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インスパイアか模倣か

さて今週は所用で郵船ビルの前を通った際にイッセイミヤケの店舗があったが、そういえば先週末から一部で報道されていたバオバオのバッグデザインが別のバッグブランド・ハナアフのバッグデザインと酷似しているとし不正競争防止法違反等を理由にイッセイミヤケ側が製造・販売・輸入の差し止めを求める仮処分を東京地方裁判所に申請した件を思い出した。

イッセイミヤケといえば過去にも縦横無尽にプリーツを操った独特なデザインを他のアパレル企業にパクられたとして差し止め請求をして勝訴した経緯があったが、今回も東京地裁はハナアフ側に損害賠償支払いを命じるなどイッセイミヤケ側が勝訴したとの発表が昨日になされている。

イッセイミヤケ側はインスピレーションとしての一線を越えて看過出来るものではないとの言い分だが、ファッション業界においてこの手の酷似性については別に今に始まった事ではなく、例を挙げればクリスチャンルブタンとイヴサンローランの靴を巡る裁判から、近年では複数のファストファッションブランドによる有名ハイブランドのパクリも半ば恒常化しこちらも一部裁判で敗訴している。

酷似といえばファッションではないが、東京オリンピックエンブレムもベルギーの劇場ロゴのパクリだとして大問題になった挙げ句に白紙撤回となり、他のモノまで続々とネット民に炙り出された経緯も記憶に新しいところ。上記も含め模倣か否か真相は当人のみぞ知るといったところで、こうしたクリエイティブな業界はトレンド市場形成の重要性もあり立証困難なケースもあるが必要悪?な自由の線引きは何所までなのか今後も出てくるであろう判例も興味深く注目したい。


再配分考

本日の日経紙経済面には「自治体二重取りに賛否」と題し、ふるさと納税によって大幅増収となった人気の自治体にも寄附金が税収とされないために国が地方交付税交付金を手厚く配っており、同紙がこれを税収とみなし交付税がどれほど減るか試算したところ2018年度はその額が2300億円超に達した旨が出ていた。

この「二重取り」に関してはかねてより一部の識者からその構図のおかしさが指摘されていたものだが、寄付側もわずか2千円で年間の食材が賄えたり数百万円もするロマコンが貰えたりするワケだから「得する寄付」が定着し、企業誘致等より手っ取り早い財源確保策として競争が熾烈化したのは自然な流れだろう。

そんな事から寄付側も累進制にすべきとの意見も出てきそうだが、過熱した同制度の裏で当初はニッチだった仲介ビジネスも増殖しこちらへのコミッションの原資は国からの補填と歳出面の構図のおかしさも指摘される。今月からの新制度の次は再配分の歪さをふまえ財政問題と向き合うのが先ず課題となろうか。


忖度取締役

さて、総会シーズン突入で日経紙投資情報面でも「変わる総会」と題し連日各所に触れているが、先週末は15年から適用されたコーポレートガバナンス・コードで2人以上選任することを求められている社外取締役について、単に数ではなく多様性や適性など所謂「質」の重要性が問われる環境になりつつある旨が書かれていた。

昨今世間を騒がせている企業の不祥事でも取締役会には悪しき情報が伝達されていないという事例が多く見られたが、企業統治で社外取締役への情報提供の必要性が指摘されてきた中お飾りというべきか形骸化から第三者目線としての社外取締役の機能不全が明るみになった格好だろうか。

また適正という部分に関しては日経紙でもフィデリティ投信が政策保有先から迎える社外取締役には独立性が無いと規定したとしているように、従前の踏襲には一段と監視の眼が厳しく光るようになって来た。今後はその候補者の毛色も忖度が効く親戚?からアナリストなどへ変遷する動きが加速してくるか。


セーフヘブン復活

さて、先週末の日経紙マーケット面にはTOCOMのパラジウム先物相場が1か月半ぶりの高値を付けた旨が出ていたが、貴金属といえばその1週間前には「金急伸1350ドルの天井に迫る」と題し、貿易摩擦が実体経済に影を落とし米利下げ観測の背景が追い風となるなか、金も長期の上値を脱する可能性がにわかに高まっている旨が出ていた。

ETFでも顕著な変化が見られ金は再度セーフヘブンとしての役割を取り戻すべく月替りにかけて1,300ドルの大台を突破してきた事を背景に、金のETFでは最大のSPDRゴールド・シェアの金保有高は今月上旬に2.2%増加し2016年7月以来約3年で最大の伸びを記録したとブルームバーグでも報じている。

ところでWGCが纏めた2019年1〜3月期の世界金需要は前年同期比を7%上回った模様だが、これを牽引しているのが冒頭の末尾にも書いてあった18年以降最大の買い手となった各国中央銀行という。とりわけ米と火花を散らしている国の買いが顕著なのが成る程という感じだが引き続きこの辺は今後のディスクロに注目したいところ。


