外圧の洗礼

今週も先週に続いて大物タレントが起こした女性問題に絡んで社員の関与が指摘されているフジテレビの報道がない日は無かったが、同問題に絡んでは同社社長の閉鎖的で的外れな記者会見が更に不信感を呼び各社のCM差し止めに歯止めがかからない状況になっている。ちょうど今の時期は春の番組改編に向けた広告主募集の時期だけに同社にとっては何とも最悪なタイミングとなったと言わざるを得ない。

もともとキー局の株は近年のテレビ離れもあってPBR一つとっても長らく低迷が続いているが、そんなことも背景に同社もアクティビストに取得され昨年5月にはMBOを提案された経緯がある。このアクティビスト、ダルトン・インベストメンツだが先週は上記問題に関し第三者委員会の設置ほかを要求する書簡を同社に対して送り、今週に入ってからはオープンな記者会見に日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置要求等の2度目の書簡を送っている。

アクティビストの本領発揮という場面だが、本日に開催された臨時取締役会ではこのうち日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置が決まっている。株式の取得といえばもう一つ、直近では実業家の堀江氏の同社株取得も明らかになっている。ホリエモンといえば約20年前にも自身が率いるライブドアを介し、フジテレビ経営の関与を目的に親会社のニッポン放送株を大量取得した末に和解で手打ちした過去がある。これも“ねじれ”を突いた買収劇であったが、あれから20年を経て再度同社とまた対峙するさまは何かの因縁か。

当時はフジ側とこの和解後にホリエモンは逮捕されてしまい同氏が描き目指していたメディア業界の改革実現には至らなかったが、さて今回はどういった顛末になるのか?頼みの綱の広告収入が壊滅状態でまさに満身創痍という状態のなか、株価の方も外圧によるガバナンス改善期待と経営不安とが交錯し昨日は急伸、一転して本日は急反落と思惑が交錯し乱高下する展開となっているが、アクティビストの動向も含め引き続き興味深く見てゆこう。


日本の宇宙ビジネス

さて、昨年11月にはJAXAの「イプシロンS」がエンジン燃焼試験中に爆発して昨年度中の打ち上げ断念となったが、その1か月後にもスペースワンの小型ロケット、「カイロス」2号機が3月の初号機打ち上げ失敗に続いて同じく打ち上げに失敗している。宇宙ビジネスや開発の難しさを物語るが、そんな中で先週はアイスペースが開発した月着陸船「レジリエンスランダー」を搭載したスペースXのロケットがケネディ宇宙センターから打ち上げられた。

同社は高頻度で低コストの月面輸送サービスを目指しているが、同社もまた2022年に打ち上げた初号機は制御システムの不具合から月面着陸失敗に終わった経緯がある。小型探査機等でさまざまな技術を月面で実証する計画で、着陸後は月の砂の採取を行いNASAに有償譲渡もするというが、着陸は5~6月ごろの予定で成功すれば日本の民間企業として初の快挙となる。

一方で米国では昨年10月にマスク氏が率いる民間企業スペースXがブースターを発射台に回収することに成功し再利用に一歩前進している。次期大統領のトランプ氏は1次政権時に有人の月面調査を目指す「アルテミス計画」を始動させたほか、軍事部門に宇宙軍を設置するなど宇宙産業に意欲的だったが、今週から始まった第2次政権でも同計画の推進などに注力するものと思われる。

その期待を映すかのように米市場では宇宙関連銘柄のETFなどが昨年の大統領選挙後にS&P500をアウトパフォームする上昇となっているが、宇宙市場の経済規模は2030年に1兆ドルを超え世界の半導体売上を上回る巨大市場に成長するとの見方もある。日本も30年代に宇宙ビジネスを20年比倍の8兆円規模に成長させることを目指しているようだが、そういった意味でも先ずはこの月面着陸の成功に期待したいところだ。


オレンジ代替も高騰

本日の日経紙総合面では「果物、5年連続最高値」と題し、昨年に卸売市場で取引された果物の平均価格が5年連続で過去最高値を更新した旨の記事が出ていた。猛暑による不作に加えてカメムシ被害の影響も小さくなく生産量が減ったことが大きいというが、高級果実の部類ではないミカンやリンゴなど身近な果物が近年に無い高騰を見せているのが特徴だ。

