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先物も1万円大台超

このところ堅調相場が続くゴールドだが、先週末のNYでは金先物が20年8月に付けたこれまでの最高値2069.40ドルを抜き、約3年4か月ぶりに過去最高値を更新した。この流れを受けJPX(日本取引所グループ)の大阪取引所でも週明けに先物の中心限月がザラバで10028円を付け1982年の上場以来、初の1万円大台を超えて最高値を更新してきた。

1日のFRB議長の講演では早期利下げ観測の牽制と取れる発言が聞かれたが、これより先の先月末のFRB理事の講演で積極的なタカ派とみられていた同氏が利下げに言及していたこともあって市場は現在の金融引き締めは緩和に向かうとの思惑が広がっている。これで米長期金利も4.1%台と約3か月ぶりの水準まで低下、ショートカバーも巻き込み金に矛先が向かった格好だ。

現物や先物が最高値更新ならETFもまた然り、国内現物保管型の三菱UFJ信託の純金上場投信、ワールドゴールドのSPDRゴールドシェア、野村のNEXT金価格連動型上場投信、WisdomTree金上場投信等々、多いもので商いを前日比9倍近くも増加させていずれも軒並み年初来高値を更新してきている。

目先はちょうど1週間後に始まるFOMCに注目というところだが、折しもイスラエルとハマスは交渉決裂で交戦が再開しこれにウクライナ侵攻と依然燻る地政学リスク、分断の深まりで基軸通貨ドルの信認低下には歯止めがかからずドル指数も3か月ぶり安値を示現、米ドル保有のリスクを意識した中銀の金買いなど今の金は複合要因が背景にある点がこれまでと構図を異にする事を認識しておきたい。


師走の値上げ

早いもので師走入り。今年もまた値上げに明け暮れた一年となったが、帝国データバンクによれば今月の飲食料品値上げは677品目。調味料が全食品分野で最も多く、次いで乳価改定の影響を受けた乳製品が続く。単月値上げ品目数としては今年の7月以来、5か月ぶりに前年同月を上回るものの年内では2番目に少ない水準となっている。

結局今年の値上げ品目数は累計で3万2395品目、1回あたりの値上げ率の平均は15%にのぼり昨年の水準を上回る記録的な値上げラッシュの1年となった。この度重なる値上げによる価格転嫁で大手食品メーカー各社の4~9月期の増益効果は主要9社で約1060億円にも達し、原材料高等のコスト増影響を差し引いても420億円のプラスになっている。

来年の値上げ予定品目は直近で判明しているところで原材料や冷凍食品など中心に累計1596品目と前年同期比9割減となり、通年の値上げ品目は最大で1万品目前後の水準とこちらも約7割減とラッシュは収束化の見込みだが、円安の長期化や賃上げによる人件費上昇等々の影響がタイムラグを経て発生する可能性も高くこの辺は引き続き注視しておきたい。


鷲のマークもMBO 

本日で今月も終わりになるが、今月の株式市場ではとりわけMBO実施が目立った印象だ。当欄では先々週にシダックスとベネッセホールディングスの2社の相次ぐMBOを取り上げていたが、先週末には大正製薬がMBO実施を発表している。ベネッセの時に国内MBOでは最大規模としたが、その規模を軽く倍以上超えて日本企業のMBOでは最大規模となる。

その買い付け価格もなかなかの高プレミアムとあってこれにサヤ寄せする格好で週明けからわずか3営業日で先週末終値から約6割もの急騰を演じ、これまで高値掴みで我慢してきた一部株主へは最後のささやかなプレゼントとなったか?ただ高プレミアムになったのも当然なところで、そもそもがMBO発表時で同社株のPBRは0.5倍台と低迷しておりこの急騰で6割高を演じた本日でも0.8倍台に甘んじている。

同社は市場再編で自らスタンダード市場を選択していたが、上記の株価指標と併せ今後の長期的な経営計画に伴う時間とリスクの前に株主の全面的支持を得るのは困難との判断によるものがこの度のMBOの背景にあるか。ベネッセも構造改革の長期化を見据え非上場化を選択したパターンだったが、あの「鷲のマーク」が株式市場から自ら退出するさまはやや驚きだ。

というよりむしろOTC市場においてブランドが浸透しているからこその退場かもしれないか。誰もが一目瞭然の鷲のマークが広く知れ渡っている今、上場継続のその対費用効果が見合わないという事なのかも。いずれにせよ今月の立て続けの大物?の非公開化決断を見るに株式市場の新陳代謝が本格化してきた感が窺える。


