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世相を表す返礼品

さて、先週末に横浜ではふるさとチョイスが開催する日本最大級のふるさと納税イベントである「ふるさとチョイス大感謝祭」が行われていた。昨年は約130の自治体が集まり1万4千人を超える参加者が来場したこのイベント、今年は更に北は北海道から南は沖縄まで過去最多となる159の自治体が集まり返礼品を存分に楽しめる催しとなった模様だ。

ちょうどこのイベントが開催されるこの年末の時期あたりからふるさと納税も佳境に入るが、物価高の影響で今年も返礼品選びにこの影響が出ている。別の大手ふるさと納税仲介サイトのランキングも過日発表されていたが、今年のベストテンには人気のホタテやフルーツに交じって昨年はランク外であったトイレットペーパーやボックスティッシュなどの日用品がランクインしていた。

他にも今年は“令和の米騒動”もあり同じくベストテン内には精米などもランクインしていたが、コメがスーパーなどの棚から消えた8月など米の返礼品狙いの寄付が前年比4~5倍に上った模様。8月といえば南海トラフ地震臨時情報もあり、この影響で防災グッズの返礼品も昨年比2.7倍に増加していた。防災といえば地震が発生した石川県への今年1月の寄付金額は前年同月比で46倍にのぼるなど被災した地域の返礼品もまた注目された。

斯様にその年に人気になったモノは或る意味時代の世相を表しているが、ふるさと納税の利用者は昨年1000万人を超え、その寄付額も年々増加し昨年は約1兆1175億円と遂に1兆円の大台を超えてきた。それに伴い返礼品競争過熱で本来の趣旨とは異なるとして総務省も近年規制を強化し来年には仲介サイトのポイント付与も禁止されるが、物価高のなか所得が上がらない向きも多いなかで今後も増加の一途を辿ってゆくのは想像に難くない。


ゴールドとデジタルゴールド

トランプ氏の大統領選勝利を受けたビットコインの騰勢止まらず、本日の前場には史上初めて一時9万ドルの大台を突破してきた。なにせ自身が運営に関わる金融プラットフォームまで立ち上げ、米をビットコイン大国にするとまで明言していただけに一連のトランプトレードでもその騰勢ぶりは群を抜いているが、日米が株価大暴落の憂き目に遭った8月には5万ドル台であったからその暴騰ぶりには目を見張るものがある。

ところでビットコインは別名で“デジタルゴールド”ともいわれているが、リアルのゴールド相場のほうはビットコインの暴騰とは逆に売り圧力が強まっており、つい先月末には2800ドル超と史上最高値を更新していたが昨晩は一時2か月ぶりに2600ドルを割るなど急落の憂き目に遭っている。そういったことで米ビットコインETFの資産規模も約840億ドルに達しており、既にゴールドETFの3分の2水準にまで迫ってきている。

この辺の背景にはドル指数が今年の高値水準106ポイント台に上昇、米長期金利の高止まりにドル高が逆風として効いていることがあるが、米10月CPI(消費者物価指数)如何でこのゴールドも弱気トレンドが継続されるのか否かというところ。下馬評ではインフレ鈍化が一服との見方も出ているが、内容如何で12月のFOMCでの利下げ観測にも影響してくるだけに先ずは今晩の米CPIに注目してみたい。


オルカン除外

さて、先週末の日経紙グローバル市場面には株価指数算出大手の米MSCIが代表的な全世界株指数ACWI(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)から日本株を7銘柄減らすと発表した旨の記事があった。今月25日の取引終了時点から反映されるものだが、MSCIは周知のようにグローバル投資家が運用成績のベンチマークとして使用する代表的なインデックスでその定期見直しは年4回実施されている。

このオルカン、前回の8月には新規採用が1銘柄にとどまり除外された銘柄は6銘柄であったが、その前の5月は新規採用が8月同様に1銘柄であったが除外された銘柄は15銘柄にも及んだ経緯がある。上記の通り同指数に連動するパッシブ運用資金が巨額なだけに、今回採用されたフジクラが発表後の取引開始直後に急騰したように個別銘柄の需給に与える影響は決して少なくない。

日本株は約30年前の95年には約25%の組み入れ比率であったが、15銘柄が除外された5月時点では実に5%と5分の1にまで減少している。このまま除外が続くようであれば海外勢の日本株離れの一因にもなりかねないだけに歯止めをかけたいところだが、MSCIはドルベースなので期待を集めそうな企業でも昨今のようなドル円相場のなか大型・中型の要件から外れ易くなるのに抗する事も出来ず、こういったところでも行き過ぎる円安は厄介なところでもある。


