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官製相場の死角

各紙で報じられているが、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が公表した2015年10〜12月期の運用成績で運用益は4兆7,302億円であった。この直前の中国ショックから中央銀行の追加金融緩和を受けて減速懸念の一時後退で株価が回復していた事に因るところが大きい。

とはいうものの周知の通り年明けから先進国中での暴落を牽引しあっという間にアベノミクス始動直後の水準まで往って来いとなってしまっており、加えて円の急騰もあり15年度通期では5年ぶりの運用損失は避けられない公算が大きい。ましてや今流行りのブル型ETFよろしく一昨年には株式比率を2倍化しておりその影響度もこれからはかられるところ。

GPIF審議役は「短期でみれば収益のブレは大きくなるが、年金財政上、必要な額を下回るリスクは小さい」と強調し改めて運用は長期的観点から評価すべきだとしているが、この「リスク」の定義もいろいろ工夫された言葉へ変換されているケースもあり、将来的な年金給付金減額もあり得るとの首相の仄めかしもいろいろ読み解く必要があるそうだ。


依存度

本日の日経紙商品面には「東京原油市場 拡大続く」と題して、先月の東京商品取引所のドバイ原油先物の月間売買高が68万5,000枚と前年比で3倍に増え、中旬には市場規模を示す建玉で国内商品先物市場では金を抜いて一時最大になるなど拡大傾向にある旨が載っていた。

この原油、ちょうど一カ月前の当欄でも「負の間接効果」と題して取り上げていたが、やはりETNの発行が起爆剤になったといっても過言ではないだろうか。主力モノなど約3年前の上場当時は売買代金も数十位億円が継続するなどここまでの拡大を予想してはいなかったが、参加者の構成如何でマーケットも変わるものだ。

その参加者といえば、東京商品取引所が先月纏めた売買動向では1月の外国人売買高が124万枚と前月から2割増え、全体に占める割合は前月比2.5ポイント高の50.8%と初めて5割の大台を突破している。冒頭のドバイ原油売買のうち実に約67%は海外勢の売買となっており、そうした一辺倒傾向も今後課題として俎上に載ってこようか。


モノ扱いから手段へ

さて、先週23日の当欄では仮想通貨について触れ、「〜仮想モノは既存の通貨や有価証券といった金商法が及ぶ範囲の外側に位置しているという部分が大きいだろうか〜ビットコインも金融商品としての性格をより強めそうでこちらも当局の出方を睨みながらの展開になろうか。」と末尾に書いたが、その翌日24日の日経紙一面には「仮想通貨を貨幣認定、金融庁、法改正へ」と題してタイミングよく記事になっていた。

今通常国会に資金決済法の改正案を提出し成立を目指すとしているが、貨幣機能を持つと認定する事で決済手段や法定通貨との交換に使えると正式に位置づけ、取引所は登録制とし、顧客資産と自己資産を分ける分別管理等の導入等も含めて金融庁が監督官庁になり目を光らせるとしている。

そんな報道もあってこの日から株式市場では関連銘柄が急騰、ビットコイン関連を展開しているところに投資しているポイントサイト運営のセレスがストップ高、同じくポイントサイト運営のGMOメディアは2日連続のストップ高、更に圧巻は昨年7月にビットコイン取引所を世界的に運営する米社と業務提携したマネーパートナーズグループに至っては先週末まで3日連続ストップ高の余勢をかって本日も年初来高値を更新してきている。

マウントゴックスの汚点があるとはいえ日本のコイン利用者は数万人に上り、世界でも利用者はこの1年間でほぼ倍増するなど急速な拡大を遂げており、まさに利用者保護は焦眉の急といった機運が背景にある。また昨今のフィンテックとも絡めこれからの普及速度にも注目である。


いずれも正しい

さて、文化審議会漢字小委員会においては近年のパソコンの普及等で多用な印刷文字が使われる中、手書きの正誤の判断が分かれるようになったことから様々な字形が認められている事を解説した指針案を大筋で了承することになり、来週開催の親部会の国語分科会で報告する運びになった旨が先に報じられている。

この辺は一昨年あたりから指針が議論されていた事ではあったが、いずれも正しいと表記された漢字の中には親世代が習った当時なら、テストでは間違いなく先生からバツを付けられてしまうであろうモノが多く目に付く。

これに限らずローマ字もパスポート等では標準のヘボン式に双璧の訓令式も存在しこの辺は一部で長年議論が展開されてきた経緯があるが、このローマ字も今の小学生の教育現場では一律教育用文字で進めているので宿題等チェックした親の中には子供とぶつかり一寸戸惑う向きも多いのではないか。

