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新NISAと旧回転売買

本日の日経紙金融経済面には「乗り換え勧誘悪用恐れ」と題し、来年から始まる新NISAに絡んで投信の販売業者等が手数料目当ての回転売買に悪用するのではとの懸念が浮上している旨が出ていた。現行制度では買った商品を売っても非課税の生涯枠は減ったままだが、これが新制度では売ると翌年に生涯枠が復活するのが特徴でこの構造が悪用されるのではというもの。

当欄でこの手の投信回転売買について書いた頁を調べてみたら、2010年の8月に証券取引等監視委員会が投信乗り換えを頻繁に勧める事例が増えているとして証券会社による投信の販売状況について立ち入り検査を通じ重点的に点検する旨を取り上げていたが、13年を経てもなおこうした問題行為の懸念が消えていないということか。

「貯蓄から投資」が喧伝されこの新NISAもその非課税枠が現行制度から数倍へと拡充されたうえに非課税機関の縛りも無くなるなどまことに都合良く器は改善されてはいるものの、先の仕組み債のようにこうした流れが削がれるような金融商品の問題はマズイという事で早めに芽を摘んでおきたい金融庁の姿勢を感じる。規制緩和の弊害で麻痺した販売側の意識改革は言わずもがなだが、それと共に受益者側の金融リテラシー向上も喫緊の課題か。


団体解禁

先週末に中国政府が中国人による日本への団体旅行を解禁している。長らく期待されてはいたものの肩透かしが続いていただけに唐突といった感じもするが、実際のところインバウンドは今年の6月まで訪日客全体数は約1070万人とコロナ禍前の7割弱まで回復してきていたものの、中国からの訪日客は2割にも満たなかったのが現状であった。

こうなると真っ先に反応するのは東京株式市場で、ザッ挙げても本命ともいえる三越、高島屋等の百貨店株や、JR各社に京成等の鉄道、JALなど航空といった交通機関から土産物菓子の寿スピリッツ、中小型モノでは免税店のラオックス、インバウンド向け旅行会社のハナツアー、ABホテルの物色にシーツ・タオルの白洋舎も連動高するなどインバウンド関連株が軒並み高となっていた。

これらの物色熱は週明けも続き本日の日経平均は日米金利の上昇を嫌気し400円超の急反落となったものの、上記の銘柄群はほとんどが年初来高値を更新するなど逆行高が目立っていた。大手証券系シンクタンクではこの度の団体旅行解禁で今年の訪日客全体の消費額は約2000億円押し上げられるという試算もある。

今年の6月までの訪日客の消費額は観光庁発表では約2兆2千億円となっているが、弱保ち合いが続く円安の効果は大きく訪日客の購買力は更に増しているといえようか。とはいえ受け入れ態勢の整備などオーバーツーリズムへの課題は残るが、政府が目標としている5兆円という数字が夢物語で無く視野に入って来るのかどうか今後もこの辺に注目してゆきたい。


バービー炎上

今週は原爆が投下されてから78年となる広島と長崎で平和祈念式典が開かれ、広島では首相をはじめ過去最多となる111か国の代表などが参列した。ところでこの原爆に絡んで直近で物議を醸し出しているのが、夏休みが始まった頃に全米などで公開された映画「Barbie」で、この米国の公式アカウントが原爆投下を想起させる画像に好意的反応を示した事が批判を呼んでいるというもの。

同作品は既に先月末時点で世界の興行収入は既に約1100億円に達するなど記録的ヒットとなっており、時を同じくして公開されている原爆の父とされる米物理学者の伝記映画と絡めバーベンハイマーなる造語と共にバービーと原爆を合成した投稿が相次いでいたものだが、よりによってこの「原爆の日」を控えた時期になんともタイミングが悪かった。

このBarbieだがもう一つ、この原爆問題以前に映画に登場する地図の中で中国が主張している九段線が描かれていたということでこれもまた物議を醸し出した経緯がある。折しも中国とベトナムが領有権を争っている最中ということもあり、ベトナム国内ではこの映画が上映禁止にまでなっている。

穿った見方をするなら業界にとって旨味のある市場である中国に忖度しているというシナリオも考えられなくもないが、それにしてもそれぞれの地域のセンシティブな問題について製作側の意識の低さは否めない。逆に中国がこのベトナム側の扱いだったらどうなっていただろう?おそらく蜂の巣をつついたような騒ぎになることは想像に難くないが、いずれにせよ日本公開前に水を差した格好になってしまったのは残念である。


