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保身脱却

本日の日経平均は米株式の5日続落や、取引開始前のトランプ米大統による中国製品を対象にした制裁の追加関税検討指示との報道に為替相場が円高に振れ400円を超える大幅続落となったが、そんな悪地合いの中をカプコン、積水化学工業、平田機工やWOWOW等が逆行高となっていたのが目立っていた。

上記の全ての銘柄に共通するのは買収防衛策を廃止した企業という点だが、コーポレートガバナンス・コード制定を背景に新年度に入ってからもこの買収防衛策廃止が相次いでおり今年は5月末で389社と前年より21社減少し12年ぶりに400社を割り込む見通しと過日の日経紙にも載っていた。

機関投資家も否定的な声が多数で防衛策には反対票を投じるケースが多くなり、新たに導入する企業も中には散見されるものの導入企業の総会では取締役の選任議案への反対票が増える傾向もある。株主も統治改善が漢方の如く株価に効いてくるとの認識が多くなってきている事で持ち合い株と共に今後も注目が向かいそうだ。


飽食時代の取り組み

さて、先週末の日経紙夕刊一面を飾っていた記事に「食品廃棄ネットで削減」と題し食品・生活雑貨ロスを減らそうと、外食店やメーカーと勿体ない事を嫌う若者や食費を抑えたい働き盛り等の消費者をインターネットで繋ぐフードシェアなどの動きが広がり始めている旨が載っていた。

この食品ロスといえば近いところでいえばコンビニやスーパー向け大量発注の弊害で、ノルマや売れ残り余剰商品の大量廃棄等の問題も昨年あたりから取り沙汰されるようになった2月の恵方巻問題があり、今年はとうとう某スーパーが出した「もうやめにしよう」との意見チラシも話題になっていた経緯が思い出される。

この記事の下にあった解説欄では国内で食べられるのに捨てられる食品は1年で646万トンに達する環境省推計が出ていたが、1日に全国のコンビニで廃棄される食品が100万食などこの手の数字は最近のTV番組で目にする機会が多くなって来た。WFPによる世界の食糧援助量が約320万トンといわれているなか看過出来ない量である。

これらは商品欠品による売り上げ機会損失や、違う店に行こうと客が流れるチャンスロス等もその背景になっているが、冒頭のような取組が拡大普及して来れば食品ロス削減の一助になるだけに今後作り手と消費者需要をどう上手くマッチングさせてゆくかがキーとなろうか。


取引員循環物色

本日の日経平均は4日ぶりに急反落し安値引けとなったが、そんな悪地合いの中で一時ストップ高まで値を飛ばし年初来高値を更新した一つにフジトミがあった。この波及効果で同族の小林洋行をはじめ他に第一商品、岡藤HDなど上場している他取引員もザラバでは値を飛ばしていた。

取引員に関しては先月末にかけて上記の岡藤HDや豊商事がそれぞれの思惑で値を飛ばしたのが目を惹いたが、今日の急伸の背景としては今日の日経紙商品面で同社とサンワード貿易、日産証券などがAIを活用した自動売買システムを年内にも導入する検討に入ったとの報に反応したもの。

自動売買システムといえば一昔前にも一部独立系が取引員に自動売買システムを足繁く売り込んでいた時期も懐かしく思い出されるが、当時から比べるに隔世の感がある。先駆して証券系にはこのAI絡みが増殖していた折コモディティーにも波及してくるのは時間の問題であったが、これまた日進月歩の世界だけに各所の展開が今後も注目されるところ。


異例の自社株買い

本日も続伸となった日経平均だが、2部の池の中の鯨的存在の東芝が2億株の大商いを伴って上昇し年初来高値を更新している。これは周知の通り同社がベインキャピタル主導の企業連合への東芝メモリ売却などによる財務体質の改善を背景にし、7000億円程度の自社株買いを実施する方針と伝えられた事によるもの。

7000億円規模の自社株買いとなると、ここ近年では2016年度のトヨタ自動車の7000億円があったが、その前2015年度のトヨタ自動車の7809億円や同じく2015年度の日本郵政の7310億円に次ぐ格好となる。同社としては何れとの思惑が燻っていたが、早速海外ファンドなどからの株主還元要求に応えた格好となった。

自社株買いといえば低ROE企業などの中でもアクティビストらのターゲット回避で積極的に取り入れる向きもあり昨年は2年ぶりの高水準となったが、既に錚々たるそれらの面子がズラリと大株主として並ぶ同社の場合一部には売却促進政策との思惑も出ている。何れにしても昨年末の増資を上回る異例の自社株買いを打ち出してきただけに下旬の総会と併せ今後が注目される。


1歳

さて、本日誕生日を迎える向きは多数いらっしゃると思うが、上野動物園のジャイアントパンダのシャンシャンも本日で目出度く1歳の誕生日を迎えた。ちょうど一年前の当欄で出産を取り上げた際に「三度目の正直」とタイトルしたように、これまで糠喜びに終ってきた経緯があっただけにその歓喜も一入であった。

