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禁じ手

昨年11月に当欄ではSMBC日興証券の社員が、大株主等が時間外で一度に大量売却出来るブロックオファー取引に絡んで特定銘柄の株価を維持する目的で不正な株取引を繰り返した疑いがあるとして強制調査されている件を取り上げた事があるが、直近で報じられている通りこの事件は東京地検特捜部が同社の幹部ら4人を逮捕する事態にまで発展した。

これと同様の終値関与で事件になった件といえば、リーマンショックの年に今は市場からその姿を消したケイエス冷凍食品のIPOに絡んだ株価操縦で起訴された丸八証券が記憶にあるがこれ以来の事か。とはいえ今回の舞台は大手証券内で行われ、このエクイティ部門の中枢を担っていたのは何れも一流外資系証券出身者との事だが海千山千を潜って来た兵にしては脇が甘かったと言わざるを得ない。

そもそも同社は取引日を提示する特異な形式で空売りを誘発し易い状況を作り出しており、売り手・買い手・胴元の” 一見三方よし”にも見える同取引が公平に機能していたのか疑わしいところ。斯様な大手証券が同取引に対する売買監視部門が機能していない訳は無く、ここで同社側が組織的犯行の立証を回避?すべく個人の犯行として蜥蜴の尻尾切りに動くのか否か、市場の門番として言語道断の行為だけに特捜部の徹底した解明が待たれる。


経済と倫理

さて、2度にわたる停戦交渉も虚しくとうとうロシアは欧州最大の原発まで攻撃する前代未聞の行動に出たが、こうした事を背景に各国の主力大手企業が続々とロシアから離れる動きが加速している。ロシアといえば先ず石油だが、これに絡んでは英BPをはじめシェルもロシア極東で展開しているサハリン2から撤退、また米エクソンもサハリン1からの撤退方針を決めている。

自動車業界も米GMがロシアに輸出停止したのをはじめ、ドイツからはダイムラートラックにBMWやフォルクスワーゲン、英はロールス・ロイスにアストンマーティンやジャガーもロシア事業を停止と続いている。また航空業界も米ボーイングや欧州エアバスがロシアでのサービスを停止、末端消費では米アップルがアイフォーンはじめとした製品の販売停止にナイキやH&M、英バーバリーやイケアも続々とこれに続く。

更にはエンタメからは米ディズニーやワーナーメディア、ソニーピクチャーもロシアで劇場映画の公開を中止し、米ゲーム大手のEAはサッカーなどを題材としたゲームからロシア代表とクラブチームを除外すると発表、金融では米マスターカードやビザにアメックスも決済ネットワークからロシアの複数銀行を排除するなどロシア国民にとっても生活水準の劇的な変化の波が迫る。

サハリン1やサハリン2など言わずもがな巨大プロジェクトであり、またハリウッドにとってもロシアは極めて重要な市場であったが、人権問題で各企業が踏み絵を迫られた中国ビジネスを彷彿させる今回はこの時より待ったなしの状況と言え、いずれも利益優先よりも倫理を優先し事業撤退を英断している。上記のサハリン2には本邦勢も三菱商事や三井物産が出資しているが、エシカル経済の観点から他の進出企業含め今後の在り方が問われる事になるか。


制裁と返り血

さて、一寸前まで個人的な海外送金をする際には送金依頼書に必ずSWIFTナンバーを記入していたものだが、周知の通り欧米はこの国際的な資金決済網であるSWIFTからロシアの大手行排除を実行する事とし日本もこれに追随する方針を示している。SWIFTから排除されるとなると世界で殆どの金融取引が出来なくなることで輸出入が滞りその事業展開能力が損なわれる事になる。

このSWIFT排除、冒頭の送金依頼書にも北朝鮮・イラン関連規制に該当しないかを問うチェック項目があったが、かつてこのイランと北朝鮮に発動された経緯がある。常軌を逸したかのようにも見えるロシア大統領は核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じた事が報じられていたが、さしずめ金融の世界で核爆弾にも相当するのがこのSWIFT排除か。

これに加えて制裁はロシア中銀にまで及んだ事で外貨準備を使った通貨の買い支えが出来なくなり、通貨防衛の為に出来るのは利上げくらいという事で急遽その政策金利をクリミア併合時の17%を上回る20%にまで引き上げている。しかし国家や通貨そのものの信認が失われつつあり、中銀が斯様に強烈な利上げを行っても通貨価値の維持やインフレ抑制の効果は期待できないだろうか。

