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深度求索

今週は中国のスタートアップ、ディープシークが開発した生成AIアプリが話題となり市場には激震が走った。何でもこのモデル開発にかかった期間は約2か月、費用は約560万ドルと米競合企業の10分の1以下という事で、これまでのような巨額投資も必要なくなるという思惑からマーケットのメインシナリオが根底から揺らいだことでAIバブルの終焉警戒感から日米の株式市場に波乱を呼んだ。

というわけで週明けの米市場ではこれまで市場を席巻してきた代表格のエヌビディア株の18.2%安に続き、ブロードコムが19.8%安、オラクルは16.9%安、TSMC(ADR)は15.4%安、AIによるエネルギー需要を見越して買われてきた電力会社ビストラに至っては28.3%の暴落となるなどAIへの期待を背負っていた主力株が総崩れの憂き目に遭った。日本市場もまた然りでアドバンストの11.14%安はじめやソフトバンクGの5.22%安やフジクラの9.21%安などAI関連株が総崩れとなった。

このディープシークのAIアプリは「オープンソース」で提供されているだけにアップストアで1位になるほど需要は強くAIの民主化に一役買うのに十分な存在となろうが、つい先週には上記のソフトバンクGやオラクルの企業連合で米のAI開発に4年間で5000億ドルを投資する新会社を立ち上げると発表したばかり。これまでのディープシーク側の主張が本当の話だとすればなんとも文春砲並みのタイミングで物凄いモデルが登場したものだ。

特に注目すべきは半導体の輸入に制限がかけられているなか、旧型の半導体を使いながらもオープンAIやメタと遜色ない性能を発揮しているという点か。これで思い出すのが一昨年だったか中国のファーウェイが米国技術に一切依存することなく5Gスマホ、Mete60Proを作り上げ米政府に衝撃が走ったというニュースか。今回の件と併せ制裁が逆にイノベーションを促した証左ともいえるが、斯様に開発で差が縮められるなか今後対中戦略に変化は出てくるのかこの辺も併せてみておきたい。


過ぎてわかる超割安

昨日の株式市場はハイテク勢が総崩れする一方でこれらの資金の受け皿となるべく上げが目立ったのは銀行株群の堅調であった。日銀総裁が発言したところの中立金利までの幅から一段の利上げ期待が高まり、メガバンク勢では三菱UFJFGがザラバ高値1982円と実に19年ぶりに上場来の高値を更新、三井住友FGやみずほFGも揃って年初来高値更新と気を吐いていた。

前にも書いたがメガバンクのPBR1倍乗せは当時の経済を取り巻く環境からしてもほぼ不可能と思われたものだったが昨年には三菱UFJはいち早くこれを達成、また本日も年初来高値を更新してきたみずほFGもこれまた難しいと思われてきた2003年の1兆円増資の優先株を2016年に普通株へ強制転換した時の2829円を三菱UFJのPBR1倍回復と時を同じくしてクリヤ、今や株価はその水準から更に5割も上回ってきている。

このみずほFGや三井住友FGも年初来高値更新で三菱UFJに続きPBR1倍を超え、これでメガバンク勢は全てPBR1倍超えを達成する事となった。今後は他行や地銀セクターも物色の矛先が向う可能性もあるが、思えばつい数年前のマイナス金利の時は今の株価のそれこそ4分の1から5分の1程度でいつでも買えたわけで、いずれどこかでマイナス金利が終わると楽観視してコツコツため込んだ向きがやはり報われたということになる。


米ETFの強み

本日の日経紙グローバル市場面には「ETF、世界で流入最高」と題し、世界のETF(上場投資信託)への資金流入額が昨年は1兆5400億ドルと前年比で85%増加し3年ぶりに過去最高を更新した旨の記事があった。中でも米国の一強は鮮明で、昨年は現物ビットコインETFが承認された事もあり流入資金のうち7割が米国に上場するETFとなった。

昨年11月には当欄で米ビットコインETFの資産規模がゴールドETFの3分の2水準まで迫ってきている旨を書いていたが一強とされる米市場の魅力はその商品の多彩さにもあり、この辺では先月には期限が1日のゼロデーオプション等を組み入れたカバード・コール型のETFやリクイディティーの低い数百の融資債権に分散投資するETFなども取り上げている。

