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NUDE

さて、先月の日経紙・STYLE/Artでは「ピカソの中に透ける浮世絵」と題し、浮世絵の葛飾北斎との親和性を引き合いにピカソの裸婦シリーズの中の作品が紹介されていたが、今年は各所の展でもピカソの絵を観る機会が多い。直近では先月末に終了した横浜美術館の「英国テートコレクション・NUDE」でも日経紙とは違った裸婦モノを観た。

もともとピカソ目当てでは無く、此処ではパンフレット表紙にもなっている目玉のオーギュスト・ロダンの「接吻」を観に行ったのが、美術館では珍しく撮影もOKと緩く流石に圧巻であった。彼方此方でレプリカが販売されてはいるがやはりテートコレクションのオリジナルは艶が違う。

という事で一方のピカソ。日経紙STYLEに出ていたのは1932年の「横たわる裸婦」だったが、先月の私の履歴書でも作家の阿刀田高氏がおそらく1909年のフェルナンドシリーズのピカソの裸体画に触れている。浜美の同展では晩年に近い1968年の作品「首飾りをした裸婦」であったが、フェルナンドとは全く異なるタッチで氏の情感が窺える作品であった。

他にピカソのものではエッチングも2点あったがいずれも貴重なコレクションで、人間にとって最も身近といえるこのテーマに向き合ってきた約200年にわたる裸体表現の歴史を一堂に会して観られ、また時代と共に変化してきた表現も同時に見ることの出来るなかなか濃い展であった。


貴金属安と鉱山問題

本日の日経紙マーケット面では、プラチナが主産国である南アの通貨安に加えて産業用に多く使う事から米貿易摩擦深刻化の思惑で売りが先行、日本時間3日夕方時点でNY先物が1トロイオンス810ドル台と約10年ぶりの安値圏に沈み、国内の先物も9年半ぶりの安値を付けた旨が書かれていた。

金に対して下鞘に沈んでからはや3年半、その後も両者の価格差は拡大を続けているが、米貿易摩擦問題に絡んでは中国が米国に対して報復関税の発動に踏み切れば更に一段安の懸念も言われている。一方で金もまた2日のNYで先物中心限月が一時1,240.6ドルと、中心限月としては2017年12月以来の安値を付けた旨が昨日の日経紙夕刊に載っていた。

文中ではRBCキャピタル・マーケットのストラテジストがETFの見切り売りで金価格の下げにも拍車がかかったとしているが、スパンを変えて見てみるとWGC纏めでは今年5月末のETF残高は2484トンとトランプ大統領当選時期から積み上がりを見せ、15年12月末からは2年半で5割強が増加した旨が報じられている。

ドルの逆の動きをし易い金は上記のプラチナと共に更に一段安との予測も出ているが、生産量漸減傾向に見られる金採掘ピークアウト論も中長期的な下支え要因として言われており、こうした生産減少は主要生産国のプラチナの鉱山にも先行き言われている事で今後はこの辺も頭の片隅に置きながら両者を見てゆきたい。


ブランド構築の難しさ

さて、昨日の日経MJ紙では「匠と美 時計に価値刻む」と題してセイコーウォッチが海外でブランド力を高めようと英米に直営店をオープンしたり、今年の4月には世界最大級の家具・デザイン見本市「ミラノサローネ」に初出展するなどマーケティングに力を入れている旨が書かれていた。

マーケティングといえば他にその前に開催された「バーゼルワールド」においてもグランドセイコーは独立ブース設置などを試みているが、かつて創業家の社長が機械式高級時計の代名詞であるスイス勢をどうしても超えられない壁があると日経紙で書いていたのを思い出す。

レクサスなんぞもそうだが匠が売りの製品は一昔前に比べ最近は一気に強気な価格設定になった感もあるが、この時計然りで本邦勢が長年構築してきたブランドイメージは当に廉価高品質であり後発組の新興勢でも超高額モノがブランド構築に成功している生い立ちとは背景が違うところが壁の高さで、単に価格を世界標準にすればよいというところでない気がする。


今年の争会

さて先月末で2018年の3月期決算企業の定時株主総会シーズンが幕を閉じたが、先週末の日経紙でも「株主総会 反対票が磨く」と題しトップの選任案に反対票が膨らんだり、アクティビストら物言う株主からの提案に賛成票が集まったりと会社側の思惑通りには進まない緊迫した場面が目立った旨が書いてあった。

