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20兆円クラブ

本日の日経紙投資面では、昨日の株式市場で日立製作所の時価総額が終値で初めて節目の20兆円を超えた旨が出ていた。当欄では昨年の1月に任天堂や伊藤忠商事の時価総額が初めて10兆円の大台を超え「10兆円クラブ」の仲間入りをした旨を取り上げており、この同じ時期に日立製作所もまた同クラブの仲間入りを果たしていたものだが、その後の1年でその時価総額はこの3社間で大きな差が出ている。

日本では「総合〇〇」と称されるコングロマリット企業がディスカウントされる傾向にあったものだが、長らくのデフレ下の構造改革効果で不採算事業が減少、事業売却などで利益が出易くなり売却益などで投資や株主還元など資本の有効活用を積極化する向きが増えて来ている。そうした効果もあってかコロナ禍以降は特にこうしたセクターはTOPIXをアウトパフォームしてきており、コングロマリットディスカウントの一括りでは語れなくなってきている。

これまで日本企業はしがらみの多い組織体系故に事業再編自体が遅々として進まなかった部分もあったが、東証の踏み込んだ改革等も背景に今後は上記のように経営資源を稼いでいるセグメントに集中投資してゆく動きがより活発化してゆくとも考えられる。コングロマリットディスカウント企業も今後ROE向上等が顕著になってくればコングロマリットプレミアムへと変貌を遂げる一歩になるはずでこの辺に期待したいものである。


過ぎてわかる超割安

昨日の株式市場はハイテク勢が総崩れする一方でこれらの資金の受け皿となるべく上げが目立ったのは銀行株群の堅調であった。日銀総裁が発言したところの中立金利までの幅から一段の利上げ期待が高まり、メガバンク勢では三菱UFJFGがザラバ高値1982円と実に19年ぶりに上場来の高値を更新、三井住友FGやみずほFGも揃って年初来高値更新と気を吐いていた。

前にも書いたがメガバンクのPBR1倍乗せは当時の経済を取り巻く環境からしてもほぼ不可能と思われたものだったが昨年には三菱UFJはいち早くこれを達成、また本日も年初来高値を更新してきたみずほFGもこれまた難しいと思われてきた2003年の1兆円増資の優先株を2016年に普通株へ強制転換した時の2829円を三菱UFJのPBR1倍回復と時を同じくしてクリヤ、今や株価はその水準から更に5割も上回ってきている。

このみずほFGや三井住友FGも年初来高値更新で三菱UFJに続きPBR1倍を超え、これでメガバンク勢は全てPBR1倍超えを達成する事となった。今後は他行や地銀セクターも物色の矛先が向う可能性もあるが、思えばつい数年前のマイナス金利の時は今の株価のそれこそ4分の1から5分の1程度でいつでも買えたわけで、いずれどこかでマイナス金利が終わると楽観視してコツコツため込んだ向きがやはり報われたということになる。


米ETFの強み

本日の日経紙グローバル市場面には「ETF、世界で流入最高」と題し、世界のETF(上場投資信託)への資金流入額が昨年は1兆5400億ドルと前年比で85%増加し3年ぶりに過去最高を更新した旨の記事があった。中でも米国の一強は鮮明で、昨年は現物ビットコインETFが承認された事もあり流入資金のうち7割が米国に上場するETFとなった。

昨年11月には当欄で米ビットコインETFの資産規模がゴールドETFの3分の2水準まで迫ってきている旨を書いていたが一強とされる米市場の魅力はその商品の多彩さにもあり、この辺では先月には期限が1日のゼロデーオプション等を組み入れたカバード・コール型のETFやリクイディティーの低い数百の融資債権に分散投資するETFなども取り上げている。

他にも昨年はマグニフィセントセブン等の大手テック株の台頭を受け、米ではシングルストックETFの商品数も拡大し取引高も増加した。同ETFは個別1銘柄の値動きをベンチマークとしたETFで2倍までのレバレッジをかけられるが、ボラが倍という点で信用取引とも似ているが仮に相場が読みと逆に動いたとしてもマル信のように追証や強制決済も無く、元本そのものがマイナスになる事態にはならない点で異なる。

ETFといえば日本でも昨年は6月に日経半導体ETF、また12月にはサウジ株ETFが上場しており、今月に入ってからは世界を代表する米テクノロジー企業10社に均等投資するETF「iFreeETF FANG+」も上場している。ただ上記のETFに見られる“攻めた”商品という点では腕に覚えのある投資家は今一つ食指が動かぬ点は否めないだけに、指数だけでなくシングルストックのようなマル信代替となるような商品拡充も望まれるところだ。