中古車投機

中古車販売のビッグモーターの不祥事が連日世間を騒がせているが、中古車といえば先週末の日経紙夕刊・親子スクールでは「国産中古車が海外で高値?」と題し、海外で90年代に日本の走り屋などの間で人気を博したスポーツカーがオークション等において非常に高価格で落札されるケースが出ている旨の記事があった。

海外で注目されるようになったのは言わずもがな映画「ワイルド・スピード」の影響だろうが、併せてキーワードのところでも取り上げてある製造後25年が経過したモノはクラシックカー扱いで輸入車安全的合法の安全基準から除外される所謂25年ルールも流通に寄与しているか。こうした海外人気が国内需給の品薄を招きこれが更なる高値を招くスパイラルが起きている。

同頁では中古のスカイラインGT-R価格の暴騰するチャートが載っていたが、かつて私も知人から維持に疲れた同車種の売却を持ち掛けられた事があったのを思い出す。既に15万近く走っていたこともあり全く食指が動かなかったが、驚くことに今やこの程度でも500万前後の値が付いており当時提示された値からは実に約10倍に大化けしているから凄い。

こうなるとまるで昨今のウイスキー投機のような話だが、円安の影響で更に海外からは買い易い環境にある事で物色意欲は衰えないか。そういえば直近でもトヨタが新型のランクルのお披露目をやっていたが、この車種も人気モデルは中古市場で新車の約1.5倍の値が付いているという。販売店では転売防止で購入後直ぐの売却をしない旨の誓約書を書かせるケースも出ており、これはメルセデスでもよく聞く話だ。オルタナティブの幅もここ数年で随分と広がってきたとつくづく。


BaaS

週末に米アップルが2023年4~6月期決算を発表している。アイフォーンの販売伸び悩みが懸念されていたものの、アプリ販売等のサービスの売上高拡大がカバーし売上高と一株利益共に市場予想を上回る事となった。ところでこのアップルといえば4月に始めた預金サービスの残高が100億ドルを超えたとも発表している。

このアップル預金については当欄でも5月に一度触れているが、同社は口座提供と管理を米ゴールドマン・サックスが担っており、預金利回りが全米の預金口座の平均の10倍以上となっていることに加え、アップルカードで買い物などをした際に付与されるキャッシュバックが口座に自動入金され残高に対する利息が受け取れるなど貯蓄習慣を簡単に確立・継続する事が出来るのも魅力となっている。

こうした異業種のサービスを既存の金融サービスと連携出来る新たな金融プラットフォームとして注目されているBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)だが、今年の春先に米銀破綻という悪地合いの中で東証スタンダードに上場した住信SBIネット銀行など公開価格を上回る初値となったのも同事業が評価されてのものと指摘する向きもある。

銀行やライセンスを持った事業者がキャッシュレス決済をはじめ後払いや送金などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きという流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いといえ今後銀行もこうした部分での在り方が求められる場面ではその領域で先行している向きが或る意味アドバンテージになるか。


祭りと商機

コロナ禍を経て先月は日本三大祭りの一つ、京都の祇園祭が4年ぶりに通常開催となり約15万人が訪れたが、昨日からは東北最大の青森のねぶた祭がこちらも通常開催されている。こちらも4年ぶりに制限のない通常開催となったことで感慨もひとしおというものだが、今年はインバウンド含めた富裕層を対象にしたサービスが全国の夏祭りに広がっている。

上記の祇園祭の最大の見せ場となる山鉾巡行では今年初めての試みで、一席40万円のプレミアム観覧席が販売された。山鉾巡行についての音声案内ガイドが用意され、京都名物の「おばんざい」をつまみに京都で作られたワインや日本酒を飲みながら祭りを楽しめるというものだが、販売開始と共に8割近くがインバウンド客に売れ体験した向きはいずれも満足そうであった。

この青森ねぶた祭でも昨年1日2組限定で導入した100万円のVIP席を今年は1日6組、開催5日間で30組まで増やしたがこちらも開始早々半数の予約が埋まったという。こうした動きを見て今月12日から始まる徳島の阿波踊りでも1人20万円のプレミアム桟敷席を20席導入、2階のソファー席で徳島産素材を使った食事を堪能しながら演舞の解説を聞いたり踊りの体験も出来るという。

先に2023年1月~6月の訪日外国人客数がコロナ前の64.4%までに戻った旨が報じられていたが、某生保系シンクタンクが報じているところではコロナ禍前の2019年1-3月と今年の同期では宿泊日数が4日以上伸び、消費額も約9割が回復しているとういう。内訳では買い物代が減少する一方で上記の祭り含む鑑賞モノなど娯楽・サービスが2倍以上に膨らんでいるという。インバウンド消費もモノからコト消費へと変化するなかで、高単価の企画等ここに商機を見出す動きは今後も加速してゆきそうだ。


