テーマパーク明暗

さて、本日はUSJのスーパー・ニンテンドーワールドに拡張オープンした世界初の新エリア、ドンキーコングカントリーが開業している。全世界でシリーズ累計販売本数約6500万本にもなった人気ゲームだが、ライド・アトラクションはじめとしたさまざまなアクティビティなどワイルドな冒険が盛りだくさんで、エリア内ではドンキーコングならではのフード類やパーク内でしか手に入らないグッズも楽しめる。

テーマパークといえば先週末の日経紙アジアBiz面では「中国テーマパーク閑古鳥」と題し、中国のテーマパークでは不動産バブルによる投資ブームに地域振興を狙う地方政府の後押しが加わった事から各地で乱立が相次ぎ供給過剰になった結果、有力なIPを持たないところは閑古鳥が鳴き全体の22%が赤字で19%が損益ゼロとなっている状況が報じられていた。

これに対し強力なIPを擁する日本は、冒頭のUSJはじめ今年は東京ディズニーシーが約3200億円を投じた「ファンタジースプリングス」が開業するなど投資が相次いで加速している。今後も例えば来年には沖縄に日経トレンディ「2025年ヒット予測ベスト30」の12位にランクインした、あの刀がプロデュースする日本最大級のテーマパーク「ジャングリア」がオープンの運びとなる予定だ。

各テーマパークにおいては業界的にもこれまで以上にインバウンドの取り込みが重要になって来るか。先に観光庁が発表している1~9月の訪日外国人による消費額は歴史的な円安や高騰している宿泊費も全体を押し上げ、速報値で前年同期比61.7%増の5兆8582億円と過去最高であった昨年2023年の年間消費額5兆3065億円を早くも上回ってきている。入園料も各所で最高値更新が止まらないが、それを受け入れられるべく魅力的なコンテンツ競争もより激化してくるか。


エコフレンドリーの広がり

本日は所用で日比谷界隈に行ったが、この時期の風物詩でもあるイルミネーションが綺麗だ。お隣の丸の内も今年の煌びやかなジャンパンゴールドのイルミネーションがスタートしてはや1ヵ月になろうというところだが、先月末からはもう少し歩いたところの東京駅と皇居外苑を結ぶ行幸通りの一部でもイルミネーションが輝いている。

斯様に先月あたりからは上記の丸の内界隈をはじめ、イルミネでは此処と双璧ともいえる六本木ヒルズのけやき坂のイルミネーションもまたスタートしているが、今年は昨年よりもLEDの数を10万個増やしたそうでこちらは相変わらずアイスブルーが綺麗だ。この時期は各所でクリスマスツリーも飾られるが、この近所のアークヒルズのカラヤン広場のツリーは昨年までクリスマスイベントで使われたツリーが再利用されているという。

再利用といえば目黒川のイルミネーションも数年前から地域の飲食店等から廃油を回収し、イルミネーション用の発電機を動かす燃料にバイオディーゼルとしてリサイクルする活動が継続されている。食用油のリサイクル燃料はUSJでもまたパーク内レストラン施設の廃油をリサイクルしアトラクションの燃料として活用できるようになっている。斯様に各所でエコフレンドリーな動きが活発化しているが、こうした広がりで来場者の方も意識の向上に繋がってゆくのを期待したいところ。


ネット銀戦略

先週はヤマダデンキのヤマダNEOBANKにおける積み立て預金の満期特典の10%還元中止が報じられたのが話題になっていたが、預金といえばこれと同じ日にはSBI新生銀行が28歳以下の全ての預金者を対象に普通預金金利を通常の0.11%から3%への引き上げが発表され、次いでPayPay銀行も円・ドル貯金セットでメガバンクの普通預金の約20倍になる年利2%を開始と報じられるなどネット銀行のニュースが相次いだ。

このネット銀行だが、以前に当欄でコロナ前と比較して預金残高が2倍以上にも増加しておりメガバンクや地銀もうかうかしていられない状況だと書いたことがあったが、彼らの精力的な動きが近年は目に付く。上記の金利引き上げに加えネオバンクサービス等もそれで、冒頭のヤマダNEOBANKを共同で提供しているのは住信SBIネット銀行だがココは高島屋とも組み高島屋ネオバンクを展開、他にJR東日本×楽天銀行によるJREBANKなど他業種とのコラボも目立つ。

日銀の利上げによる“金利のある世界”の到来ではや預金獲得競争がスタートしているが、SBI新生銀行は若年層にターゲットを絞る戦略で、またネオバンクの類は大手百貨店など富裕層が眠る宝庫が魅力でもあり他業種側の方は総合的なワンストップサービスの提供から顧客の囲い込みが狙えるウィンウィンの関係を狙っているが、今後一層他業種との提携等が加速する可能性は高い。