いずれにせよこの金融制裁がロシア経済を悪化させるのは想像に難くないが、上記の通りの金融核爆弾を行使した” 返り血”もまた避けられない。ただでさえ昨年から原油や小麦共に上げ続けていたところへ世界輸出の約3割を占める大国への制裁措置は火に油で、直近のWTI先物は約13年半ぶりの高値示現、小麦先物も14年ぶりの高値となっており遠く離れた地に居る我々も今後は更なる身構えが必要になるか。


コロナ禍の疲弊

さて、一昨日は新宿のハイアットリージェンシー東京が身売りを検討しているとの報が入って来た。ロビーの巨大なクリスタルシァンデリアやガラス張りのエレベーターなどが象徴するようにバブルと共に開業し我々の世代ではホテルセンチュリーハイアットと言う方が馴染みがあるが、施設の老朽化やコロナ禍があだとなって小田急電鉄が保有資産の見直しに動く模様だ。

バブル期に欠かせない存在であったホテルといえばこのハイアット以外にも赤坂プリンスホテルや六本木プリンスホテルがあったがいずれも今はその姿を消し、生まれ変わったホテルの一部も直近ではシンガポールの政府系ファンドへ売却する方針を西武側が表明している通り、ここ数年に及ぶコロナ禍で鉄道業界の疲弊の深さがが窺えるというもの。

しかし昨年営業を終了してしまったホテルグランドパレスや上記の赤坂プリンスホテルなど幾つもの名物メニューがありそれらがもう味わえなくなってしまう寂しさがあったものだが、ココも擁するレストランは幸福ならぬ”口福”がコンセプトであったが既に1年前から大半のレストランを閉めていた。つくづくバブル期に馴染のあった施設の身売り話の浮上はやはり感慨深いもの。


弥生もまだ

さて本日から3月入り、毎年恒例の光景といえば首都圏以外では高校生が卒業を迎えたところも多かったと思うが、例年と違う光景といえば年明けからの各種値上げの顕著化か、先月も食品からエネルギーまで幅広く続騰模様となったが、この流れは今月も多くの食品群から主要エネルギーまでまだまだ続く。

食品などザッと挙げてもマルハニチロや日本水産がサバ缶などを約3~20%、ニチレイフーズが家庭用冷凍野菜を約8~15%、日清食品チルド・日清食品冷凍がチルド麺や冷凍麺を6~13%、昭和産業が家庭用油を1キロあたり40円以上値上げ、キューピーや味の素がマヨネーズを約2%~10%、ヤマサ醤油が全製品を約4~10%、それぞれ値上げする。

また値上げの波は日用品にも及び大王製紙がティッシュやトイレットペーパーを15%以上値上げ、更に大手9社の電気料金や大手4社のガス料金の値上がりも続く。最近は昨年の関西スーパーマーケット争奪戦ですっかり有名になったオーケーが、値上げ宣言した花王製品の取り扱いを中止する旨が話題なったが、長い間デフレの中で競争してきた経緯があるだけに企業は価格を上げ難い。世界的なインフレ下でデフレ脱却が叶わぬ日本、ロシアの暴挙が予期せぬ形でこの構図を変える事になるか否か引き続き目が離せない。


デジタルゴールド始動

信じ難きロシアの暴挙を背景にマーケットの激震が続くが、NY金先物価格は昨年6月以来の1900ドル台示現後も一段高し、国内でも1グラム7,000円大台を突破から一昨年の8月以来、約1年半ぶりに史上最高値を更新した先物価格が先週の祝日明けにこれを更に塗り替えていた。一方で金の代替としてかつて注目された暗号資産が軒並み値を崩す光景を見るに、依然として金が投資家から安全資産としての不動の位置にある事を感じる。

そんな中、今月は三井物産がブロックチェーン技術を用いて金価格に概ね連動する暗号資産「ジパングコイン」の発行を開始している。同暗号資産は1ジパングコインを金1グラムとしてその量に応じた金を実際に調達、価値を金で裏付け金価格と連動させる事で代表的暗号資産のビットコイン等と比べて価格変動を低減し投資以外にも既存の金融商品に無い決済手段としての機能を有するもの。

