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主要4指数8日続伸

前日に節目となる33,000円の大台を回復した日経平均だが、本日もその勢いをかって続伸となった。8日に9月限のメジャーSQを控え、コールのショートカバーよりリクイディティーの高い先物へのロングの選択によって指数が押し上げられている面もあるが、なんだかんだこれで5月11日~22日以来の8日続伸となった。

時価総額トップのトヨタ自動車に日立製作所などのゼロイチ銘柄、三菱東京UFJ、三井住友FG、みずほFGなどメガバンク勢も揃って年初来高値更新した他、三井不動産や三菱地所など不動産大手も揃って年初来高値を更新していたが、そんなワケでTOPIXも日経平均同様に8日続伸となりこれでバブル崩壊後の高値を4営業日連続で更新することとなった。

他にJPXインデックス400も8日続伸となり算出開始以来の最高値を連日で更新、算出公表から日の浅いJPXプライム150指数も揃って8日続伸となった。この指数、グロースの色が濃いものの、長期でTOPIXをアウトパフォームしてくる試算も検証もされているだけに来年の新NISAの拡充に向けて誘い水の効果は高いか。


上場74年に幕か

投資ファンドの日本産業パートナーズらによる東芝への8日からのTOBを控え、本日の日経紙には「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告が出ていた。ちなみに公開買い付け代理人は週内にも2500億円の資本増強に踏み切ると報じられているSMBC日興証券である。

不正会計や原子力事業の失敗で経営危機に陥り2017年に実施した約6000億円の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢?の始まりだったが、以降これに応じた魑魅魍魎の株主の顔色を窺いながら一般株主や従業員など他のステークホルダーは蚊帳の外に置かれたまま近年はアクティビストらの突き上げによる臨時株主総会が頻繁に開催される迷走だけが目立っていた感がある。

そんな東芝も今回のTOBで所謂物言う株主からの呪縛から解かれるということになろうが、彼らとて応募で一定の利は確保するとはいえその価格に納得している筈も無くこれまで費やした時間とその労力に見合ったイグジットではないだろう。この幕引きで彼らの次のターゲットにも関心が向かうが、いずれにせよこのTOB成立が叶えば74年間の上場の歴史に幕を閉じることになる事でなんとも複雑な思いだ。


2か月連続鈍化

さて月初め恒例の値上げ品目チェックだが、帝国データバンクによれば主要195社の今月の食品値上げは2067品目となり、値上げが本格化した22年以降で初めて2か月連続で前年同月を下回ることとなる。全食品分野で最多となったのは調味料であと加工食品や菓子類が続くが、加工食品は2023年通年での全食品分野で唯一1万品目の大台を超えている。

またこれに次いで粗糖やチョコレートの原料となるカカオ豆などの原材料価格が上昇したことが影響して菓子類の値上げも目立つ。ところでこのカカオ、産地の南米諸国はじめ主要生産国の大雨や洪水の影響によりNYやロンドンの先物価格は足元で数十年ぶりの高値を付けており、菓子類はもとより早くも来年のバレンタイン商戦で幅広く価格に影響が出そうとの懸念も台頭している。

ともあれ値上げの浸透や一部の原材料価格の一服を背景に年内の値上げは来月を最後にいったんピークアウトする可能性も高いとしているが、日本と諸外国の金融政策の方向性の違いから金利差拡大を材料に円安が長期化するなどコスト増加要因は依然燻るだけに、はたして素直に値上げ機運後退の気配が出てくるのか否かこの辺を引き続き注視してゆきたい。


62年ぶりスト

さて今年の2月に当欄では、「池袋の憂鬱」と題しセブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武の米投資ファンドへの売却を巡り迷走している様子を取り上げたことがあったがあれから半年、本日はとうとう旗艦店の西武百貨店池袋本店で労組側がストライキを決行する異例の事態となっている。大手百貨店のストライキは1962年の阪神百貨店以来、61年ぶりの事である。

事の発端は売却先の米投資ファンドがヨドバシホールディングスと連携している事でココの西武百貨店への出店案が雇用不安を生み出し、同時に2月にも書いたように当のテナントに20年以上入居しているラグジュアリーブランド勢はじめ地元の豊島区長、地権者からも猛反対を食らっているなど元凶?となっている。