実に29年ぶりとなる子供パンダの公開ということで、昨年の上野動物園の入園者数は両親であるリーリ−とシンシンが中国から貸与された直後の11年度から6年ぶりに450万人を超え、今年は2月から先月までの整理券で先着順での公開は前年同月を9〜18万人上回るペースと依然その増加ペースは衰えない。

とはいえ貸与元の中国との協定でこのまま行けば2歳を迎える来年の今頃には中国にシャンシャンは返還ということになる。パンダは1歳半くらいで子離れ親離れするといわれタイミングとしてはいいだろうが、地元の精養軒の株価が21年ぶりの高値を示現したのを始めその経済効果は400億円との試算も出ているだけに関係者の思いは複雑なところだろう。客寄せパンダとはよく言ったものだが、今後の交渉協議の行方が気になるところではある。


盗難劇の裏にEV社会

さて先週末の日経紙マーケット面には、銅の国際価格が指標となるLME3ヵ月先物で月初から5%上昇し週末に1トン7,250ドル前後と約4年半ぶりの高値圏にある旨が載っていた。先月下旬に環境汚染の疑いで洗練所の操業が止まったのに続き、今月に入ってからは主要生産国鉱山の労使交渉が長期間するとの観測も浮上したとのこと。

ところで今週はプール開きする学校が多いと思うが、これを前に各地でシャワーヘッドや洗顔用蛇口なの盗難が相次いでいる旨の報道を最近多く目にする。直近では3月から5月にかけては北関東の小中学校でも同様にこれら230個の盗難事件が発生している。これらに共通しているのはこれら盗難に遭ったモノが銅合金製という点。

背景には上記の銅相場の高騰が言われており、5月のキロ当たり同価格は一昨年が552.2円、昨年が671.6円、そして今年は797.8円と年を追う毎に高騰著しくなっている。これは言わずもがなヨーロッパや中国を中心にガソリン車の販売禁止等環境規制の動きが広まり、今後も電気自動車の普及が一段と顕著になる事が予測されている事が背景にある。

電気自動車はモーターや配線などこれまでのガソリン車に比べ銅を多く使用する構造から上記の銅相場高騰の一因ともなっている。先週末の日経紙一面でもホンダとGMが次世代電池と関連部品を共同開発し両社の電気自動車に搭載する計画を発表しているが、EV社会の到来で銅需要は今後10年で9倍とも試算されており相場と併せ今後その動向には目が離せないか。


現代版生類憐みの令

昨日の日経紙夕刊では「世界のアパレル、動物愛護」と題して、ファーストリテイリング傘下のユニクロや、スペインのZARAにスウェーデンのへネス・アンド・マウリッツなど国内外のアパレル各社が相次いで2020年までにアンゴラヤギの毛であるモヘアの使用中止を表明する旨の記事があった。

その背景には企業のブランド戦略が環境や社会への影響を配慮したエシカル消費の関心が高まった事による影響が出始めた旨が云われているようだが、この辺は当欄でも昨年秋にグッチやアルマーニなど複数のハイブランド群が揃って毛皮の使用を廃止する動きで足並みを揃えてきた旨を書いた事があった。

こうしたファーフリーの動きの裏で今年4月に書いたように世界が欲しがる本邦匠の技を駆使したフィイクファーやレザーが注目されるようにもなったが、ファーに比べ普及品?のモヘアまでとなるとその範囲も広くなるだけに業界でも賛否両論が出てきそう。かつてシルクの代替といわれたテンセルが出現したように、今後特製をカバーした新素材が取って代わってくるのか否か。

しかしファッションに限らず食の世界でもフカヒレが残酷、フォワグラも残酷、ウナギもダメと生類憐みの動きが喧しく、倫理観は別としてここ近年でこの辺は極端になってきたなと感じざるを得ない。斯様な世論に迎合するESGを謳う波も何所まで進展して行くのか気になるところではある。


国産品質

さて、何時だったか皮ごと食べられる国産のバナナを某TV番組で見掛けたことがあったが、昨日の日経紙夕刊には「熱帯植物 国産化 広がる」と題し、熱帯地方から輸入する食品を国内で量産する試みが広がり始めた旨の記事でこの皮ごと食べられるバナナも取り上げられていた。

廉価で日常食のバナナも近年では新種の病害が広がりそのうちに現在のような供給体制が危ぶまれるとの報も一時出た事があったが、ゼスプリが圧倒的なシェアを占めるキウイなどと共にこれまで殆どを輸入に頼っていたフルーツの類も国内では粛々と量産の試みが為されていたか。

冒頭の記事ではバナナ以外で小笠原諸島のカカオ豆も同時に取り上げてあったが、これも当欄では今からちょうど2年前に「カカオ熱再び」と題して取り上げた事があった。あれからはや2年、来年には収穫した豆で自社ブランドの板チョコを商品化する計画というが、冒頭のバナナ等と共にコスト面で末端の食指が動くまでになるか否かこの辺も気になるところ。


