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ヤレヤレの本気度

さて、先週は東証プライム上場の東京都競馬が突如としてストップ高を演じる場面があったが、この背景には直近の大量保有報告書で香港投資ファンドのオアシス・マネジメントが8%超の株式を保有していることが明らかになった事がある。オアシス・マネジメントといえば直近ではフジテックの取締役解任劇を巡っての大バトルがなかなか見応えのあるものだったのを思い出す。

斯様な実績のあるアクティビストの登場だけに株価の方も期待値先行で反応したとも思えるが、いわゆる物言う株主が保有している企業群の意欲的な中期経営計画発表がここ相次いでいる旨が先の日経紙にも出ていた。いずれの企業も総還元性向において具体的な数字を挙げてきており、株価の方もそれに準じて少なからず上昇を辿っている。

冒頭の東京都競馬のPBRは昨日時点の東証プライム全平均のそれを超えてはいるが、上記のアクティビストが保有している銘柄群のPBRはいずれも1倍を割り込んでいるものが殆ど。先の株主総会でも多くの企業で増配や自社株買いの還元要求提案が目立った模様だが、東証のPBR是正要請とも相俟って世界基準との乖離を埋めるべく今後も要求が強まるのは想像に難くなく各企業の本気度もまた試されそうだ。


4月IPOスタート

本日より4月のIPOがスタートしたが、その第一号となったのが本日東証グロース市場に新規上場となったキャッシュレス決済サービスのトランザクション・メディア・ネットワークス。注目の初値は公開価格930円を49.2%上回る1388円と好調なスタートとなったが、公開株式が多い割に下馬評を覆す意外?な初値が付いたといえよう。

このTMNはそこそこな吸収金額であったものの直近公開モノは小粒だったこともありなかなかの化け具合となっており、先週末に東証グロースに上場したAI活用DX事業のFusicは初日は買い気配で値が付かず、週明けに寄った初値は公開価格2000円の実に約3.3倍となる6530円のロケットスタート。あと利食いでダレて引けるも本日は改めて買い直され一時ストップ高を示現した。

これに限らず3月上場組のIPOは破竹の勢いが目立ち、ソフトウェア検証の日本ナレッジや同日IPOのスマホ向けアプリ開発のアイビスは共に初日は買い気配で値付かず、その初値は公開価格に対し前者は約2.5倍、後者は約2.9倍に化け。また同じく23日IPOのハルメクホールディングスはスンナリと寄ったもののあと連日ストップ高を演じるなどどれもすこぶる回転の良さであった。

ということで今月は冒頭のトランザクション・メディア・ネットワークスはじめ10社がIPOの予定だが、12日に上場予定のispaceは月面開発事業と宇宙関連ベンチャーとしては初のIPO、またその後には今年最大の案件ともなる楽天銀行もIPOを控えている。更にその後にはひふみ投信のレオス・キャピタルワークスとどれも話題な案件が控えているだけに引き続き新興市場からは目が離せない展開になりそうだ。


東芝非公開化の道

先週は東芝がJIP(日本産業パートナーズ)陣営による買収提案を受け入れる事を取締役会で決議したと発表している。市場の二部落ちから3年半ぶりに悲願の一部に復活するもアクティビストからの突き上げで度重なる臨時株主総会が行われ、二転三転のグループ分割案などここ数年迷走が続いていた東芝だが大きな節目を迎える。

ところで肝心のTOB価格だが1株4620円という。週末の同社株はこれにサヤ寄せする格好で反発していたものの、発表前の株価が約4200円であるからなかなか微妙な安さ?に感じる。昨年も60件近いTOBがあったが、それらのプレミアムの平均が4割を超えていたことを考えればモノが違うとはいえ同社の場合はこの4分の1程度という計算になる。

とはいえ筆頭株主の旧村上ファンド系エフィッシモ・キャピタル・マネジメントはじめ火中の栗を拾った増資引き受け組の簿価を考えるにこの値でも十分なイグジットだが、昨年の二次入札へ進む過程で非公開化を提案したアジア系ファンドは1株7000円の買収価格を提示していた経緯があり、昨年末に当のJIPが提示した価格でさえ5000円台であったワケだが逆にいえばそれだけ劣化?進行が早いという事か。

