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循環実現のハードル

本日マックの前を通って思い出したが、日本マクドナルドは先週に原材料費や物流費の上昇、円安等の影響で16日から約8割の商品の店頭価格を10~150円値上げすると発表している。かつてコカ・コーラを買うと無料引換券が付いていた時期もあったハンバーガーなど110円だったものが去年3月に130円、去年9月には150円へ、そして今回の170円へとこの1年で約60%近く上がった事になる。

マックに限らずこの1月も食品・日用品等で値上がりは続く。今月出荷分から日清製粉ウェルナはパスタソース製品、パン粉製品等を約3~25%値上げ、はごろもフーズも同缶詰など計65品目を値上げ、ピエトロもドレッシングを最大で7.1%値上げし、王子ネピアなどはトイレットロールを20%以上値上げする。

帝国データバンク調査では2022年末までに決定した23年中の飲食料品における値上げ品目数は4月までの予定を含め累計7390品目に上るといい、ペースとしては去年の1.5倍以上で再値上げや3度目の値上げも目立つ。この1月単月の値上げは580品目というが、来月は22年以降で2番目に多い規模となる4000超の品目で値上げが控えるという。

生鮮食品を含む消費者物価の総合指数は年末で前年比3.8%の上昇で31年10ヵ月ぶりの高さになったというが、一方で同じ3.8%という数値ながら減少となったのは厚労省が今月に発表した22年11月の1人あたり実質賃金。この実質賃金は既に最低の水準に沈んでおり、これに政府側はインフレ率を超える賃上げを要請しているが一部大手以外の中小には縁遠い話で物価上昇の影響を賃上げで吸収する循環の実現は容易ではないか。


年始の風物詩

さて今週から2023年の初売り商戦が本格的に始まったが、3年ぶりに行動制限のない新年を迎え初日の都内大手百貨店では開店前から多くの客が並ぶ光景が見られ入店客数は前年比で約20%ほど増加した模様。また売り上げも公表されている主要店では松屋銀座の前年比50%増をはじめ新宿高島屋が同約40%増、新宿京王百貨店で同約20%増、西武池袋本店で約10%増といずれも伸びた模様。

何処も物価高のなかでお得感を謳ったセールや福袋が好調だった模様だが、この福袋もここ数年のコロナ禍での巣ごもりに焦点を合わせたモノから今年は円安や物価上昇に抵抗すべく食品など家計応援的なモノへ焦点を合わせたモノへ変化し必需品への意識が高まっていることが表れている。

ところで初売りと並ぶ年初の風物詩、マグロの初競りも豊洲市場で本日行われた。今年は大間で水揚げされた212キロのクロマグロが、去年の1688万円から2000万円近く高い3604万円で競り落とされた。2019年の過去最高額から見れば約3億円も安い値段とはいえ、昨年からは約2.1倍でコロナ禍以降では最高額の競り落としとなる。

共同で競り落としたのは一昨年、昨年に続いて3年連続で銀座おのでらと仲卸のやま幸であったが、お祭り視点としてはやはり好勝負を繰り広げてきたマグロ初セリの代名詞的存在であったすしざんまいの喜代村の戦線離脱は寂しい気もするのは否めないところ。これまたコロナ禍を機に変わってしまった光景の一つといえるか。


卯跳ねる

皆様、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

一昨年は経済活動の再開などを背景にマーケットは記録ずくめとなったが、昨年はそれに輪をかけて記録ずくめの相場展開となった。何といってもその背景となったのはインフレを抑制すべく世界的な利上げ機運で07年以来の高水準となった米金利の年間上昇幅は2.3%強と遡れる1954年以降で最大となった。

これによって株も売られ米株式はダウ工業株30種平均が3月末から8週連続で値下がり世界恐慌期以来およそ1世紀ぶりの連続下落を記録、S&P500種も下落日の割合が6割弱と1974年のオイルショック時と同水準となるなど、MSCI全世界株価指数は21年末比で2008年のリーマン・ショック以来の下落率となった。

また為替も一昨年は円が主要25通貨で最弱の値動きとなり115円台へ対ドルでは15年以来の下落を演じるなどその兆候を見せていたが、今年は一時151円台後半と約32年ぶりの安値へ沈み、その値幅は38円超と35年ぶりの大きさとなった。2008年のリーマンショックの時でも約25円幅であったから今年が如何に歴史的な大きさだったかがわかるというもの。