従前に見られたような単純な賃上げストではないケースが時代を感じるが、報じられているところでセブン&アイ社長の「今まで十分に時間をかけて説明をしてきてこれ以上時間をかけられない」という主張に対し、労組側はこの辺の説明は今月から始まったばかりと述べており、また改装案にて大幅に入居場所が移動になるラグジュアリーブランド勢に対してもこれまでこの件に関する説明は無いとされている点など不透明を感じる向きも多いのではないだろうか。

ともあれこの一件を機に他の労組も実際にスト権利を交渉手法の一つとして活用しようとする契機になるのかどうかM&Aする側としてもその辺も留意すべき事項となって来ようが、不採算事業のイトーヨーカ堂も抱えるなか多くの利害関係者の納得を得られていない状況下で売却を強行した代償を今後負うことになるのかどうかも含めて事の成り行きを見守りたい。


株価も二極化?

さて今月は米ウォルマート株が上場来高値を更新してきたが、先に発表された同社の5-7期決算も既存店売上高が予想を上回り食品やヘルスケア関連など生活必需品を中心に堅調であった。そういった一方で米では節約志向が鮮明になりつつあり、不要不急の裁量消費の一部は我慢しようという二極化の動きが進んでいる模様だ。

この辺は株価にも色濃く表れており、上記のウォルマートの他にマクドナルドも先月には年初来高値を更新してきている一方で通期の予想を据え置いた高級志向のブルーミングデールズを持つ米老舗百貨店メーシーズや、米化粧品大手のエスティ・ローダーも米で高価格帯の売り上げが低迷し今月発表した2023年4-6月期の最終損益は20年4-6月期以来の赤字へ転落、株価も20年4月以来の安値を付けていた。

とはいえ富裕層に関しては株高による資産効果もあり堅調な消費が予想されるだけに振り切って高級に特化している仏エルメスや伊フェラーリ等の需要は安定的だと思うが、それ以外の層はパンデミックで急増した消費者の過剰貯蓄の取り崩しが進んでおり、加えて免除されていた学生ローン返済再開等も背景に今後の個人消費は不透明感が台頭する展開になるか。


初の1万円大台超え

本日、田中貴金属工業が発表した金の販売価格が1グラム10,001円(買取が9,886円)となり史上最高値を更新している。中国経済の減速懸念をはじめインフレ圧力が根強く残る米の金融引き締めが長期化するとの観測から日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いも続いていること等が背景だが、1万円の大台に乗ったのはこれが初の事である。

これでまたTVでは金製品などを中古品買い取り店に売りに来る客の姿を報じる光景が増えそうだが、売り急ぎが目立つ本邦勢とは逆にWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)がまとめたところによると4~6月の金地金・金貨の需要でトルコと中東が80トンと昨年2~3月比で2.7倍に増えている旨が報じられている。

このトルコといえばインフレのなか、足元で通貨リラの下落も止まらず過去最安値圏での推移が続いていることで国民が安全資産として主軸の金を買い進めている。後者の中東もエジプトなど先月の物価上昇率が過去最高となり、通貨のエジプトポンドも対ドルで1年半前に比べ半分の価値に沈んでいるなどトルコと構図を同じにしている。

所謂肌感覚で資産防衛の意識が染みついているといったところだが、各国中銀の純購入量も6月時点で2月以来、4か月ぶりの買い越しに転じている旨を上記のWGCが報じている。特に増加が目立ったところでは8か月連続で保有量を増加させている中国に、ポーランドやウズベキスタンも金買いを進めている模様で、この各国中銀の動きも引き続き注視してゆきたい。


ジャクソンホール会議閉幕

注目のジャクソンホール会議が先週末に閉幕したが、FRB議長は経済情勢次第で追加利上げをする可能性に言及したことで米債券市場では2年債の利回りの上昇が目立つ展開で日米の2年金利差は約5ヵ月ぶり水準まで拡大、これを受けて週明けの為替市場も円安ドル高が進行することとなった。