感慨深い上場 

先月に東証プライム市場に上場した東京地下鉄だが、先週から有楽町線および南北線の延伸プロジェクトの工事に着手している。また先週末には上場後初めての発表となる同社の2024年の9月中間連結決算も出ているが、コロナ禍後の経済活動回復を背景に旅客運輸収入が増加し純利益は前年同期比26.6%増の306億9900万円となっていた。

この東京メトロ、18年のソフトバンク以来の大型上場となったが抜群の知名度を背景に上場初日は公開価格を35.8%上回る1630円の初値を付けた後1739円で取引を終え、大引ベースでその時価総額は1兆103億円と1兆円の大台を超えて来た。上場直後の熱狂も落ち着き先週末終値はほぼ初値まで降りてきたが、他の私鉄を約2倍近く上回る営業収益率を背景に依然PERはプライム市場平均を上回っている。

ところで政府売出株といえば同じ鉄道系で2016年のJR九州があるが、同社は上場後に同じ政府系売り出し株の日本郵政と共に一時低迷したものの、鉄道事業以外の成長戦略が奏功し先月には上場来高値を更新してきている。そういった点からすると東京メトロは営業収益の約9割が鉄道事業に依存しているのが課題に映るがこの辺は今後の成長戦略に注目というところか。

しかしかつての営団地下鉄もようやくはれて上場かとなんとも感慨深いものがあるが、これで冒頭の通り約1兆円規模の時価総額企業が新たに東証に加わった。これまで日本株式のネックは時価総額一つ取っても米などと比較すればその規模が見劣りするのが課題であったが、今年はまだキオクシアホールディングスや非鉄大手JX金属の大型上場も見込まれているだけこうした部分の拡大に寄与する点では期待したいところ。


東証の取引時間延長

周知のように今週から東京証券取引所は現物株取引の終了時間を午後3時から午後3時30分に伸ばしている。きっかけとなったのは2020年10月に発生した大規模システム障害で、この日は全銘柄の売買が終日出来ず投資家の取引機会が奪われた反省から障害時に少しでも取引時間を確保出来るようにしたものだが、この延長は実に1954年以来70年ぶりのこととなる。

これに伴いこれまで延長反対の背景の一つでもあった証券など関係各社の業務負担も増加しようが、企業側もまた決算発表などの対応が変わって来る。東証側は延長に合せて発表時刻も30分遅らせることなく前倒しを要請しているが、これに従い発表時刻を早める企業あれば、これとは逆に発表時刻を30分遅らせる企業ありとその対応は企業ごとで異なっており各社で賛否両論喧しい。

そうした意味で今後はその開示姿勢の変化も問われそうだが、投資家側もまたこの変更ではクロージング・オークションなるものが導入された。引け5分前にザラバ取引が終了、以降売買注文を受け付け引けの板寄せで大引けが決定する。初日で幾つか銘柄を見てみたが15時を過ぎてなお刻々と約定してゆく様は何か不思議な感も覚えた。

しかしこの延長論、叶ってみれば30分という小幅な延長に落ち着いたが、延長といえばNY証取もつい最近6時間の取引時間延長計画を発表している。此処はこれまでも時間外を除く取引可能時間が6.5時間で、他の主要取引所をみてもロンドンは8.5時間、アジアではシンガポールが7時間、お隣韓国は6.5時間と海外と比べるに見劣り感は否めない。まだ走り出したばかりでその効果は未知数だが、海外勢の呼び込みにはもう一段の延長見直しも迫られそうだ。


返り咲き?

さて世界が注目している米大統領選だが、既に各社メディアが報じているように共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が結果を左右するペンシルベニア州含む激戦7州のうち4週を制し当選が確実視されている。仮にこのまま勝利した場合、米大統領選の失敗後に返り咲くのは132年ぶりの事となるが、この開票状況を睨みながら本日の金融市場もトランプ・トレードが加速している。

開票直後から接戦州でのトランプ氏の優勢が伝えられると、ドル円は早速151円台から約3か月ぶりの円安水準の154円台へ。それに伴い日経平均も寄り付き近辺を安値としスルスルと上昇し前日比1000円以上の大幅続伸を演じたが、夜間の先物取引でもその流れを継いで一時4万円の大台を超えてきている。

個別では日本に防衛費増額を迫るとの見方で三菱重、川崎重、IHIといった防衛関連の重工各社が買われる展開となったほか、三菱UFJFGや三井住友FGにみずほFGなどのメガバンク勢から地銀勢にも買いが入り、TOPIX銀行業指数は業種別指数の中で上昇率トップとなった。財政支出を伴う同氏の政策によるインフレ圧力の高まりから金利上昇への期待を背景に一斉に物色の矛先が向った格好だ。

