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価値の根幹

さて、今週の日経夕刊・なるほど投資講座は「金投資のイロハ」シリーズとなっている。第一回目の今日は価値の根幹は希少性と題し、発行体を持たない事でソブリンリスクが意識される局面においては度々物色の対象になってきたキャラが謳ってある。

足元では前週末発表の米雇用統計において賃金上昇率が鈍化しFRBによる早期追加利上げ観測が後退、金利の付かない金は今週に入ってからも続伸し先物相場は3ヶ月ぶりの高値を付けているが、もともと米利上げ観測があった中においても米新政権の経済政策の不確実性等を背景にジリジリと上値を切り上げてきた。

昨年のテールリスクに続き上記の米新政権以外にも中東の地政学リスク、仏大統領選に向けた右派有力候補者のマリーヌ・ル・ペン氏などポピュリズムの台頭等々とリスクの種は続き、発行体を持たない無国籍通貨としては今年も注目される場面が度々出てきそうだ。


撒きと巻き

先週末は皆さんご存知の「節分」であった。節分といえば昔から豆まきが定番だが、近年は恵方巻なるものが少しずつ人気になりつつあるとか。豆の方は消費者庁サイドから誤嚥事故防止の注意喚起が為されるようになってきた昨今、これら含めて商機と見てかコンビニのマーケティングも奏功といった模様だ。

とは言え豆まきが廃れたワケではないものの、上記の誤嚥防止や果ては虐め助長意見まで出る始末で最近は撒くモノもゴムボールやマシュマロ、挙げ句にはエアーでやるところも出てきているという。しかし節分以外でも近年は子供虐待との苦情から秋田のなまはげが怖くなくなってきたとか、果ては除夜の鐘が煩いとかの論争が話題になってきたが伝統行事もやり辛い世の中になったものだ。

そんな裏で京都ではこの節分にコスプレで発祥の地を参拝するイベントが行われ、また東京でも約4トンもの豆を撒き使われた豆は肥料として再利用するなどエコもしっかり押さえている大イベント「すごい豆まき」が今年も行われるなど、こんな世相をバネにハロウィーンよろしくコトマーケティングの方は年々進化しつつある。


ポスト印象派

さて、先月中旬には「あの絵を思い出した週」と題して、日経紙文化面で取り上げていたジョージア・オキーフの絵について書いたが、ちょうど一週間前も同紙にて洋画家の奥西賀男氏がルソーの「蛇遣いの女」を取り上げていた。これまたオキーフと共に私の好きな絵の一つであり触れずにいられない。

氏は文中で「大きなこの絵を初めて見た時の衝撃は忘れられない。」と書いているが、私も今から7年前の国立新美術館で開催されていた「オルセー美術館展2010」にて念願であったこの絵の実物を初めて見た時は衝撃であった。

その時の感動を当時私は当欄で、「〜念願のアンリ・ルソーがある第九章の部屋へ。〜「蛇使いの女」はやはり圧巻、遠近法を無視したアウトサイダーの洋モノにあって何処かバリ島のプンゴセカンスタイルのテイストも持ち合わせており昔から好きであったが、本物を前にして幻想に溺れそうになる感覚はやはり魔術的な力を覚えた。」と書いている。

それだけに目を瞑ればいまだ鮮明に感動が蘇るものだが、しかし今思い出してもこのルソーはじめとしてモネ、ゴッホ、セザンヌ、ゴーギャン等々が一堂に会したこの手の展は二度と出来ないだろうとも思う。


Bean to Bar

本日の日経紙夕刊トレンド&プライスには「チョコ、店で豆から作る」と題して、カカオ豆からチョコレートの製造までを自社で一貫して手掛ける「Bean to Bar」のチョコが注目を集めている旨が出ていた。

当欄では昨年のバレンタインの時期に、「最近はビーン・トゥー・バーが流行り出しワインの如く詳細な産地や農家等を謳っている品が急増〜」と書いているが、同紙にもBase社長のワインと同様に味の違いを楽しむリピーターが多い云々の言葉が書かれており、思えばココが出した渋谷「ミニマル」あたりの流行りに他も触発されたといったところだろうか。

というワケで今や「こだわり高級バーガー店」よろしくこの手の店が首都圏中心に増殖しつつあるが、確かにワインの蘊蓄を語れない下戸でもチョコには目が無くこの辺を極めたい向きも多いだろうし、上場大手も明治が投入したビーン・トゥー・バーの板チョコが1,000万個販売突破!との全面広告が先月の大手紙を飾るなど波が波及しているあたりまだまだ熱は冷めそうにない。


インベストメント・チェーン

昨日の日経紙夕刊一面には「ベテラン投信人気」と題して、昨年は運用歴が5年以上ある投信の買い付け額(設定額)が全体の6割とデータがある08年以降で最高だったと運用実績を積み上げたベテラン投資信託の人気が高まっている旨が載っていた。