斯様に日米の金融政策の方向性の違いから日米金利差の拡大を材料にして円売りが続く可能性があり、投機的な円安になって来た場合の現実的な対応は円買い介入か金融政策の変更というところだろうが、一部外資系銀行では仮に日銀が更なる修正に動いた場合の円高インパクトは春先に予測したものより変動幅は小さくなるだろうとの試算だ。

一方で株式の方はタカ派寄りな内容だったとはいえ終点の見える打ち止め期待も交錯し米市場は上昇で反応、週明けの日経平均もこれを受け先週末から往って来い近い急反発を演じることとなったが、いずれにせよ次の焦点は来月のFOMCで来年末の政策金利などその経済見通しには要注目としたい。


都市部飽和状態の業界

ちょうど一週間前にクスリのアオキHDの株主総会が執り行われた。そこで見られたのは物言う株主のオアシス・マネジメントが創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなどの株主提案であったが、この光景は更にそのちょうど一週間前に執り行われたツルハHDの株主総会とほぼ同じものであった。

結果的にこのクスリのアオキHDの株主提案もツルハHDの株主提案も共に否決されることとなったが、オアシスの真の狙いはこの経営体制の刷新だけではなく業界の再編という見方が専らである。このドラッグストア業界で初の大型再編があったのは2021年2月のマツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合であった。

このドラッグストア業界に絡んでは昨年当欄でもカインズによる東急ハンズ買収を取り上げた際の末尾で「これに限らずドラッグストアなど他の流通業界の再編も今後ますます加速してゆくのは想像に難くないか。」と書いていたことがあるが、ホームセンターよろしくこちらもオーバーストアが常態化している状況にあり常に再編の噂が絶えない。

ただホームセンター以上に各社の地盤や売りのカラーが違うところが厄介で、そういった意味では上記のマツモトキヨシとココカラファインの経営統合などは本当に相性の良いマッチングであったのだろうと思う。ちなみに冒頭のオアシス・マネジメントはこのココカラファイン株も大量保有していた経緯がありちゃっかりと売り抜けにも成功しているが、自らが絡める再編の機会を虎視眈々と狙う動きは今後も続くか。


有報に見られる本気度

本日の日経紙投資情報面には「PBRが課題 最多44社」と題し、有報に示す経営課題の項目にPBRに関して記載する企業が2023年3月期決算の上場企業で44社と前期比で42社増え過去5年で最も多かった旨の記事が出ていた。この辺はひとえに東証による低PBR改善の要請を背景にして企業側が資本効率の向上等を目指す姿勢を明確にし始めた表れか。

業種別では平均PBRがそれぞれ約0.6倍、約0.7倍の「鉄鋼・非鉄」で記述する企業が業種全体の15%を占め最も多かった模様だが、昨日のM&Aの話で取り上げたTAKISAWAなど工作機械メーカーもPBR1倍を大幅に割り込んでいる銘柄が目立つ業種だ。他に万年低PBR業種といえば銀行業もあるが、この辺は構造的な違いから他と同じ括りには無理があるか。

とはいえ斯様な企業の本気度?からPBR1倍割れ銘柄は着実に減少傾向にあり、今年の期末で1121社あったそれは今月の上旬には1070社まで減少してきている。自助努力の自社株買い等では低PBR企業ほどバリュエーションが切り上がり是正が顕著であり、冒頭の通り資本効率の向上で水準訂正に動いた場合は指数に対する寄与度も大きくなるだけに今後も引き続き低PBR各社の動きに期待したい。


M&Aの矛先

本日の日経紙マーケット面には「市場同意得た予告TOB」と題しTOBを予告する手法がここ数年で増加しつつあるなか、東証スタンダード市場に上場している工作機械のTAKISAWAに対して同社と合意しないまま市場の同意を得るという新たな戦法で買収提案をした東証プライム上場のニデックが取り上げられていた。

ニデックといえば旧日本電産時代から国内外で上場企業を含む60件以上の企業買収を成功させてきたM&A巧者では有名な企業であったが、2008年には東証スタンダード市場に上場している東洋電機製造へのTOBは同意が得られず断念した経緯がある。TAKISAWAも同様に資本業務提携を提案し昨年断られた経緯があるが、今回は同意を得られずともTOBを開始する意向だ。