他にも昨年はマグニフィセントセブン等の大手テック株の台頭を受け、米ではシングルストックETFの商品数も拡大し取引高も増加した。同ETFは個別1銘柄の値動きをベンチマークとしたETFで2倍までのレバレッジをかけられるが、ボラが倍という点で信用取引とも似ているが仮に相場が読みと逆に動いたとしてもマル信のように追証や強制決済も無く、元本そのものがマイナスになる事態にはならない点で異なる。

ETFといえば日本でも昨年は6月に日経半導体ETF、また12月にはサウジ株ETFが上場しており、今月に入ってからは世界を代表する米テクノロジー企業10社に均等投資するETF「iFreeETF FANG+」も上場している。ただ上記のETFに見られる“攻めた”商品という点では腕に覚えのある投資家は今一つ食指が動かぬ点は否めないだけに、指数だけでなくシングルストックのようなマル信代替となるような商品拡充も望まれるところだ。


牛歩

周知のように日銀は先週に開いた金融政策決定会合で政策金利を0.25%から0.5%への引上げを決定している。利上げは24年7月の会合以来で政策金利は17年ぶりの水準に乗せることとなるが、この昨年の会合では市場からサプライズと受け止められあの令和のブラックマンデーのトリガーとなった反省を踏まえ今回は会合前の講演等で利上げに向けた地均しが奏功?したか株価は横這いとなり影響は軽微に終わった。

横這いといえば為替もまた然りで公表を挟んで一時円高に振れる場面があったものの、ほどなくして元の水準に戻りこちらも総じて横ばい。利上げ決定でも横這い、利上げ見送りなら円安進行という構図は典型的な売り相場になっている事を物語っており、実際ここまで日本の利上げに米の利下げで両者の政策金利差は縮小してきているものの足元のドル円相場はマイナス金利解除直前の150円水準より円安は進行してしまっている。

日銀は賃金と物価の好循環を謳いここ肯定的に捉えているが、現状日本は食料自給率やエネルギー自給率において前者は40%弱、後者は10%そこそこという構図から今の円安による生活コストの上昇で苦しんでいる向きは多い。日銀は物価の番人としてこれをいかに適切にコントロール出来るかが問われているが、先に書いたように物価目標未満のところで中途半端な利上げを続けることになると物価の番人としてのスタンスが疑問視される。

また賃金といえば一部外資系証券では年平均ベースで1ドル157円を超える円安になると実質賃金の上昇が難しくなるという試算がある。今の水準からわずか1円そこそこでこれに抵触してくるわけだが、上記のような構造的な円安素地に加えトランプ氏の関税政策如何によってもこのトレンドが加速する可能性も秘めてるだけに、不確実性に備えながら為替を睨み適切なタイミングでの利上げ決断が今後ますます求められようか。


外圧の洗礼

今週も先週に続いて大物タレントが起こした女性問題に絡んで社員の関与が指摘されているフジテレビの報道がない日は無かったが、同問題に絡んでは同社社長の閉鎖的で的外れな記者会見が更に不信感を呼び各社のCM差し止めに歯止めがかからない状況になっている。ちょうど今の時期は春の番組改編に向けた広告主募集の時期だけに同社にとっては何とも最悪なタイミングとなったと言わざるを得ない。

もともとキー局の株は近年のテレビ離れもあってPBR一つとっても長らく低迷が続いているが、そんなことも背景に同社もアクティビストに取得され昨年5月にはMBOを提案された経緯がある。このアクティビスト、ダルトン・インベストメンツだが先週は上記問題に関し第三者委員会の設置ほかを要求する書簡を同社に対して送り、今週に入ってからはオープンな記者会見に日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置要求等の2度目の書簡を送っている。

アクティビストの本領発揮という場面だが、本日に開催された臨時取締役会ではこのうち日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置が決まっている。株式の取得といえばもう一つ、直近では実業家の堀江氏の同社株取得も明らかになっている。ホリエモンといえば約20年前にも自身が率いるライブドアを介し、フジテレビ経営の関与を目的に親会社のニッポン放送株を大量取得した末に和解で手打ちした過去がある。これも“ねじれ”を突いた買収劇であったが、あれから20年を経て再度同社とまた対峙するさまは何かの因縁か。

当時はフジ側とこの和解後にホリエモンは逮捕されてしまい同氏が描き目指していたメディア業界の改革実現には至らなかったが、さて今回はどういった顛末になるのか?頼みの綱の広告収入が壊滅状態でまさに満身創痍という状態のなか、株価の方も外圧によるガバナンス改善期待と経営不安とが交錯し昨日は急伸、一転して本日は急反落と思惑が交錯し乱高下する展開となっているが、アクティビストの動向も含め引き続き興味深く見てゆこう。


