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日本初債券系

本日の日経紙マーケット面には「国債VIX指数11月メド算出」と題して、日本取引所グループが指数算出会社のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスと社と傘下の大阪取引所共同で日本国債の予想変動率を示す日本国債VIX指数を開発すると発表、11月をメドに算出を始める予定としている旨が載っていた。

現在VIX関係では本日年初来安値を更新しているVIX短期先物指数ETFを国債ならぬ国際が出しているが、VIX系も粛々と枝葉が育ちつつある。現在債券のVIX指数としてはCBOE米10年国債ボラティリティー指数があるが、これが日本では初で世界では2番目になるという。

このCBOEホールディングスといえば欧州市場開拓に続いて先物のアジア市場開拓を進めているが、本邦の日本取引所グループも新年度に新CEOが課題として挙げていたデリバティブ分野強化というものがある。先月には東証マザーズ先物創設構想やJPX400オプション取引も始める意向を示しており意欲的な創設に期待が持たれるところ。


吐き出し

さて、本日の全市場値下がり率上位には先駆した仕手系に交じって、商品指数連動型ETFが上位に出ていたのも目に付いた。昨日の日経紙夕刊一面も「国際商品下げ加速」と題して原油や金などの主力級の値下がりが顕著になっている旨が出ていたが、切り返し急であった株式相場とは値動きを異にしている。

先月に当欄では需給は全てに優先するとして金に対してのプラチナの逆鞘が長期化している旨を書いたが、上鞘の金も中心限月が8日続落し時間外で約5年5ヶ月ぶりの安値に沈み東京金も8ヶ月ぶりの安値、プラチナに至っては節目である1,000ドルを6年半ぶりに割り込んでいる。

節目の大台割れと言えば貴金属以外でも原油が4日続落しザラバで50ドルを割れ約3か月半ぶりの安値を付けるなどドル高による割高感が直撃する格好になっている。こうした過程で金のETF残高は代表格のSPDRで700トン割れとリーマン・ショック前の水準にまで落ち込み、同ショック後の安全資産として買われた分が手放された格好になった。

各アセットが組んでいる国内連動型のETFやETNなども、間接効果があるだけに2倍型など吐いた分がどの程度原資産に影響してくるのかこの辺も今後注意深く見守りたいところ。


画竜点睛を欠く

連休明けの日経紙一面を飾っていたのは「東芝、組織的に利益操作」のタイトル。この連休中に不適切会計を調べてきた第三者委員会がまとめた調査報告書を受け、同社が公表したものには経営トップを含めた組織的な関与があったとしているが上に逆らえない企業風土などまさに4年前のオリンパスを彷彿させる。

そのオリンパスだが今でこそ完全復活してその株価も年初来高値に迫る値位置まで来ているが、当時は上場廃止が論議され実に10日続落で400円を割ろうかというところまで暴落したのが思い出される。東芝もそのポストが気になるところだが、2013年の制度改正から先ずは特設注意市場というところかという一部指摘がある。

この辺が今回の東芝が発覚後にストップ安一発で終わり、続々と前経営陣の呪縛が明らかにされる中でも本日のように株価が反発出来た一因でもあるが、企業の闇もさることながら監査法人の不手際も問われよう。奇しくも上記のオリンパスの監査法人はBIG4の中でもガリバー新日本監査法人であったが、東芝の監査法人もこの新日本監査法人である。

市場の番人としての責務を問われる場面も今後避けられそうにないが、おりしもコーポレートガバナンス元年を謳って早々のこの発覚、経済界に影響力のあるポストを多く輩出した「母校」の汚点で日本企業のブランド力が毀損する事の無いよう願いたいところ。


血は争えない?

さて、今週はまたぞろ法廷へと場所を変えて大塚家具の父娘対立の報が彼方此方でされていたが、父と娘といえばもう一つ話題になっているものにあの村上ファンドがある。週明けの値上がり率上位にランキングし年初来高値を取ってきた物の一つに黒田電気があったが、これは村上氏の長女がCEOを務める投資会社の14%超保有が明らかになり100%還元を求めるなど揺さぶりをかけている思惑から人気化したもの。

こうなるともう連想ゲームの世界だけに、週明けに大量保有報告書で同家の5%超保有が判明した黒田電気と同じ半導体商社のエクセルも14日はストップ高の比例配分で引け、また同6%超保有のこれまた半導体商社の三信電気も急伸し年初来高値を更新、また保有比率が高いアコーディアゴルフも本日は年初来高値を更新するに至っている。

当欄では5月にこの村上ファンドについて、「〜時代が今ならファンド側も企業側もまた違ったタッチになり、村上ファンド以外でもスティール・パートナーズなど外資勢の展開や企業の政策もまた変わっていたかもしれない〜」と書いた事があったが、あれからそうした意志が村上氏の長女に引き継がれ矢面に立つ時代になったか。

