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株主の視点

昨日は三菱UFJファイナンシャル・グループが新しい中期経営計画の最終年度の2027年3月期にROE(自己資本利益率)で9%程度を目指す計画を発表しているが、ROEといえば商船三井が従業員のボーナスをROEに連動させる仕組みを導入する旨も報じられている。これまで役員報酬などこの手はよくあったが、株主視点を持たせる意味でも末端にまで広がって来た感じか。

株主視点を持たせるという点では、昨年に空運大手のANAホールディングスが従業員持株会に入っている社員ひとりに譲渡制限付きながら100株を割り当てているが、他にも昨年は譲渡制限付き株式報酬を付与した例として電気機器のオムロンが一般社員や新入社員にも対象を拡大させ、警備業首位のセコムも先月末までに社員約23000人に付与している。

ところで昨日の市場ではプライム上場の豊田自動織機が大株主のデンソーによる持ち合い株の解消報道を背景に急落していたが、こうした株式報酬の類は斯様な大株主が手放す政策保有株の受け皿として有用な面もある。欧米に比べこの手の従業員向け株式報酬制度導入企業割合は見劣りしている感は否めないだけに、人材獲得競争の面からも今後もこうした導入を前向きにとらえる企業は増加してくるのではないか。


新年度も値上げラッシュ?

新年度のスタートだが、今年は新型コロナウイルスワクチンや治療費の公費支援の終了、高齢者の介護保険料引き上げなど日々の暮らしにかかわる制度や仕組みなど変わるものも出てくる。暮らしにかかわるものといえば恒例の食品関係の値上げだが、帝国データバンクによれば今月の飲食料品値上げは2806品目を超え単月で2000品目を超える半年ぶりの値上げラッシュとなる。

ザッと挙げてもハムやソーセージなど加工食品が2077品目と全分野でトップ、次いでトマトケチャップなどの調味料で369品目、そしてインスタントコーヒーなど飲料や酒類が287品目と続く。また外食にも値上げが及び、過去最高となる賃上げを先日行ったすき家は今月3日からメニューの約3割の商品を10~50円の値上げし、更に午後10時以降は深夜料金として7%を加算するとしている。

また値上げの波は食だけでなく日用品やサービスにも及び大王製紙は今日からティッシュペーパー、トイレットペーパー等を10%以上値上げ、王子ネピアや日本製紙クレシアも今月22日の出荷分から5~10%値上げする。サービス関連では所謂「物流2024年問題」もあり、ヤマト運輸が3つの料金を改定、また佐川急便も昨年4月に続き2年連続で4つのサービスで値上げを行う。

今年の値上げは長引く円安など去年よりも拡大要因として作用してくるがもう一つ、上記のすき家などにみられる通り最低賃金の上昇以外にもベアなど賃上げ由来の要因も出始める。こうした原材料コスト以外の要因による値上げなどがどこまで各社で浸透してゆくか、今後はその辺も注視しておきたいところ。


没入感という新形態

さて、今月はお台場に「イマーシブ・フォート東京」がオープンしている。当欄でもその最後を取り上げた2022年閉業のお台場ヴィーナスフォートの跡地を使い、あのUSJ等の再建で知られるマーケティング会社の刀が開業したとあって鳴り物入りの登場だが、最新技術を駆使した映像や音響で様々な世界に没入する事が出来るイマーシブシアター等のアトラクションを11種類備えた世界でも珍しい体験施設となる。

ところで一昨日は日本で体験したいものベスト3にお花見が入りこれに感動するインバウンド客などを書いたが、他に上位に来るのが富士山に芸者などベタな体験で富士山の弾丸登山など報じられ人気だがもう一つの芸者、これなどアトラクションの中には「江戸花魁奇譚」など未知なる妖艶な日本文化などを入れ、しっかりとインバウンドの外国人をも重要なターゲットにしている計算が見え隠れする。

