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究極のサブスク

さて、知人が海外留学している娘に会いにひと月ほど留守にするというので頼まれて彼女の愛犬を預かることになったのだが、ペットといえば明日からエリエールで有名な大王製紙がペット用品事業に本格参入する。人間用のオムツの製造過程で出る端材なども活用し、猫のトイレに敷く砂や犬用のおむつなど、犬17品目、猫14品目の商品を販売開始するという。

2年ほど前だったかコロナ禍の中での国内のペット事情を取り上げた際に新規で飼い始められた数として20年は前年比で犬が14%増、猫は16%の増加を見せ過去5年間で伸び率は最も高かった旨を書いていたが、米でも飼われているペット数はパンデミック中に急増し22年11月時点での数字は2019年比で約500万匹の増加を見せている。

これに伴いペット関連ビジネスも多様化し、犬の散歩代行をするドッグウォーカーや飼い主が留守中の間の世話をするペットシッター事業などを運営する会社等は好決算を発表、ペット用のネット通販大手もペット用保険事業を立ち上げ処方箋薬購入やオンライン診療を受けられるサービスを開始し、動物向け医薬品大手もFDAから2つの治療薬が承認されるなどペット向け医療の成長期待も高まっている。

昨日に年初来高値を更新してきた冒頭の大王製紙は、グラフィック用紙等が年々減少しているのに抗えない部分がありそれを補い代わるものとして近年市場規模が伸びているペット事業・産業に参入としているが、米ペット製品協会でもペット関連売上高は年平均で約1%成長しているという。年を重ねるほど愛着が深まってくるペット消費は、その命が続く限り無くなることはない究極のサブスクともいえる。


半導体に沸く地価

昨日は国土交通省がまとめた今年7月1日時点の土地取引の目安となる基準地価が発表されていたが、住宅、商業、工業地などを合わせた全用途平均で昨年より上昇幅を拡大させ1%上昇となりこれで2年連続の上昇となった。これまで地価上昇の流れは大都市中心であったが、地方圏も0.3%上昇し31年ぶりにプラスとなるなどこの流れが地方にも広がっている。

地方といえば今年はさながら半導体バブルの様相を呈しており最も地価が上昇したのは北海道の千歳市でトップから3位までを独占、ココは次世代半導体の国産化を目指すラピダスの工場エリアだが1位と2位は昨年比で実に30%も上昇した。また商業地で最も地価が上昇したのは熊本県菊池郡大津町でココもまた30%以上の上昇となっていたが、こちらも台湾の半導体メーカーTSMCの工場建設が大きく影響している。

また、全国で最も地価が高かったのは1平方メートルあたり4010万円の東京銀座「明治屋銀座ビル」であったがこれで此処は18年連続となった。銀座といえば今年はあのH&Mが路面店を再オープンと5年ぶりに銀座に戻ってきたが、コロナ禍真っ只中の頃に空きが出ていた好ロケーション物件も虎視眈々と狙っていた向きですっかり埋まりまた優勝劣敗の新陳代謝が始まるか。


起爆剤案件?

先週はソフトバンクG傘下の英半導体設計アームが米ナスダックに新規上場した。AI関連の需要拡大期待等を背景に今回の案件には募集の12倍の申し込みとなる人気があったが、注目の初値は公開価格の51ドルを10%上回る56.10ドルとなり、終値は更に上昇し公開価格の約25%高となる63.59ドルで引け、これで時価総額は652億ドルと日本円で9.6兆円を超える今年最大のIPOとなった。

上場セレモニー後にはソフトバンクGのCFOがアームの将来性に期待するとしたうえで「我々のアセットの安全性はアームの上場で飛躍的に改善した。財務運営的にもさまざまな選択肢が出来た。」と述べたのが印象的であったが、これで連想されるのがかつて大量に保有していたアリババ株か。同株を担保にした投資資金の調達がこれまで要であったが、今後はアームが同社に換わる存在となる構図か。

そういえば昨年の株主総会で今回出資に回ったエヌビディア社へのアーム株の売却が独禁法の絡みで断念した事に関して「言い訳抜きで許認可が下りなくてよかった」と孫社長が述べていたのを思い出すが、結果的にその通りで仮にそのまま売却が叶っていたら想定価格で4兆円一寸、冒頭の時価総額との差は実に5兆円以上となるわけでまさに運を感じざるを得ない。