とはいえやはり血は争えないワケで昔懐かしいそのカラーは時を経ても健在、なかなか友好的な対話とはいかないがそれでも一連の投資行動は漸く機が熟したというか時代が同氏の思想に追い付いてきたという認識に基づいてのものなのかというところで、まだまだ今後の行動が注目されるところ。


指標多様化

本日の日経紙マーケット面には「底割れ救った個人買い」と題して、直近での下落局面で資金が流入した値動きが2倍のレバレッジ型ETFによって機関投資家を驚かせるほどの売り物吸収効果から19,000円割れが阻止された構図が載っていた。

5月にもこのETFやETNの間接効果をコモディティーで書いた事があったが、レバレッジ型もその構造上先物等への波及効果は良くも悪くも多大なだけに目が離せない。また波及効果といえばGPIFを筆頭とする所謂「くじら」勢の動向も同様に目が離せないが、先週末に公表された運用状況では国内株式が22%にまで上昇した旨も話題になっていた。

斯様に近年は金融商品の発達や「数匹のくじら」の出現等によって、マーケットを取り巻く環境も変わってきた。単純に三市場残とか外人動向だけを眺めるさまが既にセピア色にも見えなくもないが、今後もまだまだ市場を測る参考指標が増えてきそうだ。


カオス

さて、昨日はなりふり構わぬ介入劇に揺れる中国の株式について触れ、本邦の投信解約等にも影響が出てきた旨について書いたが、その辺はなにも株式関係に限らずコモディティーの方にも影響が及んでいる。

先週に上海総合指数が続急落を演じた8日には、LMEや上海先物取引所の銅も急落し6年ぶりの安値を付けるに及んでいる。なにせこの銅は世界需要の4割を中国が占めているといわれ中国景気減速への警戒感が織り込まれた格好になった訳だが、もう一つこれをテコに中国本土系ヘッジファンドも暗躍しているとの指摘も先週末の日経紙にあった。

そこには週前半から中国の大手ヘッジファンドの利用先である同国2位の大手先物会社がこの銅への売り越しを拡大させている旨が書いてあったが、6洗車以上ある中でもその代表格が「上海混沌投資」なるファンドという。なるほど中国の市場にはピッタリなネーミングだが、昨日記のPKOメニューにもあるような悪意のある空売り調査対象として魔女狩り的にココも挙げられるのだろうか?


市場ルールと副作用

気になる週明けの上海総合指数は続伸となっていたが、昨日の日経紙・羅針盤には「PKOは経済を救わず」と題して、株価の急落に慌てた中国政府のなりふり構わぬ介入劇を、短期的には意味があるかもとしつつも構造改革の意思を鈍らせる危険薬物である旨の記事が載っていた。

なりふり構わぬ介入としているが、確かにちょうど一週間前に当欄で書いたようなIPO承認の停止や大手証券による巨額の買い支えに加え、その後も売買停止銘柄を実に半数以上にまで拡大させた上に悪意のある?空売り調査から証券当局人事にメディ規制までまさに力任せ操作のオンパレードである。

しかしこのまま落ち着くまで固めておくにも信用期日の対応等どうこなしてゆくのだろうか?PKO副作用を味わってきた側として興味津々で傍観と決め込みたいところだが、野村アセットは先週9日から「野村新中国A株投信」の購入・解約停止に他2種類の解約停止、また大和証券投資信託委託も同9日から「ダイワ・チャイナA」と「ダイワ深センA株ファンド」の2種類の購入・解約停止とする等の弊害が及んできており悪影響がヒタヒタと忍び寄る気配である。


ゴースト株主?

さて、昨日の日経平均は638.95円と急反落し約3週間ぶりに2万円の大台をあっさり割り込んだが、本日も引き続き前場に続急落のあと急速に切り返し終わってみれば高値引けとなるなど久し振りにボラタイルな展開になった。そんなここ2日のジェットコースター相場で日銀は昨日も本日も粛々と324億円ずつETFを買い入れていたが、年間買い入れ予定額をやや上回るペースの推移となっている。

そんな訳で今年上期の購入額は昨年下期の既に約2倍となっており、今や日銀は首位の外国人に次ぐ買い手になっている。このETF買いでは当然その構造上個別も買われることになるが、寄与度ナンバーワンともいわれているファーストリテイリングなど上記の年間買い入れ予定額満額の計算で日銀は2.8%の保有、これまでの買い入れ規模ベースでは約5%に上るという。

今月上旬に同紙の投資情報欄で連載していた「ニッポンの株主」では保有額の大きな個人株主としてファーストリテイリングの会長がソフトバンクに次ぐ2位で21.7%と出ていたが、これを勘案すれば見えない株主としてはその存在感というか影響力は可也のものになるだろう。