米年末商戦2023 

米では先週のブラックフライデーを皮切りに年末商戦が本格化し、今週はサイバーマンデー、トラベルチューズデーと続いた。コロナ禍の巣ごもり需要などを背景にここ数年好調な売り上げが続いてきた年末商戦だが、全米小売業協会では今年の伸び率は前年比で3%~4%と2021年の12.7%と2022年の5.4%から減速し、パンデミック前の2010~2019年の平均である3.6%増に沿ったものになるであろうとしている。

とはいうものの今年は小売り業者が前例のない規模の値下げや宣伝活動を打ち出すなど金利上昇やインフレ等が重荷となる中で節約志向を強める消費者を取り込む動きが見られ、調査会社のアドビでは今年の年末商戦のオンライン売上高は前年比4.8%増と昨年度実績の3.5%成長から加速して2218億ドルになるとの予想を出している。

実際に先週のブラックフライデーでのネット通販の売上高はアドビの96億ドルの予想に対して98億ドルと前年比7.5%増となり、サイバーマンデーの売上高も過去最高になった模様だ。特に若年層の消費は学生ローンの返済再開が不安材料であったものの、BNPL(後払い決済)等の新たな分割払いが日常生活に溶け込んでおり先週のBNPL決済は前年比47%増とこの懸念材料を吸収する格好となっている模様だ。

というワケで全米小売業協会の減速懸念をよそに堅調な雇用市場や賃金上昇率などを背景に、今年の年末商戦で支出する一人当たりの金額の平均は567ドルと前年比13%増の見込みで過去最高の更新をするとの予測も出ている。小売り企業にとって年間売り上げの4分の1を占めるといわれるこの年末商戦、FRBが高金利を維持するなかでも米経済を支える個人消費が引き続き底堅さを維持出来るかどうかに注目が集まる。


複合施設続々

さて、先週の日経紙の全面広告でも見られたように大型複合施設の麻布台ヒルズがオープンしている。高さ330メートルと東京タワーとほぼ同じ高さで日本一を誇り緑と健康がテーマ、というわけで敷地の3分の1を320種類もの植物が占め緑化されているのが特徴で、ホテルのような人間ドックの慶応義塾大学予防医療センターが入る。

また都心では最大規模のインターナショナルスクールが入居し、浅草の老舗パン屋のペリカンや、米でミシュランの星を取った鮨AZABUも逆輸入で入るなど店舗も面白い。そういえば先月には森ビルが進める再開発事業、虎ノ門ヒルズの最後の1棟である虎ノ門ヒルズステーションタワーもオープンしているが、この一連のプロジェクトではあのアマンが手掛ける300億円とも噂される超高級レジデンスも話題になったなと。

複合施設といえば虎ノ門ヒルズステーションタワーと同じく10月には旧代官山東急アパート跡地にフォレストゲート代官山が開業しているが、東急といえば渋谷。100年に一度の再開発のラストピースとなる来年に全面開業する渋谷サクラステージが先週お披露目されているが、冒頭の森ビル系と今後どう差別化してゆくのか?いずれにせよこうした複合施設が我々の生活に新たな提案をしてくれることを期待したい。


凍結解除の是非

先週に経済産業省が発表したガソリン全国小売平均価格だが、原油価格の下落に伴い政府の補助金の支給額も減っていることなどを背景に2週連続の値上がりとなっていた。ところでこの政府補助金といえば、ガソリン価格発表と日を同じく行われていた衆院予算員会で、国民民主党代表から補正予算案に賛成する条件としてトリガー条項の凍結解除を求められたのに対し総理は解除を検討すると表明している。

当欄ではガソリンが13週連続の値上がりを演じるなど高騰が止まぬ8月に「凍結されて久しい特例税率上乗せ免除なるトリガー条項が再度思い出されるが、そろそろ特例法改正の機運は出てこないのであろうか?~凍結解除に今はまさに好機だと思うが。」と書いていたが、政府側はこれまで解除には慎重な考えを一貫して示していた。

それでもなお財務大臣はトリガー条項を発動すれば1兆5千億円の巨額の財源が必要になると慎重な姿勢を崩さないが、ガソリン補助金の予算総額は既に6兆円超に膨らんでいる。先に発表された石油元売りの4-6月期決算は大手勢が軒並み前年同期比2倍以上の好決算に沸いていたが、GS価格への反映が見えにくいなかモヤモヤしている消費者も多いのではないか?