日本の宇宙ビジネス

さて、昨年11月にはJAXAの「イプシロンS」がエンジン燃焼試験中に爆発して昨年度中の打ち上げ断念となったが、その1か月後にもスペースワンの小型ロケット、「カイロス」2号機が3月の初号機打ち上げ失敗に続いて同じく打ち上げに失敗している。宇宙ビジネスや開発の難しさを物語るが、そんな中で先週はアイスペースが開発した月着陸船「レジリエンスランダー」を搭載したスペースXのロケットがケネディ宇宙センターから打ち上げられた。

同社は高頻度で低コストの月面輸送サービスを目指しているが、同社もまた2022年に打ち上げた初号機は制御システムの不具合から月面着陸失敗に終わった経緯がある。小型探査機等でさまざまな技術を月面で実証する計画で、着陸後は月の砂の採取を行いNASAに有償譲渡もするというが、着陸は5~6月ごろの予定で成功すれば日本の民間企業として初の快挙となる。

一方で米国では昨年10月にマスク氏が率いる民間企業スペースXがブースターを発射台に回収することに成功し再利用に一歩前進している。次期大統領のトランプ氏は1次政権時に有人の月面調査を目指す「アルテミス計画」を始動させたほか、軍事部門に宇宙軍を設置するなど宇宙産業に意欲的だったが、今週から始まった第2次政権でも同計画の推進などに注力するものと思われる。

その期待を映すかのように米市場では宇宙関連銘柄のETFなどが昨年の大統領選挙後にS&P500をアウトパフォームする上昇となっているが、宇宙市場の経済規模は2030年に1兆ドルを超え世界の半導体売上を上回る巨大市場に成長するとの見方もある。日本も30年代に宇宙ビジネスを20年比倍の8兆円規模に成長させることを目指しているようだが、そういった意味でも先ずはこの月面着陸の成功に期待したいところだ。


オレンジ代替も高騰

本日の日経紙総合面では「果物、5年連続最高値」と題し、昨年に卸売市場で取引された果物の平均価格が5年連続で過去最高値を更新した旨の記事が出ていた。猛暑による不作に加えてカメムシ被害の影響も小さくなく生産量が減ったことが大きいというが、高級果実の部類ではないミカンやリンゴなど身近な果物が近年に無い高騰を見せているのが特徴だ。

このミカンなど今月上旬の4大市場におけるキロ当たり平均卸売価格は457円と過去最高レベルに跳ね上がっており、末端価格も自ずと高騰してきている。ここ数年オレンジの急騰で大手各社のオレンジジュースは何とか価格を抑えるべく“みかん混合”などミカン果汁を加え工夫して来た経緯があるが、そのみかんも斯様な高騰に巻き込まれると今後が懸念されるところだ。

また野菜も高騰著しい。今年に入り税込でひと玉1000円超も一部で現れた筆頭格のキャベツだが、こちらは平年比で3.26倍にも跳ね上がっており、これ以外の葉物野菜では白菜も同2.18倍、他にも大根が同1.75倍、ネギが同1.46倍、にんじんが同1.40倍等など、果物含め何れも極めて身近な食材なだけに今後の景気ウォッチャー調査や消費者態度等の指数はいつも以上に注視しておきたい。


あれから30年

さて最大震度7を観測し、6400人以上が犠牲となった阪神淡路大震災から先週で30年を迎えた。地震発生時刻には黙とうが行われ各地でも追悼行事が営まれ各々犠牲者の冥福を祈る光景が見られたが、この追悼・関連行事も主催団体の高齢化や財源不足などを背景にしてここ10年ではほぼ半減している。ところでこの30年、地震列島なだけに同規模の震度を観測した地域が相次いだ。

ザッと挙げても2004年10月の中越地震、2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震、2018年9月の北海道東部地震、そしてつい昨年2024年の能登半島地震などなど。またちょうど一週間前には宮崎で震度5弱の地震があり、この地震は影響していないとしつつも政府の地震調査委員会は想定される南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率について、これまでの「70~80%」から「80%程度」に引き上げたと発表している。

