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15年の変遷

周知の通り先週は日経平均がほぼ15年ぶりの高値にまで上昇してきた。第一次安倍内閣当時の最高値をも上回った事から日経紙などでも一面で取り上げてあったが、15年前といえばITバブルピークでもありこれを奪回してきた今、当時からのさまざまな市場の悲哀こもごもも同時に蘇る。

この間は世界を震撼させた米同時テロもあったが、東京市場にとってまさに三重苦だったのはリーマンショック、民主党政権、それに東日本大震災だったろうか。この間の豪雨で地を固めた筆頭がやはりトヨタだろうが、この辺の地道な構造改革というのはある意味日本のお家芸ともいえるだろうか。

株主構造もまた同時に変化、持ち合い合戦の呪縛から解放され今や筆頭株主といえば外国人に変わった。もともと先週書いたように長期にわたるデフレ傾向と銀行の貸し渋りから守り経営を順守した結果、空前の貯め込み型になっていたところにこうした株主変遷があり、これに呼応するかのようにJPX400などの新指数が登場し企業もそれに即する如くROEに指針を見出してきた。

何年ぶり何十年ぶりというと指数や為替など単純に当時との指標比較に終始してしまいがちだが、内部に起こっている構造変化などを読み解くにROE一つ挙げてもまだまだ伸びしろがあり、そうした視点も含めて欧米との乖離はさまざまなところでまだ可也あるという感だ。


賛否両論

さて、昨日の日経紙一面(春秋)では、東京都渋谷区が同性カップルを結婚に相当する関係と認めて証明書を発行する条例を作るとした報道を挙げLGBTへの差別を問うてきた人々にとっては大きな一歩で、同性カップルの社会進出が著しい欧米に比べて周回遅れの対応にとどまっている日本社会に議論を促す施策である旨が書いてあった。

この手の件は派手な報道はないものの、これに関連した同性カップルの件では数年前に東京ディズニーシーで元宝塚劇団出身の女性が同性結婚式を挙げた事が話題になった時があったが、夢の国を謳うディズニーも紆余曲折を経ての英断だったであろう。

ほか一部外資系企業でもこうした向きに手を差しのべる動きがある。肉食系?のイメージがあるゴールドマン・サックスは、LGBT団体が開く同学生向けキャリア相談会に昨年から社員がボランティアとして参加し相談相手になる活動を続けており、またモルガン・スタンレーも昨年に初めてLGBT学生向けセミナーを開いている。

とはいえ冒頭にも書いた通り、現実にはまだまだ多様な性に関しては寛容とは言えない日本社会なのは否めない現実。欧米と乖離した土壌故にで極めて優秀な逸材獲得の機会を逃してしまう現実は勿体無い限りでそうした部分の発展途上を物語っているか。


投資と配分

本日の日経紙(一目均衡)には、今月にファナック株式を取得した米投資会社サードポイントと1兆円の資金を抱える同社が株式市場で攻防を繰り広げている旨が載っていた。かねてより豊富な資金を自社株買いに充てるよう要求していたようだが、同社は今週に国内の工場や研究所を新設することへの資金投入を発表している。

文中にはこの投資計画を差し引いても8,000億円以上の資金がさして利益も生まずに眠る旨も書いてあったが、こうした企業はなにも同社だけではない。こうした所謂貯め込み型の企業が続出した背景には長期にわたるデフレ傾向と銀行の貸し渋りがこれらを創造したのは想像に難くないだろう。

上記のファナックは本日も続伸し連日で上場来高値を更新してきているが、インカム期待だけでもアナウンス効果は高く短期でもそれによるキャピタルゲイン効果も高いのではないだろうか?勿論株主配分と成長投資の両取りを実施する優等生も居るが、JPX400創設でこれら双方に無関心であった向きが格段に少なくなってきているのは潮流の変化だろう。


内需の存在感

本日の日経紙マーケット面には「銀行株に資金流入」と題し、昨日の業種別日経平均株価「銀行」が前週末比3%上昇し、売買代金ランキングでも上位にメガバンクが並ぶなど出遅れ感のあった銀行株への資金流入が目立ってきた旨が書いてあった。

日経平均も昨日は18,000円大台を回復してきたが、こんな銀行株の堅調からTOPIXも先週は祭日前に日経平均が往って来いの反落となったものの、それを横目にTOPIXは3日続伸するなどそれ以上に強い動きさえ感じた。昨日は全36業種でこのセクターの上昇率が首位であったが、同指数の強さの背景にはこれらの堅調が大きく寄与している感もある。

長期金利が上昇し債券市場では金利低下の流れに変化が出てきている事が支援材料視されているが、当欄で先月中旬に「24年ぶりゼロ」と題して書いた通り昨年パンクした企業は8年ぶりに1万件を割り込み、その負債総額も前年比で32%減少し1990年以来24年ぶりに2兆円を割り込むなど金利同様にこちらにも変化が。昨年1年分の下落を取り戻せるかどうかこれらと併せ見ていきたい。


