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スタンダードという選択

さて、昨年に東証が実施した市場再編だが約2200社あった旧東証一部企業のうち既に自主的にスタンダード市場へ移行したのは338社、これを経て東証はプライム市場への上場基準を満たさない企業に対して無審査でスタンダード市場への移行を認める特例措置を今年設けていたが、申請締切時点の速報から変更なく計177社が明日にスタンダード市場へ移行する。

当初よりプライム市場行きのチケットを手にしながらも敢えてスタンダード市場を選択した向きの株価は総じて主要株価指数をアウトパフォームしていた旨は以前書いた事があったが、取り敢えず未達でも猶予期間はプライム市場のブランドに噛り付きヤレヤレで移行表明した企業のそれは半数以上が下落したというが果たしてという感じだ。

とはいえこうした中でも株主還元はじめ成長戦略投資などに攻めの姿勢を見せている企業に注がれる視線は熱い。斯様に再編からはや1年半を経て絞り込みが進んでいるというところだが、当初よりプライム市場が招待席のような重厚長大企業の中でもJPX150のような新指数の誕生を背景に積極的な株主還元強化に動く向きも出てきているあたりは少しずつ潮流の変化を感じる。

日本の上場企業のROEは現状10%にも満たず、欧州の約16%はもとより米国の約23%よりはるかに低位に沈んでおり、実質PBRにしても現状2%にも満たず米の半分以下の水準に甘んじている。であるから上記のJPX150の基準など米のS&P500は選別せず何処を切り取ってもほぼ成立すると思うが、日本の企業価値を上げるためには引き続き全体の底上げが喫緊の課題か。


プランタン跡地の変貌

さて、一昨日午後に岸田首相は物価高騰の現場を視察するとかで東京都内のスーパー、イトーヨーカドーを訪れているが、何をいまさらという感じでヤレヤレというところだ。ところでスーパーといえば昨日は銀座のマロニエゲートの地下にあのディスカウントスーパーのオーケーがオープンした事が話題になっていた。

何が目当てなのか開店前からビルの外に行列が出来ていたのも驚きだが、オーケーで販売数ナンバーワンを誇る299円のかつ重もしっかり陳列された。先に総務省が公表した8月消費支出は実質2.5%の減少でマイナスはこれで6か月連続、支出を抑えている現状が浮き彫りとなっており節約志向のニーズをとらえようとする波が銀座をも浸食している。

そういえば此処の6階には昨年ダイソーの3ブランドのグローバル旗艦店が入居したのが話題を呼んだが、この向かいの西銀座デパートには同じく低価格ショップのスリーコインズの関東最大級旗艦店がオープンしている。そう考えるとプランタンのあった時代から街の景色もここ数年で様変わりという感も。

この低価格?密集エリアからほんの一寸歩いたところでもイグジットメルサには昨年100円ショップのセリアが初出店しており、時を同じくして入ったワークマンは早くも今年新形態のワークマンカラーズの第1号店としてリニューアルオープンを遂げている。富裕層が高額消費を牽引するラグジュアリーブランド勢と、低価格を謳う旗艦店が街に共存し二極化がより鮮明になってきた。


再接近?

先週までにドラッグストア大手5社の2023年6~8月期連結決算が出揃ったが、売上高は5社すべてが伸び4社で純利益が前年同期比で増えていた。新型コロナの5類への引き下げでこれら対策商品の売り上げが落ち込んだものの、猛暑の影響もあり日焼け止めや制汗剤の販売が伸びたことがこれを補った格好になった。

ところでドラッグストアといえば当欄では先にアオキHDやツルハHDの株主総会を取り上げ、所謂物言う株主が創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなど株主提案があった旨を書いたことがあったが、ツルハHDの株主総会では資本業務提携を結んでいるイオンがツルハHD側に寄った格好になった事で接近説が再浮上している。

イオンといえばスーパー再編のみならず数十年も前からこのドラッグストア業界にも根を張ってきたが、9年前にはウエルシアHDを子会社化している。ウエルシアは首位だが、次にツルハHD、そして3位には大手同士の統合で誕生したマツキヨココカラが位置する。仮にウエルシアとツルハHDが統合したらイオン並みのガリバー企業が誕生することになるあたりが思惑だ。

目下のところイオンは業界再編に関しては会社提案による経営体制の下で協議を進める事が適切と淡々としているが、場所によっては同社が出資するドラッグストア同士の競合も発生しており今後も物言う株主の経営改善圧力は弱まる事はないであろうことを考えるとそういった圧力?が結果的にイオンの背中を押し更なる再編に向けての動きが起きるかもしれない。