この辺に絡んで、既に当欄では5月に「吸い上げ副作用」と題して変動率の上昇が顕著になりリクイディティー低下が言われ始めた同じ高寄与度銘柄のファナックを挙げたことがあったが、高寄与度双璧の吸い上げは何所まで継続されるのか?何れ日銀もイグジットを探る時が来ることになろうが、その時の減額や売却がどの程度市場の波乱要因になるのかこの辺の未知数な部分こそタイトルのゴーストの如くか。


プライマリーの旨み

さて、ギリシャのデフォルト懸念に加えて下げ止まりを見せない中国株に対する懸念も強まり日経平均は週明けに急落、この反動から昨日は急反発し本日は再度急落しあっさりと3週間ぶりの2万円割れとなった。こんな乱高下のなかにおいても昨日まで順調に上げ年初来高値更新となった銘柄に野村HDがある。

特に先週末に上げが顕著となったが、これは当欄で約2週間前に取り上げたトヨタ自動車の「AA型種類株式」の発行・販売に伴う引受手数料収入に注目が集まり海外投資家の買いが広がった事によるもの。

さてこのAA型種類株式、蓋を開けてみれば決定した発行価格は決定前日の同社株の終値を3割上回る10,598円と想定していた仮条件の上限となり、その購入希望額も発行額の4〜5倍に達しているという人気ぶりとなっている。

当の野村はホクホク顔で、眠っているお金を資本市場に呼び込む受け皿になるとしているが、欧米機関投資家はこの株式の性格上株主間の不公平につながるとの声明を公表する動きを見せておりこの辺はまだまだ行方を見守る必要がありそうだ。


増益の裏で

さて、昨日の日経紙には「運用10社、3割増益」と題して、公募株式投信の市場全体の残高がこの1年で21%増えるなど運用環境が良好で資産の時価が膨らみ、この結果として運用会社の手数料収入が増えて主要運用10社の純利益合計が前期比で28%増加した旨の記事があった。

やはり株高効果のこうした部分への影響が顕著に出た事例だが、運用成績自体は昨年末までに設定された日本株を対象とする公募投信580本のうち、今年の運用成績がTOPIXの値動きを上回ったのは170本強に過ぎない実に7割の投信が市場平均を下回るという側面が一方ではある旨が本日の同紙に出ている。

投資の環境が一昔前とは様変わりしてその選択肢自体は増えたものの、一方では従前の手法が通用しなくなってきている部分も既に出ており、特に近年はこの辺が優劣を左右している部分も多い。緩和マネーが今後どういった流れになってゆくのか先行きを見通すに各社思案のしどころである。


仮需崩壊とPKO?

ちょうど2週間前の06/22の当欄では「想定内のクラッシュ」として、一週間の下落率が約13%と2008年以来約7年ぶりの大きさとなった上海総合指数を書いたが、先週末も前日比5.77%安の3,686.915と続急落、その週末までの3日続落では約14%も急落するなどまさに「山高ければ谷深し」といった状況になっている。

また末尾では、政府が株高維持を重要政策としているだけにこれ以上過度の株安を容認するのかどうかにも今後の関心が向かうとしたが、やはりというか需給悪化防止の為にIPO承認の当面停止を決定、こうした制限に加え大手証券21社も総額約2.4兆円以上を株式投資に充てることを柱とする下支え策を発表してきた。

しかし需給悪化防止策はいいが、ブルームバーグによれば現状で上海と深圳両取引所での信用買い残の時価総額に対する比率は2日時点で4.4%と急落が始まる前の12日の3.6%から更に上昇、規制対象となっていない信用買い入れを含めればその比率は実に9%を超えるといい、対してショートは0.03%未満というからこれはもう需給悪化進行の典型だろう。

いずれ近々訪れるのは確定していたこの崩壊、こんな国を挙げてのPKOも懐かしいが発展途上市場では結局自国なりのやり方で試行錯誤しながらしばらく学習してゆく以外に方策はなさそうだ。


コーポレート・ガバナンス元年

さて、東証に上場する3月決算企業の41%が総会を開いた今年の株主総会のピークから約1週間が経過したが、ピークといっても同一日に95%以上もの企業が総会を開いていた一昔前と比べるに随分と分散が進んできたものだと今更ながら感じる。

ちょうど二年前の当欄では「株主総会変遷」と題して、末尾に「株主総会も時世其の時々のカラーが色濃く出て面白い。何れにせよ今週月曜日に書いた長期投資家誘致も株主との対話がキーになってくるだけに総会も益々重要性が増してこようか。」と書いた事があったが、この対話と言えば今年は企業と株主の双方に対話を促す指針が適用された初の総会となった。

3月に当欄で対話型に転換として取り上げたファナックは例年の約2倍の時間を割くなどかつてのIR消極姿勢から大転換、他企業も株主還元や成長戦略等具体的な発言が相次いだがやはり総じてROEが役員選任等も含めてあらゆるものの物差しになってきている傾向が顕著であった。今年のコーポレート・ガバナンス元年が、双方の距離を縮め好循環の起点となるのかどうか大いに期待したいところである。