精養軒スクイーズアウト

さて、今週は欧米の金融不安台頭から週明けから今日までの4営業日で日経平均は1,100円以上も下落の憂き目にあったが、そんな中で連日のストップ高を交え株価約7割高を演じて一際目を惹いたのが東証スタンダードの精養軒。周知の通り上野恩賜公園に鎮座するフレンチの老舗で、日本にフランス料理を広めた草分けとして一世紀半の歴史を誇っている。

この急騰の背景にあるのが、同社に関係する特定法人・個人等のみを株主とするために株式併合を実施、併合によって端株となる株式を併合前の一株につき1200円で買い取りを実施するというものでこの価格にサヤ寄せした格好。来月に開催予定の定時株主総会で議案を付議するが、5月には上場廃止のはこびとなる予定だ。

株式市場への上場はこの上野本店の建て替え後ほどなくしてだったが、グリルフクシマの伝統の純フレンチは勿論のこと本店レストランでも昔ながらのビーフシチューやハヤシライスなどが気軽に頂けたものだ。飲食業ながら株主優待も無い企業であったが、コロナ禍の中ここまで辛抱強く付き合ってくれた株主には最後はささやかなプレゼント?となったか。

しかしこの精養軒、当欄でもパンダ関連株としてこれまで東証スタンダード上場の中華の東天紅と共にオメデタの兆候の度に何度となく取り上げてきた経緯がある。先日はシャンシャンが惜しまれつつ日本から居なくなってしまったが、奇しくもこの精養軒もそれを追うかのように株式市場からはその姿が消えることとなる。


オルタナティブの金

さて、今週は国内の金現物小売価格が初めて9000円の大台に乗せてきた。周知の通り相次ぐ米銀の経営破綻を受け金融市場の不安定化に対する警戒感が広がるなか、安全資産とされる金にリスク回避の投資マネーが集まった格好となりニューヨーク先物は一昨日には1900ドルの大台を回復、JPXの大阪取引所上場の先物も連日の最高値更新となっている。

こうなるとまたぞろ判で押したように買い取り業者の煽り広告が急増しそうな雰囲気だが、それに釣られ売りに来る顧客が目立つ日本に対し欧米ではリーマンショック以降、金利の上昇やドル高など教科書通りなら金にとっての逆風環境下においても地金や金貨への現物投資意欲が安定的に強く、昨年のそれは400トンを超えてきている。

斯様な個人もさることながら中央銀行の金買いも安定的に継続しており、昨年の中央銀行による金準備の積み増し量は約1136トンと過去最大を記録している。米と対立するロシアや中国などが主役とみられているが、今回のウクライナ侵攻では経済制裁における米ドル凍結等のケースを目の当たりにし西側経済圏資産の保有はリスクが高いと印象付けたのが色濃く表れているか。


満額回答ラッシュ

さて、世の物価高のなかこれに対応した賃上げが焦点となっている今年の春闘だが、先月は自動車業界からトヨタ自動車と本田が労働組合の賃上げ要求に満額回答し早くも春季労使交渉が決着する異例?の展開となった。これに続くように昨日は全日空が過去30年で最も高水準の6000円のベースアップを実施すると労組に回答、本日は三菱電機が労組要求に満額回答したが電気連合は前年下限の3倍超水準で回答する方向が報じられている。

斯様に例年とは光景を異にするが、これらが持続可能なものになるか否かはやはり労働生産性を如何に上げてゆくかどうかがポイントになってくるワケだが、金融政策もしくは財政政策でもってこの生産性を上げてゆくことには限界があるということを認識しつつ経済政策の方は進めてゆく必要があるか。

以前にも書いた通り、日本の労働生産性はG7の中においても最下位という状況。とりわけ日本の輸入依存度から見るに昨年のような資源高や円安等の市況は実質賃金の伸びの重しになり易い構造になっており、G7の諸外国以上にこの労働生産性の引き上げの重要性がポイントになってくるだけに早急の浮上が望まれるところ。


あれから12年

先週末で2万2千人以上が犠牲となった東日本大震災から12年を迎えた。東北の各地では追悼の催しが開かれ、都内でも日比谷公園で追悼の催しが開かれ献花台に花を手向けて手を合わせる人の姿が見られた。十三回忌ということで一つの区切りと捉える向きもあるが、食品なども台湾では10年以上にわたる食品輸入禁止措置が昨年緩和され食品輸出促進の機運も高まっている。

ところで昨年は福島の帰宅困難地域に若干の進展が見られたものの、除染、廃炉、その先の核ゴミの問題含め道筋がついているとは言い難いと書いていたが、1年経ってもこの状況は変わらず昨年末時点で累計4兆円を超えた除染費用は23年度以降更に兆円単位で増加する可能性があるなど処理費用は膨張を続けている。春か夏に処理水の海洋放出が始まり今年後半には溶融燃料の取り出しも始まるが負担の跳ね返りは不透明だ。

またロシアの暴挙が改めて原発問題と向き合わざるを得ない状況を作り出しているとも書いたが、年末には唐突に原発政策の大転換が決まり原発の運転延長や新増設を進める方向と政府は原発回帰の動きへ舵を切っている。原発関連株が不気味な物色をされるなかこの一連の動きに専門家の一部からは疑問視する声も上がっているが、いずれにせよ今後の議論と丁寧な説明は不可欠だろうか。


ガレ&ドーム展2023

さて、先月末まで三越本店では北澤美術館の開館40周年記念特別展として「エミール・ガレとドーム兄弟」展が開催されていた。東証プライム市場に上場するキッツの創業者が収集を始めるきっかけになったのが40年ほど前に三越本店で開催されたアール・ヌーヴォー展であったというから何とも縁深い展だが、ガレ好きな私は一度では足りず開催期間中何度も足を運んでしまった。

この手のモノでは今から5年ほど前だっただろうか、岡田美術館が秘蔵するエミール・ガレやドーム兄弟を展示した「ガレとドームの世界展」を観たのを思い出すが、此処同様になかなか気軽に足を運べない諏訪湖の美術館の秘蔵コレクション90余点あまりの逸品を観る機会が得られたのが嬉しい。

前回の「ガレとドームの世界展」ではガレの大型作品「藤文ランプ」や金彩やエナメルの美しさが際立つ「花独活文花器」が印象的であったが、今回の展もガレの名作「脚付杯・フランスの薔薇」やドームの名作「花瓶・蜘蛛に刺草」などのレアな逸品が全方向から鑑賞可能で、更には写真撮影も自由ということもありゆったりと贅沢な時間が過ごすことが出来た。

また併設の展示即売会も美術館級の希少品が販売されており当然ながら値札も1億円を超えるものだったが、こちらも超希少な逸品を全方向から自由に観ることが出来るのが素晴らしい。このコロナ禍でお気に入りの展もここ数年は規模の縮小やオンラインへのシフトなどでなかなか満足のゆくものが少なくなっていたが、漸くコロナ禍前の規模に戻るものが出てきたのはなにより喜ばしい限りだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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