終ってみれば業績低迷や不祥事発覚企業はもとよりアクティビストが前々から睨みを利かせている企業まで、今回も象徴的であったのはトップの選任議案への反対票の増加ぶりで教科書通りの増加ぶりとなっていた。またちょうど1週間前も書いたように株主提案を受けた企業も今年は過去最多の42社に上っている。

総会が争会とも表現されるようになった近年だが、確かに或る意味かつて総会屋がシャンシャンと仕切っていた時期より経営陣は今の方が明らかに総会対策が大変なのではないだろうか?勿論内容は企業の将来を見据えた前向きなものではあるが、それもこれも持ち合い株減少等も背景に株主が自ら事案を吟味出来るようなガラス張り構造になってきた事が大きく今後もどう前進してゆくのか注目される。


W杯経済効果

さて大金星発進となった1次リーグH組で勝ち点4の日本代表がいよいよ今晩最終戦の地ボルゴグラードで、決勝トーナメントをかけ世界ランキング8位の古豪ポーランドと対戦する。勝利か引き分けとなると自力では2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出が決まるだけに各所での盛り上がりも一入である。

ところでこれだけのビッグイベントとなるとその経済効果の方も気になるところだが、初戦のコロンビア戦での勝利ではマーケットの方も半信半疑?で日経平均こそ急反発したものの個別ではそう目立った物色も無かったが、セネガル戦後では日経平均こそ下落したものの個別はその水準を切り上げるなどジワジワと反応を見せてきている。

大手シンクタンクによれば1986年以降のW杯優勝国は優勝した年のGDP伸び率が前年実績と比べ平均3.2ポイント高で最低でも0.9ポイントの伸長を見せているというが、先ずは今晩の戦いで決勝トーナメント進出ともなればベスト16入りした2010年の南ア大会同様の215億円の経済効果を生み出すと言われているだけにこちらの関係者も含め今晩の戦いも目が離せないこと必至だ。


物言わぬ株主

本日の日経平均は後場に入ってから日銀ETF買い入れ思惑で一時前日終値近辺まで戻す場面が見られたが、日銀のETF購入といえば本日の日経紙一面には「企業の4割、日銀が大株主」と題し、日銀ETF買い入れによってその保有残高は時価25兆円に達し、3月末時点で上場企業の約4割で上位10位以内の大株主になったとの旨が書かれていた。

うちイオンなど5社に至っては実質的な筆頭株主にまでなっている模様だが、文中には「企業にとって日銀は注文の厳しくないありがたい株主」との一文が見られた。しかしアクティビストの対で物言わぬ株主が大株主や筆頭株主という構図はまさに昨日も触れた従前通りの株式持ち合いの構図と同様にも見える。

安定株主の傘に守られている企業は旧態依然のガバナンス姿勢が抜けていない可能性も高いというが、経営陣の暴走防止の観点から外部チェックの目を光らず必要性も出てこよう。株主総会ピークを明日に控えコーポレートガバナンス・コードの重要性が彼方此方で謳われてはいるものの、ガバナンスという点でこうした部分は問題があるといえるか。


残る総会集中

株主総会に触れた昨日であったが、本日の日経紙マーケット面には「集中日に総会株価低迷」と題し、総会ピークを迎える今月に総会を開く東証一部の企業対象にPBRを調べたところ、集中日に総会を開く企業はそれ以外の日に総会を実施する企業よりもPBRが低いという旨が書かれていた。

ちなみに今年の集中日である明後日に開く企業は同紙によれば30.8%という事だが、会場確保等の都合もあってデータがある1983年以降で最低だった昨年かの29.6%から上昇した模様。しかしかつて総会屋がまだ横行していた一昔前には株主総会開催日が極端に集中しており、東証によれば1995年の集中率など実に96.2%に達している。

それから90年代後半にかけて総会屋の影響力が薄れ上記の通り近年では随分と特定日への集中率も下がってきたが、それでも未だこの部分については旧態依然な光景が存在している。冒頭の例でも株式持ち合い問題から基準日問題など株主との対話を深めるにはいろいろと未だ改善の余地がありそうだ。