この引き上げは7年ぶりの事だが、多くの人が犠牲となった阪神淡路大震災を契機に震度情報や耐震基準などさまざまな見直しが行われ、防災を取り巻く環境も変化しているとはいえ避難所のあり方などいまだ変わっていない課題も残る。政府は2026年度中に「防災庁」を創設することを目指しているが、上記のような想定されている大地震への備えは国の主導がマストなだけにこの辺の更に進んだ取り組みが望まれる。


政治的公約>法の支配

退任まであと数日を残すのみとなったアメリカのバイデン大統領だが、周知のように年明け早々に日本製鉄による米鉄鋼大手のUSスチールの買収禁止を命じている。この案件が持ち上がった一昨年末から日本政府でもこれを後押ししていたものだが、早速当の日本製鉄は「結論ありきの政治介入」とこの命令を不服として連邦控訴裁判所に提訴を行っている。

ところで現在世界の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量ランキングを見てみると、ベストテンの1位、3位、5位、6位、8位、9位と中国企業が実に6社も入り世界を席巻している状況になっている。この中国が厄介な構造問題の元で、需要が縮小しているなかにおいも過剰生産を止めずに鉄鋼を安価で世界に継続売却しているので結果、スパイラルで鉄鋼価格の下落を招き世界中の鉄鋼業界が強い逆風に見舞われているのが現状となっている。

そんな環境下から自主再建を断念し身売り表明したUSスチールであったが、これを狙っていたのがランキング22位の米クリーブランド・クリフス社、ところが入札で日本製鉄に敗れた経緯がありこのまま同社に買われると米市場での優位性確保が危ぶまれる危機感から全米鉄鋼労働組合と結託し組合員85万人を有する強大な政治力を利用しバイデン氏に働きかけた一連の動きがあったというのが事の成り行きだ。

果たしてというかクリフス社は買収禁止令が出た後に待ってましたとばかりに再度のUSスチール買収に意欲を示しているが、今回も前回の入札で敗れた時同様にその買収額は日本製鉄を大幅に下回る額である。こうして見ると何とも最初から出来レース感は否めない感もするが、はたして事の真相は如何に?というところだ。

確かに「国家安全保障上の脅威」と謳うには先端半導体等ならまだしも鉄鋼をこれに嵌めるのは無理がある。そもそも日本は同盟国で且つ最大の投資国だが、この件が対米投資等に影響しビジネスを委縮させてしまわないかが懸念される。米当局は先週末に日本製鉄が要請していた買収破棄期限を当初の来月から6月までの延長を認めてきたが、ビジネス感覚に長けたトランプ氏の就任ではたして風向きは変わるや否や?今後もこの件から目が離せない。


DEIと日本企業

一昨日の日経紙一面・春秋では、近年多くの米国企業が掲げるDEI推進活動が日本に波及していたものの、本家のほうで急ブレーキがかかっている旨が書かれていた。DEIに関しては当欄でも年末に逆風が吹いている旨を書いていたが、昨日当欄で「世界10大リスク」を取り上げた文中でも米大手企業がDEIに否定的なトランプ氏に配慮しこれらの施策を廃止する動きも出ている旨を書いている。

既に昨年のうちにDEI関係への取り組みの廃止を表明している「ウォルマート」、「ボーイング」、「スターバックス」等々に加え、年明け早々には米「マクドナルド」もこれまで2025年までに世界で管理職に占める女性比率を45%、人種的・性的少数者の比率を30%に引き上げる事などの数値目標を取りやめることを発表し、その数日後には米「メタ」もDEIの実現を目的とする複数の施策を廃止すると明らかにしている。

また「フォードモーター」も昨年のうちにDEI評価のため外部組織が実施する企業調査への参加を中止しているが、この自動車業界では日本企業大手にもこの波が押し寄せてきている。例えば「トヨタ自動車」は性的少数者団体HRCが実施する企業平等指数への参加取りやめを表明し、「日産自動車」もまた企業平等指数への参加取りやめるほか、人種公平性を重視したイベントの資金提供も見送ることを表明している。

とはいえ日本企業でもDEIを廃止する事のリスクを考慮し商社や重電の一部はDEI方針の変更はしないと表明しているところもある。やりたい放題が懸念されるトリプルレッド状態の次期トランプ政権、確かに似通った属性の人が意思決定を担うこうした構図がそのまま大企業に続々波及してくるリスクも懸念されるが、今後もステークホルダーと保守層を天秤にかける苦悩の場面が出て来ようか。


