TOB繚乱

本日の日経平均は原油高を受け関連銘柄を物色する動きや割安感が意識される銘柄などへの見直し買いも入り3日続伸となった。そんな中で一際目立ったのが終日買い気配で推移し比例配分でストップ高となったプライム市場のキトー株か。米投資ファンドKKR傘下で米クロスビーグループと経営統合する事で合意し、KKR側が同社に対しTOB実施との報が背景になっている。

同社の場合、TOB価格が2725円ということで前日比60%超のアップ率だった事から本日の急騰となったが、本日の日経紙マーケット面でも「次のTOB銘柄に思惑買い」と題し足元でのインフロニア・ホールディングズによる東洋建設のTOB実施など、特に冒頭に書いたような割安感がある低PBR顕著な建設業界等でTOB機運が高まっている旨の記事があった。

ところでインフロニアといえば自身もその経緯はなかなかひと悶着のあったTOB劇を挟んだものであったが、今週期限を迎える上記のTOBも任天堂創業家の資産運用会社が割り込んで来た事で暗雲漂う。こうしたケースは昨年も幾つかありTOBの頻発に比例して近年多く見られるパターンだが、企業価値向上策を競る上でもガイドライン等再考の余地はまだあるか。


団栗の背比べ?

先週の日経紙・金融経済面には東証で実質最上位の「プライム」の上場企業に対し、現状で約1割にとどまっている有価証券報告書の英文開示を求める声が強まっている旨が出ていたが、このプライムといえばJPXは同指数をスタンダード、グロースと共にこれまで1日1回の終値算出から15秒間隔での算出とリアルタイム算出に変更すると先週に発表している。

市場再編からはや1ヵ月が経過したが、果たしてというか上記の英文開示以外にも終値だけでは日中の値動きを把握出来ずに使い難いといった声が多く届けられ、当初この3市場指数を市場全体を投資対象とするような運用ツールに使われるモノではなく、単に統計目的の参考値として考えていたJPXも方針を転換せざるを得ない状況になった模様だ。

投資対象といえばこの度の市場改革は金融庁の金融審議会等でTOPIXを市場区分と切り離して投資対象としての機能性を高めるべきとする背景があったものだが、ちなみに再編スタート時からの3市場のパフォーマンスをTOPIXと比較した検証結果では特にプライムなどTOPIXと変らない結果が出ていた模様。

この辺は絞り込みで猶予期間を与える等の措置を取った結果が如実に表れたのだろうが、
これに限らず例えばこれまでのTOPIX100とかROE等で選りすぐったJPX400等もここ10年間のTOPIXとのパフォーマンス比較でほぼ差が生じていない検証結果も出ている。これではわざわざ選りすぐった指数の意味も無いという事になるが、真に” 使える” MSCIのような市場代表性を備えた指数が渇望されるところでもある。


名門のキッチンカー

先週のゴールデンウイーク期間中に、東京国際フォーラム敷地内にて他のキッチンカーに交じって久し振りに帝国ホテルのキッチンカーが出店していた。帝国ホテルのキッチンカーといえば食事のテイクアウト需要の高まりを背景に昨年秋口から此処にお目見えし、確か今年の1月くらいまで出店していた記憶があったが再登場というはこびか。

一般の会社勤めの向きには商談以外では普段使いでなかなか気軽に利用し辛い帝国ホテルの味が気軽にランチで味わえるワケだが、キッチンカーといえばこの帝国ホテルに先行して東京会館も早くから丸の内界隈で展開している。こちらも伝統の正統派フレンチのレシピで作られたカレーやフリカッセ等々、こちらも普段使いのランチでは一寸ハードルの高い同レストランの味が安価で気軽に味わえる構図だ。

こうしたテイクアウトの利用を切っ掛けとしてホテル等の利用へも繋がればとの思惑もあるだろうが、一昔前では帝国ホテルや東京会館のレストランで提供されているメニューが路上でテイクアウト出来るなど想像も出来なかったものだ。昨日書いたホテルのサービスアパートメント然りでコロナ禍を期に新たな試みが加速しているが、今後も斯様に新たな価値を生み出す動きが続くのは想像に難くないか。


