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分割あれこれ

先週に2023年度の株式分布状況調査の詳細が東京証券取引所から発表されているが、NTTの株主数が2022年度比で2.5倍と上場企業で14年ぶりに首位となった旨を日経紙が報じていた。この辺の背景にはやはり昨年の25分割という大幅分割が影響していると思われるが、一方でトヨタやオリックスは株価上昇による配当妙味減少や株主優待廃止の影響で株主数が減少することとなった。

ところでこのNTTだが、今年の株主総会で一個人株主が自身を取締役にするよう求める株主提案をしたのが話題になった。大幅株式分割によって会社法による株主提案条件の議決権取得のハードルが大きく下がった部分を突かれた格好で、大幅分割では何処の株式も購入のハードルが下がるが同社のケースでは株主提案もし易くなってしまったということか。

株主提案というところが実に今っぽいが、大幅な分割を巡っての事件?といえばやはり今は無きライブドアが記憶に新しい。上場後から数度にわたり分割を繰り返していた同社だが、2003年に行った100分割は衝撃でその後には実にストップ高を15日間続けるという仕手株も真っ青な離れ業をやってのけた。これらを経てその時価総額も急膨張し派手な買収の原資になったのは言うまでもない。

望ましいとする最低投資金額の指針により今でこそ分割も東証が後押しするような機運になっているが、上記の“分割バブル”を思い出すに隔世の感を禁じ得ない。そんな中でもいまだ最低単元が数百万にもなる高株価企業が散見されるが、将来的には米国のように1株から購入出来るようになる日がおとずれるのかどうかこの辺も動向にも注目しておきたい。


緩和トレード逆回転

先に日銀は政策金利を0.25%程度に引き上げる追加利上げを決めたが、この決定から米景気の先行き警戒感も相俟って市場はボラティリティの波で大荒れとなっている。所謂インフレトレードの逆回転が一気に表面化しドル円相場は約7か月ぶりの141円台へと一気に上昇、本日の日経平均に至っては前週末比4451円安と実にあのブラックマンデーの時の下落幅を超え過去最大を記録した。

先物市場では日経平均が英ブレグジット以来、TOPIXは東日本大震災以来のサーキットブレーカーが発動される事態になったが、こうなると225オプション市場など非常に熱い。プットなど24000円や25000円の行使価格はそのディープアウトさから先週の日経平均1000円安でもその値は1~3円と反応乏しかったが、当限の250プットなど先週末の終値3円から本日はザラバ600円と200倍の大化け、同じく当限の240プットは先週末の終値2円が本日のザラバで480とこちらは実に240倍になっている。

個別では多くの企業が堅めに置いた2025年3月期の想定為替レートをあっという間に割り込む円高で主力の輸出企業株が売られるのはもっともな流れだとしても、円建て債で運用しているバークシャーの戦略見直し観測から伊藤忠商事がストップ安の暴落、またここから日銀の追加利上げが見込まれるなかにあって早くも資金調達需要の変調を見越しメガバンクの三井住友銀行もストップ安まで暴落する光景をもう終わりだと見るのかチャンスと捉えるのか?

つい最近には「新NISA」の個人購入額が旧NISA時代の上半期実績の約4倍にもなる7.5兆円を超え、その内訳は約4割が日本の個別株に流入と報じられていたが、その中でもベストスリーに入る人気を誇っていたJTもまた本日はストップ安まで暴落する展開に。新NISAの高らかな掛け声で一斉に大挙した彼らはこの度の急落をどう見ているかだが、いずれにせよリスクこそがリターンの源泉、個人的にはなかなか見られない荒れ相場にワクワクしながら臨みたい。


コングロマリットディスカウント

周知のようにコンビニ大手のローソンが先週末に上場廃止となっている。既に報じられている通り通信大手のKDDIによるTOBが成立した事によるものだが、このプライム市場における最後の発表では3月から5月までの決算で最終利益が169億6700万円と過去最高を記録、有終の美?を飾ったかっこうになったといえようか。

ところで上記のローソンに見られる通り、親会社と子会社が共に上場する「親子上場」は、昨年2023度には前年度比で1割減少し190社とピークの2006年度から半減した旨の記事が先週の日経紙に出ていた。5年ほど前だったか親子上場の解消が加速した時期に同紙の一面にこの件が報じられた事があったが、その時には288社と報じられていたからそこから約100ほど更に解消が進んだという事か。

