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中古車投機

中古車販売のビッグモーターの不祥事が連日世間を騒がせているが、中古車といえば先週末の日経紙夕刊・親子スクールでは「国産中古車が海外で高値?」と題し、海外で90年代に日本の走り屋などの間で人気を博したスポーツカーがオークション等において非常に高価格で落札されるケースが出ている旨の記事があった。

海外で注目されるようになったのは言わずもがな映画「ワイルド・スピード」の影響だろうが、併せてキーワードのところでも取り上げてある製造後25年が経過したモノはクラシックカー扱いで輸入車安全的合法の安全基準から除外される所謂25年ルールも流通に寄与しているか。こうした海外人気が国内需給の品薄を招きこれが更なる高値を招くスパイラルが起きている。

同頁では中古のスカイラインGT-R価格の暴騰するチャートが載っていたが、かつて私も知人から維持に疲れた同車種の売却を持ち掛けられた事があったのを思い出す。既に15万近く走っていたこともあり全く食指が動かなかったが、驚くことに今やこの程度でも500万前後の値が付いており当時提示された値からは実に約10倍に大化けしているから凄い。

こうなるとまるで昨今のウイスキー投機のような話だが、円安の影響で更に海外からは買い易い環境にある事で物色意欲は衰えないか。そういえば直近でもトヨタが新型のランクルのお披露目をやっていたが、この車種も人気モデルは中古市場で新車の約1.5倍の値が付いているという。販売店では転売防止で購入後直ぐの売却をしない旨の誓約書を書かせるケースも出ており、これはメルセデスでもよく聞く話だ。オルタナティブの幅もここ数年で随分と広がってきたとつくづく。


BaaS

週末に米アップルが2023年4~6月期決算を発表している。アイフォーンの販売伸び悩みが懸念されていたものの、アプリ販売等のサービスの売上高拡大がカバーし売上高と一株利益共に市場予想を上回る事となった。ところでこのアップルといえば4月に始めた預金サービスの残高が100億ドルを超えたとも発表している。

このアップル預金については当欄でも5月に一度触れているが、同社は口座提供と管理を米ゴールドマン・サックスが担っており、預金利回りが全米の預金口座の平均の10倍以上となっていることに加え、アップルカードで買い物などをした際に付与されるキャッシュバックが口座に自動入金され残高に対する利息が受け取れるなど貯蓄習慣を簡単に確立・継続する事が出来るのも魅力となっている。

こうした異業種のサービスを既存の金融サービスと連携出来る新たな金融プラットフォームとして注目されているBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)だが、今年の春先に米銀破綻という悪地合いの中で東証スタンダードに上場した住信SBIネット銀行など公開価格を上回る初値となったのも同事業が評価されてのものと指摘する向きもある。

銀行やライセンスを持った事業者がキャッシュレス決済をはじめ後払いや送金などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きという流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いといえ今後銀行もこうした部分での在り方が求められる場面ではその領域で先行している向きが或る意味アドバンテージになるか。


祭りと商機

コロナ禍を経て先月は日本三大祭りの一つ、京都の祇園祭が4年ぶりに通常開催となり約15万人が訪れたが、昨日からは東北最大の青森のねぶた祭がこちらも通常開催されている。こちらも4年ぶりに制限のない通常開催となったことで感慨もひとしおというものだが、今年はインバウンド含めた富裕層を対象にしたサービスが全国の夏祭りに広がっている。

上記の祇園祭の最大の見せ場となる山鉾巡行では今年初めての試みで、一席40万円のプレミアム観覧席が販売された。山鉾巡行についての音声案内ガイドが用意され、京都名物の「おばんざい」をつまみに京都で作られたワインや日本酒を飲みながら祭りを楽しめるというものだが、販売開始と共に8割近くがインバウンド客に売れ体験した向きはいずれも満足そうであった。

この青森ねぶた祭でも昨年1日2組限定で導入した100万円のVIP席を今年は1日6組、開催5日間で30組まで増やしたがこちらも開始早々半数の予約が埋まったという。こうした動きを見て今月12日から始まる徳島の阿波踊りでも1人20万円のプレミアム桟敷席を20席導入、2階のソファー席で徳島産素材を使った食事を堪能しながら演舞の解説を聞いたり踊りの体験も出来るという。