ホテルに暮らす

さて、ゴールデンウイーク前にはホテルニューオータニからGW限定プール&ステイの案内が来ていたが、此処は先月末にも日経紙夕刊のホテルレストラン公告特集でサービスアパートメントの募集広告を載せていた。このサービスに関しては当欄でも約1年前に先陣を切った帝国ホテルを取り上げていたが、インバウンドにかわる新たな顧客を獲得すべく他のホテル各社も長期滞在型に活路を見出している。

帝国ホテルと共に「ホテル御三家」であるこのホテルニューオータニが新規展開したサービスアパートメント事業だが、既存客室を長期連泊向けに改造し大容量冷蔵庫やドラム式洗濯機・ミニキッチンを備え、浴室には檜風呂を備えたスイートルームは30連泊から利用可能で料金は約280万円。他に冒頭広告の30泊36万円や6泊15万円から泊まれるリーズナブル?な客室などニーズに合せたプランをラインナップしている。

先駆けの帝国ホテルも更に事業を拡大し、タワー館の約350室全てで長期滞在が出来るようにしている。斯様な長期滞在用の客室稼働率は事業開始以来、およそ8~9割の高い水準で推移。ホテルニューオータニも元々長期滞在プランはあったが予想以上に旅行に行けない向きの利用客があり、去年の連泊の予約数はコロナ前2019年の約5倍に及んだという。新たな市場の存在が改めて再確認され、長期滞在が安定的収益を齎すようになってきた事で今後これらの形態が拡大してゆくかどうかこの辺も興味深い。


皐月の値上げ

恒例となった月替りの値上げメニューだが、今月は明治がミルクチョコに果汁グミやアポロ、それにレトルトカレーを約3~11%値上げ、またコカ・コーラは一部を除き大型ペットボトル商品を約5~8%値上げ、キッコーマンはケチャップを約3~10%、デルモンテ飲料を約5~10%値上げする。

また外食では2日から松屋が定食の一部メニューを値上げしているが、身近なところではローソンの看板商品でもあるからあげクンも月末から値上げの予定となっている。からあげクンは発売以来、36年間一度も値上げをしなかったが、そういえば創業以来一度も値上げをしなかった回転寿司最大手のスシローも先週に秋から税抜き一皿100円を終了すると発表している。

このスシローの発表を受けF&LC株が日経平均続落のなか急反発となっていたが、川上からの値上げを小売価格になかなか転嫁出来ない国内需要依存型の食品や小売り等の中でも株式市場では値上げに踏み切った企業への評価が高まっている。値上げが通り易いBtoBの業種は好調だが、今後何所まで川下系の価格転嫁が進むかこの辺を注視しておきたいところ。


鎖国ニッポン

ゴールデンウイークも終わり今日から通常の日々が戻りヤレヤレという向きが多いと思うが、3年ぶりに行動制限の無かった今年は各交通機関で去年を大きく上回る予約状況を記録した模様だ。新幹線は東北線で前年比200%、東海道線で同239%と何れも去年の2倍以上に、空の便の方は国内線予約数がJALで約2倍、ANAで約1.5倍と大きく増加し各地での賑わいが連日報じられていた。

また国際線の予約数もJALで昨年の4.2倍、ANAで去年の5.6倍と急増した。特にツアーが再開となったハワイが寄与し人気だった模様だが、マスク無しで繁華街を闊歩できる解放感を満喫する一方でゴールデンウイーク前の当欄で書いた通り大幅な物価上昇の波に加え、この20年ぶりの円安のダブルパンチでアクティビティやら買い物やらに散財するいつものテンションも自粛モードになった向きも多かっただろうか。

そうなるとちょうどこの逆もまた然りで、政府の水際対策強化の悪影響がこのタイミングでクローズアップされ、鎖国状態が続く日本は商機を逸している感は否めない。そんな危機感もあってか政府は6月をメドに外国人観光客の新規受け入れ再開の調整に入り、これを受けた先週末の株式市場では早くもインバウンド関連が動意づいていたが、内需回復の決め手ともなるだけに円安で稼ぐ力を生かせるような環境整備が喫緊の課題だろうか。


3年ぶり脱巣ごもり?

