6ページ目

システミックリスク

周知の通りロシアの供給不安で数多の商品が急騰しているが、先週のマーケットでそれが特に顕著だったのはなんといっても非鉄金属のニッケルであったか。国際指標となっているLME(ロンドン金属取引所)の3ヵ月先物は週明けの7日から前週末比約2倍に急騰、翌日も前日比約2.1倍の1トン10万ドル超えと暴騰しまさに倍々ゲームで史上最高値を更新した。

ミーム株の類ならまだしもあらゆる製品に多用されている非鉄金属がたった2日間で約3.5倍にも化ける事態となった事で、LMEはこの日ニッケルの取引を即日停止措置にしてその日の取引を全て取り消しにすると発表。その背景には多くの参加者がマージンコールへの対応に追われる中でも、中国メーカー大手の看過出来ない額のショートポジションが市場全体へ多大な影響を及ぼすと予測された事への思惑がある。

個人投資家としてLMEの鉄火場に参加するのはハードルが高いものの、手軽にこの暴騰劇が味わえたところでは非鉄大手の住友金属鉱山が7日に年初来高値を更新、またETFではWisdomTreeニッケル上場投信が週末4日の大引3,100円から8日の6,152円まで2営業日でほぼ2倍に急騰と破竹の勢いであった。

しかし同じくロシアの供給不安で急騰しているパラジウムもたしか2000年だったかTOCOMで解け合いの憂き目に遭った記憶があるが、名門LMEの取引帳消し措置は前代未聞といえる。こうなるとこれまでにも増して回収やリサイクルの強化等々、所謂都市鉱山を囲い込む戦略が今後も改めて重要になってくるか。


直接アプローチの是非

さて、資源エネルギー庁が発表した7日時点のレギュラーガソリン価格は、1リットル174.6円と前週から1.8円上昇しこれで上昇は9週間連続となった。斯様なガソリン価格の高騰抑制の為に、政府は石油元売り各社に支給する補助金上限をこれまでの5円から25円に引き上げる事とし本日から1リットルあたり17.7円支給する。

ちなみにこれには一般予備費3,600億円強を活用する模様で高騰が続いた場合は追加策も準備する方針というが、果たしてというか前回当欄でも挙げた「トリガー条項」の凍結解除は見送られた。アプローチの構図からすれば今回のような間接アプローチより減税という直接アプローチの方が即効性があるのは明らかだが、やはり税収や法改正の壁があるという事だったか。

このトリガー条項に関しては自民幹事長は自民、公明の両党で相談するとしているが、WTIの急騰など見るに今後もガソリン価格が上昇し続けるのは火を見るより明らかで補助金上限の到達は早晩訪れよう。ともあれ政府としては更なるエネルギーの価格上昇に対し家計や企業に対する更なる対策を考える必要が出て来ているが、このウクライナ情勢を鑑み痛みを共有するという面からも我々は各々が耐えなければならない時期という覚悟も必要か。


ミモザ

昨日は世界中の女性の権利を守り、女性の活躍を支援する為の行動を呼びかけるべく1977年に国連によって制定された「国際女性デー」であった。毎年恒例となった日経トレンディーによる2022年のヒット予測BEST30の10位には女性が抱える課題をテクノロジーで解決する商品やサービスなどフェムテックギアが入るなど近年は日本でもそうした活動が浸透してきた感がある。

昨年は女性の国内就業者数が前年より12万人増加し3000万人に迫る勢いと、女性の社会進出も進み女性役員数も漸く増加傾向にはある。政府としても2020年代の出来るだけ早い時期で指導的地位に占める女性の割合を3割にする事を目指しているところだが、それでもなお現況は日本企業の女性役員比率は1割程度にとどまり欧米などと比較するにその澪と感は否めない。

この辺は各国の男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数でいまだに先進国では最低レベルに位置しているあたりにも表れているが、ESGが喧しい現代において仕事への価値観も多様化しており、そんな人材をどうマネジメントするかという観点の無い企業はその経営に大きなリスクをもたらす可能性もあるだけに女性役員の登用など多様性の活かし方は喫緊の課題か。


禁じ手

昨年11月に当欄ではSMBC日興証券の社員が、大株主等が時間外で一度に大量売却出来るブロックオファー取引に絡んで特定銘柄の株価を維持する目的で不正な株取引を繰り返した疑いがあるとして強制調査されている件を取り上げた事があるが、直近で報じられている通りこの事件は東京地検特捜部が同社の幹部ら4人を逮捕する事態にまで発展した。