お土産模様

さて、今週アタマのTV東京系WBSでは「現役秘書約100人が選ぶ!喜ばれる手土産とは?」と題して、ぐるなびが運営する手土産の品評会「接待の手土産セレクション2020」の様子の特集があったが、全国から46の手土産が集まりそれらを各企業の秘書が吟味している様子が放映されていた。

ところで手土産といえばこの時期、株主総会に出席する株主へのお土産を廃止する企業が増えている模様。先週の日経紙には5月末までに開示した定時株主総会の招集通知では今年はNTTドコモや大和証券グループ本社などが取りやめるなど廃止企業は増加し全体の約4割になる見込みになっている旨が出ていた。

ふるさと納税も総務省お達しで返戻品が貧弱になった途端に寄付額が激減した自治体があったが、こちらもお土産を廃止した途端に出席者が前年比で6割近く減ったコマツや第一三共のなどの例が同紙に出ており、一昨年などは某商社の総会がお土産廃止で出席者が9割も減ったという現金な例もあった。

斯様に総会の土産といえばこれを楽しみにしている個人株主も多いが、株主間の不公平感の見直し機運から総会のお土産ヤメますが言われだしたのがかれこれ5年前くらいからだろうか? その後のダブルコードの始動で株主総会に臨む企業姿勢もより一層変化しつつあるがまさに世間の趨勢である。


MBO事情

本日の日経紙社説には「MBOにきちんとした規律を」と題し、上場企業の経営陣が株主から株を買い取って非公開化するMBO(マネジメント・バイアウト)が、日本においては買収価格が低く抑えられがちとの見方があるなかで実効性のあるルール作りが進みつつある旨が書かれていた。

MBOといえば最近では日本の企業ではないものの、あの幻に終わった米テスラモーターのMBO騒動が記憶に新しいところだが、同紙にもMBOが失敗に終った例として上記の通りそのMBO価格の低さを旧村上ファンド関係者らに指摘され幻に終わった中堅印刷会社の広済堂が出ていた。

これに限らず同じく旧村上ファンド系では同様に東栄リーファラインのMBOに対しても価格の低さを指摘していた経緯があり、同様の理由ではアサツーDKや日立国際電気も其々アクティビストから価格の低さを指摘されていた。経産省は特別委員会を設置し権限を持たせるなど実施指針の12年ぶり改定を目指すようだが、これでMBOもまた国際標準に近付くのかどうか引き続き注目しておきたい。


調整役不在

本日の日経紙一面には「日産・ルノー統合強制せず」と題し、フランスのルメール経済・財務相が同紙のインタビューで日産自動車と仏ルノーの経営統合に関して仏政府として強制する考えはないとの立場を強調した旨が書いてあったが、直近では来る定時株主総会の議案にルノー側が投票棄権の意向を伝えている。

カルロスゴーン被告逮捕の経緯からコーポレートガバナンスを意識しまさに改革に動こうというタイミングでなんともな誤算だが、実際に4割超の株を握る筆頭株主が棄権するとなれば特別議決成立の条件である三分の二以上の賛成というハードルのクリヤは事実上不可能となるだけに厄介だ。

この行方も大いに気になるところだが、日産といえばカルロスゴーン被告が役員報酬等について主導的な立場を取っていただけに今年の有価証券報告書もまた其々注目度は高そうだ。これらも含め何かこう年々外部からの目が一段と厳しさを増しているようにも見えるが、これまで巣くっていた一部商慣習も異常だったのもまた否めずこの辺の浄化は粛々と進行しようか。


廃プラ機運

さて先週末の日経紙社説では「企業は廃プラ削減で知恵を競え」と題し、廃プラスチックによる海洋汚染問題含めた諸問題の解決に向け企業が新たな対策を打ち出している旨があり、スタバや大手ファミレス等も今年から来年にかけプラスチック製ストロー全廃に向けた動きの旨が書いてあった。

このストローといえばちょうど先週末にブランチに招待されアンダーズ東京に行って来たのだが、タヴァングリルで噂?の紙製ストローなるものを初めて此処で体験した。イメージと違いふやける事も無く使い勝手も良かったが、思えば昨年秋以降ハイアットグループはプラスチック製ストロー全廃を表明していた経緯があり成る程アンダーズはハイアットだったなと。

来るG20サミットでも廃プラ問題は議題になるが、大題は歓迎としてここでも出ていたようにプラ製品回収の物流コスト等課題は多い。例えばこれ以外でもコンビニ等ではマイバッグ客への対応から売上、総量としての削減可能か否か?当欄でもこの問題に絡んでは昨年9月に取り上げていたが、企業と共に消費者もまたこの辺の理解は不可欠だろう。


