制度改正に第一歩

さてビットコイン価格の上昇を背景にして、年金基金やヘッジファンドなどが24年第4・四半期にビットコインETFの保有割合を増やしたことがSECへの提出書類で明らかになっている。米では昨年1月にビットコインETFがSECに承認され大手のアセットが取り扱いを開始したことで機関投資家による大規模な資金流入の呼び水になった背景がある。

ところでビットコインといえば先週の日経紙金融経済面で金融庁が仮想通貨(暗号資産)を有価証券に並ぶ金融商品として位置付ける方向で検討に入り、法改正に向けて議論することが明らかになった旨の記事があった。当欄ではこれまでも投資信託の運用対象である特定資産という枠から外れているにしてもビットコインETFの国内承認が叶わないのだろうか?と書いてきたが、これで暗号資産等で運用するETF解禁につながる可能性も出て来たという期待も高まるか。

日本の現行税制は主要国と比較して相対的に最も高水率とされ投資家に大きな税負担を強いている状況だがビットコイン等に関しては最大で税率45%、そこに住民税やらが乗り最大で55%が課せられる計算になるが、ETFであれば分離課税の適用で20%という事になる。既に昨年末段階でビットコインETFは運用資産残高でゴールドETFを指呼の間に捉える規模までになってきているだけに、周回遅れともいえる日本も方向性含め制度改正が少しでも進むことを期待したいもの。


20兆円クラブ

本日の日経紙投資面では、昨日の株式市場で日立製作所の時価総額が終値で初めて節目の20兆円を超えた旨が出ていた。当欄では昨年の1月に任天堂や伊藤忠商事の時価総額が初めて10兆円の大台を超え「10兆円クラブ」の仲間入りをした旨を取り上げており、この同じ時期に日立製作所もまた同クラブの仲間入りを果たしていたものだが、その後の1年でその時価総額はこの3社間で大きな差が出ている。

日本では「総合〇〇」と称されるコングロマリット企業がディスカウントされる傾向にあったものだが、長らくのデフレ下の構造改革効果で不採算事業が減少、事業売却などで利益が出易くなり売却益などで投資や株主還元など資本の有効活用を積極化する向きが増えて来ている。そうした効果もあってかコロナ禍以降は特にこうしたセクターはTOPIXをアウトパフォームしてきており、コングロマリットディスカウントの一括りでは語れなくなってきている。

これまで日本企業はしがらみの多い組織体系故に事業再編自体が遅々として進まなかった部分もあったが、東証の踏み込んだ改革等も背景に今後は上記のように経営資源を稼いでいるセグメントに集中投資してゆく動きがより活発化してゆくとも考えられる。コングロマリットディスカウント企業も今後ROE向上等が顕著になってくればコングロマリットプレミアムへと変貌を遂げる一歩になるはずでこの辺に期待したいものである。


幻の構想が幻に・・

昨年12月にはホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を始める事で合意した旨を取り上げたが、周知のように先週にはこの協議を打ち切ると両社より正式な発表がされている。協議開始からわずか1ヶ月半のスピード破談劇であったが、当初の持ち株会社構想から遅々として進まぬターンアラウンド計画にホンダ側が業を煮やし買収提案へとなる過程で要は両社で経営統合に向けた合意点が見いだせなかったという事だろう。

正式にこの破談が発表された日には両社の決算発表もあったが、ホンダは当期純利益が4年ぶりのマイナスとなり、日産も最終損益は800億円の赤字となっていた。ちなみに主要他社のこれまでに発表された決算は最大手トヨタ自動車が増収増益のほかスズキやSUBARUも増収増益、25年3月期の業績予想もトヨタ自動車、スズキ、SUBARUは揃って上方修正しておりはっきりと明暗が分かれた格好になった。

上記の業績好調組はHVやSUVなど売れる車を持っていることが特徴だが、日産など売れる車が無いというのがそもそもの問題か。既に中国のBYDは既にホンダや日産を上回る世界2位に浮上し、国営大手の重慶長安汽車と東風汽車も経営統合する可能性があるとも報じられているがこれが実現すればBYDを抜いて販売トップになる。先端技術開発力を持ちながら再編で規模を拡大するなど時代は変革期を迎えているだけに両社がどう戦略を立て直すのか注目される。