世界10大リスク2025

さて年始恒例のモノは先週も書いてきたが、国際政治学者のイアン・ブレマー氏率いる米調査会社ユーラシア・グループが発表する「世界10大リスク」もまた年始恒例のものである。今年1位に挙がったのが「深まるGゼロ世界の混迷」で、世界的な課題対応を主導し国際秩序を維持する国家は存在しない状態で地政学的な不安定が常態化し、新たな世界大戦が発生するリスクが高まっているというもの。

そして2位に挙げられたのは「トランプの支配」、これまで明らかにされてきた政権人事においては司法省やFBIといった政治的に権力を持つ組織にトランプ氏に忠誠を誓う人物を据えようとしている。行政権力に対する独立したチェック機能が低下し法の支配が弱体化、加えて政治的に近い企業を優遇すれば市場競争ではなく権力への近さが成功を左右するシステムが生まれる可能性があるとしている。

この辺に関してはテスラのイーロンマスク氏はもう言わずもがなだが、株式市場を牽引してきたIT大手トップの“トランプ詣で”が喧しい。メタのザッカーバーグCEOは大統領選後にトランプ氏の自宅に訪問し100万ドルを次期大統領就任基金に寄付しているが、アップルのティムクックCEOも個人で100万ドルを寄付、他にもアマゾンの創業者ベゾス氏、グーグルのピチャイCEOやオープンAIのアルトマンCEOなどなど名だたる大手テック企業のトップ達がトランプ氏の邸宅を訪問し多額の寄付を表明している。

歩み寄りといえば直近ではDEIに否定的なトランプ氏に配慮し、上記企業の一部にもこれらの施策を廃止する動きも出て来た。確かに今回の大統領選でトランプ氏を再選に導いた最大の功労者はテック業界の起業家連中なのは疑いようも無い事実だが、手のひら返しでトランプ次期政権に歩み寄るスピードの速さを見るにユーラシア・グループの懸念も一層現実味を帯びてくるというものだ。

ちなみに冒頭のイアン・ブレマー氏は石破氏に関しては、「安倍元総理のようなトランプ氏と渡り合えるカリスマ性も無く、石破政権は1年も持たなそうだ」としている。


経営者が占う2025年相場

昨年の株式市場は能登半島地震を受けて大発会は鐘も鳴らさない異例の静けさで始まり、大納会は金融行政に対する信頼が大激震となった東証社員インサイダー取引発覚でその年に話題になったゲスト招待も見送るという最初も最後も異例な光景で終わった。その足取りは2月にバブル期の史上最高値を34年ぶりに更新、翌3月には初めて4万円の大台を突破し、更に7月には42000円超えの史上最高値を更新するも、翌8月には1日で4000円超えという過去最大の下げ幅を記録するというボラタイルな市場であった。

そこで今年もまた新年恒例の日経紙「経営者が占う」シリーズでこの株式市場を振り返ってみたい。昨年の日経平均の高値予想平均は37900円でその時期は年末との予想が多かったが、一昨年に続いて予想平均を4000円以上も上回る好パフォーマンスとなった。一方で安値平均は31250円であったが、こちらは8月の“令和のブラックマンデー”で示現した31156.12円と皮肉にもほぼドンピシャとなった。

有望銘柄とした個別企業は上記の通り日経平均が予想を4000円超も上回る上昇を演じたことで、2位の伊藤忠商事から6位の東京エレクトロンまでの5銘柄全てが上場来高値を更新するなど当然な結果に。今年の有望銘柄は昨年1位に選ばれながらも上場来高値更新が叶わなかったダイキン工業が3位に転落する一方、昨年2位の伊藤忠商事が1位になり昨年ベストテン圏外だった日立製作所が2位に急浮上している。

そして今年の日経平均高値予想平均は44450円、安値平均は37025円であった。昨年控えめに4万円の高値予想を挙げたSMBC日興証券の今年の予想は同業大手の大和証券の45000円を大きく上回る48500円と大きく上方修正してきた。ちなみにこの高値予想の平均44450円だが、大発会の日に買いた巳年平均上昇率を大発会の引け値に当て嵌めた値段44574円と奇しくもほぼ一致する。

いずれにせよ今年最大の注目点はトリプルレッドとなった予測不能なトランプ政権の動向、そしてやはり日銀の金融政策動向だろうか?いずれも日本経済の腰折れにつながるような政策が取られるようであればそれこそ昨年高値がしばらくハードルとなるリスクシナリオとして認識されてしまう展開になるだけにこの辺には特に注意しておきたい。