起爆剤案件?

先週はソフトバンクG傘下の英半導体設計アームが米ナスダックに新規上場した。AI関連の需要拡大期待等を背景に今回の案件には募集の12倍の申し込みとなる人気があったが、注目の初値は公開価格の51ドルを10%上回る56.10ドルとなり、終値は更に上昇し公開価格の約25%高となる63.59ドルで引け、これで時価総額は652億ドルと日本円で9.6兆円を超える今年最大のIPOとなった。

上場セレモニー後にはソフトバンクGのCFOがアームの将来性に期待するとしたうえで「我々のアセットの安全性はアームの上場で飛躍的に改善した。財務運営的にもさまざまな選択肢が出来た。」と述べたのが印象的であったが、これで連想されるのがかつて大量に保有していたアリババ株か。同株を担保にした投資資金の調達がこれまで要であったが、今後はアームが同社に換わる存在となる構図か。

そういえば昨年の株主総会で今回出資に回ったエヌビディア社へのアーム株の売却が独禁法の絡みで断念した事に関して「言い訳抜きで許認可が下りなくてよかった」と孫社長が述べていたのを思い出すが、結果的にその通りで仮にそのまま売却が叶っていたら想定価格で4兆円一寸、冒頭の時価総額との差は実に5兆円以上となるわけでまさに運を感じざるを得ない。

いずれにせよ久々の大型上場となった今回のIPOは紛れもなく世界最大規模、昨年の世界のIPO調達額は欧米の金融引き締めで投資家が景気後退を懸念し前年比65%減であったが、特に米ではIPOの中止件数が前年比95%減とITバブル崩壊の00年以来の高水準になっていた。斯様に低迷していた世界のIPO市場だが、アームの上場の成功をきっかけにこれまで止まっていた案件が動き出すのかどうか今後の動向も注視しておきたい。


手が届くエンゲージメントファンド

本日の日経紙マーケット面には「投信、PBR改革の援軍に」と題し、当欄でも今週はじめに取り上げたアクティブETFの中から「PBR1倍割れ解消推進ETF」が取り上げられていた。同ETFは本日も商いを急増させ上場後の新高値を付けてきていたが、他のアクティブETFも政策保有解消推進や高配当日本株など上場後の新高値を付けてきている。

このPBR1倍割れ解消推進ETFはエンゲージメント活動によってPBR1倍割れ解消を加速、日本の上場企業の大多数がPBR1倍超えとなることを目指すという壮大な目標を掲げているだけに期待が商いに表れ始めたというところなのか日経紙の取り上げもあってかその出来高は昨日の実に3倍にも急増している。

それ以上にこのアクティブETF上場と前後して目立っているのがこれらへの組み入れ銘柄群の上昇の加速か。特に三菱UFJはじめとしたメガバンクなどは万年PBR1倍割れ、そして政策保有株もトップクラスで更には高配当と新規上場したアクティブETF殆どのテーマに被っており、他にもトヨタ自動車やJTなども然りで組み入れに乗って何回転も効く新規商品創設期の旨味をそれぞれが擁している。

しかしこれらのユニークなネーミングを見ているとそのうち分割促進ETFやらTOBターゲットETFなどまで出て来そうだが、冗談はさておき長期でこれらETFを抱くもよし、上記のようにマル信で序盤の美味しいところだけも抜くもよしと投資スタイルは人ぞれぞれだろうが、アクティビストが狙う獲物も幅広く共有される時代になって来た。


アクティブ型第1弾

先週末の日経紙マネーのまなびにはETFにもアクティブ型と題し、東京証券取引所にアクティブ型として先週に初めて上場した計6本のETF(上場投資信託)が取り上げられていた。海外では既にアクティブ型のETFが広がっているが、これまでの国内モノといえば日経平均などの指数に連動するようなパッシブ型のみのラインナップであった。

うち野村アセットの高配当などはこれまでも国内外のモノが幾つも上場しているが、シンプレクス等は「投資家経営者一心同体ETF」など個性的なネーミングを出してきており、他「PBR1倍割れ解消推進ETF」や高いROEを期待出来る「日本成長株アクティブ」などはまさに東証が現在各企業に改善要請している旬なテーマを持ってきている。

7月にJPXプライム150指数の算出が開始された際に、当欄では「~個人的にはPBRが0.6倍台から様々な株主還元を打ち出しPBR1倍に向かう過程で大化けした大日本印刷のような銘柄に大いなる魅力を感じたものだったが~」と書いた事があったが、特に上記の「PBR1倍割れ解消推進ETF」などはまさにこの辺にフォーカスを当てたものだろうか。

また依然として簿価ベースでは30兆円の政策保有株があるといわれているが、政策保有株をバランスシート上に多く保有する企業はPBRやROEが低い傾向にあるだけに「政策保有株推進ETF」などもこの辺を突いたものか。これら新NISAに間に合わせるタイミングでアクティブ解禁の運びとなったが今後も商品性の広がりを見せてゆくかどうか注目される。


主要4指数8日続伸

前日に節目となる33,000円の大台を回復した日経平均だが、本日もその勢いをかって続伸となった。8日に9月限のメジャーSQを控え、コールのショートカバーよりリクイディティーの高い先物へのロングの選択によって指数が押し上げられている面もあるが、なんだかんだこれで5月11日~22日以来の8日続伸となった。

時価総額トップのトヨタ自動車に日立製作所などのゼロイチ銘柄、三菱東京UFJ、三井住友FG、みずほFGなどメガバンク勢も揃って年初来高値更新した他、三井不動産や三菱地所など不動産大手も揃って年初来高値を更新していたが、そんなワケでTOPIXも日経平均同様に8日続伸となりこれでバブル崩壊後の高値を4営業日連続で更新することとなった。

他にJPXインデックス400も8日続伸となり算出開始以来の最高値を連日で更新、算出公表から日の浅いJPXプライム150指数も揃って8日続伸となった。この指数、グロースの色が濃いものの、長期でTOPIXをアウトパフォームしてくる試算も検証もされているだけに来年の新NISAの拡充に向けて誘い水の効果は高いか。


上場74年に幕か

投資ファンドの日本産業パートナーズらによる東芝への8日からのTOBを控え、本日の日経紙には「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告が出ていた。ちなみに公開買い付け代理人は週内にも2500億円の資本増強に踏み切ると報じられているSMBC日興証券である。

不正会計や原子力事業の失敗で経営危機に陥り2017年に実施した約6000億円の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢?の始まりだったが、以降これに応じた魑魅魍魎の株主の顔色を窺いながら一般株主や従業員など他のステークホルダーは蚊帳の外に置かれたまま近年はアクティビストらの突き上げによる臨時株主総会が頻繁に開催される迷走だけが目立っていた感がある。

そんな東芝も今回のTOBで所謂物言う株主からの呪縛から解かれるということになろうが、彼らとて応募で一定の利は確保するとはいえその価格に納得している筈も無くこれまで費やした時間とその労力に見合ったイグジットではないだろう。この幕引きで彼らの次のターゲットにも関心が向かうが、いずれにせよこのTOB成立が叶えば74年間の上場の歴史に幕を閉じることになる事でなんとも複雑な思いだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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