金の裏付けのあるものとしてはETFが既に定着しつつあるが、この度の商品は暗号資産等に抵抗の無いZ世代などを意識しているのだろうか?何れにせよ先ずはどの程度普及するかというところだが、それ如何でこれから他のコモディティ連動の暗号資産も商品化されるのかどうかこの辺も今後は注目されるところ。


統制五輪と政治

さて、新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るう中、17日間におよぶ北京五輪が閉会式を迎えその幕を閉じた。91ヵ国、地域から2877選手が大会に参加、フィギュアスケート団体では日本が史上初めての銅メダルを獲得、終盤はカーリング女子が初の銀メダルを獲得するなど日本選手団のメダル数は金3、銀6、銅9の計18個と過去最多を更新する快挙であった。

一方で開会式から聖火リレー最終走者にウイグル族選手を起用したのに始まり、本来であれば式典に出席出来ないロシア大統領も堂々と出席、そしてこの背景にもなっているROCのこの期に及んでのドーピング問題発覚から、スキージャンプのスーツ規定違反問題、スノーボードハーフパイプの不可解判定等々、IOCも終始傍観を決め込み最後まで後味の悪い問題が露呈した大会でもあった。

五輪外交を通じた米欧などとの緊張緩和は欧米諸国の外交ボイコットで目算が崩れる事となったが、これを以てスポーツの政治化には反対と批判していた中国こそ今回の五輪を政治的に最大限に利用したといっても過言ではないだろう。ウクライナ情勢緊迫化のなか式典に出席したロシアは閉幕後早々にウクライナに侵攻、増大した国力を背景に国際秩序の変更を目指す中国やロシアと今後どう向き合うか、民主主義陣営の結束と覚悟が試される。


商機とモラルリスク

さて、先週の日経紙・アジアVIEWには新型コロナウイルス保険の保険金支払いが急増しタイでは経営に行き詰まる保険会社が相次いでいる旨の記事があったが、国内でも少額の保険料ながら新型コロナウイルス感染の際に一時金が受け取れる所謂コロナ保険が感染第6波を背景にこれまで保険にあまり興味がなかったような若い世代など中心に賑わいを見せている模様だ。

感染し入院・自宅療養などとなった場合は最高で60万円が支払われるコロナ保険を2年前から販売している太陽生命は年明けから加入者が急増し累計販売数は21万件を超えて来ており、またペイペイのアプリで手軽に契約でき感染確認で5万円が支給される損保ジャパンの「コロナお見舞金」も販売わずか1カ月ほどで加入件数は15万件に達し今月に入ってからは20万件を突破している。

斯様に加入が殺到しているコロナ保険だが、日本生命子会社の大樹生命保険は想定を上回る支払いが見込まれる事で昨年末販売の商品維持が困難な事態に陥りわずか数カ月で販売停止に追い込まれている。そういえば感染第5波のあった昨年9月にも第一生命の子会社が販売していた同保険の販売が一時中止に追い込まれていたのも記憶に新しいところ。

ちなみにこの第一生命の子会社はこの2月に入ってから展開するコロナ保険の保険料を先月の約4倍に引き上げるなどまるでオプション取引のプレミアムを見ているようだが、冒頭のタイでは保険金目当ての意図的感染も横行するなどモラルリスクも表面化している模様。いずれにせよコロナ禍に乗じ商機に賭ける胴元の思惑は如何に、各社共その舵取りが注視される。


既視感

さて最近まで近所のスーパーでは熊本産のラベルが貼られたアサリが連日大量に売れ残っている光景を目にしたが、漁獲量の100倍以上にものぼる量の中国や韓国などから輸入されたアサリが熊本県産と表示されて全国に流通していた問題が世間を騒がせ、この問題のあおりを受け無関係のシバエビやハマグリまで熊本産は売れなくなり入札が止まるなど余波は多方面に及んている。
 
偽装といえばこのアサリ以外にも大手百貨店内に店舗を展開しふるさと納税返戻品にも選ばれた専門店など中国産の鰻を国産と産地偽装して蒲焼などを販売していた件が明らかになっているほか、今週は中国産のワカメを徳島県の鳴門産として出荷販売した食品加工会社社長が食品表示法違反などの疑いで逮捕された報が入って来るなど偽装の波は広がるばかりだ。

