大阪最後の一等地

私事だが先月に「グランフロント大阪」で開催されたイベントの応援のためそれこそ10年以上ぶりに大阪に行ってきた。久しぶりに歩いた梅田の街並みは懐かしくKITTEなど新しい商業施設等も出来ていたが、新しい商業施設といえば先週末にはこのグランフロント大阪の目と鼻の先に「グラングリーン大阪」が先行開業しており、日経紙でも大々的な全面広告が出ていた。

このJR大阪駅北側の“うめきた”は大阪の最後の一等地といわれているが、広大な公園の南北を挟む形で北街区には商業施設やホテルが、そして南街区にはオフィス等が入り総事業費は6000億円という。これら様々な機能がそれぞれ有機的に結びつき街全体が盛り上がる姿を目指しているというが、そういえば都市戦略研究所が発表している「都市特性評価」では4年連続で大阪市が1位だったのを思い出す。

このランキング、交通アクセスのよさや経済力が評価されてのものだが、一方で大型オフィスの少なさやホテルの少なさは否めずそういった事で東京一極集中も長年目立っていた。今回はこの辺の課題を埋めてゆくもので、オフィスエリアへは来年に塩野義製薬やクボタなど大阪発祥のプライム企業が本社を移転し、ヒルトンは日本初進出ブランドのキャノピーを開業している。

こういったビジネス空間だけでなく斯様に広大な緑地公園を中心として商業施設や観光等で国内外から人の誘致を狙う街創りは、最近の東京でも「虎ノ門ヒルズ」や「麻布台ヒルズ」に見られる通りで“都市のオアシス”を謳い都市と自然の共生がコンセプトになっている。おりしも今後は関西万博も控えており、この大阪でも自然と都市の融合を掲げた新しい街が未来に繋がる拠点になってゆくかどうか注目したい。


優等生維持も限界?

9月に入り外食などは何処も“月見商戦”が始まっているが、月見といえば本日の日経紙マーケット商品面では「鶏卵20年ぶり2割高」と題し、一般的に暑さで鶏卵が傷みやすく重要が鈍る8月に鶏卵の卸値が月間で2割上昇した旨が出ていた。8月としては20年ぶりの上昇率で異例の騰勢というが、生産調整でニワトリの淘汰が進んだところに猛暑の影響で食欲不振から産卵状況も悪くなったという。

卵といえば長年「物価の優等生」といわれてきたが、鳥インフル騒動を経て潮目が変わりここ数年、特に昨年は外食ではタマゴメニューの販売を中止、コンビニでもタマゴ商品の販売休止に追い込まれるなどもはや死語になりつつある。他にもこの部類では今年は豆腐や納豆も原材料の高騰でもはや“優等生”が維持出来なくなってきており、“おかめ納豆”で有名なタカノフーズでは全商品の出荷価格を来月以降に12%以上の値上げとしている。

しかし冒頭の卵の生産調整でついでに頭をよぎったが、週明けに書いたコメの品薄もまた政府が続ける生産調整による供給不足も原因の一つではないかとも思う。この辺も今後再考の余地があろうがそれはそれとして、上記のタカノフーズのように価格転嫁が直ぐに出来る向きはまだいいが、これが直ぐにかなわぬ向きの廃業も増加しているという。優等生扱いされてきた食品類は他にもあるがこの辺の動向も今後は要注意だろうか。


バラエティーでも金ネタ

本日のTBS系、マツコの知らない世界では「金ゴールドの世界」としてゴールドが特集されていたが、同番組で取り上げられたのはこれが初めてではなく11年前の2013年にもゴールドを取り上げていた。その当時は過去30年で金価格が今が1番高いとして紹介されていたが当時でg/約5000円、約1年前の昨年8月にg/1万円の大台を突破したあたりで再度ネタにされるとも思っていたが、ここへきて漸くの再登場となった。

番組中で示された金価格推移のグラフでは2000年代前半のg/約1300円が起点で今やそこから10倍化しているワケだが、もっと長いスパンでみれば半世紀では70倍を超えている計算になる。逆にもっと短いスパンということで今年だけを見ても金の年初来パフォーマンスは20%超となっており、主要なアセットとされる世界株や米国株をもアウトパフォームしている。

