABC分けするスキップフロアが特徴だった。いずれにせよ大規模再開発の裏でお役御免の大箱が消えゆく姿は、青春時代を此処で過ごした向きには寂しいものだ。


金利収益の旨味

本日の日経紙グローバル市場面には「信用買い個人、金利高の影」と題し、直近で東証から公表された投資家の信用取引の買い残高の約6.4兆円などが信用取引のコスト上昇などで重荷になる可能性が出てきた旨の記事があった。複数の大手証券では日銀の利上げで短期市場からの資金調達コストが膨らんでおり、これに伴い信用買いの買い方金利の引き上げに動いている模様だ。

同紙では上記の買い残の約6.4兆円をもとに足元の買い方金利の水準を年間約3%と仮定しての計算では、個人投資家全体の金利負担が約1900億円にのぼるという。もちろんこのマル信の性質上ダラダラと期日まで引っ張るパターンは誰もがエントリー当初は想定していないだろうが、先に書いた信用評価損益率のプラス浮上などに惑わされ気が付けば塩漬けの罠にはまっている向きも少なくないか。

さて張る側は泣き笑いの明暗があっても、こうした対で証券会社は恩恵を被る。先の大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には各社共に信用取引の金融収支が貢献し収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。日銀利上げのペース以上に貢献している間は良いが、今後の利上げに何処まで付き合えるのかこの辺にも注視しておきたい。