カタリスト

一昨日の日経紙マーケット面では「株高占う政策株の縮減」と題し、日経平均株価がレンジ相場を脱しバブル崩壊後の最高値を更新する原動力の一つとして、政策保有株の縮減に注目が集まっている旨が書かれていた。冒頭にはアイシンが政策保有株ゼロ化を目指す旨が出ていたが、とりわけ今年は過去にないペースで持ち合い解消が進んでいる。

即ち東京証券取引から発表されている週次統計において投資家主体別売買データの政策保有株の売却を反映する事業法人からの現物株式売却では、10月第1週時点で計4.8兆円に達しているが、同じ時期の過去5年平均が約3兆円程度であったことを考えると今年はこれらを約5割上回るペースで推移していることになる。

これまで株式持ち合いという日本の特異な形態は相手があっての事につきなかなか解消のきっかけが切り出せなかったものだったが、政策保有株を持ち合う双方共にPBRが低い傾向にあったところへ東証が要請したPBR1倍割れ是正等でこの辺のハードルが下がり動きが加速してきたものと思われる。

とはいえ安定株主を欲する企業ニーズはある一定数は残る可能性が高く今後何処まで解消が進むか不透明な部分もあるが、既に先に取り上げたアクティブETFでも「政策保有解消推進ETF」なる商品が登場し解消期待は大きい。特にこれに組み入れられているトヨタグループの持ち合い解消の動向は冒頭のアイシン然り注目が集まっており、引き続き他の事業会社含めた政策保有株の縮減に向けた動きには注目しておきたい。


枝葉の広がるオプション市場

さて先週末の日経紙グローバル面では「超短期トレード、米で急増」と題し、米オプション市場で米S&P500種株価指数を原資産とするオプションで24時間以内に満期を迎えるODTE(ゼロ・デー・オプション)の比率が、CBOE(シカゴ・オプション取引所)の調査で8月に5割となるなど超短期トレードの存在感が高まっている旨が出ていた。

満期が24時間未満と超短期で価格も安価なところがミーム株などに飛びつく個人に人気なあたりが国内でも一頃話題となったバイナリーオプションを彷彿させるものだが、最近では個人のみならず機関投資家の取引も増加している模様で、いずれかに大きく動けば利益が狙えるストラドルの買いをビッグイベントの前に組んで臨む向きも多いようだ。

こうした人気からCBOEはVIX1D(ワンデーボラティリティ指数)と呼ばれる指数をスタートさせ、先月にはナスダック100指数のプットを売り稼いだオプション料がETFの収益源となる「ナスダック100エンハンスト・オプション・インカムETF」なる商品も登場している。またドイツ取引所のユーレックスでも、ユーロ・ストックス50と連動するゼロ・デー・オプションの取引が開始されている。

斯様な新指数の登場や上記の売りニーズが増えるような新形態のETFの登場で、ボラの変動幅拡大など含めオプション市場全体のバランスを危惧する声も一部出てきているがその辺は今後の推移を見守りたいところ。日本でも先にSBI証券と楽天証券が揃って手数料無料化を打ち出したばかりだが、こうしたことなどを背景に日本でもオプション取引の枝葉が広がってゆくかどうか注目したい。


欧州に倣う

高島屋から回収した顧客の服より再生したカシミアを使った衣類の案内が来ていたが、この辺に絡んでは経済産業省が先月末に衣料品の再生や再利用に関する課題と改善策をまとめた報告書を公表している。「回収」「分別・繊維再生」「製造」「販売」の4段階で改善を要求するというものだが、上記の高島屋はじめ近年再生衣料の試みが目立っている。

最近はJR東日本などでも回収した古着から手拭いなどを作って販売する動きがみられるが、アパレル産業は世界で年間約9000トン以上もの大量な服が廃棄されており石油産業に次ぐ環境汚染産業とまで言われているが、日本でも家庭や事業所で不要になった衣料品の64.3%が捨てられており再生は約17%にとどまっているのが現状だ。

リサイクルやアップサイクルで先行しているのが欧州勢で、ZARAはじめ複数のブランドを展開するインディテックスは早くからプラスチックのショッピングバッグを廃止し再生衣料にも積極的に取り組んでおり、H&Mも廃棄品をアップサイクルした循環型繊維を什器に採用するなど積極姿勢が目立つ。今回の経産省の動きも欧州の動きに対応したものだが何処まで比率を伸ばせるか注視しておきたい。