このミカンなど今月上旬の4大市場におけるキロ当たり平均卸売価格は457円と過去最高レベルに跳ね上がっており、末端価格も自ずと高騰してきている。ここ数年オレンジの急騰で大手各社のオレンジジュースは何とか価格を抑えるべく“みかん混合”などミカン果汁を加え工夫して来た経緯があるが、そのみかんも斯様な高騰に巻き込まれると今後が懸念されるところだ。

また野菜も高騰著しい。今年に入り税込でひと玉1000円超も一部で現れた筆頭格のキャベツだが、こちらは平年比で3.26倍にも跳ね上がっており、これ以外の葉物野菜では白菜も同2.18倍、他にも大根が同1.75倍、ネギが同1.46倍、にんじんが同1.40倍等など、果物含め何れも極めて身近な食材なだけに今後の景気ウォッチャー調査や消費者態度等の指数はいつも以上に注視しておきたい。


あれから30年

さて最大震度7を観測し、6400人以上が犠牲となった阪神淡路大震災から先週で30年を迎えた。地震発生時刻には黙とうが行われ各地でも追悼行事が営まれ各々犠牲者の冥福を祈る光景が見られたが、この追悼・関連行事も主催団体の高齢化や財源不足などを背景にしてここ10年ではほぼ半減している。ところでこの30年、地震列島なだけに同規模の震度を観測した地域が相次いだ。

ザッと挙げても2004年10月の中越地震、2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震、2018年9月の北海道東部地震、そしてつい昨年2024年の能登半島地震などなど。またちょうど一週間前には宮崎で震度5弱の地震があり、この地震は影響していないとしつつも政府の地震調査委員会は想定される南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率について、これまでの「70~80%」から「80%程度」に引き上げたと発表している。

この引き上げは7年ぶりの事だが、多くの人が犠牲となった阪神淡路大震災を契機に震度情報や耐震基準などさまざまな見直しが行われ、防災を取り巻く環境も変化しているとはいえ避難所のあり方などいまだ変わっていない課題も残る。政府は2026年度中に「防災庁」を創設することを目指しているが、上記のような想定されている大地震への備えは国の主導がマストなだけにこの辺の更に進んだ取り組みが望まれる。


政治的公約>法の支配

退任まであと数日を残すのみとなったアメリカのバイデン大統領だが、周知のように年明け早々に日本製鉄による米鉄鋼大手のUSスチールの買収禁止を命じている。この案件が持ち上がった一昨年末から日本政府でもこれを後押ししていたものだが、早速当の日本製鉄は「結論ありきの政治介入」とこの命令を不服として連邦控訴裁判所に提訴を行っている。

ところで現在世界の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量ランキングを見てみると、ベストテンの1位、3位、5位、6位、8位、9位と中国企業が実に6社も入り世界を席巻している状況になっている。この中国が厄介な構造問題の元で、需要が縮小しているなかにおいも過剰生産を止めずに鉄鋼を安価で世界に継続売却しているので結果、スパイラルで鉄鋼価格の下落を招き世界中の鉄鋼業界が強い逆風に見舞われているのが現状となっている。

そんな環境下から自主再建を断念し身売り表明したUSスチールであったが、これを狙っていたのがランキング22位の米クリーブランド・クリフス社、ところが入札で日本製鉄に敗れた経緯がありこのまま同社に買われると米市場での優位性確保が危ぶまれる危機感から全米鉄鋼労働組合と結託し組合員85万人を有する強大な政治力を利用しバイデン氏に働きかけた一連の動きがあったというのが事の成り行きだ。

果たしてというかクリフス社は買収禁止令が出た後に待ってましたとばかりに再度のUSスチール買収に意欲を示しているが、今回も前回の入札で敗れた時同様にその買収額は日本製鉄を大幅に下回る額である。こうして見ると何とも最初から出来レース感は否めない感もするが、はたして事の真相は如何に?というところだ。

確かに「国家安全保障上の脅威」と謳うには先端半導体等ならまだしも鉄鋼をこれに嵌めるのは無理がある。そもそも日本は同盟国で且つ最大の投資国だが、この件が対米投資等に影響しビジネスを委縮させてしまわないかが懸念される。米当局は先週末に日本製鉄が要請していた買収破棄期限を当初の来月から6月までの延長を認めてきたが、ビジネス感覚に長けたトランプ氏の就任ではたして風向きは変わるや否や?今後もこの件から目が離せない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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