7か月ぶり減少

猛暑のなか8月と月替わりだが、今月も消費者が価格に敏感な製品含め多くの食品が値上げされる。帝国データバンクによれば全食品分野で6月以来2か月ぶりに最多となった調味料はじめ、パック牛乳やヨーグルト等の乳製品、缶詰、菓子類など合わせて1102品目にのぼるが、昨年同期比のおよそ4割にとどまり7か月ぶりに減少に転じることとなった。

とはいえ一班消費者が手に取る頻度が高い上記のパック牛乳やヨーグルト等の乳製品は価格に敏感で値上げを実感し易い部類。一寸挙げても雪印メグミルクの74品目、明治の23品目、森永乳業の15品目等の価格が引き上げられる。この乳製品に関しては飼料価格の高騰等で厳しい経営が続く酪農家を支援するため、昨日から生乳の取引価格が改定された影響が背景になっている。

しかしこの乳製品といえば新型コロナの影響による消費低迷で北海道の一部酪農家など従来の3分の1にまで減産するなど16年ぶりの生乳生産抑制の憂き目に遭っているという。工業製品と違って定期的に乳を搾らないと牛が病気になってしまうため苦渋の決断で毎日生乳を捨てている向きもあるというが、諸外国のように政府が買い上げ国内外の援助物資として活用する等の政策が求められるか。

話が逸れたが、そういったことで帝国データバンクでは消費者の価格の上昇に対するマインドが寛容さを失いつつあり、防衛志向や値上げ疲れが一層進行する可能性もあるとしている。消費マインドが低下すればひいては景気の足を引っ張る可能性も出てくるワケで引き続きこの辺の動向にも注視しておきたい。


バイオ彼是

さて、厚生労働省の専門部会が国内の製薬大手である第一三共が開発した新型コロナウイルスのワクチンについて使用を認める事を了承している。1月に厚労省に承認申請を行っていたものだが、これで国内の製薬会社の新型コロナワクチンとしては初期に流行した従来型対応のモノながら初めて正式に承認されるという事になる。

当初この手のワクチンといえば少なくとも5年以上はかかるといわれたもので、3年で承認に至った今回を早いとすべきか否かだが、新型コロナは既に5類への引き下げが為され街の景色も以前に戻りつつあるなか漸く初期型対応が実用化という光景は1年そこそこで実用化された欧米の製薬会社と比較するにそのスピード感の違いを感じざるを得ない。

斯様にワクチンでは後塵を拝した感だがこのバイオ分野では7月にもう一つ、製薬大手エーザイが米と共同開発したアルツハイマー病の新薬がFDA(米食品医薬品局)から正式承認を受けている。日本でも秋までに承認審査の結果が出る見通しだが、アルツハイマー病の根本を標的にした薬として初めて有効性を示した画期的なものである。

とりわけこの分野は90年代後半から約20年の間に何社も挑んでは200本近くの治験が散っていった経緯があり、同社も治験の経緯を睨みながら株価も往って来い以上の急落の憂き目に遭って来ただけに投資家目線でも感慨深というものだ。各社がしのぎを削って様々な新薬帆候補が出てくるなか、この手のものは社会的インパクトの大きさで突出した存在であり今後益々日本のバイオ技術に期待が膨らむ。


金融政策ウィーク

先週は25日から米FOMC、27日のECB、そして27日からの日銀金融政策決定会合と
金融政策決定ウィークであったが、果たして米は政策金利を2会合ぶりに下馬評通りの0.25%引き上げ、ECBも9会合連続で同じく主要政策金利を0.25%引き上げ、中でも中銀預金金利は3.75%と2001年5月以来、21年ぶりに過去最高水準に並んだ。

そして注目の日銀だが、長期金利を抑え込まずに事実上1%を上限とし緩やかな上昇を容認するYCC(長短金利操作)の修正に踏み切った。それなりに構えはあったもののやはりボラタイルな動きになったのはマーケットで、10年物国債利回りは一時2014年9月以来の高水準となり、為替はドル円が発表直後のわずか1分そこそこで約3円もの乱高下を演じ、連れて日経平均も一時800超の急落を演じた。

久々にというかようやく金利の存在する世界への一歩を踏み出せるかといったところだが、YCCの弊害で円は最弱通貨への道を歩み週末に取り上げたビッグマックの例にみられるように世界での日本の購買力は著しく低下、インバウンド客が買い物天国ニッポンと歓喜するなかその裏で我々には輸入物価の上昇から生活コストの上昇が襲っている。