そういえば以前当欄で取り上げたベネフィット・ワンも当時でその時価総額が親会社パソナの5倍超にもなる超親子逆転現象であったが、TOBの実施中であったエムスリー社は途中参戦した第一生命に売却先が変更される一幕もあったなと。他にもこの「ねじれ」で似たパターンではGMOインターネット・GMOペイメントゲートウェイや三菱ケミカルGと日本酸素HDなどがあるがこれらは親子上場をいまだ維持している。

解消組の富士ソフトなどはアクティビストからの要請をのんだ経緯があるが、利益相反や資本関係の非効率を突いて今後も物言う株主からの提案は増える事はあっても減ることは無いだろう。この親子上場も株式持ち合いと同様、日本独自の特異な商習慣ともいえようが東証の企業統治改革要請やアクティビストなどの圧力にこれらの浄化?も粛々と進行してゆくことになるか。


構成銘柄半減

さて、TOPIX(東証株価指数)が史上最高値を記録したのは先週11日のことだったが、この日の日経紙社説には「新TOPIXで企業改革の後押しを」と題しJPX(日本取引所グループ)がこのTOPIXの絞込みを含めた見直しを進めている旨が出ていた。既に段階的なコンサルテーションが為され、一昨年春に流動性に着目した見直しで市場区分との紐づけを廃止、その後は段階的ウェートの低減で100億円未満の銘柄削除を実施という運びになる。

つまりこの見直しではスタンダードやグロース市場でも基準を満たせばTOPIX銘柄として認めてもらえるという事になるワケだ。また直近ではちょうど先週にもアシックスが自社が保有する総額100億円超にもなる政策保有株の全てを今年中に売却する旨が報じられているが、この改革では既に一昨年に市場区分との紐づけ廃止と共に政策保有株を浮動株から除外ということになっており、明確な目的の無い持ち合い株の意義がここでも問われる。

市場区分見直し後も予想外?に東証の市場改革が粛々と具現化しているが、いずれにせ数年後には現行のTOPIX銘柄数は2100程度からほぼ半分程度に絞り込まれる予定となる。競争原理も自ずと働くであろうし上位ポストで胡坐をかいていたような企業も順次マーケットやアクティビストらの圧力を受ける可能性が格段に高くなるだけに、この改革においても市場の活性化に対する期待は大きくなる。


アクティビスト隆盛

ちょうど1週間前の当欄では複数のアクティビストが大株主となっていたダイドーリミテッドが従来の約20倍にもなる大幅増配を発表した旨を書いたが、その大幅増配発表でストップ高と急騰したところで大株主であったアクティビスト2社が揃って全保有株を売り抜けていたことがその後の大量保有報告書で判明している。これに歩調を合せ?先週にはアクティビスト側から選任された一部取締役も辞任ということでヤレヤ感は否めない。

それはさておき、物言う株主といえば先週の日経紙グローバル市場面には「物言う株主提案最多」と題し、アクティビストが世界で1~6月に企業に対して提案した提案・要求した件数が計147件と同期間で過去最多となった旨の記事があった。上記のダイドーリミテッドのような大幅増配の類というより、世界では不採算事業売却や経営陣刷新など経営に踏み込んだ提案が世界で増えているという。

この頁では米エリオット・マネジメントによるサウスウエスト航空やテキサス・インスツルメンツに対する経営陣刷新や事業戦略見直し提案が挙げられていたが、米では実際にアクティビストが取締役として舵を取る例を目にする。例えば日本でもオリンパスやセブンアンドアイHDに投資実績のあるバリューアクト・キャピタルは2014年から2017年までCIOを取締役として送り込みその在任中の株価が2倍以上に上昇、また他にも一昨年からセールスフォースに投資を始め同CIOはここでも取締役として送り込まれている。

日本最大のコンサルティング会社であるアイ・アールジャパンによれば、日本市場に参入したアクティビストは5月時点で72ファンドと5年前に比べて倍増しているという。そういった事を背景に先の株主総会で株主提案を受けた企業も3年連続で過去最多を記録しているが、日本でも上記のような積極関与が今後増加してくるのかどうかこの辺も注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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