NISAやDCなど長期投資が優遇される税制が整ってきた背景もあるものの、一頃の短期ハイパフォーマンスを売りに発売直後から販売停止になるような現象から、昨年の政治イベントを鑑み不確実性への警戒感から信頼できる過去の運用実績重視といった原点回帰といったところだろうか。

とはいえこの18年でダウは2倍、S&P500種は20年で約3倍に上昇した一方でTOPIXはほぼ同水準に甘んじている。まさに失われた20年といったところで、近年は漸く転がしノルマ商品的な販売が鳴りを潜め手数料の見直しも正常化しつつあるが、今後もガバナンスにおいても国際標準に近づき運用会社もその辺が強く問われるようになるかどうか焦点となってくる。


トランプラリーの行方

さて有言実行とはこの事なのかトランプ大統領は次々に大統領令のカードを切り、週末に署名した難民やテロ懸念国の市民の入国を制限する大統領令により本邦も日本航空やANAが一部例外を除き搭乗拒否措置を取り始め、その混乱は米国だけでなく世界中に物議を醸し出している。

ニューヨーク連邦地裁などさすがに翌日大統領令の効力の一部を停止する判断を示したが、当の本人は国の安全を盾に世論など何所吹く風といった感じで、それもそのはず先週には米国株式市場でダウ工業株30種平均が史上初めて20,000ドル大台に乗せて引け本人はツィッターで「グレート!」とツイートしご満悦の様子だ。

ちなみにこの日はS&P500種やナスダックも史上最高値を更新していたが、遡ることダウが初めて10,000ドルの大台を突破したのは1999年のことであるから18年でちょうど2倍となった事になる。何れにしてもトランプ・ラリー再開となれば日経平均も何時大台をクリヤ云々と期待も掛かり、官房長官などダウ2万ドル突破は日本にとって望ましいことと発言しているが、2月10日の日米首脳会談を挟み何れにもボラタイルな展開となろうか。


パリ万博150周年

さて、今週は岡田美術館が秘蔵するエミール・ガレやドーム兄弟のコレクションが公開される「ガレとドームの世界展」を観てきた。ちょうど一週間前にオキーフの絵を取り上げた時にエミール・ガレの名も挙げている通りで、ガレ好きな私としてはこれを近所の日本橋で見る事が出来る機会を見逃すわけにはいかない。

今年は日本文物がヨーロッパに正式デビューした1867年のパリ万国博覧会から150周年の節目を迎える年という事で、ジャポニズムに焦点を当ててアール・ヌーヴォーの工芸品と併せ他にも日本美術の清華を展示するに至ったという。そんなワケで葛飾北斎の「雪中鴉図」や伊藤若冲の「笠に鶏図」等も展示されていたのは嬉しい誤算であった。

肝心のガレの方はエントランスを入っていきなり正面に大作の「藤文ランプ」が鎮座しており久し振りに見るその姿はやはり圧巻。1800年代のエナメルや金彩を駆使したガラス器群の飴色もただただ美しく、透過光と順光で表情の変わる様が感じられる選りすぐりの作品も改めてその技術に感動した。

他にドーム兄弟の冬景色文や風雨樹林文シリーズなど色褪せない相変わらずの美しさであったが、上記のパリ万博では数多くの日本の文物が金賞を受賞し葛飾北斎の作品が後のティファニーなどへ多大な影響を及ぼしたのは有名な話。こうして日欧併せて並べ観るにそういった事を思い出させてもくれる工夫のある展であった。


直近IPO熱

さて昨日の日経紙マーケット面では「IPO銘柄に個人資金」と題して、過去1年間に上場した企業の値動きを示す「QUICK IPOインデックス」が、前日に前週末比4,058ポイント高の17万1921と2007年7月以来約9年半ぶりの高水準を付けた旨が載っていた。

主力株の上昇に一服感が強まり先月に上場した中古車ネット買い取りのリネットジャパングループのストップ高をはじめ製造業マニュアル制作のグレイスもストップ高し本日も二銘柄が揃って年初来高値を更新するなど今週は値動きの軽い直近IPO銘柄に個人などの資金が集まったという。

これらいずれもマザーズ市場だが、春先には博多ラーメンの「一風堂」もこのマザーズに上場の予定となっている。新興ポストは東京証券取引所による上場審査の厳格化があり今年のIPO数は80〜90社とみる市場関係者が多いが、この一風堂はじめ今後のIPOがどう直地してゆくのか引き続き注目しておきたい。


売り専

本日の日経平均は続落となったが、個別ではエアバックのリコール問題で揺れ昨日まで3日連続の比例配分ストップ安となっていたタカタ株が4日目にして寄ったあと乱高下を演じた。再生期待から年末年始の一週間で株価倍増となったものの、はや往って来いというかそれを凌ぐ暴落であった。

