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東証マザーズ先物

本日の日経紙投資情報面には「東証マザーズ先物上場」と題して、日本取引所グループ傘下の大阪取引所が来年央に導入する次期売買システムの稼働に合わせて新興企業で構成する株価指数「東証マザーズ指数」の先物取引を2016年半ばに始める旨が載っていた。

この報を受け本日の株式市場では、昨日当欄で種類株導入で取り上げたサイバーダインやペプチドリームが大幅に買われ、そして時価総額トップのミクシィ株はがザラバで430円高の6,670円まで買われ一気に年初来高値を更新するなどやはり個別の御三家の反応は早い。

日本取引所グループといえば、新年度に次期CEOが課題として挙げていたものにデリバティブ分野の強化というのが記憶に新しい。他にもこの新システム導入を機にROEに重点を置いた新指数「JPX400」のオプション取引も始める意向も示しており、国内外のマネーを呼びこむ起爆剤となるのか期待したいところだ。


AA型種類株式

先週末は当欄でも触れたようにトヨタ自動車初の女性役員が逮捕された報が巷を駆け巡ったが、同社の株主総会が終了して本日でちょうど一週間。今回この株主総会で承認された物の中で注目されたのが、「AA型種類株式」という所謂元本保証な上に最高で年2.5%の配当利回りが狙える新型株の発行の話だ。

なんとも手堅く好条件な匂いが漂うが、それと引き換えに購入価格は普通株より2割以上高く5年間は換金出来ないという条項が付くもの。この手の種類株は2006年の会社法施行で国内発行が可能となり、記憶に新しいところでは昨年上場したマザーズのサイバーダインの実績もある。

ともあれ同社としては長期的視点で見てくれる株主を増やし開発等経営に取り組むのが狙いだが、一方でその性格上ホルダー分けが為され株主平等の原則に反するとの意見も一部にある。また当欄で先週月曜に「次の焦点」と題して書いた買収防衛に絡んでこの制度を気にする向きもあるがこの承認で日本企業のファイナンスに一石を投じたのは確かなようだ。


想定内のクラッシュ

かねがね言われ続けてきたことだが、連休を前にした先週末の上海総合指数は4,478.364と続急落となった。これで週間の下落率は約13%と2008年以来約7年ぶりの大きさとなったワケだが、これまで誰もが口を揃えて上昇ピッチの速さを指摘してきただけに果たしてといった感が強い。

なにせ年初来の上昇率は約60%、証券取引所が1990年に取引を開始してから強気相場が928日目とこれまでの強気相場の平均期間の5倍強に達していた事で、バリュエーションも持続不能な水準に押し上げられていたというところか。

そんな訳でこれで完全に崩壊へ向かうのかどうかというところだが、政府が株高維持を重要政策とし市場を巧みにコントロールしてその行動を手中に収めているとされる国だけに、これ以上過度の株安を容認するのかどうかにも今後の関心が向かうところだ。


人材登用リスク

ここに来てにわかに入ってきたニュースにトヨタ自動車の常務役員が米国から麻薬を密輸したとして、警視庁から麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたとの報があった。疼痛を和らげる医療用麻薬の一種である錠剤を国際郵便で輸入したという。

同薬は良く知られるモルヒネに比べて約1.8倍の効力があるというシロモノであのマイケル・ジャクソン氏も常用していたとされるモノであったというが、どう見ても正規の手続きを経ていない真っ黒な輸入方法が問題だったようだ。

しかし、同役員といえばちょうど2か月前の今年の4月に初の女性役員として鳴り物入りで同社役員に就任したばかり。グローバル人材活用が共通の課題となり人材多様化をちょうど推進している矢先の海外人材登用のリスクが改めて表面化したような一件であったが、今後の対応が課題になりそうだ。


需給は全てに優先する

本日の日経紙マーケット面には「プラチナ、長引く逆転相場」と題して貴金属市場の中でも金と、本来であれば割高になるプラチナが値下がりの激しさによってその値動きに差が出ている旨が載っていた。

この逆転劇といえば東日本大震災での自動車生産台数激減を囃して以降もう恒常的に取り沙汰されるようになったが、近年では外貨準備や代替通貨として買われる通貨の二面性を持った金と、あくまで素材としてのプラチナの差といったところが顕著になってきているというところだろうか。

また、同紙の冒頭にはプラチナの生産量が年間200トンで金の15分の1以下であるから、その希少性で通常はプラチナの方が価格が高いといった一文があったが、そもそも需要が供給を満たさなければこの通説自体があまり意味をなさない物になってしまうのは当たり前である。相場格言で「需給は全てに優先する」とはよく言ったものである。