それにしても昨年からにわかにこの「没入体験」モノが急増している感がする。ザッと挙げても直近では全面鏡張りの空間の中で球体に包まれているような没入感が味わえるバブルユニバースなどが目玉の森ビルデジタルアートミュージアム「エプソン・チームラボボーダレス」がオープン、アート系では他に五感でゴッホの世界に没入することが出来る「ゴッホ・アライブ東京展」が、また最新技術を駆使してダリの作品を浴びながら不思議空間に没入することが出来る「サルバドール・ダリ-エンドレス・エニグマ永遠」の謎も開催されている。

斯様にこれまでは「受け身」であったものを能動的な価値体験をリアルで提供するところが面白い。冒頭のイマーシブ・フォート東京もUSJや西武遊園地に続き大成功となると大型テーマパークでもこの手のものが導入される可能性は高いだけにいろいろな意味でも一つの試金石となりそうで、これら新しいエンタメの形になってゆくかどうか今後も注目しておきたい。


商業地・住宅地揃ってバブル化?

昨日はこの時期恒例で国土交通省より公示地価の発表があった。新型コロナの5類移行で経済活動が活発化してきており全ての用途で昨年比2.3%上昇、この上昇幅はバブル崩壊の影響が出た1992年以降で最大となっておりこれで3年連続のプラスとなった。ちなみに商業地も含めて価格が最も高かった地点は東京銀座の山野楽器銀座本店で1平方メートルあたり5570万円、こちらはこれで18年連続となった。

住宅地・商業地は去年より上昇幅を拡大させ一部地域を除いて多くの地域でコロナ前の水準を回復しているが、この商業地も一部はバブルの様相を呈する。先月に当欄では半導体デジャブと題しTSMC熊本工場周辺のバブル化を書いていたが、この工場付近の大津町商業地の一部は33.2%上昇している。一方の住宅地も一部はバブル化しつつありリゾート地として知られる北海道富良野市は27.9%の上昇で全国の上昇率トップとなった。

しかし豊洲の1万円近い海鮮丼が頻繁に取り上げられているが、この北海道もリゾート地はフードトラックの簡単な丼モノでさえ3000円台に乗ってきているモノもありさもありなん。外国人からの別荘需要などが急速に高まって来ているというが、そういった部分では軽井沢もまた然りで、こちらも公示地価は昨年比で13.1%の上昇を見せている。やはり円安の影響は多大で日本の物件を漁りまくるインバウンドの襲来?はしばらく続くことになるか。


開花予想に翻弄

今日は一日中寒い雨が降る冴えない天気であったが、今週は桜の開花を巡りヤキモキしている向きも多いのではないか。今年の全国一番乗りは高知県であったが、3月に入ってから思うように気温が上がらず季節外れの寒さが長引いた為に去年より6日遅い開花宣言という。そんな具合なので最新の開花予想ではここ5年で2度の一番乗りを果たしている東京も既に開花している筈なのだが、こちらもいまだ開花は確認出来ず。

そういえばここ数年は桜に因んだ各所のイベントもその開花予想に翻弄されている感も。温暖化の影響もあり桜の名所で早咲きが相次ぐなどで早々に散ってしまい、コロナ前の2019年の来場者より昨年は半分以下になってしまったと思えば、今年は上記の通り例年より開花が遅く桜イベントなどを例年より前倒しで開催するところあれば延期するところも出てくるなど各所の苦労が窺える。

いずれにせよ今年は新型コロナが5類に移行してから初めてのお花見という事もあり、外に出て春を感じるイベントを楽しみたいと考える向きは多い筈で、某調査会社が行ったお花見に関する意識・行動調査ではお花見を予定している、するかもしれないとした向きが35%近くと2021年比較で13ポイント近く増加している。その経済効果も気になるところだが、ちなみに昨年の桜の経済効果は関西学院大学によれば約6158億円だったという。

インバウンドも日本で体験したいものベスト3に「お花見」がランクインするなど近年の人気ぶりが窺える。斯様に内需に外需も連動してくるとまた一層の商機も出てこようが、桜に感動しているこうしたインバウンド客を見るに改めて今更ながら春の花見、秋の紅葉など四季折々の美しさが愛でられる日本にはいい国だと再認識するものだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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