新規参入と本邦勢

本日の日経紙金融経済面には「米仮想通貨大手日本へ」と題し、国最大級の仮想通貨交換会社であるコインベースが出資する三菱UFJフィナンシャルグループと連携し年内にも金融庁へ交換業の登録申請と日本に進出し市場を開拓する意向の旨が出ていた。

仮想通貨の交換事業に関しては昨日もSBIホールディングスが、年初のコインチェックによる仮想通貨巨額流出事件以降初めて交換事業の営業を開始している。ネット証券国内最大手の顧客基盤を背景に、仮想通貨の販売時に上乗せするスプレッドについて業界最低水準を目指す事で優位に立つとの思惑から昨日の同社株は急反発する場面があった。

一方でコインチェックを買収したマネックスグループや、リミックスポイント等の関連株は競合出現を嫌気し軒並み安となり本日も続落模様となっている。とはいえSBIも本日は往って来いの反落となっておりかつてのネット証券の手数料競争を彷彿させたか否か、今後も各社の舵取りと新規参入の動向には目が離せない展開か。


意識改革

週明けの日経平均は5月雇用統計を好感した先週末の米株高やそれに伴う円安進行から急反発となったが、そんな中で先週からあまり地合いに関係無く上昇ピッチが目立っている個別が2部の相模ゴムやジャスダックの不二ラテックス等のコンドーム大手で本日も共に大幅高し揃って年初来高値を更新している。

上げの背景としては先に発表された好業績もあるが、毎回配布されるオリンピックに向けての商機も取りざたされている模様。直近の平昌でも冬季大会最多の11万個が配布されたが、先のリオでは過去最多の45万個が配布されている。来る20年の東京大会では新種目に伴い選手数も増える事で配布数が過去最多を更新するのが規定路線となっている。

冒頭の相模ゴムなど日本最大級のクラブイベントで有名なageHaとコラボしたり、はたまたSRIも意識し屋久島文化財団への寄付など内に向けての意識改革もしっかり押さえているが、何れにしても予てより訪日客が大量に爆買いするのに見られるようにその品質は世界が注目しており日本の技術力の高さをPRする絶好の商機到来で各社が鎬を削る展開は想像に難くないか。


Wコードが齎す変化

さて、毎年この時期になると複数の企業から定時株主総会の総会招集通知が届くが、本日の日経紙投資情報面には「株主総会 お土産やめます」と題して、30日までに開示したこの総会招集通知で今年は昨日取り上げたKDDIをはじめ三菱商事、第一三共、東京ガス、コマツが総会におけるお土産取り止めの旨が出ていた。

株主総会のお土産といえば昨年も当欄でちょうどこの時期に触れた事があったが、これを取り止める企業が話題になり始めたのは三年くらい前からだろうか?お土産を止めた途端に出席者数が3割から企業によっては7割も減ったとの件で大手紙でも取り上げていたが、昨年の双日などお土産廃止で会場を訪れる株主数が9割も減ったとの件が話題になっていた。

冒頭の企業もこれで今年の総会へ出向く向きが減ってしまうのかどうかだが、お知らせでただ廃止しますとしている粛々とした向きから株主間の公平性等を挙げているものまであるがこの辺は世間の趨勢をふまえて等との文言併せ昨年の各社のご案内と同様に金太郎飴のような感じである。

当欄で、スチュワードシップ・コード導入からこの辺が今後どう意識されてくるか注目と書いたのが今から4年前だったが、果たしてというかお土産や優待目当ての株主が篩にかけられ、ESGの波もまたこうしたところへ及ぶに至りモノからコトへシフトする向きも年々増加しつつあり、二つのコード始動で総会絡めた企業姿勢が俄かに変化しつつある。


自社株買いの継続性

本日の日経平均はイタリアの政局混乱などから南欧諸国の信用リスクに対する懸念が再燃した事を嫌気した欧州株安や、その流れを受けた米株式の大幅続落を受け大幅続落となった。そんな中で主力の一部のなかでも地合いに左右されず底堅い動きをしていたのがNTTやKDDIであったが、これらに共通するのは自社株買い銘柄という点。

自社株買いといえば今年は初めてそれに踏み切る企業も多く目にするようになってきた感があるが、上記の通信二社は毎年取得の常連組でこうした悪地合いに左右されないのもその辺が評価されている面もあるか。この継続性では野村証券によると10年以降に初めて自社株買い発表をした296社のうち、2度目の実施率が4割、3度目では約2割まで下がっている旨が過日の日経紙で見掛けた。

事実これまで取得枠設定の発表をしても実際は申し訳程度しか買わずに終了というケースも多く酷いモノでは買わないまま終了するケースもあった。今年は2月からの株安等も相俟って2割程度実施額が増加するとの見方もあるが、配当と共にROEの向上など株主還元強化手段としてその継続性も今後注目される事になろうか。