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構成銘柄半減

さて、TOPIX(東証株価指数)が史上最高値を記録したのは先週11日のことだったが、この日の日経紙社説には「新TOPIXで企業改革の後押しを」と題しJPX(日本取引所グループ)がこのTOPIXの絞込みを含めた見直しを進めている旨が出ていた。既に段階的なコンサルテーションが為され、一昨年春に流動性に着目した見直しで市場区分との紐づけを廃止、その後は段階的ウェートの低減で100億円未満の銘柄削除を実施という運びになる。

つまりこの見直しではスタンダードやグロース市場でも基準を満たせばTOPIX銘柄として認めてもらえるという事になるワケだ。また直近ではちょうど先週にもアシックスが自社が保有する総額100億円超にもなる政策保有株の全てを今年中に売却する旨が報じられているが、この改革では既に一昨年に市場区分との紐づけ廃止と共に政策保有株を浮動株から除外ということになっており、明確な目的の無い持ち合い株の意義がここでも問われる。

市場区分見直し後も予想外?に東証の市場改革が粛々と具現化しているが、いずれにせ数年後には現行のTOPIX銘柄数は2100程度からほぼ半分程度に絞り込まれる予定となる。競争原理も自ずと働くであろうし上位ポストで胡坐をかいていたような企業も順次マーケットやアクティビストらの圧力を受ける可能性が格段に高くなるだけに、この改革においても市場の活性化に対する期待は大きくなる。


アクティビスト隆盛

ちょうど1週間前の当欄では複数のアクティビストが大株主となっていたダイドーリミテッドが従来の約20倍にもなる大幅増配を発表した旨を書いたが、その大幅増配発表でストップ高と急騰したところで大株主であったアクティビスト2社が揃って全保有株を売り抜けていたことがその後の大量保有報告書で判明している。これに歩調を合せ?先週にはアクティビスト側から選任された一部取締役も辞任ということでヤレヤ感は否めない。

それはさておき、物言う株主といえば先週の日経紙グローバル市場面には「物言う株主提案最多」と題し、アクティビストが世界で1~6月に企業に対して提案した提案・要求した件数が計147件と同期間で過去最多となった旨の記事があった。上記のダイドーリミテッドのような大幅増配の類というより、世界では不採算事業売却や経営陣刷新など経営に踏み込んだ提案が世界で増えているという。

この頁では米エリオット・マネジメントによるサウスウエスト航空やテキサス・インスツルメンツに対する経営陣刷新や事業戦略見直し提案が挙げられていたが、米では実際にアクティビストが取締役として舵を取る例を目にする。例えば日本でもオリンパスやセブンアンドアイHDに投資実績のあるバリューアクト・キャピタルは2014年から2017年までCIOを取締役として送り込みその在任中の株価が2倍以上に上昇、また他にも一昨年からセールスフォースに投資を始め同CIOはここでも取締役として送り込まれている。

日本最大のコンサルティング会社であるアイ・アールジャパンによれば、日本市場に参入したアクティビストは5月時点で72ファンドと5年前に比べて倍増しているという。そういった事を背景に先の株主総会で株主提案を受けた企業も3年連続で過去最多を記録しているが、日本でも上記のような積極関与が今後増加してくるのかどうかこの辺も注目しておきたい。


新紙幣と経済効果

今週いつものクリニックに行った際の会計で早くも新紙幣が交ざっていたが、周知のように今月から20年ぶりとなる新紙幣の流通が始まった。流通初日の全国の新紙幣対応の割合はATMなど金融系機器で9割以上、鉄道・バスの券売機で8~9割、一方で食券の自動販売機は5割、飲料自販機は2~3割程度での対応であったが、いずれにせよ新紙幣発行によるATMや自販機の入れ替え等でその経済効果は約1兆6千億円と試算されている。

初日から各金融機関には列を作っている人々がTV等で報じられ、中にはレアモノの記番号狙いで高額両替する向きも居たようだがこれらがそう簡単に一般の手にホイホイ渡るとも思えない。それでも流通初日からヤフオクでは出品禁止のハズのプレミアでも何でもない新紙幣がズラリと並んでいたからなんとも商魂たくましい向きが多いものとつくづく。