また同氏が暗号資産に好意的なことで仮想通貨関連も物色されたが、代表格のビットコインは史上最高値を更新、トランプ氏が要職起用を検討するとしたイーロン・マスク氏が支持するドージコインもまた昨日から約20%の急騰を見せた。斯様にトランプ・トレードに賭けていた向きにはニンマリの一日になったワケだが、米国債利回りの急上昇はじめ各所の市場変動は或る意味警鐘と警戒する向きも多く、今後も各所の動向から目が離せない。


値下げ合戦&デフレ脱却

11月入りとなったが、月初め恒例の今月の値上げ状況は帝国データバンクによる主な食品メーカー195社における今月の飲食品値上げは、先月からは大幅減少となったものの前年同月比では倍増の282品目となっている。加工食品や“ビーンショック”が長く影響して菓子では引き続き定番人気のチョコレート関連商品の値上げなどが目立つ。

この手ではロッテがチョコレート関連71品目を値上げや内容量を減らすステルス値上げを実施、「コアラのマーチ」や「パイの実」などの定番モノは8月に続く再値上げとなり、他社も明治やカヤバ食品などこれらチョコ菓子の一部を値上げする。しかしこのチョコも定番のハイカカオ商品はじめとした値上がり加速には辟易するが、体感ではオリーブオイル並みになって来た。

斯様に容赦なく上げ続けるモノあれば、先月の今年最多の値上げから価格転嫁に対する企業の慎重な姿勢も一部見られる。イオンはPBなど実質値下げを敢行し、外食も吉野家をきっかけに大手各社が挙って値引き合戦に突入、またIKEAも昨年11月から今年に入って4度の値下げを敢行し5度目の先月は家具・雑貨など70点値下げを始めているなど各所で値下げの動きが顕著になってきた。

たしか自民党の公約ではデフレからの完全脱却を謳っていたが、こうなるとデフレに逆戻りするのではという感覚にもなってくる。先月末の日銀金融政策決定会合では現在0.25%としている政策金利を据え置くことを全員一致で決定しているが、果たしてこうした環境下で日銀が何処まで利上げを敢行出来るのか?その辺も今後は気になるところだ。


アップサイクル新ステージ

当欄では今月アタマに日経平均構成銘柄の入れ替えを取り上げていたが、日経平均同様に日本経済新聞社が算出する指数に「日経平均気候変動1.5度目標指数」がある。同指数のこの秋の定期見直しではコマツとダイキン工業が外れる一方で、日経平均構成銘柄でも新規採用された野村総合研究所と良品計画に加え、環境面で評価が改善した高島屋も採用されて本日より反映されている。

環境面で評価が改善したとある高島屋だが特に近年アパレル系でサステナに力を入れており、今月9日からスタートしたサステナブルウィークスでは「RETURN TO SENDER」と称し、先進国からアフリカに寄付・輸出され飽和状態となっている古着をデザイナーが再デザインしアップサイクルしリメイクウェアのうち1点を一般商品として販売、もう1点を提供した顧客分として渡すユニークな取り組みを行っていた。

今回の試みは服をデザインするプロセスに、古着素材の提供として客を巻き込みながら循環の輪を回すアップサイクルの提案になっているところがポイントか。そういえばこれまで当欄で取り上げた東京オリンピックのメダル作成において一般から携帯など都市鉱山を募ったり、年末の風物詩イルミネーションの一部でも家庭内で出た廃油を原料にした燃料を使用するなどの巻き込みと同様のものといえるか。

以前にも書いたが、世界で排出される二酸化炭素の約1割はアパレル産業によるものとされ、石油産業に次いで地球にやさしくない環境汚染産業ともいわれている。昨年は経産省でもアパレルの再生や再利用に関する課題と改善策を纏めた報告書を公表しているが、斯様な顧客巻き込み型等の形態が何処まで広がり、またサステナで先行している欧州勢に何処まで近づけるかも注目しておきたい。


変わりゆく儀礼行事

さてこの時期お歳暮の案内も喧しく商戦も本格化してきた。歳暮といえば本日は三越日本橋が店頭のギフトセンターを開設しているが、此処はこれに先駆けて今年の歳暮商戦に向け顧客向けの商品試食会を開催していた。これまで主流であった取引先や上司宛に送る歳暮はピーク時の半分ほどにその市場が縮小しているのが現状だが、試食会のテーマを“自分へのご褒美”として前年並みの売り上げを目指すという。

そのテーマ通り今年1年頑張った自分への“ご褒美”にと新たな切り口でもって若年層への需要喚起も狙っている。この試食会では近江かど萬の近江牛少量すき焼きセットが人気であったがこうした傾向は他の百貨店でも顕著で、例えば松屋銀座なども今年のお中元で好評だった下鴨茶寮のあんかけ丼や、和久傳のスイーツを自宅用商品向けとするなどそうしたアイテム数を去年の1.6倍に増やして対応している。