先に2023年1月~6月の訪日外国人客数がコロナ前の64.4%までに戻った旨が報じられていたが、某生保系シンクタンクが報じているところではコロナ禍前の2019年1-3月と今年の同期では宿泊日数が4日以上伸び、消費額も約9割が回復しているとういう。内訳では買い物代が減少する一方で上記の祭り含む鑑賞モノなど娯楽・サービスが2倍以上に膨らんでいるという。インバウンド消費もモノからコト消費へと変化するなかで、高単価の企画等ここに商機を見出す動きは今後も加速してゆきそうだ。


7か月ぶり減少

猛暑のなか8月と月替わりだが、今月も消費者が価格に敏感な製品含め多くの食品が値上げされる。帝国データバンクによれば全食品分野で6月以来2か月ぶりに最多となった調味料はじめ、パック牛乳やヨーグルト等の乳製品、缶詰、菓子類など合わせて1102品目にのぼるが、昨年同期比のおよそ4割にとどまり7か月ぶりに減少に転じることとなった。

とはいえ一班消費者が手に取る頻度が高い上記のパック牛乳やヨーグルト等の乳製品は価格に敏感で値上げを実感し易い部類。一寸挙げても雪印メグミルクの74品目、明治の23品目、森永乳業の15品目等の価格が引き上げられる。この乳製品に関しては飼料価格の高騰等で厳しい経営が続く酪農家を支援するため、昨日から生乳の取引価格が改定された影響が背景になっている。

しかしこの乳製品といえば新型コロナの影響による消費低迷で北海道の一部酪農家など従来の3分の1にまで減産するなど16年ぶりの生乳生産抑制の憂き目に遭っているという。工業製品と違って定期的に乳を搾らないと牛が病気になってしまうため苦渋の決断で毎日生乳を捨てている向きもあるというが、諸外国のように政府が買い上げ国内外の援助物資として活用する等の政策が求められるか。

話が逸れたが、そういったことで帝国データバンクでは消費者の価格の上昇に対するマインドが寛容さを失いつつあり、防衛志向や値上げ疲れが一層進行する可能性もあるとしている。消費マインドが低下すればひいては景気の足を引っ張る可能性も出てくるワケで引き続きこの辺の動向にも注視しておきたい。


バイオ彼是

さて、厚生労働省の専門部会が国内の製薬大手である第一三共が開発した新型コロナウイルスのワクチンについて使用を認める事を了承している。1月に厚労省に承認申請を行っていたものだが、これで国内の製薬会社の新型コロナワクチンとしては初期に流行した従来型対応のモノながら初めて正式に承認されるという事になる。

当初この手のワクチンといえば少なくとも5年以上はかかるといわれたもので、3年で承認に至った今回を早いとすべきか否かだが、新型コロナは既に5類への引き下げが為され街の景色も以前に戻りつつあるなか漸く初期型対応が実用化という光景は1年そこそこで実用化された欧米の製薬会社と比較するにそのスピード感の違いを感じざるを得ない。

斯様にワクチンでは後塵を拝した感だがこのバイオ分野では7月にもう一つ、製薬大手エーザイが米と共同開発したアルツハイマー病の新薬がFDA(米食品医薬品局)から正式承認を受けている。日本でも秋までに承認審査の結果が出る見通しだが、アルツハイマー病の根本を標的にした薬として初めて有効性を示した画期的なものである。

とりわけこの分野は90年代後半から約20年の間に何社も挑んでは200本近くの治験が散っていった経緯があり、同社も治験の経緯を睨みながら株価も往って来い以上の急落の憂き目に遭って来ただけに投資家目線でも感慨深というものだ。各社がしのぎを削って様々な新薬帆候補が出てくるなか、この手のものは社会的インパクトの大きさで突出した存在であり今後益々日本のバイオ技術に期待が膨らむ。


金融政策ウィーク

先週は25日から米FOMC、27日のECB、そして27日からの日銀金融政策決定会合と
金融政策決定ウィークであったが、果たして米は政策金利を2会合ぶりに下馬評通りの0.25%引き上げ、ECBも9会合連続で同じく主要政策金利を0.25%引き上げ、中でも中銀預金金利は3.75%と2001年5月以来、21年ぶりに過去最高水準に並んだ。

そして注目の日銀だが、長期金利を抑え込まずに事実上1%を上限とし緩やかな上昇を容認するYCC(長短金利操作)の修正に踏み切った。それなりに構えはあったもののやはりボラタイルな動きになったのはマーケットで、10年物国債利回りは一時2014年9月以来の高水準となり、為替はドル円が発表直後のわずか1分そこそこで約3円もの乱高下を演じ、連れて日経平均も一時800超の急落を演じた。