また直近の会計検査院検査報告では、このガソリン補助金の二重交付など過大交付が見つかり、基金の62億円を投じたGSの価格モニタリング調査も資源エネルギー庁調査と重複しているなど無駄遣いが指摘されている。そもそも論で政府の温暖化ガス排出量実質ゼロ目標に自ら逆行している政策との指摘がなされるなかはたして排除は叶うのかどうか、先ずは行方を見守りたい。


イルミネーション2023

本日から西のUSJではクリスマスイベントがスタート、ナイトショーも4年ぶりに復活ということだが、東の東京ディズニーリゾートでも4年ぶりにクリスマスツリーが復活とクリスマスムードが高まるこの時期に楽しみなのはやはり街のイルミネーションか。既にこの近所であれば東京駅から日本橋エリアまでを東京イルミリアが艶やかに日本橋さくら通りで灯っている。

都内では他に定番の六本木けやき坂や丸の内のイルミネーションも先週からスタートしたほか、近年はイルミネの名所になりつつある日比谷でも先週から日比谷ミッドタウン周辺5か所で「マジックタイムイルミネーション2023」がスタート、今年は5周年のアニバーサリーイヤーでコンセプトは“魔法のような瞬間”日比谷仲通りでは1本1本カラフルなカラーで彩られ、日比谷ステップ広場では7つのツリーが虹色に染まっている。

ところでイルミネーションといえば、今年も引き続きSDGsを意識した環境への配慮がうかがえる取り組みが目立つ。上記の日比谷では白熱電球からLEDへの変更で電力消費が約40%減少しており、ルミネーションに使う電力は日比谷ミッドタウン屋上のソーラーパネルを活用。この手では目黒川のイルミネーションも廃油原料のバイオディーゼルを燃料としているが今年も引き続きこれを踏襲している。

ちなみにココは家庭内で出た使用済み油を回収するアップサイクススポットも今年設置しているが、個人の貢献が煌びやかなイルミネの元になっているというような目に見える体感でその意識も変わってくるか。東京オリンピックで皆が持ち寄った都市鉱山がメダルで使われたパターンもまたこれと同じであると思うが、貢献の可視化に工夫を凝らすような動きが広がれば循環型社会もより一層進んでゆく事になるのではないか。


オーバーツーリズム考

さて、週末に所用で久し振りに築地界隈に出掛けたがしばらく見ない間に何処も彼処も外国人観光客が押し寄せていて驚いた。それもその筈、政府観光局によれば今年1~9月までの訪日外国人数は1,737万人、そして先月は251万6500人と2019年比0.8%増となりコロナ後で初めて2019年実績を上回っている。

上記の通り築地も凄かったが、TV等では京都でも地元の人々が通常使いのバスに乗れなくなっている事態が報じられているのを見掛けた。こうしたオーバーツーリズムの問題に絡んでは確か先月には政府が観光客の急増による過度な混雑で、地域住民の生活に影響が出るオーバーツーリズムの未然防止・抑制の為の緊急対策を取りまとめ持続可能な観光に向けた取り組みを図る旨も報じられている。

対策には混雑状況に応じた鉄道運賃の引き上げや、通勤や通学への影響を抑えるため観光地への急行バスを導入など盛り込まれた模様だが、他に箱根等では名所の渋滞予測や飲食店等の混雑状況を集計し混雑していない地域店のクーポンを提供し分散を図っているようだ。海外でもオーバーツーリズムは課題となっており、伊ベネチアやインドネシアのバリ島では来年より訪問税を導入予定としている。

こうした問題ではあらゆるシーンで分散化が言われて久しくクーポン発行にしろ財源の問題等もあり実情はなかなかうまくいっていないが、世界の潮流は一極集中しているところに観光税などチャージを課し分散を図るものがトレンドになっている。訪日客は今後も増加する見通しだが、持続可能な観光の為にはこの喫緊の課題に対する舵取りが問われる。


ボージョレ・ヌーヴォー2023

さて、本日は秋の風物詩であるボージョレ・ヌーヴォーの解禁日である。昨年は空輸ルートの制限や輸送コストの高騰で価格が2倍になるモノも見受けられたが、今年は円安の影響こそあるものの航空運賃の下落や地政学リスクの顕著化前に輸送などヘッジしていた事などもあって去年より店頭価格が1~2割ほど安くなる見込みで値下がりは14年ぶりの事という。

上記に加え今年は新型コロナの5類移行で行動制限も解除されたことからパーティー需要が復活する兆しもあり夜の外食シーンでボージョレ・ヌーヴォーの企画が各所で行われる模様。そういったことで今年のボジョレ・ヌーヴォー市場は11年ぶりに前年を超え、2割贈の売り上げが予想されているというが久しぶりにマーケットの活性化に期待する声もある。

ところでこのワインといえば毎年の如く「〇〇年に一度の」「〇〇年で最高」との評価が恒例となっているが、今年の専門家の評価はどうなのだろう?輸入元は「まるで摘みたての赤い果実そのまま口にほおばったような味わい」とのことだが。ともあれ日本は日付の関係で世界のどの国より早くヌーヴォーが飲める地の利を生かした特別感のあるイベントが定着しており、今年もまたこの時期がやってきたなと感じる季節の風物詩である。


