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ウイスキー熱彼是

さて、昨日の日経紙・真相深層には「ウイスキー熱 原酒が不足」と題して、サントリーが国産ウイスキーの「白洲12年」と「響17年」を販売休止にする旨が載っていた。共に根強いファンが居る人気の商品だが、ウイスキーの販売休止といえば2016年の角瓶・黒43度以来の事という。

昨年英国で開かれた種類の世界的な品評会で「響21年」が最高賞に輝くなど世界的評価の高まりから内外での需要が急拡大、国内のウイスキー熱については2年ほど前に朝ドラのマッサン効果の後押しもあって品薄になっている旨を当欄でも書いたが、その市場は10年前の2倍に拡大し原酒を作った10年以上前の想定を超えての需要拡大やその熟成期間等から販売を続けるのが難しくなったという。

こうなると気になるのが無い物強請りで付けられる値段だが、この報道後に一寸ネットで覗いてみたら果たしてというかでその価格は同紙に書かれていた冒頭2品の希望小売価格の8倍以上にも跳ね上がっているところもあった。ウイスキー熱といえばもう一つ思い出したのが4年ほど前に設定された世界初のウイスキー・インベストメント・ファンドか。

前回これに触れた2年前には設定1年で30%を超える評価益を上げていたが、コレクションの小売価格は既に投じた資金の倍以上に化けるなど予想を上回る成果を挙げ今後は徐々に規模縮小し清算に向かう模様とか。指標の「レア・ウイスキー・エイペックス1,000」指数など昨年上期でゴールドやワインを凌ぐ運用成績をあげており、冒頭の件も背景にこうしたオルタナティブ投資熱もまた盛んになりそうだ。


リスク・パリティ

さて、4月小売売上高が前月から増加した事で米国債利回りが2011年以来の高水準に到達、企業収益や景気への悪影響が懸念され昨晩は9営業日ぶりに反落した米株式であったが、それまで昨年9月以来となる8日連続上昇でVIX指数も週末から週明けは12ポイント台まで低下していた。

この水準といえば世界的株価暴落が始まる前の今年1月下旬以来の低水準ということになるが、特にこの3〜4月にかけて警戒水準で高止まりしていたのと比較するに様変わりともいえる。テクニカルな観点でも緩やかな上向きを示していた200日移動平均線を同指数が約4ヵ月ぶりに下回った事も話題になっていたようだ。

近年では今年2月の当欄でも書いたようにリスク・パリティ運用等からVIXという尻尾が胴体を振り回す格好が増え、一晩で9割以上の価値が消滅した金融商品が続出した最中には同指数の不正操作疑惑まで出たほど。2月からの暴落で篩い落とし一巡感があるものの今なお同指数の影響力と市場構造を考えるにその動向に注目は怠れないか。


第3回TOCOMリアルトレードコンテストを7月から開催

期間を6か月に延長、必要資金額を低減するなど、ルール改定でより参加しやすく

株式会社東京商品取引所(東京都中央区・代表執行役社長 濱田隆道、以下東商取)は、第3回TOCOMリアルトレードコンテストを7月2日から12月28日までの6か月間開催することを発表。



昨年6月から8月末にかけて開催した第1回には240名が参加し、優勝者の利益率は296.37%、今年1月から3月にかけて開催した第2回には340名が参加し、優勝者の利益率は214.94%となりました。

第3回TOCOMリアルトレードコンテストの開催にあたっては、より多くの投資家に参加していただくため開催期間、コンテスト開始時の最低資金額、評価方法を変更。

開催期間はこれまでの3か月から6か月とし、ファンダメンタル等をベースに中長期的にポジションを保持する投資家に対応します。

コンテスト開始時の資金額は最低100万円から50万円に低減し、FX投資家などによる新規参入をしやすくしました。

また、評価方法は、これまでの利益率に加え、実益額も導入し、それぞれにおける成績優秀者上位10名を表彰します。最終成績上位者を2019年1月に発表するほか、中間成績として毎月15日時点と月末時点の優秀者についても、コンテスト公式サイト(https://tocom-realtrade.com/) 等を通じて発表します。