何れにせよ長年使用しその経緯も解る大人なら兎も角も、初めて頭に擦り込む小学生などは教科書に準じていない書き方に対する混乱の懸念や、書道等どう対応するのかなど興味深い部分が多々あるが、めっきり手書きとご無沙汰になった今改めてこうした事例が出てくるとやはり想うところが色々とあるものである。


マイナス金利の功罪

本日の日経平均は円高から3日ぶりに再度16,000円大台を割って続落となったが、日銀のマイナス金利政策に伴い相対的にREIT関連は比較的堅調で、とりわけオフィスREITは賛否両論あるもののまだ魅力的との見方が多い。さてマイナス金利と言えば一般でも家計への影響が一段と広がっている旨が各所で報道されている。

預貯金などの金利引き下げも続きそうだが、昨年上場を果たしたゆうちょ銀行も貯金金利をもう一段引き下げる検討に入る。このゆうちょ銀行だが郵政グループ3社の中でも稼ぎ頭だったワケだが、10年物国債の利回りが一時マイナスになるなど利回り低下で収益悪化が懸念されている。

そんなワケで株価も今月は上場来安値まで沈む憂き目に遭っているが、こうなると前にも書いたように政府が計画する追加売却計画も暗雲立ち込める。しかし賛否両論あるこのマイナス金利政策、GPIFも一頃の勢いに対し持続性が疑問視されているなか、はたして期待するような政策効果が実現するのや否や注意深く今後を見守るしかない。


抜け穴

本日の日経紙アジアBizには中国景気の減速を背景にMGMが年内予定していたカジノ開業を延期する旨が出ていたが、さて賭博といえば仮想通貨界でも既存のデリバティブを模倣したハイリスク・ハイリターンのサービスが増え、賭博性との関連が議論されている旨も先週末の同紙に出ていた。

これまでも相対取引業者で裁判所が賭博と認めた金融派生商品は多数あったが、これら現行流通しているモノと異質性が著しかったものの最近は上記のようなモノも登場、こうしたビジネスが広がるのは、マウントゴックスが破綻した際にも議論された事だがやはり仮想モノは既存の通貨や有価証券といった金商法が及ぶ範囲の外側に位置しているという部分が大きいだろうか。

いずれにせよ法的裏付けが不十分なままその枝葉の広がりは加速度的になるのが世の常だが、ビットコインもこうなってくると金融商品としての性格をより強めそうでこちらも当局の出方を睨みながらという展開になろうか。


共存への課題

昨日の日経紙サイエンスの頁には「AI、弱点は常識知らず」と題して、昨今持て囃されている人工知能など機械の脳は人間が経験を通じて獲得した膨大な「常識」を持たず、そのことが文意の理解や状況の把握のハンデとなる事などが今後の人工知能の活用を考える上で重要な課題となる旨が書いてあった。

AIといえば当欄では昨年末に「フィンテック日進月歩」として一度取り上げた事があり、既にこうした分野では其れなりに多くの「実績」を上げているモノもあるが、最近ではイラストや小説はては作曲等というクリエーティブな分野まで活躍のジャンルが広がっている旨の紙面も目にする。

他に自動運転等もクルーズコントロールが出た当初から見ると想像を超える進歩を遂げるなど斯様なAI等の技術革新によって将来的に職が侵食される等の懸念も出ているが、いずれにしても上記含め軍用等まで広範囲に進化が及んで、長年映画で描写されてきたような最大の課題でもあるこの「常識」の壁と向き合う段階に差し掛かってきたといったところか。


今年のバレンタイン

さて、先週の小売業界は春節商戦と並んで恒例のバレンタインで何所も彼処も熱が入っていた。近年では市場規模があのハロウィーンに抜かれたとか云われているものの、今年もこの期の風物詩にもなってきたサロン・デュ・ショコラなど前哨戦が盛況のうちに幕を閉じるなどまだまだ負けてはいない感じもある。

今年は当日が日曜日という事もあってこの期にあまり期待できない向きはホッと一安心といったところだっただろうが、上記のサロン・デュ・ショコラなど祭典の定例開催も寄与して近年では互いへの想い交換と漸く一方通行のイベントから脱却し国際標準へと近づきつつある感もある。

最近は「ビーン・トゥ・バー」が流行り出しワインの如く詳細な産地や農家などを謳っている品が急増してきたが、そのカカオも年々品薄に拍車がかかっている模様。5〜6年くらい前だったかヘッジファンドのスクイズやら生産国事情で先物が約30年ぶりの高値水準まで暴騰した時期があったのを思い出すが、甘い祭典の裏で今後末端消費への影響も注目される。


