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ROE続伸

本日の日経紙一面には「企業の稼ぐ力 米欧に迫る」と題し同紙が東証一部の上場企業を集計した結果、ROE(自己資本利益率)が2017年度に10.1%まで上昇する見通しとなりこの10%を超えるのはデータを遡れる1982年度以降で初めてとの旨が書いてあった。

このROEといえば当欄ではちょうど昨年の今頃「国際標準への課題」と題し同じく触れていたがこの時は前年の上場企業のROEは8.3%と3年ぶりに上昇、この8%台達成がそれまで機関投資家が日本株に求める最多株主資本コストであった事でほぼ機関投資家要求を満たす旨を書いていた。

とはいうものの末尾では国際標準ではお世辞にも遜色ないレベルという状況でもない旨も記しておいたが、個別では欧米水準と肩を並べるところやそれ以上の企業も散見されるものの全体ではまだ伸びしろを残している。自社株買いなど近年は目に見えて盛んになって来たが、コーポレートガバナンス・コード等と併せ今後も全体の嵩上げが如何ほど進むか見ておきたい。


野菜相場

さて、気温が4月頃の水準まで上がりすっかり春の陽気を呈しているが、昨日の日経紙夕刊一面には「野菜 春も値が張る」と題し昨年10月の長雨や台風、11月以降の低温などが尾を引いて野菜の出回りが不足している事でキャベツやレタス、白菜といった葉物野菜の市場卸価格が1年前に比べて4〜6割高い旨が載っていた。

こうした葉物野菜は傷みやすく輸送コストも嵩む為に通常であれば販売されるものは国産が主流となっているが、暫く続く高騰の影響で1月の葉物野菜の輸入数量が過去最高となった模様。また小売店が割安感を訴求できるとして売り込み販売が伸びた事で冷凍野菜も昨年は輸入量が初めて100トンを突破した模様。

この時期の春の食材も一部は出荷量が前年の半分程度でスーパーでは平年比で2割高から2倍の水準というものの、天候が良くなれば生育遅れの回復で価格は何所かで急反落する場面があろうか。10年ほど前にあった野菜先物など軌道に乗っていればこういった局面ではヘッジニーズに大商いで応えたであろうが、原資産に全くリンクせず上場廃止になってしまったのが惜しまれる。


あれから7年

東日本大震災から昨日でまる7年を迎えた。復興庁によると避難者は前年より約4万9千人減少したものの、なお約7万3千人に上る模様だ。例年の事だがこの時期になると各所で募金やらイベントやらと様々な活動が盛んになり、昨日も銀座の歩行者天国ではハート形の風船が多数配られていた。

銀座といえば昨年はこの時期、ソニービルの壁面に「もしも津波がここ銀座の真ん中に来ていたらちょうどこの高さ。」とヤフーが広告を掲げていたがここも静かに閉館を迎えた。しかしこの広告で赤抜きとなっていた高さは隣のビルなどと比べてもだいたい4階から5階といった高さであろうか、想像以上の高さを感じたものだ。

東電福島第一原発の廃炉作業に中心的な役割を果たしている東芝もちょうど昨年はWHに絡んで決算を何度も延期するような綱渡りであったが、こちらは漸くWH関連資産を売却する事により3月期に債務超過を解消することが確実に、また依然として東北では新陳代謝や中小メーカーが得意分野を生かして活路を見い出す取り組みが継続されている。

とはいえ個々では依然として風評被害が尾を引いて農産物の出荷価格など震災前の水準にはまだ戻っておらず、教訓の風化も目立ち始めるなど懸案は山積みでこうした事にしっかりと向き合いつつ個人も出来る事から確かな復興に繋げたいところである。


衣・食・コト

さて、アパレル不振が謳われるなか今週の株式市場では三陽商会が年初来高値を付けてきたが、先週末の日経紙には先月中旬にオープンしたネット通販モール「ストライプデパートメント」に、この三陽商会始め百貨店中心に展開する大手や老舗アパレル企業が売り上げ減を補うべくこの間口の広いモールに参加する動きが広がってきている旨が書いてあった。

確かに自前サイトに限界が見えるなかこうした新顔に活路を見い出し垣根を越えた連携が欠かせなくなってきているのが昨今だがアパレルといえばもう一つ、ジュンが手掛けるパフェ屋のサロンベイクアンドティーや、ロブスターロールやハンバーグやパン等々幅広く展開するベイクルーズなど食はファッションと飲食店へ活路を見い出す企業も出始めている。

