宇宙ベンチャーの試練
今年の1月にスペースXのロケットで打ち上げられた宇宙ベンチャー、アイスペースの月面着陸船“レジリエンス”だが、月面着陸予定だった先週末に関係者が固唾をのんで見守るなか着陸直前に通信が途絶え着陸は失敗したと発表された。同社は一昨年の4月にも月面着陸に失敗しているが、この時に次いで2度目となった今回の日本の民間企業として初の月面着陸という挑戦も果たす事は出来なかった。
これを受け東証グロース市場に上場するアイスペース株は、週末のストップ安に続き週明けの本日も終日にわたり売り気配を切り下げ比例配分のストップ安と続急落し、引け後もなお1000万株近い売り物を残している。また同社以外にもグロース市場に上場するSynspectiveなど他の宇宙ベンチャーまで週末に続いて続落するなどこの失敗が飛び火する格好となった。
ところでこの度の計画にはJAXAの「SLIM」同様にオールジャパン体制で三井住友銀行や日本航空、高砂熱学にスズキからシチズンなど、名だたる大手企業が10社超えで参画している。先に政府も宇宙基本計画の重点事項を決定し、民間の宇宙事業を促進するため宇宙活動法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を示しており日本としても国際競争に劣後しないよう技術開発や実証等を強力に支援する必要性を強調している。
今回の失敗で上記の国際競争における劣後という部分が懸念されるところではあるが、今回の件も前向きに考えれば民間企業の将来のビジネスを見据えた経験の蓄積と捉えると貴重な経験だったともいえるか。いずれにせよ月面ビジネスの市場は2040年までに累計で約24兆円に成長する見込みとの試算がある。2027年には3回目となる次の打ち上げの計画があるというが、これら見据え一層の官民連携の重要性が今後も問われるか。