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駆け込みIPO?

本日はマザーズに3銘柄が新規上場となったが、JDSCとHYUGA PRIMARY CAREの両社がストップ高で引けた一方でグローバルセキュリティエキスパートはストップ安水準で引けるなど明暗分かれた。これらを始め今週は1週間で24社が上場となる異例の上場ラッシュとなり、特に24日(金)は実に1日で7社が同時上場となるなどそのピークを迎える。

これだけのラッシュとなると資金分散の関係等でその影響がどうしても気になるところだが、既に節目の1000を下回っていたマザーズ指数が本日の続落で2020年5月28日以来およそ1年7か月ぶりの安値に沈む中で、先週上場した3社の株価も上場後はどれも苦戦を強いられており外部環境も各国中銀の緩和姿勢後退などから不安が残る。

斯様な上場ラッシュの背景としては先ず去年のコロナ禍で予定していた向きの上場延期した分が上乗せとなっている事や、来年に控える東証の市場再編が影響しているという指摘も一部にある。また投資しているVC(ベンチャーキャピタル)が早期のイグジットを求める傾向にあることを指摘する向きもある。

これらの事が相俟って斯様な駆け込み?上場ラッシュとなった部分もあり、その影響からどうしても小粒感が拭えないモノも出て来る。先に上場した米リビアン・オートモーティブは上場した途端にその時価総額は10兆円超えと同社1社で東証マザーズ全体の価値にほぼ匹敵する規模という一コマを見ても日米の違いが浮き彫りになるが、以前に旧態依然としている日本企業の目利き力の課題が改めて問われると書いた事がある通り応分の資金の出し手が望まれるところ。


ベンチャー投資活性化期待

先週の日経紙金融経済面に「米未公開株 個人に門戸」と題し、米フィンテック企業が一般の個人投資家でもブロックチェーンを活用したデジタル証券を売買する仕組みを可能にし未公開企業に投資する市場が拡大している旨の記事があったが、日本でも個人投資家が未公開株をオンラインで売買できる初の市場がちょうど先週に開設されている。

株式型クラウドファンディングを手掛ける日本クラウドキャピタルのファンディーノマーケットがそれで、個人投資家が何時でもネット上で売買注文が出来てIPOや買収以外にも投資リターンを得られる機会を作る事が可能となるが、未公開企業取引といえばかつてグリーンシート市場なるものがあったものの企業の利用が低迷し数年前に廃止となった経緯がある。

その後継制度として日本証券業協会が「株式コミュニティ制度」を始めたワケだが今回はこれを利用する形になり、同制度もこれまで取引が活発化していたとは言い難かっただけにこの開設で新たな流れが出来るか否か注目。リスクマネーの供給量が高まればベンチャー企業投資の活性化も促されるというもので、日本のベンチャー企業にとって斯様に様々な資金調達の手段が出て来たのは朗報だろうか。


再編と課題

さて、東京証券取引所による市場区分の再編を前に各社が自らの市場を選択して申請する期限が今月末に迫っているが、日経が実施したアンケートでは現在の一部に上場する約86%がプライム市場を希望という結果になっている模様で、この最上位のプライム市場を目指す向きは各社共にその基準を満たす為に各々いろいろな行動が見てとれる。

例えば現段階東証一部でダントツの配当利回りを誇る明和産業など既存株主に保有株を売却してもらい冒頭の通り2022年3月期の大幅増配を決定、これを受け当然ながらその株価も年初来安値から3倍以上に大化けを果たしその時価総額はプライム上場維持基準の100億円を割り込んでいた当初から同基準をクリヤする水準にまで達した。

他にもギリいけるのでは?という企業が数多プライム市場を選択する意向を示している模様だが、其々に義務付けられているESGへの対応でも情報開示へのノウハウ、マンパワーや予算の確保等々課題は多そうだ。今後強まるであろうこれらに関する情報発信への要請など企業価値に係わって来るだけに各々の舵取りがより重要になってくるか。


顔ぶれの変化

さて、先週は火曜日にマザーズ市場へボードルアが新規上場し、木曜日にはジャスダック市場にのむら産業が新規上場をはたした。注目の初値はボードルアが公開価格を37.5%上回る初値形成となりその後はストップ安に沈み、のむら産業は公開価格を8.0%下回る初値形成となった後に安値引けとなるなど共に換金売りが優勢の展開となっていた。

今月一発目となったのむら産業だが、この後も今週末にはフレクト、来週以降もネットプロテクションズHD、TrueData、ブロードエンタープライズ等々マザーズ市場中心に大納会ギリギリまでIPOの見込みは前年比7社増の実に33社と目白押しとなっており、単月としては1991年11月以来、約30年ぶりの高水準になる見通しという。

このコロナ禍で社会のデジタル化が加速するなか、その顔ぶれとしては上記のフレクトやハイブリッドテクノロジーズ、エフ・コード、アジアクエストなどのDXの支援・戦略設計・コンサル、またJDSCやエクサウィーズ、Institution for a Global Societyなどの高度なAI技術を活用する新興勢が特に目立つところとなっている。

斯様に構造変化を捉えた企業のIPOラッシュとなる今月だが、これで今年の新規上場は前年比3割増の120社超の見通しで前回のIPOブームに沸いた06年の188社以来の高水準になる見通し。しかし冒頭の91年の顔ぶれといえば自動車部品や電子機器など製造業が中心であったが、昨今は全体の4割が情報・通信となっておりこの30年での顔ぶれの変化が印象深いところだ。


急展開二様

さて、本日に予定されていた新生銀行の買収防衛策の発動の賛否を諮る臨時株主総会だが、直前に突如としてこれを中止するという突然の幕切れとなった。およそ2割を保有する政府が発動に賛成しない方針と伝わっていたのが背景にある模様だが、銀行初の敵対的TOBは幕切れという事になりSBI傘下入りの公算が大きくなった。

TOBといえばもう一つの注目案件、H2O傘下の食品スーパー2社との経営統合を巡る関西スーパーマーケットの方は、一度はTOB提案を取り下げたもののこれに疑義ありとし食品スーパーのオーケーが差し止め請求していた件で神戸地裁は今週はじめにこの訴えを認める仮処分決定をしている。前回取り上げた際に司法に委ねられる事になると先行きは混沌と書いたが、一先ず司法が待ったをかける事態となった。

司法が介入し仮処分決定となったケースは過去にも三菱UFJ等のメガバンクやライブドアとフジテレビの戦いでも記憶に新しいところだが、ともあれこれを受けて昨日の株価の方は差し止め請求と伝わった翌日に続く2度目のストップ高を演じ、今後はこの状況下でホワイトナイト探しに走るのかはたまたH2O側もTOBに切り替えるのかどうかというところか。

しかし新生銀行も複数の議決権行使助言会社からお墨付き?をもらい、一点の曇りも無く全く問題無いと主張してきた関西スーパーマーケット共々絶対の自信を表明していただけに当事者としてはとんだ誤算の展開だろうが、何れにしろ公的資金が絡む前者も今後いかに企業価値を上げられるか、また後者も如何に株主の承認を得られるかが焦点となって来るか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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