推進と人選難

本日の日経紙一面には三菱UFJフィナンシャル・グループが取締役の過半数を社外取締役とする方針を固めた旨が載っていた。金融機関は事業会社に比べてガバナンス改革の出遅れが指摘されてきたが、海外投資家や取引先が重視するガバナンス強化が需要と判断し社外取締役が過半数を占める欧米に倣い踏み切った模様だ。

斯様にコーポレートガバナンス・コード始動で経営から独立した立場の社外取締役を2人以上選ぶように求められるようになった事で上場企業に企業価値向上を求める動きも活発化してきたが、直近ではこれに早くから取り組んできたスミダコーポレーションの元社外取締役によるインサイダー取引の疑いで証券取引等監視委員会が調査を勧めている旨が報じられている。

こうした社外取締役選任の動きが活発化する一方では社外取締役のなり手が不足している状況もいわれており、複数の企業を兼任する人材等は本来果たすべきチェック機能が疎かになりかねない懸念も出ている。斯様にコーポレートガバナンス強化推進の裏では上記のような人材不足や、今回のインサイダー事件で浮き彫りになったモラルや資質を含めた人選の難しさが露呈している。


呼び水の賞味期限

さて、トランプ米大統領によるイラン核合意からの離脱表明など緊迫化する中東情勢を背景に先週からWTIは70ドルの大台に乗せてきたが、先週末の日経紙商品面には「東証取 原油 の売買低迷」と題し、原油相場が上昇基調を強めるなかを先物の売買高は6ヵ月連続で前年を下回るなど低迷している旨が書かれていた。

当の東商取の原油先物はWTIに歩調を合わせる格好で先週末に2015年6月以来の高値を付けて来たが、原油先物のボラティリティーが高止まりする中で売買高が今一つ伸びない背景には「日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN」等のETN経由で流入する資金の減少が指摘されている。

ETNの東商取への絡みといえば2年前に当欄では、「東商取にとってETNやETFの組成はまさに救世主となった格好か。商品の設計上まさに東商取への間接効果は絶大、先月からJ-GATEも稼働しアジア指標確立まで視野に入れる東商取としてはこれをテコに幅広い参加会社の誘致など課題だろうか。」と書いていた。

冒頭の日経紙商品面での末尾には「〜ETNのかさ上げ効果がはげた現在の売買高低迷は、石油会社など実需家や個人投資家の参加が限られている課題を浮き彫りにした。」と書かれているが、上記の2年前に書いた課題がなお残されている事の証左か。


メダルプロジェクトから一年

今朝のフジTVでは2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてメインの新国立競技場を始め選手村、オリンピックアクアティクスセンター、カヌー・スラローム会場、有明アリーナ等を都心ゾーンと湾岸ゾーンに分けて既に着々と建設が進行している状況を空からレポートしていたのを見た。

この東京五輪といえばメダルに再利用する為に東京都庁で回収された携帯電話などの小型電子機器が10万個を超え、月初にはその記念式典が都庁内で開かれた。当欄でも昨年のちょうど今頃に「みんなのメダルプロジェクト」を取り上げていたが、この回収開始から1年が経過した段階でいずれの金属も現状不足しているという。

来るオリンピックで必要なメダル数は約5,000個だが、国際オリンピック委員会が定めたメダルは銀をベースとし金メダルは金張り仕様で少なくとも6グラムの純金を使用などの規定があるが、これらの内訳では銀が約4,900キログラム、銅が約3,000キログラム、金が約40キログラム必要となり中でも特に不足しているのは銀という。

上記の携帯電話1台から回収出来るのは金が約0.05グラム、銀は約0.26グラム、銅は約12.6グラム、また1台のノートパソコンから取れる金属の量は金が約0.3グラム、銀が約0.84グラム、銅が約81.6グラムというが、1年前に関係者らが廃家電からの回収見込みでもメダルを作成するのに十分足りる量を確保出来るとした観測にも暗雲が漂い始めた。