逸る気持ちはゼロ金利解除に向かうが、賃上げ等もそれに繋がるキーになって来る筈で今年の春闘ではベアが2.12%、定期昇給と合せた賃上げ率は3.58%であったがさて来年は如何に。いずれにせよ目先としては今後の各種経済指標の発表を経た8月のジャクソンホール会議で次の転換点があるか否かこの辺に注目してゆきたい。


ビッグマックランキング

さて、銀座三越にマクドナルドの1号店がオープンしたのが今から52年前だったが、このオープン日にちなんだ「ハンバーガーの日」を前にマックはテナント料や人件費などの運営コストが上昇している事を背景に、先週より都心部店舗を対象に一部商品の値上げに踏み切っている。この1年足らず早くも3度目の値上げとなるが、世界中で人気商品のビッグマックなどはこれで500円の大台に乗って来た。

こうなるともはや競合他社比での割安感は無くなってくるだけに一部のファストフードフリークは鞍替え必至という動きも。ちなみにマクドナルドに対し挑戦的?な広告を打ち出しSNS上で賛否両論を呼んだ某有名競合店は、マックが値上げした今月に単品450円の商品を含む3商品から自由に2商品を選んで500円(1品あたり250円)という破壊的なキャンペーンを展開していた。

思えば世界体操選手権男子団体総合で日本が37年ぶりの優勝をはたした2015年にはこのビッグマックは370円だったが、2018年には390円、2022年9月には410円、今年1月には450円に、そして今回の500円だ。とはいえ1月の値上げ時の購買力平価を測る所謂ビッグマック指数は世界41位に甘んじており、今回の値上げで500円という値段でさえかつて買い物天国と囃された韓国にさえ未だ及ばないあたり安く成り下がった日本を再認識するものだ。


返礼品にも波

さて、ふるさと納税関係サイトでは常に様々なランキングを掲載しているが、先週はそのうちの一つさとふるが今年上半期のふるさと納税人気返礼品を発表している。首位で4連覇となったのは安定のオホーツク産ホタテ、2位には山梨産シャインマスカット、そして3位には茨城のコメがランクインしていた

ちなみに上半期、最も検索されたキーワードは米で、それに続いたのはトイレットペーパーだという。昨今の物価高の影響でこのトイレットペーパーへの寄付件数は2年で約5倍になり、上記3位にランクインしたコメも1.5倍になっており、他に傾向としては脱マスクや新型コロナの5類引き下げで旅行関係の返礼品は年初比で約2倍になっているという。

ところで物価高の影響といえばこの返礼品自体にも値上げラッシュの波が押し寄せてきている。冒頭のホタテなど昨年と比較してみるにモノによって2~3割値段が上昇している。3割規制の中においてもなおそれ以上のお得感のあった人気のモノほど軒並み値上げされてきているが、今年はタイミングの悪いことに10月から総務省による更なる基準厳格化が控えておりこれを見据えた申請に変化が見られるかどうかこの辺に注目しておきたい。


4年ぶり夜空に彩り

新型コロナの影響で中止続きの憂き目に遭った花火大会だが、今月は首都圏で4年ぶりに都内の空に戻って来る。既に先週末には「足立の花火」が先陣を切って開催されたが、規模も拡大され来場者数は過去最多の70万人超となった模様。これに続き本日は「葛飾納涼花火大会」が開催され、今週末はいよいよ「隅田川花火大会」が開催される予定。

この商機に賭けて東京スカイツリーでは約350メートルの高さから隅田川花火大会を堪能できる特別営業を実施するが、ネットの先行販売では実に159倍もの倍率になった模様。また近隣のホテルもいろいろなプランを実施予定で、ホテルニューオータニでは東京三大花火の一つである神宮外苑花火大会を一望出来る宿泊プランを用意、プライベートな空間で1万発の花火やディナーが楽しめる。

しかし今年の場合は物価高が叫ばれるなか、人件費や花火の購入経費等が軒並み上昇したことを背景に従来設けていた荒天時の順延日が軒並み廃止されている。そういった事情で既に無事開催されたところはホッと一安心だろうが、東京以外でもこれらの事情から開催以前の問題のところでクラウドファンディングで出資者を募る向きもあれば早々に実施を断念するところも出ている。

コロナ禍で4年も待たされた心情を察するに観光協会や実行委員会も苦渋の決断だったところもあろうが、スポンサー企業等も背に腹は代えられない向きもありこの辺の事情は様々。花火大会に限らず夏の風物詩の存続をかけ、今年は各々の地で上記のようなクラファン含め持続可能な仕組みを模索する動きが今後も顕著になってきそうだ。