いずれにせよ久々の大型上場となった今回のIPOは紛れもなく世界最大規模、昨年の世界のIPO調達額は欧米の金融引き締めで投資家が景気後退を懸念し前年比65%減であったが、特に米ではIPOの中止件数が前年比95%減とITバブル崩壊の00年以来の高水準になっていた。斯様に低迷していた世界のIPO市場だが、アームの上場の成功をきっかけにこれまで止まっていた案件が動き出すのかどうか今後の動向も注視しておきたい。


手が届くエンゲージメントファンド

本日の日経紙マーケット面には「投信、PBR改革の援軍に」と題し、当欄でも今週はじめに取り上げたアクティブETFの中から「PBR1倍割れ解消推進ETF」が取り上げられていた。同ETFは本日も商いを急増させ上場後の新高値を付けてきていたが、他のアクティブETFも政策保有解消推進や高配当日本株など上場後の新高値を付けてきている。

このPBR1倍割れ解消推進ETFはエンゲージメント活動によってPBR1倍割れ解消を加速、日本の上場企業の大多数がPBR1倍超えとなることを目指すという壮大な目標を掲げているだけに期待が商いに表れ始めたというところなのか日経紙の取り上げもあってかその出来高は昨日の実に3倍にも急増している。

それ以上にこのアクティブETF上場と前後して目立っているのがこれらへの組み入れ銘柄群の上昇の加速か。特に三菱UFJはじめとしたメガバンクなどは万年PBR1倍割れ、そして政策保有株もトップクラスで更には高配当と新規上場したアクティブETF殆どのテーマに被っており、他にもトヨタ自動車やJTなども然りで組み入れに乗って何回転も効く新規商品創設期の旨味をそれぞれが擁している。

しかしこれらのユニークなネーミングを見ているとそのうち分割促進ETFやらTOBターゲットETFなどまで出て来そうだが、冗談はさておき長期でこれらETFを抱くもよし、上記のようにマル信で序盤の美味しいところだけも抜くもよしと投資スタイルは人ぞれぞれだろうが、アクティビストが狙う獲物も幅広く共有される時代になって来た。


富裕層さまさま

本日はパレスホテル東京から豊穣の秋を祝うとして旬のレストランメニューやペストリーショップ新作から宿泊プランなどの案内が来ていたが、このパレスホテル東京といえば今月アタマの日経紙に平均客室単価が海外の高級ホテルの目安とされる10万円を最需要期3~4月に初めて超えた旨の記事があったのを思い出した。

ちなみにこのホテルの近所に位置する帝国ホテルも「ホテル御三家」と言われている割には外資勢との比較で料金の安さは否めないとかねてより指摘されてきたが、こちらも上記最需要期には平均客室単価が6万円近くまで上昇しコロナ前の3万円台から比較すれば随分と回復したものだ。

これら総じてインバウンドの回復に伴う富裕層の消費に則したものだが、冒頭のパレスホテル東京といえば富裕層の取り込みを推進するべくコロナ禍にスイートルームを増設していたが、首都圏に限らず栃木県の老舗、日光金谷ホテルなども富裕層を取り込むべく1973年以来の別館改装でスイートルームを新設している。

Gotoトラベルで都内のラグジュアリーホテル勢がほぼ半額で泊まれたのも今は昔、春にオープンしたブルガリホテル東京など一泊最低25万円からと現在では欧米富裕層に買い負け?てなかなか気軽に手を出せる値段ではなくなってきている。経済を考えるに喜ぶべきか悲しむべきか複雑な想いだが、今の円安を考慮すればまだまだ上昇曲線を描きそうで各施設の今後の動きも引き続き注視しておきたい。


補助金乱発

数日前に近所のSSで給油したところ前回給油時より若干ではあるが値段が下がっていたが、このガソリンといえば先月末には15年ぶりに過去最高値を更新している。周知の通りこれを受け政府は、本来今月末で終了予定だった価格上昇を抑えるための補助金を年末まで延長すると発表している。

前回当欄ではトリガー条項の凍結解除をするに今は好機だと思うとも書いていたが結局この部分は触らずに補助金延長を持ってきたワケだが、JAFなども先に自動車ユーザーが到底理解・納得できない仕組みを一刻も早く解消すべきとして「当分の関税率」の廃止などを政府に求める声明を出している。