今年のウナギ商戦

さて、街のスーパーや百貨店等のエントランスにはそろそろ今年の土用の丑に向けた蒲焼などのパンフが並び始め今年のウナギ商戦もスタートといった感じだが、本日の日経紙商品面には「丑の日 ウナギやや高め」と題し国産ウナギの稚魚が不漁で多くの店舗では蒲焼やうな重が前値よりやや高めとの旨が出ていた。

この辺に関しては先週の日経紙にもシラスウナギの今年の国内漁獲量は前年を6割下回り6年ぶりに過去最低になった旨が載っていたが、国内産が斯様な状況の一方で国産でカバーし切れないものは海外産を使って何とか価格も据え置きの努力をしているような旨をTVで見掛けたように、輸入分は増えて来ている模様だったが全体では数量の水準は上がっているのだろうか?

冒頭のような状況から近年ではウナギそっくりに作ったパンガシウスの蒲焼や穴子や秋刀魚の転用が登場し、今年は鮭腹身や蒲鉾を使った蒲焼が一部で登場している。ふるさと納税返礼品のウナギも総務省の御達で一頃から比べると何所も随分とボリューム感に乏しいモノに成り下がってしまったが、高値の花でなくなる時期はいずれおとずれるのか否か関心を持ってマーケットを見てゆきたい。


煽りにAI

本日の日経紙には「不正取引摘発へSNS監視強化」と題し、金融庁がAI(人工知能)で遣り取りを解析し投資家を煽るような投稿で株価を吊り上げ自ら高値で売り抜けるような不正な取引を摘発する為にSNSの監視を強化する旨が出ていた。

SNSの進化で現代では射幸心を煽る手段も多岐にわたって来たが、ネット系で大捕り物のハシリとして記憶に残っているのはやはりバブル期に名を馳せた伝説の仕手筋を語り開設したサイトで新日本理化やルック等の株価を銘柄によっては5倍化まで急騰させ約60億円の売却益を抜いた事件?か。

しかしこんなSNS監視強化とかまさに現代ならではという気もするが、投資家を煽って誰かが売り抜けるのは今に始まった事ではなく一昔前では某雑誌の占いコーナーで選定されたというフレコミで二部品薄株を中心とした小型株が発売日からストップ高連発となったのも記憶に新しく、新聞の尋ね人で暴騰した銘柄もあった。媒体は変遷するものの悪知恵と人の欲は時を経ても不変か。


持ち合い株売却加速

さて当欄では先月22日に「買収防衛策廃止加速」と題し、その末尾では持ち合い慣習とも併せダブルコード導入で今後もまだ実施企業の減少傾向は続きそうだと書いていたが、この持ち合いといえば先週末の日経紙には上場企業が取引先との関係維持などを目的とした政策保有株式の圧縮に動いている旨が出ていた。

近年は所謂「物言う株主」がすっかり市民権を得る一方、斯様にコーポレートガバナンス・コード改定を経て政策保有株圧縮を求める圧力もあって「物言わぬ株主」が対照的に減少しつつあり、これが企業統治の向上や市場の効率化につながりそうだとの期待が大きくなってきている。

こうした動きが活発化してくると持ち合い株売却資金の振り分け先もまた課題となろうが、有価証券報告書の開示が今月末から始まることでこのディスクロで持ち合い株を新たに売却した旨の報告が為される企業が増加してくるのかどうか、先ずはこの辺に注目というところだろう。


退避先?のIPO

本日の日経平均は前週末に急反落していた週末の米株式や、1日に中国政府が米製品に対する追加関税を従来の最大10%から最大25%にする報復措置を発動した事等を嫌気して4日続落となったが、そんな中で先週末に令和に改元となって初のIPOとなったソフトウェアのテスト・検証サービスを手掛けるバルテス株が本日も大幅続伸となっていたのが目立っていた。

このバルテス株、上場したのは先週木曜だったが初日は買い気配で値が付かず、翌日にようやく公開価格660円に対して2.76倍となる1,820円で初値を付けるに至ったが、これで初値が公開価格を上回るIPOは15社連続となり株式マーケットが全体に軟調展開を強いられるなか個人のホットマネーがIPOに向っている旨が窺える。

当欄でIPO絡みといえば今年の3月に取り上げその時の末尾には成長期待の高い予備軍が控え新年度以降も引き続き注目と書いたが、果たしてIPOインデックスは4月末比で1%上昇と上記の通り日経平均とは対照的だが、現況は退避先と見られている斯様な構図も上場申請関連書類等のハードルも上がり成長期待が背景にあるだけに一過性のものか否か今後に控えるIPOも目が離せない。