その辺に絡んでは高島屋やヤマダデンキと組んでいる住信SBIネット銀行をNTTドコモが買収との週刊誌報道もあり同社には物色の矛先が向き本日も続伸して年初来高値を更新してきている。いずれにせよ長らくの金利の無い世界の間にネット銀行が台頭してきた経緯もありこれに伴い競争の構図も変わった感があるが、これら預金獲得競争が今後も激化してくるであろう象徴的な報道でもある。


田中一村展2024

さて、9月から先の日曜日まで東京都美術館で「田中一村展」が開催されていた。当欄で田中一村に触れたのは今から6年前に同じ東京都美術館で開催されていた「プーシキン美術展」を取り上げた際にアンリ・ルソーのテイストにも似ている旨を書いた時であったが、私も当時そう書いたように田中一村は度々過去の偉大な画家達とよく比較されてきた。

意を決して南国に移った事でよく言われてきたのは同じく南国に題材を求めた仏のポール・ゴーギャンになぞらえ「日本のゴーギャン」、また絢爛たる極彩色と精緻な筆遣いで花鳥風月を描いたことで、江戸時代の画家、伊藤若冲になぞらえ「昭和の若冲」とも評されたこともあった。ただそういった極彩色の作品が多数ある中でも「枇榔樹の森」などの作品にみられるモノトーンの美しさがひと際光る作品が個人的に惹かれる。

もともとこの田中一村を知ることになったのは、個人的にバリのプンゴセカンスタイルの絵画が好きでかつて何度か現地に買いに行ったものだが、20年くらい前からプンゴセカンを得意とする現地の画家が挙って上記の「枇榔樹の森」や「奄美の海に蘇鉄とアダン」など特徴的な炭黒のグラデーションをアクリルでもってかなりの完成度で模写し始めたのを目の当たりにしたのがきっかけである。

それらは大多数の花鳥画とは異なり、まるでその中に入って外を見るかのような構図で逆光を思わせるような美しさに生命を感じる。これは閻魔大王への土産品とした晩年の生涯の集大成ともいえる傑作「クワズイモと蘇鉄」においても、クワズイモの花が咲くところから実になりそれが朽ちるまでの全てが描かれる通常ではあり得ない構図を絵の中に完結させているところにも感じられる。

こうした生命とそれが朽ちるまでを一つの作品に落とし込む技法はエミール・ガレの作品にもよくみられるものでいずれも私のお気に入りだ。しかし伊藤若冲にしても田中一村にしてもひと昔前の美術展は直ぐに入場出来てゆったりと鑑賞を楽しめたものだが、メディアの煽りやSNSの発達でにわかファンが殺到する場と化しつつある現状を見るに以前の空間は贅沢であったなとつくづく。


輝きを増す日本真珠

さて、先週末に国内ファンドのユニゾン・キャピタルとアジア系投資ファンドのファウンテンベスト・パートナーズが宝飾品販売のTASAKIを買収総額1000億円規模で買収したことが報じられていた。かつて東証一部に上場していたTASAKIは2017年にMBOに踏み切った経緯があるが、インバウンド需要に伴う消費回復などの追い風もあって環境は大きく改善しているようだ。

ところでTASAKIといえばかつて「田崎真珠」の社名であったように真珠を使った宝飾品に強みを持っていたわけだが、近年は日本の真珠に対する注目度がにわかに上がっている。中国で人気に火が付いた影響もあり真珠の価格推移は、主要産地である愛媛水産統計の養殖真珠単価の例で2012年には1匁(3.75グラム)あたり1997円であったものが2022年では6644円とここ10年で約3倍になっている。

週明けの当欄ではマグロとタコの逆転劇でゴールドを引き合いに出したが、この日本真珠も過去最高値を更新したゴールドと似たような上昇の軌跡を描いてきている。現在ではほぼ同率の上昇軌道だが、とりわけ上記の2022年までの上昇率に限っていえばこの期間での上昇率は日本真珠がゴールドをも上回っている。

いずれにせよ素地として近年の海水温上昇に伴いアコヤガイ稚貝に大きなダメージが出て生産量が減少していたところに人気も乗った格好になるが、ここでも異常気象の影響が出ている。かつて指輪など貴金属を売却する際にウワモノ扱いの真珠等は高グレードの玉でも算定から外されていたものだが、今やしっかりと値が付く存在になっているだけに家で眠る製品に思い当たる向きは確認してみるのも一考か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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