ところでバレンタイン商戦など「サロン・デュ・ショコラ」の大人買いに見られる通り、今や主流は人に贈るものから“自分へのご褒美”がすっかりトレンドになっているが、このお歳暮も今年は人に贈るものから“自分へのご褒美”を各社共にテーマに打ち出してきている。これらの儀礼的な行事も時代と共に徐々にその形態も変化してきているという事の証左か。


お墨付き

本日の日経紙ビジネス面では「買収宣告は突然 低迷企業の脱皮」と題し、2021年のニデックによる工作機械メーカー、TAKISAWAへの同意なき買収提案の軌跡をたどる記事があった。8月にはクシュタールによるセブン&アイHDへの買収提案を書いたが、日本企業への「同意なき買収」の事例は14年からの約10年で計29件あり、24年は9月末時点で2件起きている。

“同意なき”なる言葉は今年改正された性犯罪に関する刑法でも使われるなど、これまで日本では相手の同意が無いケースは企業買収においても非常にネガティブなイメージで受け止められてきたものだが、こういった風潮を背景に生産性を向上させるような買収でさえ円滑に進まず企業買収の活発な欧米などに比べて日本企業の時価総額など現状総じて低いのが課題であった。

こうした事態を重く見た経産省は昨年の8月に企業が買収提案を受けた際、企業価値向上につながる真摯な提案を理由なく拒んではならない旨の「企業買収における行動指針」を策定、いわばこれがお墨付きを与える格好になり以降件数は右肩上がりに増えている。東証の資本コストな株価を意識した経営の実現に向けての改善要請と歩調を合わせた経産省の行動指針策定で日本の企業文化も変わりつつあり、そうした意味でも今後の買収事例に注目しておきたい。


またもアノマリー崩れ

注目された今回の衆院選であったが、はたしてというか自民連立政権は過半数割れの大敗となった。今回の振るわない結果においては週末から週明けのマーケットへの影響が懸念され市場関係者は戦々恐々であったものの、蓋を開けてみれば日経平均は小安く寄ったもの灰汁抜けからそこが寄り切りの格好になってあと切り返し、691.61円高と急反発で引けた。

とはいえ今回の衆院選では以前にも書いた、実に1969年からの解散・総選挙で選挙期間中に17回連続の株高実績という所謂「総選挙は買い」というアノマリーが初めて崩れることとなった。期間中も1992年以来の11日連続陰線を引いており何とも心もとない動きであったが、結局解散前日の引け8日の38937.54円から週末の引けは1000円以上も下落した。

それにしても今年は相場に絡むアノマリー崩れが続く。先のオリンピックでも1968年以降のオリンピックで金メダルを10個以上取った夏の大会期間中の日経平均は上昇するというアノマリーがあったものの、周知のように今年は史上最大の暴落の前にこれが脆くも崩れた。それはともかくも自民党内での石破総裁体制は今後どう動いてゆくのか?

選挙後の記者会見で石破氏は国民の厳しい審判だとしながらも続投に意欲を示したうえで野党との連立は現段階で検討していないと述べ、一部の野党も連立を組む気はないと明言している。というわけで今後は政策ごとにそれぞれの野党と連携を模索するという形になるかどうかが焦点となろうが、いずれにせよ来年の参院選まで相場は視界不良の場面が多くなりそうだ。


エネルギーとヘッジ需要

昨日の日経紙グローバル市場面では「電力先物取引が急拡大」と題し、地政学リスクの高まりや異常気象などで世界的に電力価格が変動し易くなり、価格変動をヘッジする需要が高まっていることなどを背景に電力先緒の取引が拡大している旨の記事があった。日本でも19年から電力先物取引が開始されているが取引量としては欧米勢には及ばないのが現状。

電力先物の取引高としてはエネルギー関連の不安定な環境を背景にドイツが突出しており、日本の電力先物にも参入しているEEX(欧州エネルギー取引所)での取引高は前年比の伸び率は52%にも上っているが、エネルギーといえば米でも例えばICE(インターコンチネンタル取引所)なども近年は天然ガスや原油などの取引の割合が急増してきているのが現状だ。

上記のドイツなどウクライナ戦争や中東情勢の悪化が天然ガスなど燃料価格の変動を大きくするが、ICEでは特にこの天然ガス先物の引き合いが増加し足元ではその建玉が過去最高を更新していること事もありエネルギー関連の売り上げは32.1%増と大幅な伸びを演じている。エネルギー・トランジション時代も見据え米大統領選でもエネルギー政策は大きなテーマでもあるだけに今後もこのマーケットには注目しておきたい。