衣料一辺倒で不振に喘ぐ向きを横目に、消費者の感動を持続させるのに苦心してきたファッション業界のノウハウを以てこうしたコト消費にいち早く目を付け動いてきた向きは対極で悲壮感が感じられないものだが、今後もこうした動きが成功し定着してくるようなら新たなトレンドの火付け役となるような海外で人気の店の誘致等の動きがますます加速してくるかも知れない。


仮想通貨インデックス

さて、昨日は米仮想通貨取引所大手のコインベースがコインベース・インデックスなる指数を発表、併せて同社の取引所に上場するビットコイン、ビットコインキャッシュ、イーサリアム、ライトコインの値動きに連動するコインベース・インデックス・ファンドを導入した旨の発表をしている。

とはいえまだその構成比率のバランス偏重などからヘッジには疑問符が付く問題点なども一部に指摘されているようだが、同社は仮想通貨全体のパフォーマンスに追従するインデックス・ファンドに大きな需要があるとみており将来的には提供対象や対象仮想通貨の拡大を目指すという。

一方で国内では金融庁が複数の仮想通貨交換会社を一斉に行政処分する方向で最終調整に入った旨が報じられている。斯様に新たな金融商品が次々と創造されるのと並行し、透明化に向けた最低限の法整備も漸く緒に就いたばかりという状況だが、日進月歩のテクノロジーと其々の諸問題のいたちごっこはまだまだ続くか。


院政懸念

本日の日経紙投資情報面には「顧問・相談役、廃止相次ぐ」と題し、企業統治の位置付けをはっきりとさせ経営の透明性を高めるべく、企業が顧問や相談役を廃止したりもしくはこれらの勤務実態や報酬などを公表したりする動きが広がっている旨が出ていた。

そもそも顧問や相談役は会社法に規定がなく株主に選任されるワケでもないので存在意義が明確でも無かったが、同紙でも書いてあったように東芝の不適切会計の発覚を切っ掛けに意思決定に彼らが関わる事に外国人投資家等から懸念の声が高まっていた事に対し数年前からこれらに対する見直しの動きは出ていた。

とはいえ経営上の指導助言や引退した役員の受け皿的役割もあって昨年に同紙が実施したアンケートではこうした制度を変えないとの回答が依然として7割近くとなっていたものの、アカウンタビリティー無しに企業経営に影響力を行使するのはやはり問題があろうか。何れにせよ不祥事を契機に形骸的に認められてきた日本企業特有の慣習見直しの動きがまた一歩進みつつある。


海外アクティビスト台頭

さて、昨日の日経紙総合面には「日本企業に投資へ」と題し、運用総額150億ドルを誇る米大手アクティビストファンドのバリューアクト・キャピタルが日本企業への投資を始める旨が載っていたが、背景には米株式の割高感が強まっている事で日本株に対する関心が高まっているという。

アクティビストといえば当欄でも度々触れてきているが、この米勢力で昨年目立ったところといえばアサツーDKに米ベインキャピタルが登場し、同じく日立国際電気のTOB劇には米エリオット・マネジメントが登場しTOB価格の引き上げ要求と揺さぶりをかけたのは記憶に新しいところ。

果たしてこのエリオット・マネジメントは価格の引き上がったところでTOBに応じるイグジットを成功させ、アサツーDKも株価がTOB価格の上鞘で推移していた事で株価引き上げ云々より票が集まるか否かが焦点となっていたものの、蓋を開けてみれば発行済の9割近くの応募があり事はベインの思惑通りに進むこととなった。

勿論こうした裏には綿密なる調査と戦略が奏功したという背景があるが、コーポレート・ガバナンスを促す政府の思惑とも合致し一昔前とは様変わりな好環境のなか、こうした成功事例も背景に冒頭の通りファンド勢としては応分の関心がますます高まるものと思われる。


北斎漫画が与えた衝撃

さて、現在日経紙文化面には「音楽と響き合う美」と題し毎回有名な絵画がいろいろと紹介されているが、ちょうど一週間前にはエドガー・ドガの「踊り子たち、ピンクと緑」が紹介されていた。これを取り上げた音楽評論家は観られることを意識していない名もない踊り子の背中から腰にかけて永遠の徴を偉大な色彩によって刻み付けたと評している。

ところでこのドガの名作といえば先月末まで国立西洋美術館で開催していた「北斎とジャポニズム展」に出品されていたが、「似たモノ探し」の楽しみを提供したこの展のタイトルにみられるように同作のベースになったものとして葛飾北斎の北斎漫画十一編に描かれている力士の後ろ姿というのは当欄でも以前取り上げたように有名な話である。