久々にというかようやく金利の存在する世界への一歩を踏み出せるかといったところだが、YCCの弊害で円は最弱通貨への道を歩み週末に取り上げたビッグマックの例にみられるように世界での日本の購買力は著しく低下、インバウンド客が買い物天国ニッポンと歓喜するなかその裏で我々には輸入物価の上昇から生活コストの上昇が襲っている。

逸る気持ちはゼロ金利解除に向かうが、賃上げ等もそれに繋がるキーになって来る筈で今年の春闘ではベアが2.12%、定期昇給と合せた賃上げ率は3.58%であったがさて来年は如何に。いずれにせよ目先としては今後の各種経済指標の発表を経た8月のジャクソンホール会議で次の転換点があるか否かこの辺に注目してゆきたい。


ビッグマックランキング

さて、銀座三越にマクドナルドの1号店がオープンしたのが今から52年前だったが、このオープン日にちなんだ「ハンバーガーの日」を前にマックはテナント料や人件費などの運営コストが上昇している事を背景に、先週より都心部店舗を対象に一部商品の値上げに踏み切っている。この1年足らず早くも3度目の値上げとなるが、世界中で人気商品のビッグマックなどはこれで500円の大台に乗って来た。

こうなるともはや競合他社比での割安感は無くなってくるだけに一部のファストフードフリークは鞍替え必至という動きも。ちなみにマクドナルドに対し挑戦的?な広告を打ち出しSNS上で賛否両論を呼んだ某有名競合店は、マックが値上げした今月に単品450円の商品を含む3商品から自由に2商品を選んで500円(1品あたり250円)という破壊的なキャンペーンを展開していた。

思えば世界体操選手権男子団体総合で日本が37年ぶりの優勝をはたした2015年にはこのビッグマックは370円だったが、2018年には390円、2022年9月には410円、今年1月には450円に、そして今回の500円だ。とはいえ1月の値上げ時の購買力平価を測る所謂ビッグマック指数は世界41位に甘んじており、今回の値上げで500円という値段でさえかつて買い物天国と囃された韓国にさえ未だ及ばないあたり安く成り下がった日本を再認識するものだ。


返礼品にも波

さて、ふるさと納税関係サイトでは常に様々なランキングを掲載しているが、先週はそのうちの一つさとふるが今年上半期のふるさと納税人気返礼品を発表している。首位で4連覇となったのは安定のオホーツク産ホタテ、2位には山梨産シャインマスカット、そして3位には茨城のコメがランクインしていた

ちなみに上半期、最も検索されたキーワードは米で、それに続いたのはトイレットペーパーだという。昨今の物価高の影響でこのトイレットペーパーへの寄付件数は2年で約5倍になり、上記3位にランクインしたコメも1.5倍になっており、他に傾向としては脱マスクや新型コロナの5類引き下げで旅行関係の返礼品は年初比で約2倍になっているという。

ところで物価高の影響といえばこの返礼品自体にも値上げラッシュの波が押し寄せてきている。冒頭のホタテなど昨年と比較してみるにモノによって2~3割値段が上昇している。3割規制の中においてもなおそれ以上のお得感のあった人気のモノほど軒並み値上げされてきているが、今年はタイミングの悪いことに10月から総務省による更なる基準厳格化が控えておりこれを見据えた申請に変化が見られるかどうかこの辺に注目しておきたい。


4年ぶり夜空に彩り

新型コロナの影響で中止続きの憂き目に遭った花火大会だが、今月は首都圏で4年ぶりに都内の空に戻って来る。既に先週末には「足立の花火」が先陣を切って開催されたが、規模も拡大され来場者数は過去最多の70万人超となった模様。これに続き本日は「葛飾納涼花火大会」が開催され、今週末はいよいよ「隅田川花火大会」が開催される予定。

この商機に賭けて東京スカイツリーでは約350メートルの高さから隅田川花火大会を堪能できる特別営業を実施するが、ネットの先行販売では実に159倍もの倍率になった模様。また近隣のホテルもいろいろなプランを実施予定で、ホテルニューオータニでは東京三大花火の一つである神宮外苑花火大会を一望出来る宿泊プランを用意、プライベートな空間で1万発の花火やディナーが楽しめる。

しかし今年の場合は物価高が叫ばれるなか、人件費や花火の購入経費等が軒並み上昇したことを背景に従来設けていた荒天時の順延日が軒並み廃止されている。そういった事情で既に無事開催されたところはホッと一安心だろうが、東京以外でもこれらの事情から開催以前の問題のところでクラウドファンディングで出資者を募る向きもあれば早々に実施を断念するところも出ている。