広がる選別色

昨日の日経経紙一面には「上場企業の3割増配」と題して2015年3月期の株式配当が2連連続で最高を更新する見通しとなり、増配または復配する企業が全体の3割に達した旨が出ていた。この辺の背景には近年のROE重視姿勢からの資本効率を高める狙いもあり、利益を配当として支払えばROEの分母に当たる自己資本の増加を抑えられる効果も見据えてのもの。

さてそんな感じで囃されている高ROE銘柄でも、当初はしりの頃の万遍なく物色する光景から最近は明暗が分かれてきている。この辺は先週末の日経紙にも載っていた通り、1年余りで株価が2倍になる銘柄がある一方で、3分の1に下がった銘柄も出てきており期待先行モノほどこの辺がより顕著に株価に反映され易くなっている。

下位にはゲーム関連も幾つか顔を出していたが、これまで度々下剋上の時価総額逆転劇で老舗企業をしのいだこの課金系もそろそろ息切れが目立つ。昨年に当欄でも「結果としての時価総額」としてゲーム系を取り上げた時に、ピーク時から半分以下まで急減したガンホー等も睨みながら市場は先行きを占っているようだと書いたことがあるが、このポストも期待先行で囃す相場は終わった感がある。


青天井期

さて、先週日曜の日経紙(日曜に考える)で取り上げてあったのは1980年代後半から90年代にかけて株式市場を席巻した光進事件であった。蛇の目を所謂「箱」にしたトンビこと飛島建設のシナリオに加担して一部政界までをも巻き込んだ一件であったが、関連銘柄は連日賑わい街の投資顧問会社の煽りにも一層拍車がかかったものであった。

携帯端末で株価照会など想像も出来なかった当時は、証券会社の店頭に置いてある小さなクイックが頼りでこの手の銘柄が出ると投資家は奪い合うようにこの端末にかじりついていた光景が懐かしい。同紙に出ていたこの蛇の目や藤田観光もそうだが、今の株価からすると想像も出来ないような青天井を形成した銘柄も多く、一つ一つを思い出す毎に背後に絡んだストーリーもまた同時に浮かんでくる。

そうして市場を席巻した仕手絡みでは、その後遺症で今や市場からまさかの撤退を余儀なくされた企業群も多いが、敗戦処理を経て上場を維持した銘柄でも仕手戦当時の乱高下から30年近くを経てもなお仕手戦前の健全体質には程遠くなってしまったものは少なくなく食い散らかしの代償は大きい。

しかし思えば昔ながらのカラを誘いつつ全員参加型の息の長い相場形成が特徴だった所謂本来の仕手の歴史は、現在と違ってはるかにユルかった規制や証取法を背景にあまりにも有名な誠備グループを中心として活動していたこの頃がピークだったなとつくづく感慨深い。


嗜好の賞味期限

さて、先週に気なった決算の一つに日本マクドナルドHDがあったが、2014年12月期決算は11年ぶりの最終赤字に転落となり、営業赤字は実に上場以来初の出来事となっていた。最近では昨年の期限切れ鶏肉問題やそれが冷めやらぬうちに今度は異物混入問題が追い打ちをかけまさに泣きっ面に蜂状態であった事からこの辺も致し方ないところか。

ところが本家の米も近年は顧客である若年層達の健康志向の強まりを背景として、個々の注文に応じる競合店等にシェアを奪われる苦戦が続いている模様。先月末にはCEOの引責辞任発表と併せての社長交代で、この客離れが進む米国再建の報道もなされている。

この健康志向といえば先週の日経紙夕刊でも「健康志向の打算」と題して、米コカ・コーラ社が取り上げてあったが、マックCEO引責辞任の2日後にはこの競合店の新興勢の一つであるシェイク・シャックがニューヨーク証券取引所に上場、公開価格の2倍以上の値を付ける人気を集めたが、この背景には具材のこだわりを強調しフライポテト一つ取ってもトランス脂肪酸不使用などを明記し上記の健康志向にもマッチしているという点がある。

以前に当欄ではアパレルも世界同一基準を謳いつつも現地の嗜好性を取り入れたラインナップを展開するのが普通になってきたと書いたことがあるが、昨今のファストフード業界もまた然りか。全世界に同一商品を投入するというマック創業以来のビジネスモデルが、消費嗜好変化に対応出来なくなったというのはある意味時代の自然な流れなのだろう。


原油彼是

さて、今週は原油が米国指標のWTIもアジア指標のドバイも揃って一カ月ぶりの高値にまで戻してきたが、この原油に関しては先週末の日経紙商品面にも「原油市場、膨らむ売買」と題して、価格が急落する中、ファンド等の投資家が大幅な価格変動を収益確保の好機ととらえその国際市場の取引規模が2014年11月末に比べて約2割増えている旨が載っていた。