外圧の洗礼

今週も先週に続いて大物タレントが起こした女性問題に絡んで社員の関与が指摘されているフジテレビの報道がない日は無かったが、同問題に絡んでは同社社長の閉鎖的で的外れな記者会見が更に不信感を呼び各社のCM差し止めに歯止めがかからない状況になっている。ちょうど今の時期は春の番組改編に向けた広告主募集の時期だけに同社にとっては何とも最悪なタイミングとなったと言わざるを得ない。

もともとキー局の株は近年のテレビ離れもあってPBR一つとっても長らく低迷が続いているが、そんなことも背景に同社もアクティビストに取得され昨年5月にはMBOを提案された経緯がある。このアクティビスト、ダルトン・インベストメンツだが先週は上記問題に関し第三者委員会の設置ほかを要求する書簡を同社に対して送り、今週に入ってからはオープンな記者会見に日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置要求等の2度目の書簡を送っている。

アクティビストの本領発揮という場面だが、本日に開催された臨時取締役会ではこのうち日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会の設置が決まっている。株式の取得といえばもう一つ、直近では実業家の堀江氏の同社株取得も明らかになっている。ホリエモンといえば約20年前にも自身が率いるライブドアを介し、フジテレビ経営の関与を目的に親会社のニッポン放送株を大量取得した末に和解で手打ちした過去がある。これも“ねじれ”を突いた買収劇であったが、あれから20年を経て再度同社とまた対峙するさまは何かの因縁か。

当時はフジ側とこの和解後にホリエモンは逮捕されてしまい同氏が描き目指していたメディア業界の改革実現には至らなかったが、さて今回はどういった顛末になるのか?頼みの綱の広告収入が壊滅状態でまさに満身創痍という状態のなか、株価の方も外圧によるガバナンス改善期待と経営不安とが交錯し昨日は急伸、一転して本日は急反落と思惑が交錯し乱高下する展開となっているが、アクティビストの動向も含め引き続き興味深く見てゆこう。


経営者が占う2025年相場

昨年の株式市場は能登半島地震を受けて大発会は鐘も鳴らさない異例の静けさで始まり、大納会は金融行政に対する信頼が大激震となった東証社員インサイダー取引発覚でその年に話題になったゲスト招待も見送るという最初も最後も異例な光景で終わった。その足取りは2月にバブル期の史上最高値を34年ぶりに更新、翌3月には初めて4万円の大台を突破し、更に7月には42000円超えの史上最高値を更新するも、翌8月には1日で4000円超えという過去最大の下げ幅を記録するというボラタイルな市場であった。

そこで今年もまた新年恒例の日経紙「経営者が占う」シリーズでこの株式市場を振り返ってみたい。昨年の日経平均の高値予想平均は37900円でその時期は年末との予想が多かったが、一昨年に続いて予想平均を4000円以上も上回る好パフォーマンスとなった。一方で安値平均は31250円であったが、こちらは8月の“令和のブラックマンデー”で示現した31156.12円と皮肉にもほぼドンピシャとなった。

有望銘柄とした個別企業は上記の通り日経平均が予想を4000円超も上回る上昇を演じたことで、2位の伊藤忠商事から6位の東京エレクトロンまでの5銘柄全てが上場来高値を更新するなど当然な結果に。今年の有望銘柄は昨年1位に選ばれながらも上場来高値更新が叶わなかったダイキン工業が3位に転落する一方、昨年2位の伊藤忠商事が1位になり昨年ベストテン圏外だった日立製作所が2位に急浮上している。

そして今年の日経平均高値予想平均は44450円、安値平均は37025円であった。昨年控えめに4万円の高値予想を挙げたSMBC日興証券の今年の予想は同業大手の大和証券の45000円を大きく上回る48500円と大きく上方修正してきた。ちなみにこの高値予想の平均44450円だが、大発会の日に買いた巳年平均上昇率を大発会の引け値に当て嵌めた値段44574円と奇しくもほぼ一致する。

いずれにせよ今年最大の注目点はトリプルレッドとなった予測不能なトランプ政権の動向、そしてやはり日銀の金融政策動向だろうか?いずれも日本経済の腰折れにつながるような政策が取られるようであればそれこそ昨年高値がしばらくハードルとなるリスクシナリオとして認識されてしまう展開になるだけにこの辺には特に注意しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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