総会お土産

さて、昨日は株主総会を前にした企業の買収防衛策廃止の姿勢について触れたが、この株主総会といえば週末に総会を開くソフトバンクが恒例だった「お父さん」をあしらった食品等のお土産をとりやめるなど、出席する株主にお土産を渡すことを止める企業が相次いでいる旨の記事を昨日の日経夕刊で目にした。

このまま機関投資家やアナリスト向け説明会のヤツまでは廃止にならないだろうが、当欄でちょうど今から一年前にこの株主総会のお土産について書いた際に、この総会土産を廃止にした企業の総会出席者数が3割〜7割も減ったという件であったのを思い出した。

各社廃止の理由として欠席した株主への還元が不公平になるほか、出席株主の増加で経費や会場運営の負担が重くなることを挙げているが、ヘタをすればそれこそ優待よりお土産が豪華なパターンも存在し、「お土産」の中には非売品も多く特にレアものは根強いコレクターも存在するだけに各社その分の拡充策も思案のしどころとなろうか。


次の焦点

時節がらか配当関係と共に定時株主総会招集の通知が多く届いているが、そんな株主総会を前に買収防衛策を廃止する企業が相次いでいる旨が週末の日経紙に載っていた。ただ今年度は昨年度より7社多い19社が廃止を決めたというものの、先月末でなお479社が買収防衛策を継続しているという。

買収防衛策といえばやはり切っても切れないのが敵対的買収を行うファンド勢。これに呼応するかのように同策導入のピークは2008年の570社であったと同紙では報じているが、それでも当欄でも取り上げたPGMによるアコーディアへの敵対的買収、そしてもっと最近ではプロスペクトによる豊商事へのそれなど依然ポツポツと事例は続いている。

馴れ合いTOBとも取れる事例も無いとは言えないモノも中にはあるがそれは兎も角として、ピーク時から減った企業群の中には統合や再編で株主構成の変化からそもそも同防衛策の必要性が無くなったものも少なくはなく、冒頭の通り今なお同業他社等からの敵対的買収に対する警戒感がなお根強いのも事実。

何度も触れているように今月からはコーポレートガバナンス・コードが適用開始。それに伴い同策に関しての投資家への詳細説明が必要になることで、統合再編とは別の部分で廃止促進が為されるのか否か、持ち合い含めこれまで特異とされた体質がこれを機に変化してゆくのかどうか今後に注目である。


養蚕革命

さて今週はたまたま見かけたWBSの中で、ちょうどGWを挟んで新宿のグッチで行われていた現代美術科のスプツニ子!による「Tranceflora・エイミの光るシルク」なる特設展が取り上げられており、そこで展示されていたドレスに使われていた光る絹糸にフォーカスがあてられていた。

これを見た時に昨年に同じ糸で作られた十二単の存在を思い出したが、同展で使用された絹糸も農業生物資源研究所が2008年に開発したオワンクラゲやサンゴの遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え蚕の繭から作られたモノで、紫外線を当てると光る特性があるユニークな物。他にもクモの遺伝子を組み込み通常の1.5倍の切りにくさを備えたクモ糸シルクなる物もある。

ところでシルクといえばかつて養蚕業は世界を席巻し、先物市場にも前橋乾繭や横浜生糸が上場していたものだが今や新興国に押されて風前の灯火となり先物市場からもその姿を消している。それがここへきて上記の通り付加価値を持ったシルク開発技術は、再生医療から化粧品までの利用拡大を視野に入れつつ再度日本が先行しており、産業化確立を視野に入れた動きとなっている。

昨年は養蚕業の象徴であった富岡製糸場が、日本の近代化遺産で初の世界遺産登録となった。衰退してしまった養蚕農家も、こうした将来の私達の生活をも変える可能性を秘めている技術応用をもってもう一度世界遺産と共に立て直す大きなキッカケになるかもしれなく今後も期待したいところだ。


利害一致

さて昨日の日経紙には「切り札は株式購入権」と題して、役員報酬を株価と連動させ株主の利害と一致し易くする狙いからストックオプション制度を新たに導入する企業が増えている旨が載っていた。

確かに最近では同制度導入企業の相対的な株価堅調が一寸話題になっていたが、統治改革の対応も後押しとなって同紙によればこのストックオプションも導入企業は今年に入ってから先月迄で93社にのぼるといい、この5か月間で既に14年通年の80社を上回っているという。