これと同様の終値関与で事件になった件といえば、リーマンショックの年に今は市場からその姿を消したケイエス冷凍食品のIPOに絡んだ株価操縦で起訴された丸八証券が記憶にあるがこれ以来の事か。とはいえ今回の舞台は大手証券内で行われ、このエクイティ部門の中枢を担っていたのは何れも一流外資系証券出身者との事だが海千山千を潜って来た兵にしては脇が甘かったと言わざるを得ない。

そもそも同社は取引日を提示する特異な形式で空売りを誘発し易い状況を作り出しており、売り手・買い手・胴元の” 一見三方よし”にも見える同取引が公平に機能していたのか疑わしいところ。斯様な大手証券が同取引に対する売買監視部門が機能していない訳は無く、ここで同社側が組織的犯行の立証を回避?すべく個人の犯行として蜥蜴の尻尾切りに動くのか否か、市場の門番として言語道断の行為だけに特捜部の徹底した解明が待たれる。


経済と倫理

さて、2度にわたる停戦交渉も虚しくとうとうロシアは欧州最大の原発まで攻撃する前代未聞の行動に出たが、こうした事を背景に各国の主力大手企業が続々とロシアから離れる動きが加速している。ロシアといえば先ず石油だが、これに絡んでは英BPをはじめシェルもロシア極東で展開しているサハリン2から撤退、また米エクソンもサハリン1からの撤退方針を決めている。

自動車業界も米GMがロシアに輸出停止したのをはじめ、ドイツからはダイムラートラックにBMWやフォルクスワーゲン、英はロールス・ロイスにアストンマーティンやジャガーもロシア事業を停止と続いている。また航空業界も米ボーイングや欧州エアバスがロシアでのサービスを停止、末端消費では米アップルがアイフォーンはじめとした製品の販売停止にナイキやH&M、英バーバリーやイケアも続々とこれに続く。

更にはエンタメからは米ディズニーやワーナーメディア、ソニーピクチャーもロシアで劇場映画の公開を中止し、米ゲーム大手のEAはサッカーなどを題材としたゲームからロシア代表とクラブチームを除外すると発表、金融では米マスターカードやビザにアメックスも決済ネットワークからロシアの複数銀行を排除するなどロシア国民にとっても生活水準の劇的な変化の波が迫る。

サハリン1やサハリン2など言わずもがな巨大プロジェクトであり、またハリウッドにとってもロシアは極めて重要な市場であったが、人権問題で各企業が踏み絵を迫られた中国ビジネスを彷彿させる今回はこの時より待ったなしの状況と言え、いずれも利益優先よりも倫理を優先し事業撤退を英断している。上記のサハリン2には本邦勢も三菱商事や三井物産が出資しているが、エシカル経済の観点から他の進出企業含め今後の在り方が問われる事になるか。


制裁と返り血

さて、一寸前まで個人的な海外送金をする際には送金依頼書に必ずSWIFTナンバーを記入していたものだが、周知の通り欧米はこの国際的な資金決済網であるSWIFTからロシアの大手行排除を実行する事とし日本もこれに追随する方針を示している。SWIFTから排除されるとなると世界で殆どの金融取引が出来なくなることで輸出入が滞りその事業展開能力が損なわれる事になる。

このSWIFT排除、冒頭の送金依頼書にも北朝鮮・イラン関連規制に該当しないかを問うチェック項目があったが、かつてこのイランと北朝鮮に発動された経緯がある。常軌を逸したかのようにも見えるロシア大統領は核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じた事が報じられていたが、さしずめ金融の世界で核爆弾にも相当するのがこのSWIFT排除か。

これに加えて制裁はロシア中銀にまで及んだ事で外貨準備を使った通貨の買い支えが出来なくなり、通貨防衛の為に出来るのは利上げくらいという事で急遽その政策金利をクリミア併合時の17%を上回る20%にまで引き上げている。しかし国家や通貨そのものの信認が失われつつあり、中銀が斯様に強烈な利上げを行っても通貨価値の維持やインフレ抑制の効果は期待できないだろうか。