しかしユーザーが到底理解・納得出来ない仕組みといえば度々取り上げた二重課税が最たるものだろうか。そもそもの話で税金に税金を課すこと自体に理屈が立たないワケだが、当然ながらこの辺についてもJAFは言及している。また特定のモノに絞る補助金に関しても依然として公平性の観点その他諸々の理由で賛否両論が喧しい。

ところで先に財務省が発表した2022年度の一般会計決算では国の税収は前年度比6.1%増の71兆円超と3年連続で過去最高を更新している。消費税など増加しているにもかかわらず一部からは更なる増税議論が出ているが、それは兎も角も税収が斯様に過去最高な時だけに制度見直しで還元が可能になる部分など再考すべき余地もあるのではなかろうか。


アクティブ型第1弾

先週末の日経紙マネーのまなびにはETFにもアクティブ型と題し、東京証券取引所にアクティブ型として先週に初めて上場した計6本のETF(上場投資信託)が取り上げられていた。海外では既にアクティブ型のETFが広がっているが、これまでの国内モノといえば日経平均などの指数に連動するようなパッシブ型のみのラインナップであった。

うち野村アセットの高配当などはこれまでも国内外のモノが幾つも上場しているが、シンプレクス等は「投資家経営者一心同体ETF」など個性的なネーミングを出してきており、他「PBR1倍割れ解消推進ETF」や高いROEを期待出来る「日本成長株アクティブ」などはまさに東証が現在各企業に改善要請している旬なテーマを持ってきている。

7月にJPXプライム150指数の算出が開始された際に、当欄では「~個人的にはPBRが0.6倍台から様々な株主還元を打ち出しPBR1倍に向かう過程で大化けした大日本印刷のような銘柄に大いなる魅力を感じたものだったが~」と書いた事があったが、特に上記の「PBR1倍割れ解消推進ETF」などはまさにこの辺にフォーカスを当てたものだろうか。

また依然として簿価ベースでは30兆円の政策保有株があるといわれているが、政策保有株をバランスシート上に多く保有する企業はPBRやROEが低い傾向にあるだけに「政策保有株推進ETF」などもこの辺を突いたものか。これら新NISAに間に合わせるタイミングでアクティブ解禁の運びとなったが今後も商品性の広がりを見せてゆくかどうか注目される。


手数料ゼロ時代へ

さて、先週末にはネット証券最大手と同2位の楽天証券が揃って日本株の売買手数料を無料とする旨を正式に発表している。SBI証券は今月末からオンライン取引を対象に日本株の現物と信用取引の両方を、楽天証券も来月アタマから日本株の現物と信用取引の両方について売買手数料が無料になる予定だが長年にわたる手数料競争も遂にゼロに到達した。

思えば手数料引き上げ競争を巡ってはリーマンショックの翌年だったか業界最低水準を各社で謳って1週間の間に計6回もの手数料引き下げ発表が為されていた時期などを思い出すが、冒頭の楽天証券が折しも上場申請した後のこのナーバスな時期に手数料競争無料化を打ち出すあたりに業界の競争の厳しさを感じざるを得ない。

そういった意味でもこの楽天証券のIPOに本件がどの程度の影響を及ぼすかも興味深いところだが、冒頭の双璧2社で昨年の東証における個人の売買代金シェアは8割近くにも上る事だけにこれと併せ2024年からの新NISAスタートを前に個人の売買活性化に繋がるかどうかこの辺に期待する向きもあろうか。

上記の手数料競争が激化していた10年以上前の日経紙では某ネット証券社長の手数料の安さを競うネット証券ビジネスはもう終わりだという旨の意見が謳ってあったのを今でも覚えているが、彼は今この光景をどんな想いで観ているのだろう?今後この2社と手数料収入構成比が異なる他社が彼らに追随してくるか否かも焦点だが、手数料ゼロ化がこの業界の再編の芽を顕在化させることになるかどうか要注目である。


主要4指数8日続伸

前日に節目となる33,000円の大台を回復した日経平均だが、本日もその勢いをかって続伸となった。8日に9月限のメジャーSQを控え、コールのショートカバーよりリクイディティーの高い先物へのロングの選択によって指数が押し上げられている面もあるが、なんだかんだこれで5月11日~22日以来の8日続伸となった。

時価総額トップのトヨタ自動車に日立製作所などのゼロイチ銘柄、三菱東京UFJ、三井住友FG、みずほFGなどメガバンク勢も揃って年初来高値更新した他、三井不動産や三菱地所など不動産大手も揃って年初来高値を更新していたが、そんなワケでTOPIXも日経平均同様に8日続伸となりこれでバブル崩壊後の高値を4営業日連続で更新することとなった。

