2ページ目   雑記

大義名分と世界の潮流

昨日までニューヨークでは毎年春の風物詩である「ニューヨーク国際オートショー」が開催されていたが、一部でも報じられている通り今年は各社が挙ってEV車をお披露目した昨年とは違い、本邦勢では日産の新型SUVはじめ韓国勢もヒョンデや起亜などの新型車はガソリン車のお披露目と主役がガソリンやハイブリッド車に回帰と様相が一変していた。

当欄では先月にも欧州委員会が推してきたEVシフト政策は破綻しつつある旨を書いていたが、独メルセデス・ベンツGは検討していたところの2030年までに新車販売をEV車にすることを2030年以降もエンジン車の生産継続を明らかにし、同じドイツ勢ではフォルクスワーゲンもEV事業の失速からEV生産台数が縮小しエンジン車へ回帰したところ利益率が急回復するなどなんとも皮肉な状況になっている。

また米でもEV販売は2022年初頭をピークに減速傾向、アップルは約10年にわたり開発したとされたEV開発プロジェクトを中止する方針が報じられ、同じく米ゼネラル・モーターズは2024年半ばまでのEV生産目標40万台断念が報じられている。手厚い補助金でEV普及を後押ししてきたバイデン政権も先月には2032年までに新車販売に占める割合目標を67%から35%へと大幅に引き下げている。

国内事情もまた然りで、ちょうど先週の日経紙ビジネス面には「EV販売、伸び大幅鈍化」と題し、2023年度のEV国内販売台数は前の年度比で約3倍となった22年度から伸び率が大幅に鈍化し、10月から2四半期連続で前年割れとなった旨が描かれている。菅政権時代には2035年までに新車販売でEV車100%を実現するとし、東京都は更に前倒しで2030年までに都内販売の車を10%非ガソリン化し世界の潮流を牽引すると知事が表明しているが、その世界の潮流に抗えずこれらも軌道修正せざるを得なくなるのかどうか注目である。


ピンフが描く街

さて、ちょうど一週間前の日経紙には「日本橋兜町を変貌させた平和不動産のプロデュース力」と題し、目まぐるしい国際金融情勢の変化のなか平和不動産がどういったビジョンで都市開発に取り組んできたかが書かれた全面広告があった。同社が仕切る兜町といえば3年前だったか、「KABUTO ONE」が新たなランドマークとして鳴り物入りでオープンしたのが記憶に新しいところ。

このエリアではTVのドラマなどで弁護士事務所などが入るビルという設定でよく使われる日証館などは昔からその佇まいが変わらない歴史的な建造物だが、この手の歴史的建造物の類では裏手の方で地味な佇まいだった旧第一国立銀行の分館などは数年前に当欄でも取り上げたスタイリッシュなホテルが入る複合施設「K5」としてオープンしている。

また証券会社が並ぶ大通りから一本中に入った小道周辺も様変わり。例えばここ兜町といえば(株価)うなぎ上りとのゲン担ぎで昔から老舗の鰻屋が多いワケだが、数年前に惜しまれつつも閉店したその中の一つ「松よし」は今やカフェとクラフトビールバーになっている。とはいえ焼き場はそのまま残るなど歴史と現代なモノの融合が面白い。

人の出もちょうど今の大手町に似て来たなと思ったりもするのだが、今や場が立っていない休日でも人通りが増え心なしか若年層も増えてきたような感もある。かつて私も東証前のビルにしばらく通った身だが、東証で笛吹が響き渡り中小証券から即金屋など街金まで犇めき合っていた当時から、新旧がスタイリッシュに融合し様変わりしつつあるその光景を見るに隔世の感を禁じ得ない。


商品と経済的合理性

本日の日経紙総合面には「外貨保険、満期前6割解約」と題し、金融庁の調査で外貨建て一時払い保険の約6割が加入後4年以内の短期間で解約されている事が明らかになった旨の記事があった。この背景には販売した金融機関が解約後に同種の商品を顧客に販売し、二重に販売手数料を得るケースが頻発しているケースが多くみられるようだ。

ここ円建て保険の利回りが低迷する中で外貨建て保険は契約者から預かる保険料を外貨で運用する商品で人気を集め、22年の販売額は業界推計で前年度比8割増の4兆円弱となっている。この手の保険を多く扱う第一生命など23年3月期の保険料収入は前年比25%増となり8年ぶりに業界トップに返り咲く原動力の一助になったのは想像に難くない。