いずれにせよこの金融制裁がロシア経済を悪化させるのは想像に難くないが、上記の通りの金融核爆弾を行使した” 返り血”もまた避けられない。ただでさえ昨年から原油や小麦共に上げ続けていたところへ世界輸出の約3割を占める大国への制裁措置は火に油で、直近のWTI先物は約13年半ぶりの高値示現、小麦先物も14年ぶりの高値となっており遠く離れた地に居る我々も今後は更なる身構えが必要になるか。


コロナ禍の疲弊

さて、一昨日は新宿のハイアットリージェンシー東京が身売りを検討しているとの報が入って来た。ロビーの巨大なクリスタルシァンデリアやガラス張りのエレベーターなどが象徴するようにバブルと共に開業し我々の世代ではホテルセンチュリーハイアットと言う方が馴染みがあるが、施設の老朽化やコロナ禍があだとなって小田急電鉄が保有資産の見直しに動く模様だ。

バブル期に欠かせない存在であったホテルといえばこのハイアット以外にも赤坂プリンスホテルや六本木プリンスホテルがあったがいずれも今はその姿を消し、生まれ変わったホテルの一部も直近ではシンガポールの政府系ファンドへ売却する方針を西武側が表明している通り、ここ数年に及ぶコロナ禍で鉄道業界の疲弊の深さがが窺えるというもの。

しかし昨年営業を終了してしまったホテルグランドパレスや上記の赤坂プリンスホテルなど幾つもの名物メニューがありそれらがもう味わえなくなってしまう寂しさがあったものだが、ココも擁するレストランは幸福ならぬ”口福”がコンセプトであったが既に1年前から大半のレストランを閉めていた。つくづくバブル期に馴染のあった施設の身売り話の浮上はやはり感慨深いもの。


弥生もまだ

さて本日から3月入り、毎年恒例の光景といえば首都圏以外では高校生が卒業を迎えたところも多かったと思うが、例年と違う光景といえば年明けからの各種値上げの顕著化か、先月も食品からエネルギーまで幅広く続騰模様となったが、この流れは今月も多くの食品群から主要エネルギーまでまだまだ続く。

食品などザッと挙げてもマルハニチロや日本水産がサバ缶などを約3~20%、ニチレイフーズが家庭用冷凍野菜を約8~15%、日清食品チルド・日清食品冷凍がチルド麺や冷凍麺を6~13%、昭和産業が家庭用油を1キロあたり40円以上値上げ、キューピーや味の素がマヨネーズを約2%~10%、ヤマサ醤油が全製品を約4~10%、それぞれ値上げする。

また値上げの波は日用品にも及び大王製紙がティッシュやトイレットペーパーを15%以上値上げ、更に大手9社の電気料金や大手4社のガス料金の値上がりも続く。最近は昨年の関西スーパーマーケット争奪戦ですっかり有名になったオーケーが、値上げ宣言した花王製品の取り扱いを中止する旨が話題なったが、長い間デフレの中で競争してきた経緯があるだけに企業は価格を上げ難い。世界的なインフレ下でデフレ脱却が叶わぬ日本、ロシアの暴挙が予期せぬ形でこの構図を変える事になるか否か引き続き目が離せない。


デジタルゴールド始動

信じ難きロシアの暴挙を背景にマーケットの激震が続くが、NY金先物価格は昨年6月以来の1900ドル台示現後も一段高し、国内でも1グラム7,000円大台を突破から一昨年の8月以来、約1年半ぶりに史上最高値を更新した先物価格が先週の祝日明けにこれを更に塗り替えていた。一方で金の代替としてかつて注目された暗号資産が軒並み値を崩す光景を見るに、依然として金が投資家から安全資産としての不動の位置にある事を感じる。

そんな中、今月は三井物産がブロックチェーン技術を用いて金価格に概ね連動する暗号資産「ジパングコイン」の発行を開始している。同暗号資産は1ジパングコインを金1グラムとしてその量に応じた金を実際に調達、価値を金で裏付け金価格と連動させる事で代表的暗号資産のビットコイン等と比べて価格変動を低減し投資以外にも既存の金融商品に無い決済手段としての機能を有するもの。

金の裏付けのあるものとしてはETFが既に定着しつつあるが、この度の商品は暗号資産等に抵抗の無いZ世代などを意識しているのだろうか?何れにせよ先ずはどの程度普及するかというところだが、それ如何でこれから他のコモディティ連動の暗号資産も商品化されるのかどうかこの辺も今後は注目されるところ。