昨年10月に当欄で金を取り上げた際には国際社会分断を背景に物色の矛先が向うさまが一際不気味だと書いていたが、世界中で台頭する地政学リスクの拡大がますますこの分断を助長しドル離れで各国中銀が挙って金を積み増すさまはやはり不気味だ。こうした事も背景に上記のパフォーマンスに見られる通り米国の金利が上がる中でも上昇してきた金の輝きは一寸これまでとは違っていたが、今後は米利下げが更に追い風となってくる可能性があるだけに引き続き注目が怠れない。


コメも関連株も

本日の日経平均は前場に1100円超の下げを演じるなど5日続落、約1か月ぶりに35000円台示現からプライム市場の9割以上の銘柄が下げる大幅続落となったが、そんな中でも急反発して年初来高値を更新するなど気を吐き目立っていたのがサトウ食品株か。ご存じ“サトウのごはん”だが、昨今のコメ不足が材料視されてここ物色が続いている。

そうなると他のコメ関連株もまた然りで、プライム市場上場のコメ卸し販売大手ヤマタネも先週の年初来高値更新の勢いを継続させて本日も続伸、大手米穀卸の木徳神糧も本日続伸と日経平均とは逆行する動きを演じていた。こういったところは株主優待でコメを配布している向きもあるが、こんなにコメが店頭から消えるなら優待品を要らないと人に配らず少しは残しておけばよかったとつくづく。

そういえば、約一ヵ月ほど前の当欄でコメ指数上場について触れた時は近所のスーパーで「購入は一人一点でお願いします」との張り紙はあったものの、棚には十分な量の様々な銘柄のコメが陳列してあったが、先月末あたりからは棚が空っぽの状態が続いている。優待は時期が限られるという事で、ならばとふるさと納税を狙う向きも多いのか大手の仲介サイトでもコメの寄付件数が前年同期比で軒並み倍増している模様だ。

しかし新米が出回り始めたこの時期、当の農家側と店頭との温度差とを感じざるを得ない。結局はコロナ禍が始まった頃にマスクが消えた現象と構図は同じなのだろう、あの時はトイレットペーパーまで店頭から消えたが、どれもあるうちに買っておかねばもう二度と買えないというパニック購買に因るところが大きいか。品薄連鎖が収束を迎えるか否かは消費者の行動如何ともいえようが、ECサイト等で法外な値段のコメに売り切れの札が並んでいるのを見るとこれも望めないか。


安定株主無き後

本日の日経紙投資情報面では豊田自動織機がグループの株式持ち合いで岐路に立っている旨の記事が目に付いたが、政策株に絡んでは先週の日経紙一面でも「政策株売却 最高の3.6兆円」と題し東証による資本効率の改善要請を背景に2024年3月期の政策保有株の売却額が3.6兆円と前期比9割増で過去最高になったとの記事があった。そういった事で政策株の保有比率はバブル期には60%超えであったものが今や約26%、全体の4分の1にまで減少してきている。

さて、複数の外資系証券の試算では全ての政策保有株が自社株取得や消却で解消された場合では日本企業ROEが現状の9%から10%に改善するとの試算もあるが、この10%の壁がなかなか高いのが現状。背景には今月に財務省が発表した法人企業統計等で見られた通り経常利益や利益余剰金が過去最高額となるなど企業の稼ぎで自己資本が膨らんでいる事などがある。

とはいえ今年の4月から7月までの自社株買い発表の金額は、22年の4兆7千億円、23年の4兆5千6百億円から今年は7兆9千6百億円と急増。しかも8月アタマの暴落以降翌日から続々と自社株買いの発表をする企業が続出しており、あのブラックマンデー後の米国で起きた主力企業による自社株買い現象を彷彿させる。

今後も政策株売却の動きが加速してゆくかどうかだが、一方で安定株主が緩衝材となりプレッシャーがかかり難かった経営陣は、売却促進で彼らが居なくなってしまうとアクティビストの提案も通り易くなり更には買収リスクにも晒される環境下にもなって来る。先にセブンアンドアイHDも大手から買収提案を受けていたが、安定株主無き後は株主構成の変化を意識しながら政策株売却で得る資金を活用し企業価値を高めるべく緊張感のある経営が経営陣にはますます求められることになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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