国際金融センターランキング

先週は日経サステナブルフォーラムが開催されたが、そこで総理は新しい資本主義実現会議のもとに投資拡大に向けた政策を議論する分科会を設けると表明、NYで表明した煩雑な行政手続きを英語で完結するなど海外投資家が活動し易いように環境を整える等の資産運用特区などを議論し年末までに政策プランをまとめる方針と述べていた。

この海外の資産運用会社を日本に誘致する狙いの特区だが、ちょうど先月末に公表された国際金融センター指数によればランキングのトップは安定のニューヨーク、次いでロンドン、そして3位がシンガポールとなっている。という事で肝心の東京はというと21位と前回の16位より更に5つランクを下げなかなか不甲斐ない位置に甘んじている。

もっとも1年前は曲がりなりにも9位とトップテン入りしていたワケだから前回も既に7つランクを下げていることで今回も連続ランクダウンと凋落が目立つのは否めない。ちなみに政府はこの資産運用都区の候補として東京以外にも大阪、札幌、福岡を軸に検討しているようだが、このうち大阪が同ランキングで辛うじて38位に位置しているものの札幌や福岡はランク外となっている。

このランキング、今後数年で重要になると想定される都市には東京以外のアジア勢が数多挙がって来ているが、現状の日本の運用会社の規模などを見るにこれに挙がって来ないのも納得でなんとも心許ない。この辺はホームバイアスの特異さなどが背景になっているワケだが、先ずはこのあたりの現状から見直さなければならないのかもしれない。


分割機運

さて、今年は誰もがその名を知っているであろう日経平均寄与度の高い銘柄群の分割が目立つが、ザッと挙げても先ず3月にはユニクロのファーストリテイリングが1株→3株へ、4月には夢の国ことオリエンタルランドが1株→5株へ、ファナックが1株→5株へ、東京エレクトロンが1株→3株へ、信越化学工業が1株→5株、そして7月にはNTTも超大幅分割を実施済みだ。

今月もホンダやデンソー、ヤクルト本社やロームなど有名どころの分割ラッシュだが、先の日曜日の日経紙総合面にも「株式分割 個人買いやすく」と題し、東京証券取引所が望ましいとする最低投資金額とする「50万円未満」を上回る銘柄の分割が2023年10月末までに60件強と前年同期の2.3倍に増える見通しと書かれていた。

上記以外でも直近ではJR東海が11年ぶりに1株→5株への株式分割を実施したほか、村田製作所も1株→3株の分割を実施、アドバンテストも同じく1株→4株の分割を実施しており、村田製作所は2019年の3株分割以来、4年半ぶりの分割実施、アドバンテストに至っては2006年の2株分割以来、実に17年ぶりの分割実施となる。

来年から始まる新NISAに向けて個人投資家がより投資し易い環境へとの機運の盛り上がりから東証の示す望ましい投資単位の水準へ近づけようとの分割実施の増加だが、形ばかりの分割でなお新NISAの拡大した成長投資枠を軽く超過してしまう向きや、超値嵩のままこれまで静観してきた向きが今後重い腰を上げるのか否かこの辺の動向も注視しておきたい。


制度の趣旨

昨日の日経紙金融経済面には「迫るNISA惑う業界」と題し、新NISAのスタートを3か月後に控え成長投資枠ファンドの申請に絡み隔月分配型の投信の扱いで逡巡している向きもあるなどそのルールを巡る運用会社の戸惑いが書かれていた。これまで発表されたモノには毎月分配型が除外される一方で隔月分配型の投信が一部入っている。

毎月分配型は長期投資に適さないとの判断だが、隔月分配型を巡ってはかねてより異なる月に分配金を支払う投信を組み合わせて実質的に毎月分配型として運用出来る事で規制逃れではないかとの物議が醸し出されていた。この辺を気にして文中では楽天投信投資顧問が敢えて1種を取り下げた旨が書かれていたが潜脱を気にする向きは今後も出て来ようか。

ただこの分配型投信を巡っては長年の光景で高齢者のホルダーの中には定期的に分配を受け取るのを楽しみにしている向きも多く、原資の根拠があるものをデリバティブ等と同じステージで長期投資にそぐわないと括るのは些か不明瞭な部分がある。ともあれ年末までに対象投信の追加が更に増えてくるのは想像に難くないが、毎月分配型の代替商品含め長期運用に資する商品を見据え運用会社の思惑が交錯する。


ノーベル賞ウィーク2023

さて今年もやってきた恒例のノーベル賞ウィーク、皮切りとなる昨日の生理学・医学賞には新型コロナウイルスワクチン等に欠かせないメッセンジャーRNAの基盤技術を開発したペンシルバニア大の教授らが選ばれた。誰もが納得の受賞であったが、続く本日3日の物理学賞にはアト秒パルス光の研究における功績で欧米の原子物理学者3氏が受賞することとなった。