他にJPXインデックス400も8日続伸となり算出開始以来の最高値を連日で更新、算出公表から日の浅いJPXプライム150指数も揃って8日続伸となった。この指数、グロースの色が濃いものの、長期でTOPIXをアウトパフォームしてくる試算も検証もされているだけに来年の新NISAの拡充に向けて誘い水の効果は高いか。


上場74年に幕か

投資ファンドの日本産業パートナーズらによる東芝への8日からのTOBを控え、本日の日経紙には「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告が出ていた。ちなみに公開買い付け代理人は週内にも2500億円の資本増強に踏み切ると報じられているSMBC日興証券である。

不正会計や原子力事業の失敗で経営危機に陥り2017年に実施した約6000億円の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢?の始まりだったが、以降これに応じた魑魅魍魎の株主の顔色を窺いながら一般株主や従業員など他のステークホルダーは蚊帳の外に置かれたまま近年はアクティビストらの突き上げによる臨時株主総会が頻繁に開催される迷走だけが目立っていた感がある。

そんな東芝も今回のTOBで所謂物言う株主からの呪縛から解かれるということになろうが、彼らとて応募で一定の利は確保するとはいえその価格に納得している筈も無くこれまで費やした時間とその労力に見合ったイグジットではないだろう。この幕引きで彼らの次のターゲットにも関心が向かうが、いずれにせよこのTOB成立が叶えば74年間の上場の歴史に幕を閉じることになる事でなんとも複雑な思いだ。


2か月連続鈍化

さて月初め恒例の値上げ品目チェックだが、帝国データバンクによれば主要195社の今月の食品値上げは2067品目となり、値上げが本格化した22年以降で初めて2か月連続で前年同月を下回ることとなる。全食品分野で最多となったのは調味料であと加工食品や菓子類が続くが、加工食品は2023年通年での全食品分野で唯一1万品目の大台を超えている。

またこれに次いで粗糖やチョコレートの原料となるカカオ豆などの原材料価格が上昇したことが影響して菓子類の値上げも目立つ。ところでこのカカオ、産地の南米諸国はじめ主要生産国の大雨や洪水の影響によりNYやロンドンの先物価格は足元で数十年ぶりの高値を付けており、菓子類はもとより早くも来年のバレンタイン商戦で幅広く価格に影響が出そうとの懸念も台頭している。

ともあれ値上げの浸透や一部の原材料価格の一服を背景に年内の値上げは来月を最後にいったんピークアウトする可能性も高いとしているが、日本と諸外国の金融政策の方向性の違いから金利差拡大を材料に円安が長期化するなどコスト増加要因は依然燻るだけに、はたして素直に値上げ機運後退の気配が出てくるのか否かこの辺を引き続き注視してゆきたい。


62年ぶりスト

さて今年の2月に当欄では、「池袋の憂鬱」と題しセブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武の米投資ファンドへの売却を巡り迷走している様子を取り上げたことがあったがあれから半年、本日はとうとう旗艦店の西武百貨店池袋本店で労組側がストライキを決行する異例の事態となっている。大手百貨店のストライキは1962年の阪神百貨店以来、61年ぶりの事である。

事の発端は売却先の米投資ファンドがヨドバシホールディングスと連携している事でココの西武百貨店への出店案が雇用不安を生み出し、同時に2月にも書いたように当のテナントに20年以上入居しているラグジュアリーブランド勢はじめ地元の豊島区長、地権者からも猛反対を食らっているなど元凶?となっている。

従前に見られたような単純な賃上げストではないケースが時代を感じるが、報じられているところでセブン&アイ社長の「今まで十分に時間をかけて説明をしてきてこれ以上時間をかけられない」という主張に対し、労組側はこの辺の説明は今月から始まったばかりと述べており、また改装案にて大幅に入居場所が移動になるラグジュアリーブランド勢に対してもこれまでこの件に関する説明は無いとされている点など不透明を感じる向きも多いのではないだろうか。

ともあれこの一件を機に他の労組も実際にスト権利を交渉手法の一つとして活用しようとする契機になるのかどうかM&Aする側としてもその辺も留意すべき事項となって来ようが、不採算事業のイトーヨーカ堂も抱えるなか多くの利害関係者の納得を得られていない状況下で売却を強行した代償を今後負うことになるのかどうかも含めて事の成り行きを見守りたい。