其れは兎も角も、ネットワーク社会でキャッシュレスの動きが加速する条件が整った中での新札発行というのはおそらく今までで初めての事か。飲食店等にあってはこれを機に券売機を新しく買い替えるのであればもうキャッシュレスの導入にした方がよいかという動きも広がっており、意外にキャッシュレス化の比率が上がって来るというのが経済効果で見えるのではとの指摘も一部にある。

経産省によれば、日本のキャッシュレス化は2023年度で普及率が39.3%、アジア圏では近隣の韓国が93.6%、中国も83.0%というなかにあって政府の目標である80%の目標には遠く及んでいないのが現状。これらの国に限らずインバウンド客はキャッシュレスに圧倒的に馴染みがあり、キャッシュレス決済は人手不足緩和など含め現場の生産性も上がるなどメリットも大きいだけに今後どの程度構図が変わって来るのかこの辺に注目しておきたい。


異例の都知事選

さて、周知のように東京都知事選では現職の小池百合子氏が都政の刷新を訴えた新人候補を振り切って3選を決める事となった。当初は参議院議員を辞して立憲民主党から出馬した蓮舫氏との一騎打ちになるとされていたが、蓋を開けてみれば小池氏の圧勝に続いたのは若年層中心に支持政党を持たない無党派層の受け皿となった石丸氏が浮上していた。

また同じ日に行われた東京都議会議員の補欠選挙では自民党候補が相次いで敗れたが、政治とカネ問題への不信感が如実に表れたかたちで自民への逆風はますます強まってきている証左か。ところで今回の都議選は史上最多の56人の候補者乱立という異例のものになったが、法の網を潜り抜け大量に候補者を擁立して掲示板が売買されたりモラルを欠く選挙公報や政見放送などの弊害も齎された。

SNSがバズった事などもあり曲がりなりにも投票率は上がったが、こうした結果子どもの通学路に品を欠くポスターが堂々と掲げられこれを媒体として収益を稼ごうとする魂胆がミエミエなモノも出現するなど公選法が想定していなかった事態も物議を醸し出している。供託金含め公職選挙法を見直す意見も当然出始めたが、これがはたして健全で成熟したデモクラシーの姿なのかどうか再考の余地は大きい。

いずれにせよ今回の都知事選では刷新より継続が選ばれることとなったワケだが、東京都知事の重要課題の一つに以前にも書いた東京の国際金融都市構想がある。ちなみに最新の国際金融センターランキングでは日本は19位とアジア圏でも下位に甘んじており、地位向上に向け各所の育成など成長戦略のブラッシュアップが必要になるだけにどういった舵取りをしてゆくのかこの辺り含め今後も注目してゆきたい。


年金の定期健診

先週は老後の生活資金となる「公的年金」の長期的な見通しを5年に1度資産する「財政検証」の結果が公表されている。法律では所得代替率が50%を下回らないようにすることが約束されているが、過去30年と同程度の経済状況が続いた場合で現役世代の平均収入の50%以上は維持出来るとしているものの、その給付は現在よい2割近く目減りする。

そういった事も視野に年金改革案では基礎年金の拠出機関の現行の40年から45年へと5年延長案もあったものの、ただでさえ若年層中心に将来の年金への不振が強いなかこれらの負担増への反発も強く現状では広く国民の理解を得られないと判断し厚労省は見送りを決定している。

そんななか直近ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2023年度の運用実績で収益率が22.67%プラスの45兆4153億円の黒字となり、過去最高を更新した旨が報じられている。本日もTOPIXはザラバで史上最高値を更新しているが、これらに連動するインデックス運用ではこうした株価上昇は追い風で将来の年金支払いをより確実なものにする安心感も生まれるか。

とはいえ公的年金の給付水準は徐々に下がってゆくのが予想されることで老後の備えを少しでも増やす工夫も各々では必要になってくると思われるが、新NISAと並び自分で掛け金を出すiDeCo・イデコなど税制優遇を受けられるものも啓蒙効果で今では認知度も高まり、政府側もこれら利用促進のため更なる優遇措置を考えておりこれら活用を駆使するのも一考か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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