千里を走る虎の昨年は大発会が急反発のスタートとなり29000円の大台に乗せるものの年間では9%安と4年ぶりの下落となった。今年の干支は卯。相場格言では「卯跳ねる」と昨年に続き勢いは良さそうで、1950年以降6回の勝率は4勝2敗。本日の大発会は昨年とは逆に急反落スタートとなったが今年も波乱の展開が続くのか、はたまた卯年の先に控える辰巳天井に向かって尻上がりに跳ねる展開になるのかどうか注目したい。


まさかの2022年

早いもので今年もあと3日となったが、先に日本漢字能力検定協会が2022年の世相を1字で表す「今年の漢字」は周知の通り「戦」に決定している。ロシアによるウクライナ侵攻や、円安などによる物価高など身近な生活の中での戦い、またサッカーワールドカップの激戦、野球界での記録への挑(戦)を挙げている。この「戦」が選ばれるのは米同時多発テロが起きた2001年以来、2度目となる。

しかし今年はウクライナ問題で明け暮れた一年であったが、民主主義の価値観を共有する国が増えた今世紀においてもはや侵略戦争は起こらないであろうと思われているなかでのロシアの暴挙は兎にも角にもまさかのサプライズであった。この侵攻で世界が分断しているという状況が鮮明になったが、経済面でもロシアと交流してゆく事が自国ファーストを考えるとメリットがあるといったジレンマを抱えている国々があるところが新しい冷戦構図に見える。

力による一方的な現状変更は認めないという国際社会の根本的な原則に関る問題でもあり、これを許される事になるとこれはアジアや日本にとっても外交・経済の面で大きな影響を与える事になりそうだ。またエネルギー高に対してインフレ対応力の弱い日本はどう対応するかも課題だが、この年の瀬にきて安全保障政策の大転換そして矢継ぎ早に原発政策の大転換も唐突に決まった。

コロナがいまだ終息を迎えないなかでのウクライナ侵攻問題の勃発、コロナが社会を大きく変えたように今回のウクライナ危機も世界を大きく変えることになるか否か、何れにしてもウクライナ危機もコロナも一刻も早い終息を迎え来年こそ明るい世になるよう願いを込めて今年はこれで筆を擱きたい。

本年もご愛読ありがとうございました。どうか来年が皆様にとってよい年でありますように。


市場再編と新陳代謝

東証の市場再編から9か月が過ぎたが、本日の日経紙投資情報面の数字でみる2022年では海外の投資マネーを呼び込もうと厳しい上場基準を設けて始動した最上位のプライム市場だが、その1社あたり時価総額が3725億円と100億円強減るなど期待とは裏腹に伸び悩んでいる旨が出ていた。

とりわけ基準未達でも改善へ向けた計画書を提出すれば上場が認められる「暫定組」では約6割の企業の時価総額が減った模様だ。先に当欄ではゼロゼロ融資に絡んで欧米と比較するに新陳代謝が進んでいない旨を書いたことがあったが、上場企業の増減では2001年から2021年まで米は約23%減少しているのに対し日本は逆に46%の増加を見せている。

収益力を高める為に再編等経て上場企業数が減ってきた背景などもあるが増加している日本企業とは対照的だ。それでも数字が伴っていれば問題無いが、例えば営業利益率一つ取っても2021年は米の15%に対して日本は9%と見劣り感は否めない。またPBRで見ても今年の8月段階で1倍割れ企業は米の10%に対し日本は実に47%である。圧倒的な時価総額の差も然りで悲願の海外マネーを引き付けるには新陳代謝のあり方を再考すべきだろうか。


2022年度「商品先物ネット取引データ調査・分析結果」を公開

11月末時点で商品先物ネット取引サービスを提供する10社に対し、11月29日〜12月12日の期間で実施した「商品先物ネット取引データアンケート」を集計・分析した結果を本日12月28日に公開しました。総口座数・実働口座数・預り証拠金・月間売買高など各項目別に結果を公開しランキング表示を行っております。

▼商品先物ネット取引各社データ集計結果(2022年10月度)



【調査結果サマリー】
★2022年10月末時点での預り規模はホールセール込で推計約326億円
★2022年10月末時点での総口座数は推計18202口座、実働は推計4049口座
★売買高は2022年10月度は51万枚(ホールセール込)、39万枚(一般対象)

【掲載項目】
[総合]
2022年10月度ネット取引各社取引データ一覧、関連データ業界全体比較
[各種ランク]
総口座数、実働口座数、預り高、売買高、注文件数、口座増加数、口座稼働率、枚数/オーダー、1口座あたり預り・売買高、1担当者あたり預り・売買高

アンケートにご返答頂いた企業・担当者の皆様、お忙しい中ご対応頂き誠に有難う御座いました!