PBシフトの波

この時期は何処もブラックフライデーの案内が喧しい小売り各社だが、本日の日経紙一面は「小売り、PB比率最高」と題し、物価高の波のなか消費者が安いPB(プライベートブランド)にシフトしている事などを背景にイオンやセブン&アイホールディングスなど大手勢中心にこれらを拡充する動きが加速している旨が出ていた。

同紙によれば長引く食料品値上げのなか食品PBの割合は10月に16.8%となり、統計がある12年以降で最高になったようだが、食品PBの半分を刷新した上記のイオンは既に春先にPBを強化し売上高1兆円を目指す旨を表明している。他にセブン&アイや西友、ベイシアなども品目数を増やす等を表明するなど各社のPB傾斜が目立つ。

消費者のPBシフトの傾向は米でも顕著で、PB製造業協会調査によれば2022年の食料雑貨市場におけるPBの規模は2286億ドルに拡大、市場全体の29%を占めるまでに急成長しており1年前と比べて11.3%の上昇となっている。16日に四半期決算発表を控えるウォルマートはPB市場で25%のシェアを持つが、PBシフトの勢いが一段と増しているという。決算と共に日米PB市場の今後の成長にも注目したい。


今年と来年のヒット商品

かつて時々ランチで使っていた近所のイタリア料理店が久しく閉まった気配があったが、久し振りにその裏通りを通ったらいつの間にかそこがチョコザップになっていた。このチョコザップ、ここから歩いてほどなくの所にも新しく店舗がオープンしていた記憶があるが、同店は今月アタマに発表された毎年恒例の売れ行きや影響力などを基に選ぶ日経トレンディの今年のヒット商品ベスト30の第2位に選ばれている。

1位は言わずもがなのチャットGPTであったが、最近では企業や自治体はもとより教育方面でも導入が進んでいる模様。他にはかつてのブームが新たな形でリバイバルとなったWi-Fi機能を搭載しメタバース上でも交流可能なたまごっちユニや、睡眠にゲーム要素を組み合わせたポケモンスリープに再ブームとなったハリーポッターまで20世紀の人気コンテンツが姿を変えて大ヒット。

併せて発表となった来年のヒット予測もなかなかユニークだ。既にあの「刀」がプロデュースしたという事で話題のヴィーナスフォートの跡地に開業する没入型テーマパーク、イマーシブフォート東京や、グルメ検索アプリのSmafooに観光や街歩きに音声で案内してくれるLocatone等々一段と進化を遂げている。

こちらでひと際関心が向かうのが7位にランクインしていた「痛いコスメ」、何かと思えば毛穴より小さいマイクロニードルが入っていてこれが刺さる事で美容液が浸透し易くなるというコスメ、リードルショットでリップから美容液まで揃う。既にあった貼る薬や貼るワクチン等と一緒の類でこちらも進化系だが、いずれにせよ来年も様々なキラーワードが飛び交う事になるか。


最大規模のMBO

昨年の秋口に買収を巡り乱戦模様を演じ当欄でも取り上げたことのある給食運営のシダックスだが、先週末に食材宅配サービスを手掛けるオイシックスが同社を子会社化する旨が発表されている。一時は当のシダックス側からTOB反対表明が出るなどゴタついたが、同社がMBOで株式を非公開化した後に第三者割当増資を引き受ける格好での決着となった。

ところでMBOといえばもう一つ、日を同じくして通信教育最大手のベネッセホールディングスもMBOを実施すると発表している。国内MBOでは最大規模でヨーロッパの投資ファンドと組んでSPCがTOBを実施、その完了後に創業家も出資する格好になるが本日はそのTOB価格にサヤ寄せする形でベネッセHDは比例配分のストップ高で引けている。

このベネッセ、日本マクドナルドのトップが鳴り物入りでCEOに就任したものの個人情報漏洩問題発覚で早々に退場したのが記憶に新しいが、近年は少子化という逆風には抗えず構造改革の長期化を見据え非上場化を選択したケースか。先の東証の市場再編前からこれも背景にMBOは増加傾向にあったものだが、その後出された資本コスト等を意識した経営実現要請も効いている。

上場継続の意義を問うところのMBO増加だが、当初は全く代り映えがしないと失望の声が大きかった東証の市場再編も段階的に選別が進み上記の東証要請もアクティビストにとっては追い風になっている。斯様に東証と歩調を合わせ大きくなって来た彼らの影響力も背景に今後も市場の新陳代謝が加速してくるか。