斯様な事から大会組織委員会は全国3,000か所の郵便局に携帯電話の回収ボックスを設置、今後はデパートや大学等にも設置予定といい、1,400超の自治体も小型家電回収に協力としているが、当初の計画通り一先ず来年春ごろまでに金・銀・銅合計で計8トンの回収目標が適うのかどうかこの辺に注目しておきたい。


相場操縦あれこれ

さて、昨日はジャスダック上場の夢の街創造委員会の株価を知人と共謀し不正に吊り上げたとして金商法違反の罪に問われた創業者の控訴審判決が東京高裁であったが、一審判決を支持し二審も有罪との旨が日経紙夕刊に出ていた。この件について当欄では確か今から2年前ほど前に取り上げていたが、今から5年前の事件なのでなかなか粘った一件だ。

金融商品取引法違反に絡む事件といえば一方では同じく昨日、ヤフーが電子書籍配信会社を子会社化した際のTOBを巡るインサイダー取引疑惑の一件において証券取引等監視委員会が重要事実の伝達ルートの解明が困難との判断で検察への告発を見送った件が報じられている。

また冒頭のような相場操縦ではもう一つ、先月は2014年の村上ファンド代表による現TSIホールディングスの相場操縦疑惑で同代表が強制調査を受けた件でもまた証取監視委員会が告発を見送る旨が報じられている。こちらも3年前の当欄で不可解な動きで釈然としない感は否めないと書いていたが果たしてという感じで、誤信疑惑以上に空売り自体を以てして責任を問うのは整合性で無理があった感じか。


積極型シフト

本日の日経平均は小反発で引けたが個別ではまたぞろ中小型物色も旺盛で、前日に18年3月期の決算は売上高にあたる営業収益を前期比48.5%増、営業利益を同2.1倍と急拡大させた事を背景に大幅高したジャスダック市場の独立系資産運用会社スパークスグループなど連日の続伸となっていた。

このスパークスGは中小型株に強みを持つのが特色の資産運用会社だが、業界を見ると米資産運用会社などもこうした運用者の裁量で有望な投資先を選ぶアクティブ型に回帰しつつあり、株価指数連動型への資金流入は減りつつある模様との旨が連休中の日経紙で書かれていた。

今年に入ってからVIXが大荒れとなり、尻尾が振り回す格好でダウ工業株30種平均やS&P500種株価指数の乱高下で指数連動型もこれまでの利回りを確保し辛い状況となった事が流出に繋がっているとみられるが、運用業界も斯様な積極型への資金シフトの状況から優勝劣敗が今後鮮明化してきそうだ。


社会貢献優待

さて、昨日の日経紙総合面では「株主優待 ESGの波」と題して、自社製品や金券の配布以外に相当額を寄付する選択肢を加える例が目立つなど、日本的慣行とされる株主優待を利用し環境や社会、企業統治の観点から企業を評価する「ESG投資」の波が株主優待にも及んできている旨が載っていた。

株主優待といえばここ近年は持ち合い解消後の受け皿としての個人株主の存在の大きさを考慮し企業側が優待に力を入れ始めている動きが目立ってきたが、配当重視の機関投資家など優待先行の状況に弊害を指摘する向きも出ていた昨今、ガバナンスのGに見られる通りこうした向きにも理解を貰える受け皿を見つけたという感じ。

当欄では3月に「運用と世論」と題し、銃の製造・販売企業への投資自粛やその前には毛皮の使用を廃止したハイブランド群のアニマルフリーの波など社会的責任投資、所謂SRI投資について書いたが、このESG投資もこの10年くらい前から俄かに謳われてきたSRIを広義で捉え基本的には同じ取り組みといえる。

冒頭にはヤマハ発動機の優待項目の盲導犬協会への寄付が例に挙げられていたが、例えば近年はふるさと納税でも最近では盲導犬訓練支援、犬の殺処分ゼロなど動物愛護の類も非常に多く、ESGは投資企業や優待に限らずふるさと納税など幅広い間口で投資家や納税者のニーズに応えられる選択肢となろうか。