返礼品変遷

昨日の日経紙夕刊一面には「ふるさと納税 焦る大都市」と題し、同社が試算した2021年度の寄付額から住民税控除額を引くなどした流出超過額は東京23区が全区で流出超過となったほか、市町村ではもうここ数年常連組の横浜市はじめ川崎市等の自治体は相変わらず多額の流出となり地方交付税の恩恵の無い大都市圏は引き続き劣勢を強いられている旨が出ていた。

こうした中には制度に批判的な自治体も当然ながら少なくないが、制度の構図自体が変わらないなかで死活問題となっている向きの中には返礼品強化など現実路線に転換するところも出ているという。ところで返礼品といえば最近では以前も書いたように出かけた先の宿や飲食店ですぐに使える電子ギフトなど、地元の経済活性化に直接つながりより手軽に納税が出来るような進化系スタイルも人気となっている。

こうした地域活性化といえば、コロナ禍を受け非航空事業の強化が急務となっているJALやANAなど大手航空会社も特産品プロジェクトや地域で楽しむ体験型返礼品の拡充などに動くなど後押しの動きも出ている。また最近登場してきたモノの中には特産品が少なくとも活用出来るNFTアートなど返礼品の世界は日々進化してきている感がある。

こうした動きを受けフィルターとなるふるさと納税サイト側も都心に返礼品を展示する実店舗をオープンしている。これはアパレルでZ世代に人気のSHEINがオープンした実店舗と同様のスタイルで、それぞれの品にQRコードが付いていてページに飛んで申し込みが出来る。こうしたインフラ整備や地域差による格差が生まれにくい返礼品の登場で自治体側も各々のセンスが問われるようになってくるか。


2022ヒット総括

昨年の今頃に当欄では日経MJのヒット商品番付を取り上げ、東の横綱に「Z世代」が選ばれた際には「~Z世代が象徴しているような消費行動がこれから未来の日本の消費トレンドになっていく可能性もある~」と書いていたが、果たしてというか今年の東の横綱は彼らZ世代に広く浸透した消費行動である「コスパ&タイパ」が選ばれている。

タイパに関しては先月も書籍を10分程度で読めるように要約したサービスやコンビニジムなど企業もこの市場を狙うべく倍速志向への対応を進めている旨を取り上げたが、一方では著作権を侵害したファスト映画訴訟や学生の夏休み課題代行業から企業の新卒採用試験における替え玉受験などタイムパフォーマンス重視が生んだ負の副産物も問題になった。

また西の横綱の「♯3年ぶり」といえば今年は特に新型コロナ禍で中止を余儀なくされていた各地での夏祭りや秋のハロウィーンが再開、また旅行支援から今まさに街を彩っているイルミネーションまで次々と復活した。これらに加え大関のサッカーW杯の経済効果など値上げで家計防衛意識が高まる中でも束の間の財布の紐が緩む場面を作ったといえるか。

飲食の分野では西の大関の「ヤクルト1000」が駅の自販機からコンビニの棚まで一時期は何時見ても売り切れが目立つなど、今年は本当にヒットした感がある。これに触発され他のメーカーからも挙って睡眠の質向上を謳う商品が打ち出されたほか、上記のタイパ絡みで短時間で完全栄養素を摂れる完全メシなど定番商品の進化系が目立った。来年もこれらに加え引き続きコスパ&タイパが経済を活性化するキーワードになってゆくのかどうか注目が怠れない。


商品先物ネット取引取扱い10社最新ランキングを更新

11月29日(火)から12月12日(月)の期間で実施した「商品先物ネット取引データ&サービス内容アンケート調査」の結果を元に、各社のネット取引最新サービス内容を更新、ポイント評価基準に従い全10社のレーティング&ランキングを更新しました。

▼商品先物ネット取引総合レーティング・ランキング(12/25現在)