自らが描いた力士を参考にしてまさか数十年後に踊り子が描かれるとは思ってもいなかったであろうが、他に北斎漫画の初編が参考にされたモノとしてメアリー・カサットの「青い肘掛け椅子に座る少女」があり、更に酷似しているモノとしてはジョルジュ・スーラの「尖ったオック岬」は北斎の「おしをくりはとうつうせんのづ」と構図はほとんど同一である。

また私の好きなエミール・ガレの1800年代後半の双耳鉢の中にはこれまた上記の北斎漫画十三編に出て来る鯉と全く同じ柄が描かれているモノがあるなど、ジャポニズムブームで北斎が新しい表現方法を求めていた西洋の著名芸術家に与えた影響は計り知れない。冒頭の展は終了したが、明後日まで墨田区観光協会では北斎漫画フラッグ&カードラリーなるイベントを展開中である。


プレミアムフライデー1年

さて、先週末でプレミアムフライデーが導入となってからはや1年が経過したが、政府の旗振りで仕事を早く切り上げ働き方改革や消費喚起を促すこの官民一体のイベントも首都圏の観光・商業施設などは期待したほど客足が伸びず、営業戦略を見直したりサービスを終了したりする動きが相次いでいる旨が日経紙に書かれていた。

当初このプレミアムフライデー構想が出て来た一昨年には勤務形態に関る部分など企業側の理解を得る事が前提と当欄では書いた憶えがあるが、ある調査では勤務先が奨励・実施しているのは11%にとどまりほぼ導入当初と変わりない結果となり、また実施されても早帰りの日の過ごし方として最も多かったのが自宅で過ごしたという回答で約半数を占めていた。

斯様に果たしてというか上記のような流れで冒頭に書いたような観光・商業施設の思惑とはギャップが生じる結果となっている。この1年で認知度は導入当初から上がった模様だが、
以前当欄で消費構造の変化を把握しなければ米国に倣った消費喚起も名前負けになってしまうとしたように先ずはこの辺が不発の背景にあるという事の把握が課題か。


日本選手団快挙

本日は平昌冬季五輪で17日間の熱戦を繰り広げた日本選手団の帰国報告と、解団式が東京ミッドタウンで行われた。冬季としては史上最多の13個のメダルを日本にもたらし、その内容も金メダルラッシュとなった女性陣の活躍や、66年ぶりの連覇など各方面で記録尽くしの快挙であった。

斯様な日本勢大健闘との報道の裏ではこの期に及んでなおドーピング疑いの選手が何人も挙げられ、フィギュアスケートの審判の一人がどう見ても不可解なジャッジをしていた旨が物議を醸し出すなど残念な報道も見られたが、コーポレートガバナンスコードよろしくオリンピックにおいてもこうした概念の徹底が求められようか。

それはさて置き、活躍した女性選手など各局から引っ張りだこで早くも芸能事務所からCMまで虎視眈々と狙っている模様だが、選手の地元のふるさと納税が急増している話も聞こえてきている。肝心の勝負どころで本人の力が最大限に発揮されるべく、全ての有力選手に大企業をバックにつけている選手並みの最高の環境やインセンティブが施され更なるレベルアップが図れるよう切望したいところ。


今年もイタチごっこ

先週末の日経紙総合面には「金密輸 4年で100倍」と題し、23日に財務省が公表した昨年1年間で全国の税関が摘発した金の密輸状況が、摘発件数で前年比66%増の1,347件と過去最高を4年連続で更新、消費税増税前の13年は12件であった事から実に4年で100倍以上に増えた旨が書かれていた。

この金密輸といえば今年に入ってからJALの機内トイレに金塊を隠し国内に密輸しようとした男女6人が逮捕された事が報じられているが、先月末にも中部国際空港で韓国からのツアー客7名が体内に金塊を隠して密輸入を謀ろうとした事件が発覚しているが、それにしても度々当欄でも取り上げている通り金密輸事件は絶えない。

今回の件含め体への巻き付けやスーツケースやアクセサリーの一部に隠したりとその手法は原始的な方法が殆どだが、中には海路を使ったり主流の空輸にしてもLCCが登場して以降はイグジットを想定し国際線と国内線の共同運航に着目するあたりなるほど目敏い。

上記の体内に隠した件では消費税と罰金相当を納付すれば金塊は返却するそうだが、財務省は関税法の罰金上限をこれまでの500万円から大幅に引き上げるなど抑止効果を高める事を図っている。以前にも書いたように金密輸成功率からの試算例では、年100億円が国庫から奪われている計算と看過できない額となっている事で今年も対策が焦眉の問題である。