多くの商品は含み益が予め設定した目標に達すれば自動的に利回りの低い円建て運用にスイッチする仕組みになっているが、この解約時の手数料が顧客には合理的といえないというもの。そういえば金融庁の顔色に敏感になってきている地銀など昨年はいち早くこの手の商品の窓口販売を自粛していたが、大手でも三井信託銀行は解約率の高さを理由に目標達成型の外貨建て保険の販売を停止している。

商品の設計上、保健を組成した会社から販売会社に支払われる手数料は初年度が高く設定されている所謂L字型が多いだけにこの辺に新規契約の旨味があったか。兎角金融業界にあっては手数料の捻出方法が時折問題視されるが、組成する側としても今後は事前にどういった顧客層を想定しているのか定義し販売を委託する責任が出て来そうだ。


新年度も値上げラッシュ?

新年度のスタートだが、今年は新型コロナウイルスワクチンや治療費の公費支援の終了、高齢者の介護保険料引き上げなど日々の暮らしにかかわる制度や仕組みなど変わるものも出てくる。暮らしにかかわるものといえば恒例の食品関係の値上げだが、帝国データバンクによれば今月の飲食料品値上げは2806品目を超え単月で2000品目を超える半年ぶりの値上げラッシュとなる。

ザッと挙げてもハムやソーセージなど加工食品が2077品目と全分野でトップ、次いでトマトケチャップなどの調味料で369品目、そしてインスタントコーヒーなど飲料や酒類が287品目と続く。また外食にも値上げが及び、過去最高となる賃上げを先日行ったすき家は今月3日からメニューの約3割の商品を10~50円の値上げし、更に午後10時以降は深夜料金として7%を加算するとしている。

また値上げの波は食だけでなく日用品やサービスにも及び大王製紙は今日からティッシュペーパー、トイレットペーパー等を10%以上値上げ、王子ネピアや日本製紙クレシアも今月22日の出荷分から5~10%値上げする。サービス関連では所謂「物流2024年問題」もあり、ヤマト運輸が3つの料金を改定、また佐川急便も昨年4月に続き2年連続で4つのサービスで値上げを行う。

今年の値上げは長引く円安など去年よりも拡大要因として作用してくるがもう一つ、上記のすき家などにみられる通り最低賃金の上昇以外にもベアなど賃上げ由来の要因も出始める。こうした原材料コスト以外の要因による値上げなどがどこまで各社で浸透してゆくか、今後はその辺も注視しておきたいところ。


没入感という新形態

さて、今月はお台場に「イマーシブ・フォート東京」がオープンしている。当欄でもその最後を取り上げた2022年閉業のお台場ヴィーナスフォートの跡地を使い、あのUSJ等の再建で知られるマーケティング会社の刀が開業したとあって鳴り物入りの登場だが、最新技術を駆使した映像や音響で様々な世界に没入する事が出来るイマーシブシアター等のアトラクションを11種類備えた世界でも珍しい体験施設となる。

ところで一昨日は日本で体験したいものベスト3にお花見が入りこれに感動するインバウンド客などを書いたが、他に上位に来るのが富士山に芸者などベタな体験で富士山の弾丸登山など報じられ人気だがもう一つの芸者、これなどアトラクションの中には「江戸花魁奇譚」など未知なる妖艶な日本文化などを入れ、しっかりとインバウンドの外国人をも重要なターゲットにしている計算が見え隠れする。

それにしても昨年からにわかにこの「没入体験」モノが急増している感がする。ザッと挙げても直近では全面鏡張りの空間の中で球体に包まれているような没入感が味わえるバブルユニバースなどが目玉の森ビルデジタルアートミュージアム「エプソン・チームラボボーダレス」がオープン、アート系では他に五感でゴッホの世界に没入することが出来る「ゴッホ・アライブ東京展」が、また最新技術を駆使してダリの作品を浴びながら不思議空間に没入することが出来る「サルバドール・ダリ-エンドレス・エニグマ永遠」の謎も開催されている。

斯様にこれまでは「受け身」であったものを能動的な価値体験をリアルで提供するところが面白い。冒頭のイマーシブ・フォート東京もUSJや西武遊園地に続き大成功となると大型テーマパークでもこの手のものが導入される可能性は高いだけにいろいろな意味でも一つの試金石となりそうで、これら新しいエンタメの形になってゆくかどうか今後も注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2024

4

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30