上記のようにヘッジファンドなどの大口投資家が売買を膨らませているものの、個人投資家も物色が旺盛になってきており、日本でも東商取では先物が1ヶ月ぶりの高値を付けその売買高に至っては約10年3ヶ月ぶりの2万枚台まで回復してきている。

また原油に連動する主力の金融商品系ではETFやETNがあるが、今週の全市場値上がりランキングを見ていてもやはりNEXT日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN、WTI原油価格連動型上場投信、NEXT・NOMURA原油インデックス上場など普段は目にしないような銘柄が顔を出していた。

こちらもTOCOM同様に商いが急増しており上記の野村原油インデックスは昨年秋口には出来高数千株の日も少なくなかったものが年明けは300万株を超える日も出て、同じ野村でもETNの方は同100株台の日も少なくなかったものが、年明けは40万株を超える日も出て、同ETNのベアに至っては5株にも満たなかったものが年明けの年初来高値を取った日には10,000株を超える商いを作っている。

先月末の日経紙には「値動き2倍ETF活況」と出ていたが、株式のみならずこの手のコモディティーものも斯様にレバレッジ系に人気が集まる構図か。原資産の乱高下が収まった後もある程度リクイディティが確保できていれば玉も解れるのだろうが、一気に萎む構図が続くうちはこの辺がやはり課題になってくるか。


政治格付け

本日の日経紙国際面には「米S&P、1,760億円で和解」と題して、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズが2008年の金融危機の一因になった住宅ローン担保証券の格付けを巡る訴訟で、総額15億ドルを米司法省はじめとし19州政府や米最大の公的年金のカルパース等に支払うことで昨日和解した件が載っていた。

さて米の格付け機関といえば双璧のムーディーズがあるが、このムーディーズも2008年の金融危機発生前に自社業績を優先させ証券化商品により本来より高い格付けを付与した疑いがあるとして、米司法省が調査している旨を今月はじめのウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えている。

こうなってくると自国の最高格付にはじまり、本邦国債も既に中国や韓国を下回る水準に置かれるなど随分と不遇な扱いを受けているのも改めて何だかなという思いもあるが、今回の訴訟では同社の行為に違法性を認めることなく和解に至っている。この辺に意図的な政治背景を感じられなくもないが、そう考えるとモノは全く違えど何故か証券会社のレーティングからはてはミシュランまでがふと頭に浮かんでくるものだ。


鉄火場祭り

本日の日経平均は米株式の急反発にもかかわらず債券先物急落を嫌気して大幅続落、そんな地合いの中で全市場総合で値上がり率・出来高共に第一位となったのは昨日挙げたスカイマーク株で、昨日同様に1億株以上の出来高を集め50%以上の値上がりとなっていた。

とはいえこの株、パンクして整理銘柄に指定され昨日東証が値幅制限ルールを撤廃した為に一気に30円台にまで暴落して寄り付いており、まさに値幅というより率で勝負の所謂祭り銘柄。本日も昨日の16円安値から前場は2倍以上となる32円まで化けるなど相変わらず祭りに参加するホットマネーは健在である。

しかし昨日ストップ高で買い物を残したオンキョーやsantecなど本日は揃って値下がりランキング4位と5位に顔を出すなど資金の逃げ足は速く、この辺は逆に腰を据えた物色対象難というのを浮き彫りしている。本日も一部のディフェンシブ系が年初来高値を更新しているあたりもこれと併せ一寸不気味なところでもある。


壁の厚さ

本日付けでヴァージンアトランティック航空が日本から撤退しその25年9ヶ月の歴史に幕を下ろしたが、エアライン関係と言えばもう一つ入ってきたビッグニュースには先週29日に各紙面を飾った国内航空3位のスカイマークが民事再生法の適用を申請した件がある。

つい最近当欄では昨年の上場企業の破たんゼロと書いたばかりであったが、これで早くも今年の第一号が出てしまった。これは2013年8月にパンクしたジャスダックにあった物流会社ワールド・ロジ以来となるが、パンクまでドタバタが続いていたロジ社同様にこのスカイマークもここ最近はJALやANAとの提携交渉話が二転三転するドタバタ劇が続いていた。

もともとあのエアバスの件で昨年から経営不振が続いていたものだったが、此処までに至ったのにはJALの時同様今回も国土交通省絡めた政治によって翻弄された背景がある。破綻回避へ期待を持たせる話が出る度に乱高下を繰り返した株価を見ていると、まさにJAL破綻の時を彷彿させる。

しかし、今でこそ規制緩和を背景に新興勢が第三勢力を目指しての参入であったが、日経春秋にも出ていたようにかつてあの東急も大手2社と対抗すべく東亜国内航空(懐かしい!)を作ったものの志半ばでJALに吸収されてしまった経緯があり、やはりこの壁は時代を経ても破れない厚さなのか。