日産のプライドもあろうが長らくの低迷を経てその時価総額は今やホンダの約5分の1なだけに対等を謳うのは素人目でも無理があるのは否めないところで、日産と対等な関係でありかつ日産を支えることのできるような都合のよい相手がはたして現れるのか?時価総額が落ち込めばそれだけ大手他社からの触手が伸び易くなるわけだが、いずれにせよ今後日産の経営陣がどのような方向性で会社を導くのか、その責任は非常に重いだけに去就が注目される。


Valentin’s2025

さて明日は恒例のバレンタインデー、昨年の今頃は日経紙で「足りぬカカオ豆争奪戦」などと題し、原材料の高騰でバレンタインチョコが一昨年比較で平均4.5%の値上げとなった旨などを書いていたが、今年もこの“カカオショック”の状況は変わらずこの2年でカカオのNY先物価格は約4倍に急騰しバレンタインチョコの平均価格は更に5.8%上昇している。

とはいえ銀座松屋調べでは本命、義理、そして自分へのご褒美共にその予算は昨年より大幅な伸びを示し、特に自分へのご褒美は昨年の約2.4倍となり価格も1万円の大台を指呼の間に捉えている。そんなわけで今や一大イベントに成長した「サロン・デュ・ショコラ」や、今がたけなわの「アムール・デュ・ショコラ」などで並ぶ人気のブランドモノは数粒で5桁の値札が付く商品でも飛ぶように売れ、今年も過去最高の売り上げを更新してきているという。

確かに最近はその味もさることながらパッケージでも魅せる商品が多くなってきた。今年の商品で個人的に目を惹いたのが「ジャン=ポール・エヴァン」で、その箱や袋は私の好きな「アンリ・ルソー」が描いた絵画をモチーフにしこれだけでも欲しくなる魅力的な物であった。またこうした場では近年エシカルも意識され、前回は見た目が原因で廃棄寸前のバナナを使った商品を著名シェフとコラボして販売していたが、今年も各名店が干し芋を作る過程で出る端材を活用した新商品を展開していた。

上記のように高額商品にどんどん注ぎ込む向き以外にも幅広く消費者を取り込むべくカカオの含有量が少ない焼き菓子やイートインの強化も百貨店で見られたが、高島屋など車両を貸し切りアムール・デュ・ショコラの催事に合わせた企画として「ショコラトレイン」を展開するなどしており、今後もカカオ豆の高騰と対峙しながらも“トキ消費”の特別感などどう演出してゆくか各社一層の工夫が求められようか。


取引所騒動彼是

昨日の日経紙グローバル市場面では「LME、信頼回復半ば」と題して、LME(ロンドン金属取引所)がロシアによるウクライナ侵攻により供給懸念からニッケル価格が暴騰したのを背景にしてニッケル先物の取引を一時停止して話題になった、所謂「ニッケル騒動」から3年が経過し売買が復調傾向となっている旨の記事があった。

当時の相場は記憶に新しいが、週明けから前週末比で2倍に急騰した相場は翌日も更に2倍以上に暴騰し遂に1トンあたり10万ドルの大台を突破するに至った。結局この時の10万ドル超の最高値での約定を無効扱いにまでしたことが後々まで関係者の物議を醸し出したわけだが、当時は彼方此方でマージンコールの嵐のなか某中国大手メーカーの看過できない額のショートポジションが市場全体に多大な影響を及ぼすとの懸念から発動された措置であったと推測されている。

東証でもこのニッケル暴騰劇を受けて“別子”こと住友金属鉱山が急騰したが、この22年の3月と4月で月足は見事に教科書的な「毛抜き天井」を6600円台で形成しいまだこれを抜けていない。またETFでも「WisdomTreeニッケル上場投信」はこれと同時期にたった2営業日でその価格がほぼ2倍に暴騰しその時に付けた6152円の上場来高値が大天井となっている。

そういえばもう四半世紀も前になるが、当時のTOCOMでも一部訴訟問題にまでなった「パラジウム先物強制解け合い事件」があったものだが、これもしばらくトラウマとなり以降取引は低調を強いられ、現在では極端な流動性低下を背景に各社は新規建玉の停止もしくは制限を設け殆ど休止状態に陥っている。今後もマーケット間の競争は激しくなると思われるが、結局は競合の有無や流動性確保が帰趨を決することになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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