統制五輪と政治

さて、新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るう中、17日間におよぶ北京五輪が閉会式を迎えその幕を閉じた。91ヵ国、地域から2877選手が大会に参加、フィギュアスケート団体では日本が史上初めての銅メダルを獲得、終盤はカーリング女子が初の銀メダルを獲得するなど日本選手団のメダル数は金3、銀6、銅9の計18個と過去最多を更新する快挙であった。

一方で開会式から聖火リレー最終走者にウイグル族選手を起用したのに始まり、本来であれば式典に出席出来ないロシア大統領も堂々と出席、そしてこの背景にもなっているROCのこの期に及んでのドーピング問題発覚から、スキージャンプのスーツ規定違反問題、スノーボードハーフパイプの不可解判定等々、IOCも終始傍観を決め込み最後まで後味の悪い問題が露呈した大会でもあった。

五輪外交を通じた米欧などとの緊張緩和は欧米諸国の外交ボイコットで目算が崩れる事となったが、これを以てスポーツの政治化には反対と批判していた中国こそ今回の五輪を政治的に最大限に利用したといっても過言ではないだろう。ウクライナ情勢緊迫化のなか式典に出席したロシアは閉幕後早々にウクライナに侵攻、増大した国力を背景に国際秩序の変更を目指す中国やロシアと今後どう向き合うか、民主主義陣営の結束と覚悟が試される。


商機とモラルリスク

さて、先週の日経紙・アジアVIEWには新型コロナウイルス保険の保険金支払いが急増しタイでは経営に行き詰まる保険会社が相次いでいる旨の記事があったが、国内でも少額の保険料ながら新型コロナウイルス感染の際に一時金が受け取れる所謂コロナ保険が感染第6波を背景にこれまで保険にあまり興味がなかったような若い世代など中心に賑わいを見せている模様だ。

感染し入院・自宅療養などとなった場合は最高で60万円が支払われるコロナ保険を2年前から販売している太陽生命は年明けから加入者が急増し累計販売数は21万件を超えて来ており、またペイペイのアプリで手軽に契約でき感染確認で5万円が支給される損保ジャパンの「コロナお見舞金」も販売わずか1カ月ほどで加入件数は15万件に達し今月に入ってからは20万件を突破している。

斯様に加入が殺到しているコロナ保険だが、日本生命子会社の大樹生命保険は想定を上回る支払いが見込まれる事で昨年末販売の商品維持が困難な事態に陥りわずか数カ月で販売停止に追い込まれている。そういえば感染第5波のあった昨年9月にも第一生命の子会社が販売していた同保険の販売が一時中止に追い込まれていたのも記憶に新しいところ。

ちなみにこの第一生命の子会社はこの2月に入ってから展開するコロナ保険の保険料を先月の約4倍に引き上げるなどまるでオプション取引のプレミアムを見ているようだが、冒頭のタイでは保険金目当ての意図的感染も横行するなどモラルリスクも表面化している模様。いずれにせよコロナ禍に乗じ商機に賭ける胴元の思惑は如何に、各社共その舵取りが注視される。


既視感

さて最近まで近所のスーパーでは熊本産のラベルが貼られたアサリが連日大量に売れ残っている光景を目にしたが、漁獲量の100倍以上にものぼる量の中国や韓国などから輸入されたアサリが熊本県産と表示されて全国に流通していた問題が世間を騒がせ、この問題のあおりを受け無関係のシバエビやハマグリまで熊本産は売れなくなり入札が止まるなど余波は多方面に及んている。
 
偽装といえばこのアサリ以外にも大手百貨店内に店舗を展開しふるさと納税返戻品にも選ばれた専門店など中国産の鰻を国産と産地偽装して蒲焼などを販売していた件が明らかになっているほか、今週は中国産のワカメを徳島県の鳴門産として出荷販売した食品加工会社社長が食品表示法違反などの疑いで逮捕された報が入って来るなど偽装の波は広がるばかりだ。

ウナギの偽装など10年以上も前にも中国産の横行が問題になり世間を騒がせたのが鮮明に蘇って来るが、この頃はミシュランの二つ星を獲得した今は無きヒルトンの有名レストランまで産地偽装が発覚しヤレヤレという思いであったのも思い出す。日本人の中国産などに対する目が依然として厳しい事などを背景とした悪しき商慣習や、調査の壁になっている縦割り行政等も含め繰り返し発覚する偽装問題の根は深い感がある。