コロナ禍で4年も待たされた心情を察するに観光協会や実行委員会も苦渋の決断だったところもあろうが、スポンサー企業等も背に腹は代えられない向きもありこの辺の事情は様々。花火大会に限らず夏の風物詩の存続をかけ、今年は各々の地で上記のようなクラファン含め持続可能な仕組みを模索する動きが今後も顕著になってきそうだ。


候補争奪戦

先週末の日経紙ビジネス面の「株主総会2023」では、コーポレートガバナンスコードに取締役会にジェンダーの多様性が必要との明記もあり、女性取締役不在の場合は株主総会で経営トップに反対票を投じる機関投資家も増えている事なども考慮し株主総会までに女性取締役を据える企業等の例を挙げこの手の人材が争奪戦になっている旨が出ていた。

斯様な動きもあって起用が進んでいる女性取締役だが、現状では社内人材での登用が進まず実に9割近くが社外人材というのが現状だ。直近では先月のスズキの株主総会で決定した取締役のうち唯一の女性取締役にQちゃんの愛称で有名な元マラソン選手が決定したが彼女も社外だ。他にもこれまで当欄で取り上げてきた女優や歌手など女性役員はいずれも社外である。

本格的な内部登用が進まず手っ取り早い外部起用を進める中には形式上据えておけばよいといった向きもあるが、企業側が躍起になっているのは冒頭の通り昨年の株主総会で女性取締役不在企業の経営トップへの反対票の比率が急上昇するなど株主圧力が顕著化した一面もある。ちなみに国内投資家の場合前年比22.5%アップ、海外投資家の場合でも前年比21.7%アップとなっており、今年はこれが更に上がっている可能性もある。

上記の通り背に腹は代えられないとう側面もあろうが、曲がりなりにもある分野で脚光を浴びた著名人はそれなりのものを持っているだけにそうした人材に経営に参画してもらえる意義は十分にあろう。そういった意味で今後はお飾りでなく序列的な部分で経営の中心に彼女らが参画しているかどうかもポイントになってくるか。


一昨年を彷彿?

本日の日経平均は前日の米市場でのSOX(フィラデルフィア半導体株指数)の下落を受け、指数寄与度の高い半導体関連株の下落から3営業日ぶりに急反落となったが、そんな中で全市場値上がり5位にランクインし強烈な逆行高でひと際目を惹いたものが日銀株。株といっても正確には出資証券だが、6500円高と暴騰し年初来高値を更新している。

当欄で日銀出資証券に触れたのは冴えない動きで年初来安値を更新していた昨年の7月以来であるが、こんな暴騰劇で思い出すのが一昨年の春先に演じた4日連続のストップ高を交えわずか1週間で出資証券の値段が2倍化した時か。今日も1000円も飛んでいる板を果敢に引けピンまで拾う動きはこの再来を期待してのものなのか否か、いやはや鉄火場だ。

下がれば合理性を欠く日銀政策の表れと揶揄され、上がれば脱デフレと緩和の出口期待と囃されるこの出資証券、どれも後付けの感が否めないがなかはたしてこのまま前回の58000円を舐めに行く動きになるのか否か、いずれにしてもこれまで要所の節目で突飛高を演じてきたこの出資証券の動きは今回何を感じ取ってのものなのか思惑が交錯する。


スタートアップに資金

さて中東を歴訪中の岸田首相だが、UAEでは首都アブダビで同国の経済閣僚や企業と約40の日本企業関係者などによる会合が開かれた。今回は首相自らトップセールスを仕掛け中東各国に日本が持つ先端技術を売り込む考えだが、今回同行したのは住友商事等の大企業ばかりでなくユニークな先端技術を持つスタートアップ企業の姿もあった。

スタートアップ企業といえば今年はこれまでにあまり目にしなかったユニークな企業のIPOが散見される。4月には宇宙スタートアップのispaceが上場し先月は心臓再生医療の第一人者が取締役を務める大学発スタートアップ企業のクオリプス、東京ガールズコレクションのW TOKYO、食品廃棄削減を目指すサイト運営のクラダシが上場している。

ちょうど先月はこの上場ラッシュのタイミングでQUICK IPOインデックスが算出以来の高値を付けているが、斯様に今年上期のIPOは昨年2022年の同期を上回ってきている。上記の通り業種も様々だが、注目すべきはその規模で資金吸収額はこの上期で平均値が昨年の同期比で3倍以上となっている点か。スタートアップに資金が流入すれば新たなイノベーションに次の循環も期待できるだけに今後もこのマーケットから目が離せない。