ウナギの偽装など10年以上も前にも中国産の横行が問題になり世間を騒がせたのが鮮明に蘇って来るが、この頃はミシュランの二つ星を獲得した今は無きヒルトンの有名レストランまで産地偽装が発覚しヤレヤレという思いであったのも思い出す。日本人の中国産などに対する目が依然として厳しい事などを背景とした悪しき商慣習や、調査の壁になっている縦割り行政等も含め繰り返し発覚する偽装問題の根は深い感がある。


政治的武器

本日はバイデン米大統領が、ロシアが早ければウクライナに対する大規模な侵攻を強行する可能性が高いとしていた日であったが、ロシア国防相はウクライナ国境から一部部隊を撤退させたと発表、これに対し米政府はこの撤退を確認しておらずロシアが依然として大きな脅威を与えているとの認識を示すなど緊張が続いている。

マーケットの方もこれらの状況に振り回される状況が続き、週明けのWTIは約7年5か月ぶりに1バレル95ドル台をつけ、同じく主要産出品であるパラジウムも上昇、貴金属といえば金もまた地政学リスクを囃し約8か月ぶりの高値まで上昇した。上記の軍部隊一部撤退の報でこれらは一斉に一服となったが未だ予断を許さない状態だ。

原油や天然ガスはいわずもがなだが、パラジウムもセンサーやメモリーに使われる他、触媒から歯科用までこれまで当欄で書いて来た通りで、ロシアに本腰を入れてカードを切られたらその影響は計り知れない。豊富な資源を有する国だけにこうした事態になると何とも厄介な構図だが、しばらくは政治的武器にされつつある各コモディティーの動向から目が離せない。


前評判に暗雲

本日の日経紙・一目均衡には、東京証券取引所が4月に実施する市場再編に関してQUICKの2月の株式月次調査で市場参加者の56%が実質的に何も変わらないと回答するなどその前評判に対して散々な旨が書かれていた。その理由として基準未達でも移行できる経過措置の存在や期待を下回る時価総額基準など挙げられていたが、この辺は当欄でも1月に書いた通り。

同頁には消えるジャパンファンドと題してジャパンファンドの数がこの数年で減少している旨も書いてあったが、斯様な骨抜きとも言われかねない市場再編は更に市場再浮上に暗雲漂わせるものになりかねない。ところで前評判に対して散々なモノにもう一つ、東芝がグループ3分割計画を修正し2分割にすると発表した件がある。

物言う株主に忖度しながらすっかり風見鶏に成り下がった経営陣は昨年末の公表からわずか3ヵ月で軌道修正を迫られた格好だが、分割後の中核事業が依然として不透明なままでこちらも暗雲漂う。ともあれ先ずは来月の臨時株主総会で株主の理解が得られるか否かというところが焦点になろうが、まだまだこの先も紆余曲折が予想されるだけに目の離せない展開が続くか。


進まぬ転嫁

さて先週に日銀は1月の企業間で取引するモノの価格動向を示した企業物価指数を発表しているが、前年同月比で8.6%上昇し109.5となっていた。前回当欄でこれを取り上げた時からは小幅に鈍化しているものの、原油など資源価格の高騰や円安などを背景にオイルショックが影響した1980年12月以来の水準で高止まりとなっている。

ところでこの企業物価指数が発表された日に米では1月の消費者物価指数が発表されておりこちらは予想を大きく上振れる7.5%の上昇となっていたが、一方で直近の12月の日本の消費者物価指数は0.5%の上昇と依然として欧米のそれからは低い水準にとどまり企業物価指数との乖離は大きいままの状態が続いている。

この辺は前回も書いた通りで生産者や企業が価格に転嫁出来ていない実態が反映されており、実際に先月末に帝国データバンクが価格転嫁に関して実施した調査では約8割の企業が自社の商品やサービスに原料価格高騰等の影響があるとし、約36.3%が価格転嫁が全く出来ていないとし、全体の価格転嫁率は25.9%と3割を下回る現状が明らかになっている。

このCPI発表前には岸田首相がモノの値上がりに対し賃金の引き上げが行われなければならないと発言していたが、主に下請け中心に供給網全体でコストの適正分担が進まねば賃上げも難しい構図となっており、価格転嫁未達が6割を越える上位業種など消費者が壁になっている実態等と併せこの辺が依然として課題といえようか。