尚、これまで通り各社のサービス内容・レーティングについては随時更新を行い、同時にランキングにも反映していきます。

ぜひ各社の最新サービス内容をチェックしてみてください。


効果と弊害

さて、先週の日経紙金融経済面では週末まで「ゼロゼロ融資残ったツケ」と題して連載があった。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた企業を底支えした実質無利子・無担保のゼロゼロ融資は、今年9月末までに民間と政府系金融機関で計約43兆円の融資が実行されたが、その新規実行も今年で終わり23年には返済開始の山場を迎えることになる。

このゼロゼロ融資、当欄でもこれまで度々取り上げてきたがこうした政策を見ていて思うのが欧米とは違う新陳代謝の構図か。中小企業庁調べでは2019年度の廃業率はドイツ、英国が10%超え、米は8.5%なのに対し日本は5%未満、また開業率の方は英国が10%超え、ドイツやアメリカは9.2%なのに対し日本はこれまた5%未満と新陳代謝が進んでいないことがうかがえる。

こうしたデータから見られるように欧米はゾンビ企業の倒産が増加するたびに新陳代謝が進み経済が強くなってきた経緯がある。それらが整理され競争力があり生産性の高い企業が残ったり、新たに現れるなど結果的に賃金が全体として伸びてゆくという構図にもなっている。リーマン・ショック後にGM等の大企業が破綻したが、この時に返済猶予法を施行した日本と違い米などは事業再生を促すインフラが整っていた点もまた違うか。

おりしもアベノミクスの象徴だった異次元緩和が今週、10年目にして転換点に差し掛かった。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移し今後はゾンビ企業含め企業の利払い増加などを懸念する意見もあるが、低金利の長期化のもと痛み止め政策を続け停滞していた産業の新陳代謝が国際基準へと向かう切っ掛けとなる入り口に来たという感じか。


分割促進

本日も日経平均は5日続落となったが、そんななか特に寄与度の高いファーストリテイリング株が前場大幅続落のあと急速に切り返しの動きを見せていた。同社は先週末の日経紙投資情報面にも出ていた通り来年の3月1日付けで株式1株を3株に分割するとの発表をしているが、同社の株式分割は遡ること2002年の4月以来であるから実に20年11か月ぶりの事となる。

この手の所謂値嵩株では任天堂もまた数万円もするような値嵩株で最低単元買うにしても本日の終値で約550万円程度の資金が必要であったが、同社も31年ぶりに今年の10月1日付けで1株を10株に分割し約55万円程度の資金で購入できるようになった。そういった意味では今回のファーストリテイリングは分割してもなお購入に260万超の資金がかかる点で更なる分割が期待されるか。

斯様に値嵩モノの株式分割が今年相次いだ背景には政権の肝いり政策である「資産所得倍増プラン」を実現するために国民が広く投資出来る環境を作るべく政府や取引所による強い要請があったことは想像に難くないが、夢の国?はじめまだまだ単元数百万円の企業は数多あるだけに上記二社のような数十年ぶりの分割が他の企業に広がる切っ掛けになるかどうか今後も注視しておきたい。


日銀サプライズ

昨日は各国中銀が先週行われた金融政策会合で軒並み利上げペースを減速させてきた旨を書いたが、金融政策といえばサプライズだったのは本日開かれた日銀の金融政策決定会合の結果発表か。どうせまた無風だろうと高を括っていたところ長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に変更し金利上昇余地を広げた。日銀総裁は利上げではないと言っているが、事実上の利上げだろう。

これを受けて前場は凪のような値動きだった日経平均は後場に急落、一気に5円ほど円高が進み長期金利も約7年ぶり水準まで上昇した事で自動車セクターや不動産セクターはじめ実に東証プライム銘柄の9割が下落、一方で国内長期金利に上昇圧力がかかる事で利ザヤが一段と改善に向かうとの期待が膨らんだことから三菱UFJや三井住友、みずほなどのメガバンクが軒並み上げ幅を拡大させいずれも年初来高値を更新するなど明暗を分ける格好となった。

しかし来年の任期切れを控えてここでの大規模緩和修正は後任への政策オプションを増やす狙いか等と何かと思惑だが、現実的なところで急激な円安に歯止めがかかる事で輸入物価高鎮静の一助となるも、他方では長期金利に連動している住宅ローン金利の負担増や企業向け貸出金利の引き上げ観測などが懸念される。上記の銀行株の急伸がそれを先取りしているといえるが、孤高の異次元緩和継続も政策修正もどちらに転んでも其々に我々の生活に少なからず影響が生じることになりそうだ。