かつてはこの時期になると株式市場でも有力候補が絡む関連銘柄がザワついたものだったが、昨年は日本人の受賞が無く数年前のバイオ株のようにストップ高に乱舞するお祭り的な光景は見られない。10年以上も本命視されながら肩透かし?が続く文学賞に絡んでもなかば恒例となっていた丸善HDや文教堂HDの先回り買いももはや見られることなく盛り上がりに欠ける展開になりつつある。

その辺は兎も角も明日4日は化学賞、明後日5日は文学賞、そして6日には平和賞、9日にはこれまで唯一日本人が受賞したことのない経済学賞が発表される。上記の通り昨年は全ての賞において日本人の受賞がなく仮に日本出身者が受賞となれば一昨年の米プリンストン大学上席研究員の真鍋氏以来、2年ぶりとなるだけにこれからの発表を関連銘柄の動向と共に引き続き見守りたいところだ。


数多改正の10月

月初め恒例の値上げ品目チェックだが、帝国データバンクによれば今月の食品値上げは4634品目が対象となり、先ず酒税法改正で第3のビールが1缶あたり約9円の値上がりとなることで値上げされるうちの7割が酒類・飲料で占められる。他、コカ・コーラやサントリー食品が大容量ペットボトルを、丸大食品やプリマハム等でハム・ソーセージ等の加工食品を再値上げなど年間累計としても昨年水準を大きく上回る。

実際に日常買いしているモノで最近実感するのは原材料の類など特にオリーブオイルなどスペイン産の値上がりが著しい。そういえば冷凍食品でもかつて食べた際にそこそこ美味しいなと思ったハンバーグを先日スーパーで目にする機会があったが、しばらく買わないうちにかつて400円そこそこで買えたモノが900円台半ばと実に2倍に化けているのを見て改めて驚いたものだ。

ほか外食では毎年10月に値上げを重ねてきた吉野家が今年も今日から牛丼などの主力商品を値上げし、食品以外でも日本郵便が宅配便のゆうパックの料金を平均で10%値上げ、東京ディズニーリゾートの1dayパスポートも繁忙期でこれまで9千円台であったものが1万円の大台を超えることになる。また前回で書いた通りふるさと納税もルール変更でこれを遵守するために寄付額を引き上げる自治体も少なくない。

斯様に昨年来の相次ぐ値上げで企業収益は改善したが消費者の購買力が低下して売れ行きが伸び悩んでいる部分も出始めている事などから、一方で今月はおよそ800品目の値下げも予定され年内の値上げは今月で一旦落ち着くとの見方もある。コストアップ要因は依然燻ってはいるものの、PB商品含め消費者を囲い込む小売各社の戦略にも注目しておきたい。


狙い撃ち?

これまで幾度か制度が変更されてきたふるさと納税だが、昨日の末尾にも書いた通り来月から返礼品を用意するための必要経費を5割以下に抑えるルールが変わる。これまではそこに含まれなかったワンストップ特例に関する申請書の受付事務手数料等や、仲介するポータルサイトに払う手数料など諸費用も必要経費に算入されるなどルールが厳格化される。

というワケでこれまで同様の返礼品を受け取るには受け取る寄付金を増やすかこれが適わぬ場合は分量を減らすかということになるワケで、この改正を前に既に一部の自治体は寄付金の値上げに踏み切っているところも出始め今月は駆け込み需要で一部仲介サイトでは昨年同期比で1.5倍の寄付額が寄せられた模様だ。またもう一つの変更が地場産基準だが熟成肉と精米については来月から原材料がその都道府県で生産されたものに限られるというもの。

内容の異なる二つだが、しかしハムやら何やら海外の加工品が数多認められる中で熟成肉が狙い撃ちされたあたりが違和感を禁じ得ない。熟成肉といえばこれまで多彩なラインナップで思い出すのが大阪泉佐野市だが、同市といえば3年前に遡及適用を巡り総務省と法廷バトルを演じた件が記憶に新しい。結局逆転勝訴を勝ち取り制度復帰を叶えたワケだが、よもやこの辺がまだ燻っているのかと下衆の勘繰りも。

ともあれ勝訴して復帰してからの同市はクラファンで外部企業を誘致し新たな地場産品を生み出すと同時に企業支援もする取り組みなど意欲的な工夫が見て取れたものだが、そもそも資源の乏しい日本は他所から輸入し加工・輸出をしている取り組みをしているだけに自治体が同様な取り組みをする何処が問題なのか甚だ疑問でなんとも釈然としない今回のルール変更である。