しかし海千山千のアクティビスト、一昨年だったか英系のCVCキャピタル・パートナーズが買収提案をした際も別のアクティビストが算定価格を大きく下回っているとして反対表明した一件があったが皆が素直にこの価格で応じるかどうかが焦点、TOBは7月下旬とのことだがはたして3分の2以上の取得が叶い長年の呪縛から解放される日が来るのか否かまだまだ予断を許さない。


PBRにもメス

さて、最近は日本のバリュー株のパフォーマンスが欧米を引き離すなど一人気を吐いている旨が話題になっている。バリュー株といえば当欄では今から4年ほど前にバリュー株は受難の時代でPBR格差は過去15年で最大を記録した旨を書いた事があったが、昨年末段階でも東証プライム上場企業1837社のうち実に50%にあたる922社のPBRが1倍を割っている状況であった。

この辺に目を付けられ近年では東証がアクティビストの格好の獲物?になってきたワケだが、ここ数年行われてきたTOBやMBOの中にはその価格がPBR1倍を切っているというモノも少なくなかっただけにさもありなんという感じだ。上記の通りPBR1倍割れが半分を占めているワケだが、このうち更にこの半分0.5倍未満が15%もあるというから東証も危機感からこれに改善要請のメスを入れるというのも頷ける。

万年低PBRからの離脱の鍵の一つとなるのはROEを上げてゆくことにほかならないが、このROEもアベノミクス時代に欧米と比較するに著しくその低さがいわれ改善努力が叫ばれた時期があったのを思い出すが、これを上げるべく流行った自社株買いも当時はリキャップCBなどを使った見せかけの実績も目立ったものだ。

そういえばプライム市場基準を満たさない「経過措置企業」の中でも上場維持基準適合に向けた計画書の内容を着実に実行している企業の株価上昇が顕著になった時期があったが、斯様にこの手の改善要請の類が出る度にそれらは期待感から物色の矛先が向けられるもので、今の低PBR物色もそれとダブって見えなくもないが小手先の改善策でなく本質的なものに踏み込む施策が望まれるところ。


文春並みの投資会社

ここ最近の回転寿司店を巡る迷惑動画でスシローを展開するFOOD&LIFE COMPANIESの時価総額が一連の報道を嫌気し一時約170億円減少した云々と喧しいが、こんなモノではない実にグループ時価総額の約半分が失われたと話題なのがインドの新興財閥アダニ・グループだ。米投資会社のヒンデンブルグ・リサーチが不正会計疑惑を指摘したのがきっかけになっているが、中核会社の公募増資が撤回を迫られるなど窮地に立たされている。

この手の空売りを仕掛け企業の不正や疑惑の告発で株価下落を狙う手法の投資会社は以前からあり、当欄でも7年前に日本市場に参入し第一弾として伊藤忠商事に矛先を向けた米グラウカス・リサーチ・グループや、日本電産を狙った米マディ・ウォーターズ・キャピタル、また共に会計処理に疑義があるとしてSMCを狙ったウェル・インベストメント・リサーチ等を取り上げたことがあった。

他にもサイバーダインの割高を指摘した米シトロン・リサーチなど幾つも出てくるが、このヒンデンブルグ・リサーチもこれまでの実績?として新興EVの米ニコラやローズタウン・モーターズの問題を指摘しニコラはその株価が半値に暴落し会長は投資家を欺いた罪で有罪にもなっている。

狙われた企業はたまったものではないが、彼らも物言う株主の村上ファンド等と同様にコーポレートガバナンスコードを背景に企業に是正を促す切っ掛けを与え緊張感をもたらしているという点である意味同類か。とはいえこの騒動、印中央銀行が国内銀行に対しエクスポージャーの報告を求め始めるなどインドの金融システム全体に影響が及ぶリスクも懸念されておりしばらくはこの動向から目が離せない展開か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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