サイダー

本日の日経平均は円相場の上昇を受けて3日ぶりに急反落となったが、そんな中でも昨日のストップ高の余勢をかってソフトバンクは大幅続伸。これは周知の通り週明けの5,000億円規模の自社株買い発表がポジティブサプライズとなったものだが、昨日は同社株の寄与度が82.38円だったのでこれがなければ日経平均の引けはマイナス圏に沈んでいたということになる。

それは兎も角も、斯様に自社株買いもその規模によっては株価へ応分の寄与があるワケだが、一昨年にこの自社株買いを発表した業務スーパーをフランチャイズ展開する神戸物産はこの過程でインサイダー取引が行われていた疑いで、証券取引等監視委員会が強制調査している旨の報道を嫌気し先週は連続ストップ安の憂き目に遭っていた。

このインサイダー取引で得た利益の総額は50億円と報じられているが、仮にこれが立件されればインサイダー事件では過去最高額だろうか。丁度ひと月前に当欄では「無くならない不公正」と題して各種インサイダーに触れたが、規模も大きければ初動の段階で覚えのある向きならその怪しい動きは嫌でも目に付く。まだまだ月日を経て不正バレました的な件が明るみに出る例も出て来ようか。


リスクの担い手

昨日の余勢をかって本日の日経平均も続伸となった。とはいえ昨日も殆どがカバー中心との見方が多く、そもそも個人でマル信など張っていた向きなどは先週末迄に投げさせられ傍観というパターンがその売買代金からもうかがえるというところ。

ともあれ昨今主役になった短期筋に加えてこの値位置も真空地帯という事もあって1,000円近くの乱高下もそう珍しくなくなったが、そんな間にも先週末の日経紙でも取り上げられていたように機械的にノックインとなったリンク債が続出しており、暴落相場ではお約束のように登場する。

その構造上オプションとの抱き合わせになっており投機筋もデルタヘッジの先物売り等を企んでノックインまで執拗なショート攻勢をかけてくるパターンも多く、ヘッジ用無しとなった先物処分売りが急落に加担している部分もある。斯様にこの辺の鬩ぎ合いがまたボラを増幅させる要因の一つとなるなど、近年の魑魅魍魎な商品開発の弊害がこうした局面では晒される事になる。


アベノリスク

先週末の日経紙・春秋には昨今流行り?の「げす」な不祥事について書いてあったが、まさに直近では不倫が晒されてしまったイクメン宮崎議員の辞任騒動が酣だ。ここ数年でも先生方の不倫スクープは何件も晒されてきておりなかなかお盛んなようだが、一般の殿方も宮崎議員の不倫を他人事で見られない向きも多かったのではないか?

しかしこれに限らず最近は政権面子の失態が次々と炙り出されている。飛ぶ鳥を落とす勢いで文春は次々とカードを切って来ているが、上記に限らず思い起こせば甘利経済再生担当大臣の不明朗な現金授受に端を発し、島尻大臣は普通の生徒でも読める漢字が読めず、丸川環境相の失言等々お粗末極まりない。

こんなゴタゴタの間に本日こそヤレヤレの急反発を見せたものの、日経平均は数千円も暴落しアベノミクス始動直後の水準まで往って来いとなってしまっている。こんな情けないネタで世間が沸いているうちにヒッソリとGPIFの株式自主運用を認めない方針が決まり、首相はGPIF運用損失拡大なら将来的に年金給付金減額もあり得ると仄めかしている。アベノリスクもどの程度顕在化するのか今後は注意が必要か。


短期一辺倒

昨日の日経平均は前場安値から後場の高値まで軽く500円を超える急騰となったものの、本日は一転して1,000円近くの暴落を演じるなど先の16,000円大台割れ寸前までいった21日の暴落前後含めて一日のボラが500円を超える日が多くなってきた。

こんな背景からか先週末の日経紙・金融アイテムレビューにも「乱高下相場でリスク回避」として、投資家心理の振れ幅を示すVIを活用したETNやETFがリスクヘッジの一つの手段として個人投資家の関心を集めている旨が載っていたが、斯様に歴史的な相場の連高下を背景に日経VIの先月の出来高は過去二番目の水準に達したとも書いてあった

同様に乱高下に備える保険的な意味合いから最近ではオプション市場でもアウトオブザマネーの物色が依然として目立っているが、なるほどこちらも化け方が凄い。例えば2月限の145プットなどは1円から高値22円に、もう一寸上の150プットは3円から同55円に化けるなど軒並み半日で大化けを演じている。

昨日は日本郵政G等が配当利回りから長期投資が根付く切っ掛けになる期待感云々と書いたが、メインプレーヤーが短期一辺倒になり尻尾がイヌを振るような商状から抜け出せない限りまだまだボラは異常なままで、長期投資は更に避けられVIに一服まではまだしばらくこの手のオプションや関連ETN・ETF物色も下火にはならないか。