当欄で「インセンティブ多様化」と題して同制度を取り上げたのがちょうど一年前の6月であったが、この時もリーマン・ショック前の2008年以来、6年ぶりの高水準と書いていたのを思い出す。ファイナンスなどもまた然りだが、株式相場の回復と共にまた増加傾向となる類でもコーポレートガバナンス・コード等絡めてその内容も変遷しつつあるのだろうか。


サミット物色

さて、昨日はストップ高に張り付いたデータセクション株に触れたが、同社以外で同じこの日ストップ高に張り付いたモノに三重交通グループHDがある。これは勿論のこと2016年サミットが三重県志摩市で開催されることが決定し、その関連株の一角として物色されたもの。

他にも志摩観光ホテルを擁する近鉄グループHDや三重銀行や第三銀行など地銀、また同地域にリゾートホテルを展開している絵画販売のアールビバンも急騰から一時ストップ高まで買われ、同様にホテル進出が予定されているフレンチレストランのひらまつまでも物色対象になっていた。

このサミットといえば洞爺湖サミットが思い出されるが、大和証券ではサミットの開催で知名度が向上、その観光消費はサミット開催後5年間で累計1,750億円になる可能性を指摘し、推計で122億円とされた2008年の洞爺湖サミットの10倍以上に上る試算をしている。

とはいえ知名度向上で如何ほどの経済効果をもたらすのか実際のところ未知数なものの、成長戦略の中でも観光立国戦略はまさに柱の一つであり、この辺がどう相乗効果を齎してくるのか期待しつつ注目しておきたい。


ビッグデータファンド

本日の日経平均は方向感ないまま小幅続落で引けたが、そんな中の値上がり率上位で先週の地合い継続ということでもなく突如として高寄りからストップ高まで買い上げられたモノにビッグデータ処理のデータセクションがあった。

これは同社がファイブスター投信投資顧問と共同で株価予測システムを開発した事に反応してのものだが、ツィッターやブログなどネット上の書き込みを解析し株価が変動しそうなタイミングを予測、システムをもとにファイブスターはこれを活用した日本株公募ファンド「FS・DSビッグデータ活用型ロングショート・ファンド」を8月から開始運用開始予定という。

日本初のビッグデータファンドとなる事でその運用動向が注目されるが、これで思い出したのが昨年の3月だったかNTTデータが、ミニブログ「ツィッター」の日本語のつぶやきから株価予測に利用できる「ツィッターセンチメント」なる指標を提供するサービスを始める旨の報道か。

これが日経平均VIと相関性が高い事が判明し、国内で類似のサービスは無いと鳴り物入りの登場で3年後に100億円規模の事業に育てるとの事であったが、あれはその後どうなったのだろう?ともあれ今後も似たようなサービスが出てくる事が予想されるがこの手の新技術が投資のあり方を変えてくるのかどうか今後の成り行きに注目である。


続く値上げ

さて、今週は某タレントがベビーシッターに高級ブランド品の数々を盗まれたニュースが話題になっていたが、高級ブランドといえば一昨日の日経紙、企業・消費面の「高級ブランド、値上げ続く」と題した記事が思い浮かんだ。今週はまた12年半ぶりの円安水準が話題になったが、これと原材料高騰、それに訪日客爆買いも背景にしてハイブランドの日本での強気の値上げに繋がっているらしい。

おりしも一昨日の日経夕刊一面には賃上げが広がった事を背景に「実質賃金2年ぶり上昇」の見出しが躍り、また株高も追い風に高島屋等では若い富裕層を取り込む狙いで美術品のネット通販を始める旨も報じられている。斯様に景気の良い話だが、ハイブランドの類は今年3月の当欄でも書いたように不変な購買層を擁しているだけに唯我独尊な商売は止まらないのである。

まあ、こういった出来事は一部のブルジョワの話で自分とは無縁という向きも居るだろうが、この冒頭の記事の隣には、カゴメが原料高騰により家庭用等のソースを値上げする旨が載っており、また更にその下にはコクヨが全商品のほぼ半数を値上げする旨の記事もあった。これ以外でも衣料から食品まで個別で挙げればキリがないくらい多数控えている。

日経平均の27年ぶりの続伸とか21年ぶり上げ幅とか騒いでいる裏で、ヤクルトのジョアは23年ぶり、永谷園の広範囲の値上げは25年ぶりとこんなところでも数十年ぶりの出来事が進行している。これからも粛々と続く値上げの影響をカバーできるだけの賃金改善が未だ実感無き層まで裾野が広がるのかどうか、この辺が個人消費の今後のキーとなってこようか。