株主総会2018

さて、今年の株主総会はいよいよ今週にピークを迎える。今年はこのピークを前に1日には東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを改定、柱として政策保有株削減や取締役の多様性確保等が明記され個別議案への賛否を開示し始めた投資家は一段と厳しい目で企業の統治状況をチェックするところが焦点となる。

そうした事もあって6月に総会を開く企業で株主提案を受けたのが今年は過去最多の42社に上ったようだが、昔と違って保有割合という数での勝負ではなく企業価値向上に繋がる提案を出せば他株主の賛同を得られ易くなる時代になってきており、単に会社提案を承認する場から様変わりしつつあるといえよう。

斯様にかつて日本の特異な形態の一つとして有名であったシャンシャン総会も今は昔、15年の企業統治改革元年からはや3年で総会は今や企業統治そのものが問われる真剣な議論の場となったが、会社と投資家の合意点を如何に探るか統治新時代の模索は今後も続いて行くことになろうか。


メルカリ上場

さて、今週のマーケットでビックイベントといえばやはりフリーマーケットアプリで国内最大手メルカリのマザーズ上場だっただろうか。上場当日の大手紙には大きな全面広告が出ていたが注目の初値は公開価格を66.7%上回る5,000円で形成、その後一時ストップ高まで買われた後は5,300円と陽線を立てて引けた。

過去この手の知名度が抜群なIPOといえばLINEが思い浮かび同じ上場延期組でも前者は成長ピークを過ぎてからのIPOであったが、こちらは未だ成長途上の分だけLINEを凌駕していると言ってもよく、足元の赤字を跳ね退け日経平均が400円以上も急落する中ストップ高まで買われたのも説明が付くとの意見も多かった。

その圧倒的な知名度を誇るユニコーンであっただけに国内の応募倍率は50倍超ともいわれたが、公開価格決定と共に投資家需要から海外向け公募株数を増加させたが注目すべきはこちらも20倍超となったという事。上場後の株価は続落模様となっているものの、時価総額1兆円が先ずはターゲットゾーンとの見方も一部に出ている。

IPOといえば本日はログリーが公開価格の約2.倍で初値を付けたが、IPOインデックスも目下のところ12年ぶりの高値圏にある。個人は初値売りの小遣い稼ぎが多い一方、対して海外勢は中長期の投資スタンスを取るケースが多いだけに上記の通り海外勢の注目を惹き付けたユニコーン企業のIPOは日本市場の重要な試金石となり今後もその動向から目を離せない。


紳士協定撤廃

本日の日経平均は前日の大幅続落で織り込み済みとあってか米株式の6日大幅続落にもかかわらず急反発となったが、そんな中でもメガバンクと共に年初からズルズルと値を崩し続け今日も年初来安値を更新しているのが証券大手の野村ホールディングスと大和証券グループ本社株か。

この両者といえば2018年3月期決算発表を受け、市場に透明性を印象付ける狙いもあってか両社間に存在した互いにネガティブな投資判断は避けるという「紳士協定」を捨て、お互いの業績予想や目標株価を引き下げたのが過日の日経紙・市場点描に出ていたのを思い出す。

確かに互いに投資判断を「買い」に固定するというのはもう長年にわたって見慣れた光景であったが、こんなモノももう時代ではなくセピア色に映るというところか。そういえばこの両者も大和が上鞘逆転した時は話題になったものだが鞘はそのまま恒常化へ。まるで近年の金とプラチナを見ているようでもある。


保身脱却

本日の日経平均は米株式の5日続落や、取引開始前のトランプ米大統による中国製品を対象にした制裁の追加関税検討指示との報道に為替相場が円高に振れ400円を超える大幅続落となったが、そんな悪地合いの中をカプコン、積水化学工業、平田機工やWOWOW等が逆行高となっていたのが目立っていた。

上記の全ての銘柄に共通するのは買収防衛策を廃止した企業という点だが、コーポレートガバナンス・コード制定を背景に新年度に入ってからもこの買収防衛策廃止が相次いでおり今年は5月末で389社と前年より21社減少し12年ぶりに400社を割り込む見通しと過日の日経紙にも載っていた。

機関投資家も否定的な声が多数で防衛策には反対票を投じるケースが多くなり、新たに導入する企業も中には散見されるものの導入企業の総会では取締役の選任議案への反対票が増える傾向もある。株主も統治改善が漢方の如く株価に効いてくるとの認識が多くなってきている事で持ち合い株と共に今後も注目が向かいそうだ。