さて、今年もゴールデンウイークが明後日からスタートとなる。気になるのは行動制限だが新型コロナ対策担当大臣など今年は特に行動制限はかけない考えを示しており、大型連休中に政府が都道府県を超える移動や自粛を呼びかけないのは3年ぶりという事になる。そうした事から感染対策とのバランスを測りながら各所で数年ぶりの再開を模索する動きが続々と出ている。
   
ツアー関係では楽天トラベルが2年ぶりに海外ツアーを再開するほか、最大手JTBも今月からハワイツアーを再開、HISも来月より同ツアーを再開する。とはいえこの20年ぶりの円安に原油高などを背景にサーチャージは大幅アップ、現地では円の弱さを存分に思い知らされるのは想像に難くはないか。そんな背景もあって国内旅行にシフトする向きも多そうで、某大手生保の調査ではGWは国内旅行予定との回答が昨年より2倍以上に膨らんだ模様だ。

今年はあの南米最大のリオのカーニバルも2年ぶりに再開となったが、国内イベントも例年約200万人が訪れる「博多どんたく」など開催時間短縮や参加団体縮小、更にパレードの様子はオンライン配信とはいえ3年ぶりに来月の開催を予定している。また京都の夏の風物詩「祇園祭」も最大の見せ場となる(山鉾巡業)が3年ぶりに開催される旨が選手発表されている。

というワケでこのゴールデンウイークからリベンジ消費も更に活況になるとサービス業界など自ずと期待も膨らむところだが、インバウンド再開など含め課題は多い。おりしも猛威を振るう物価高や20年ぶり円安が暗雲で昨日記の通り政府は総合緊急対策を決定したが、特に7~9月期以降には物価高の影響が本格化してくるだけに消費が軌道に乗るか否かは甚だ不透明と言わざるをえないか。


デフレ国家の政策

政府は本日、ロシアによるウクライナ侵攻などを受けた物価高騰対策として事業規模13.2兆円の「総合緊急対策」を決定、首相はガソリン価格抑制のための補助金や中小企業対策などに拠出するものとして6.2兆円の国費を充てる方針であるとの意向を示し、ガソリンと共に輸入小麦についても9月まで政府の販売価格を急騰する前の水準に据え置くと説明した。

この総合緊急対策で国民生活を守り抜くとの事だが、なるほど先に発表された3月の消費者物価指数はエネルギー価格が41年2か月ぶりの大幅な上昇となり昨年より0.8%上昇、これで7ヵ月連続の上昇となりコロナ禍前の2020年1月以来の伸び幅を演じエネルギー価格や食品の値上がりによる家計の負担増が浮き彫りになった格好だ。

これらの経済指標を見るに政府の” 緊急” とした趣旨は理解出来るものの、一過性なものではないのは明らかでトリガー条項凍結が続くなかで補助金引き上げを何所まで続けるのか出口が見えない。消耗戦のなかで継続介入は市場メカニズムを歪めてしまうと懸念の声も喧しく、俯瞰して見ると日銀と政府とで各々の政策が整合性の取れないものとなっており何故日本だけがデフレの沼にはまっている状況なのか今一度再考すべきだろうか。


カモ?成人

さて、先週は若者に人気のエンタメユニットの公式SNSを装い企画モノでカード等の登録を狙う悪質手口が横行している報や、FX投資名目で詐欺グループの男が逮捕された報などがあったが、15日付の日経紙社会面でも「悪質商法 若者が標的に」と題し先の民法改正で新たに18~19歳が成人となる中、こうした若者を狙ったと見られる投資関係などの悪質商法被害が相次いでいる旨の記事があった。

厄介なのは成人扱いとなるだけに締結した契約の取り消しが難しくなる点か。この10年で投資を取り巻く環境はNISAやらiDeCo等が登場し大きく変わったが、これと並行してお金の情報との接点もまた大きく変わっている。あるシンクタンクの調査では金融情報の入手先としてSNSを挙げた向きが金融機関のウェブサイト、TVの情報番組に次いで3位に浮上、投資に関するインフルエンサーについても所謂マトモ?な金融の専門家は増えずユーチューバーやブロガーと答えた向きが増加している。

いちいち親の同意無く各種の契約が可能になる範囲が広がる事で解放感で満たされる向きも居ると思うが、なによりもSNSをバイブル視している一部の脳内お花畑な若者は騙す側からしてみれば可也オイシイ存在なのは間違いなく彼らは虎視眈々と”新”成人に狙いを定めている。斯様に若者の被害増加が懸念されるが、金融はじめ各業界も彼らから信頼されるためにどう振る舞うべきか再考すべき時か。