買っている向きには災難な一方でショートしている向きはニンマリな展開だっただろうが、売り専といえば昨年から増加している空売り専門調査会社の一つウェル・インベストメンツ・リサーチが先週にはミドリムシで有名なユーグレナに対して売り推奨、その適正株価を500〜580円とした事で同日には年初来安値を更新の憂き目に遭っていた。

同社は過去に丸紅やSMCを標的に挙げ強い売り推奨をリポートで展開していたが、一寸目を通してみるとこれが或る意味なかなか面白い。例えばSMCでは同社の監査法人の代表電話番号がSMCの証券コードとピタリ一致しているのは偶然では無く、顧客に対する忠誠を表しており独立性を疑問視するなど何所までが本気なのか独自の理論を打ち出している点である。

年末にかけての円安株高で他の売り専銘柄も担がれ色が濃いモノもあるが、日証金も早速ユーグレナに対して即日制度信用取引の新規売りおよび買いの現引きに伴う貸借取引の申し込み停止措置を発表、当局の今後の対応も気になるが他も逆日歩など跳ねるケースもありで一番乗りに仕込み出来る向きは兎も角ショートの途中乗車はなかなか壁が高い。


ツイッター大統領就任

周知の通り先週末に米国の第45代大統領に共和党のドナルド・トランプ氏が就任した。泡沫候補扱いの同氏が大統領になってしまったのも既報の通り大番狂わせであったが、政府系職務経験無しや史上最高齢、支持率の低さ等々そのキャリア、私生活等全てが異端づくしのスタートとなる。

こんなトランプ氏勝利で先行きが不透明と感じていた消費者にとってサプライズだったのは株高で、高額品の売れ行きに活気が戻り始めるなど消費マインドに微妙な変化も生まれている旨が先週末の日経MJに載っていた。年末に高島屋ウォッチメゾンの難波店オープンを当欄で取り上げたが、日本橋店でも12月は売上高が前年同期比プラスへと転換し今月も前年比を上回るペースだという。

斯様に株高で富裕層消費は底堅いものの、一方で中間層の回復は厳しく消費の二極化の構図はなかなか変わり辛いようだ。マーケットも何所までトランプ効果が続くかというところだが、外交の孤立主義や通商では保護主義の色が濃い。上記の末端部分はもとより内向きに傾斜する政策がこれからどう舵取りされてゆくのだろうかと世界が懸念する中での船出となる。


あの絵を思い出した週

さて、今週は週明けの日経紙文化面・絵の中のわたしにて詩人の小池昌代氏がジョージア・オキーフの絵を取り上げていたのが目に留まった。ジョージア・オキーフは私の好きな画家のひとりで、やはりエミール・ガレや若冲然りで個人的に好きな作品が取り上げられていると嫌でも目に付く。

当欄ではこのジョージア・オキーフを11年前の2006年に一度、翌2007年にも一度取り上げているが、オキーフの特徴として作品で挙げればベラドンナ、紫のペチュニア、赤いカンナ、青の朝顔などなど画面いっぱいに拡大して花などを描くスタイルで、私は初めて彼女を知る事になった「ピンクの背景の2本のカラー」の出逢いが脳裏に焼き付いて離れない。

薔薇画で有名なルドゥーテのような精密技法を持ちつつ「白薔薇」にみられるような抽象感を描く神秘性や、なんといっても私がツボなのは上記の「ピンクの背景の2本のカラー」のようにガレ同様に植物であってそれが動物のようにも感じられる温度感というか溶けるような艶かしさが刺さる点である。

私が日本でジョージア・オキーフの作品を観たのはかれこれ今から20年以上前の93年の秋に横浜美術館で開催された企画展「アメリカン&モダン展」であったが、いつしかサンタフェにあるオキーフ美術館にも足を運んでみたいものである。


今年のダボス会議

昨日からスイス・ダボスにて世界経済フォーラム年次会合、所謂ダボス会議が行われ昨年のポプュリズム台頭の背景から今年のメインテーマはリーダーシップとは何かとなっているが、今年は中国の習近平国家主席が中国トップとしてはじめてダボス会議に参加している。

注目された同氏だが、明確に保護主義を反対する姿勢を表明しトランプ次期大統領の保護主義的な政策を念頭に「貿易戦争では共倒れになる」と警告、自由貿易の重要性を主張した旨が本日の日経紙国際面にも載っていた。

この辺に絡んでは年明けに政治リスクの調査会社ユーラシアグループが今年の世界の十大リスクを発表しているが、挙げた二番目には「中国の激しい対応」とある。中国は秋の党大会を経て同氏は二期目に入るが執行部人事では最高指導部が大幅に入れ替わる予定となっているが、はたして今年のリスクの震源地になるのか否か今後も目が離せない。