ところでM&Aといえばこのケースのように日本企業同士のM&A、所謂イン・イン型が増加してきており、今年上半期の買収額は6兆8000億円と前年同期比で8割も増えている旨がちょうど1週間前の日経紙に出ていた。1兆円を超えるところでは日本産業パートナーズによる東芝、産業革新投資機構によるJSR、また名の知れたところでDHC、SBI新生銀行など数多。

総じて長引く円安によりイン・アウト型のハードルが上がってきている面もあるが、東証のPBR是正要求もこうした国内型増加に一役買っている部分もあるだろうか。冒頭のTAKISAWAは来月にも賛否の意見表明を行うとしているが、いずれにしても今回の件が試金石となり他の買収対象となり得る企業の経営戦略にも影響を及ぼす事になりそうだ。


ガソリン政策

ガソリン価格の高騰が止まらない。直近で発表された先週アタマの価格は前週より1.6円値上がりし、リッターあたり181.9円とこれで13週連続の値上がりとなっている。政府による元売り会社への補助金が段階的に縮小して以降の値上がりがやはり顕著になってきたが、来月末にはこの補助を終了する予定と経産省は発表している。

これまでの史上最高値が2008年のリッター185.1円だったと思うが、既にこの水準を指呼の間に捉えておりこの政府補助金が終了するのと前後してこれを超えてくるかどうかというところ。補助金が無かったらとっくにレギュラーベースで200円超えという試算もあったが、こうも高騰が顕著だと改めてコーティングされた各種の税金が恨めしく感じる。

ところで税金といえば、証券などでは配当において法人税を支払った後の税引き後利益を株主に支払う際に所得課税が行われるという所謂二重課税が問題視されてきたが、このガソリンも構造的には基本税額に加えて揮発油税や石油石炭税など数種の税の合計額に消費税が課せられておりこれまた税に税がかけられる二重課税となっている。

いずれにせよこの補助金終了のタイミングでまたぞろ凍結されて久しい特例税率上乗せ免除なるトリガー条項が再度思い出されるが、そろそろ特例法改正の機運は出てこないのであろうか?補助金が機械的に終了し、円安や物価高で家計購買力が低下するなか凍結解除に今はまさに好機だと思うが。


文化政策

さて今年は4年ぶりに各地の夏祭りが通常開催の運びとなっているが、昨今の物価高を背景に一部では運営資金の一部をクラウドファンディングで調達する動きも広がっている。ところでこのクラウドファンディングといえば直近で一番話題になっていたのがやはり目標額1億円を掲げてこのクラファンを募った「国立科学博物館」か。

コロナ禍の影響で柱の入場料が5分の1程度にまで落ち込んだうえ、物価高からこの2年で光熱費が約2倍にまで跳ね上がったことで500万点以上の保管品の保管環境を維持する事が困難になった事が背景にあるが、驚きだったのは何といってもその達成速度か。開始からわずか9時間そこそこで目標額の1億円を突破し約1日で2億5千万円超え、ちなみにこれを書きながら見た時点では約6億7千万円が集まっていた。

ところでこの手のクラファンでは昨年の「法隆寺」が記憶に新しい。此処もまたわずか半日にして目標額2千万円を達成し、終了時には1億5千万円を超えていた。国立科学博物館は11月上旬まで続ける模様だが、法隆寺は普段は未公開の特別拝観、国立科学博物館も非公開のバックヤードツアーへの参加、更には標本作成の体験や収蔵品に触れる機会も用意されるなど双方共に工夫された返礼品が刺さった面も大きいか。

博物館といえば欧米の場合は財団等の支援で成り立っている部分も大きく文化に対する国の姿勢の違いを感じるが、取り組みを応援してくれる新たな仲間と出会える機会にもなると科学博物館が述べている通りクラファンはファンコミュニティを作る意味でも効果的なプラットフォームともいえる。国立科学博物館や法隆寺のような状況にある施設は全国に多数存在しているのは想像に難くなく、この件が関心を持つきっかけとなりこういった動きが広がって来るかどうか注目してゆきたい。