短信一本化

さて、今週は金融庁が金融審議会の作業部会を開き上場企業が開示する2種類の決算書類を一本化する事を了承している。この見直しは岸田首相が就任時に目玉政策の一つとして打ち出したモノで、金融商品取引法で上場企業に開示を義務付けている四半期報告書を廃止し内容を充実したうえで証券取引所のルールに基づく決算短信に一本化する方針だ。

この四半期開示の是非は2018年にも金融庁のWGで議論が為されたが、市場競争力に影響を及ぼしかねないとの懸念から見送りになった経緯がある。それでも当初は四半期開示の廃止を含め政府内で検討していた模様で、こうした背景には企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念があり企業が長期的な視点に立った経営を行う事が重要との認識があったようだ。

ちなみに欧州でもこの法的義務が廃止になっているところは少なくないが、英などは14年に廃止したもののその後に実際に開示を止めた企業は全体の9%しかなく9割以上が任意で開示を継続している。やはり廃止すれば投資家からは情報開示の姿勢が後退したと受け止められ株価はじめあらゆるところへの悪影響が懸念されるのだろう。

ともあれ上記の長期的視点云々も重要だが仮に廃止のパターンでも単純にこれで長期視点に繋がる訳では無いうえ、日本の大手企業のように社長の任期が短いきらいのあるところを一括りで見直しを図るのは如何なものかという感もある。金融審の作業部会では詳細を詰める為に今夏以降も議論を継続する模様だが、政府としてはガバナンスを通じ企業経営を変革させる流れを尊重すべく制度設計に工夫が求められるところだ。


悪い円安

本日の外国為替市場では米長期金利の上昇を受け円相場が一時、約20年ぶりに1ドル129円台まで急落した。気になる日銀の動向だが長期金利の上昇を抑え込む為に指し値オペを21日から26日まで連続で実施すると発表、既に本日の午前中に指し値オペの実施を通知しており異例の5営業日連続の指し値オペとなる。

周知の通り、米・英は物価の上昇を背景に利上げに動き、同様の理由でお隣韓国も先週には今年2回目の利上げを実施しており、ECBも先週の理事会で量的緩和策を夏までに終わらせ、年内にも利上げを実施する可能性が高まっている。斯様に世界中で利上げに走るなか、景気下支えの大義名分のもと超低金利政策を維持する姿勢を示している日銀は特異に映る。

斯様な金融政策の方向性の違いから日米金利差が拡大するとの思惑で冒頭の通りの円急落となっているワケだが、インフレ下で実質量的緩和を実施している強化している格好だ。ここ9年間にわたって歴史的な金融緩和を継続したにもかかわらず求めているような内需主導型の2%の安定的物価目標はいまだ達成されず、バランスシートも各国比で膨張し負のループに陥っている日銀にはたして各国の出口戦略はどう映っているのだろうか。


NATOガイドライン

さて、これまで日本の防衛費はGDP比1%以内を目安としてきたが、先週末の日経紙総合面には「防衛費GDP2%以上に」と題し、政府の国家安全保障戦略などの改定に関する自民党提言の素案としてロシアのウクライナ侵攻や中国の軍備拡張を踏まえ、この防衛費をGDP比で2%以上に増やすよう政府に求める記事があった。

ちなみにNATO加盟国はGDP比2%以上という国防費目標がガイドラインとしてあり、既に欧州各国では続々と国防費を上げる動きが出て来ている。直近ではドイツが米ロッキード・マーチンの戦闘機を数十機購入すると発表され、バイデン政権の国防費拡大見通しとも相俟って同社やグラマン、L3ハリス、ゼネラル・ダイナミクス等々に物色の矛先が向きいずれも先月から今月にかけて史上最高値を更新している。

斯様な光景を見るにESG投資の大義名分もいろいろと修正されそうだが、それは兎も角も確かに東シナ海を巡る緊張に加え一昨日も北朝鮮が日本海に向け戦術核の運用に向けた新型戦術誘導兵器のミサイル2発を発射したとのキナ臭い報が入るなど緊張が高まっているさまを見るに、我が国も憲法第9条の下での安穏とした状況下に警戒感を持つべきで防衛大綱や中期防衛力整備計画等の見直し機運も高まろうか。