ミッドタウン日比谷など

さて、ゴールデンウィーク真っ只中で首都圏の商業施設に出向く向きも多いと思うが、GINNZA SIXなどはや開業1周年でそれを記念し開業当時の草間彌生氏の次の新作アートプログラムを吹き抜けに展開させているが、最近新たに開業した商業施設といえば此処の近所の日比谷にオープンした「東京ミッドタウン日比谷」がある。

こちらも開業してはや1ヵ月が経過、ミッドタウンといえば11年前に開業した六本木が直ぐ頭に浮かぶが、衣食住全てに対応したショップ・レストランを展開する六本木に対しこちらは所謂「コト消費」を軸にした広い世代の来館を促すという。私も所用で近所に出向いたのでオープン翌日に顔を出したがコト消費を謳うだけにイセタンミラーなどがトータルな美容体験の出来るテナントを誘致している。

いつも乍ら新たな商業施設が出来ると途端にその前に鎮座していたビルなど記憶が薄れてしまうものだが、此処も三井ビルや三信ビルなどがあった面影が微塵もないほど様変わりに聳え立つものの地下へ降りるとそのレトロモダンなデザインが三信ビルを彷彿させるテイストに仕上げられている辺りが粋で懐かしい。

このエリアもマキシム・ド・パリが入っていたソニービル銀座が51年の歴史に幕を閉じ、プランタン銀座も32年の営業を終え再出発している一方で、冒頭のGINNZA SIX、このミッドタウン日比谷、そしてこの両者の間に位置する東急プラザ銀座が近年相次いでオープンの運びとなり大人の銀ブラを誘致するべく変貌を遂げつつある。


IPO史上初

さて、今週の株式市場で話題となったのは、やはり今年これまでで最大の注目IPOとされた人工知能開発のHEROZの初値形成だったか。上場したのは先週末であったがそれから2日間気配値のみで値が付かず、上場3日目の後場にして漸く寄ったが驚きだったのはその初値倍率で、実に公開価格の10.9倍とIPO史上初の出来事となった。

同社が開発した将棋ソフトAIの(ポナンザ)が昨年電王戦で対局、それが世界で初めて名人に勝利した事から個人の注目度合も抜群に高かった事で、これまでの初値倍率で最高だったちょうどバブル期だった99年の10月に上場したエムティーアイの9.09倍という最高記録を19年ぶりに更新する事になった。

こんな幻の初値形成のあとは実に200倍を超えるPBR や、PERに至っては700倍超えと見た事も無いような過熱感や、ロックアップ解除も意識され2日連続のストップ安から本日もストップ寸前まで暴落となり、初値形成からわずか3日であわや半値という水準まで沈んだもののそれでもなお公開価格の6倍以上であるから凄まじい。

AIに対する未曾有の期待感がかつてのドットコムバブルを超えるパフォーマンスを演出したとも言えるが、ここまでの派手さは例外としても今年は新年度を挟んで初値が公開価格の2倍以上になるIPOが連続しておりその投資家層にも変化の兆しがいわれている。投資家層の広がりで初値天井傾向等も含めこの辺も変化がみられるのかどうか今後のIPOと併せ注目してゆきたい。


誘致合戦

昨日の日経紙には「上場誘致で米中攻防」と題して、有望な企業の上場誘致を巡り米国では企業の開示負担や訴訟リスクを軽減する強制仲裁などの新たな措置の検討が進み、中国では議決権の異なる種類株を容認しハイテク企業の取り組みを急ぐなど米中双方の攻防が激しさを増してきた旨が書かれていた。

先月の当欄でも書いたが世界的なカネ余りで上場の選択をしなくとも容易な資金調達が可能になったことから、企業の立場が優位となって来た事などを背景に新規上場の停滞が顕著になってきているが、そういった傾向が資本市場の活力を削ぐと先進国では危機感を募らせている。

斯様な構図から近年では企業も有利な条件をちらつかせて主導権を握るようになり、一方で取引所側はルールの更なる緩和を模索するなどその力関係も随分と変ってきている。冒頭の記事の末尾にも書いてあったが、骨抜き誘致とならぬよう投資家保護と企業誘致のバランスをどう保ってゆくかが今後の課題か。