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形骸化

本日の日経紙、一目均衡には「ありえるはずのない好成績」として2008年に発覚した米マドフ事件に絡めて、直近で問題になっているAIJ投資顧問事件が語られていた。何れも危険信号が多数出ていたものの、マドフ事件は最初の告発から8年後になるなど当局が動く頃には手遅れなのがこうした事件の常と書いてあった。

告発といえばこのAIJ投資顧問も海外証券監視当局等から以前より疑問視され、金融庁や証券取引等監視委員会など日本の関係当局にも情報提供がなされていた旨も明らかになっているが、それでもこうした事態になるということは結局のところ対応していなかったということなのは明らか。

これ自体問題だが、信託銀行も外国籍を使った運用に対し正確な時価自体を取得出来ていなくてそうしたことから年金基金に正しい運用実績が伝わっていなかったというのもまた問題か。外務員試験にも出てくるが、信託銀行業務は運用会社が指図した投資内容を記録管理し運用資産内容は信託銀行から年金基金に対して定期的に報告されることになっている筈。

まあハイリスクな金融商品でこうした性質の資金運用を認めている制度自体にも疑問があるが、当局然り金融機関然りまた形骸化が浮き彫りにされた事例だろうか。


あれから一年

昨日で東日本大震災から一年が経過した。一年経ったのがうそのように今でも当日の様子は鮮明に脳裏によみがえるが、先週末には東京タワーや東京スカイツリーに特別仕様のイルミネーションが灯り、銀座の和光では「その」時間に鐘が鳴らされる等、全国各地はじめ海外まで追悼行事が行われる哀悼の祈りに包まれた一日となっていた。

この日各紙にはこれまでの震災被害状況が出ていたが、人は勿論のこと企業も上場企業が震災損失4兆円を計上、関連倒産も阪神の4.2倍に上る等あらためて本当に酷い数字である。企業といえば7日には文部科学省のプロジェクトチームからは従来の想定を上回る震度7規模の首都直下型の可能性ありとの分析結果を公表していたが、これに先駆けて財閥系の錚々たる大企業が揃って大阪に本社移転という噂もまことしやかに流れたりもした。

「安全神話の崩壊」によって物の考え方が厳しく問い直されている。想定の範囲を何処に置くかだが原発然りまた東電の株然りで生半可なパラダイムシフトでは何時でもまた阿鼻叫喚な光景が何処でも訪れるということだろうか。加えてこの一連の災いはまた官の杜撰さと責任転嫁の狡猾さを如実に露呈、斯様にいろいろ課題が在り過ぎていまだ何処からとう感じだが、一番大切なのはやはりこの災いを風化させてはならないということだろうか。
あらためて被災された方々に深く哀悼の意を表すると共に再生に向けての進展を祈りたい。


裏上場レンキン

さて、本日の株式市場は後場に入って一段高し4営業日ぶりに急反発していたが、そんな地合いのなかでも昨日に引き続きセラーテムテクノロジーは比例配分でストップ安に張り付き、明日はいよいよストップ安下限が2倍に拡大される。今週もいろいろニュースがあったなかで、周知の通り同社は自社株の吊り上げを狙い、虚偽の情報を公表したとして東京地検特捜部が同社社長及び役員を逮捕したことを受けたものに因る暴落だ。

やはりなといった感じだが、同社に関しては既に一昨年の10月に「実際に株式市場でも数年前から中国ビジネスへの進出をネタにしてインチキ相場を作った銘柄があり〜〜現在も背後に中国資本介入やら裏上場の噂やらでどう見ても不自然な化け方をした銘柄は依然多い」とコメントしている。まさにココがそれだったワケだが、当時はまだ裏上場疑惑といっても単なる噂に過ぎないと一笑されることが多かったものだ。

今回問題にされているのは「北京誠信能環科技」なる中国のソフトウェア会社であったが、中国企業といえば昨年は不正会計疑惑で海外市場にて上場する中国企業の会計不信が拡大し、数十もの中国企業株の売買が停止処分、架空投資を継続させていた中国企業の株で著名投資家がかなりヤラレたという経緯もあった。コトの発端は北米市場に上場している企業であったが同所の新興国企業の大半は中国が本拠地で逆さ合併による上場が半数を占めているという。

当然こうしたIPOの背景には投資銀行の影がチラつくワケだが、当の本拠地の上場基準厳格化で炙れた向きがこうしたところへ活路を見出し?進出したパターンもあるという。利害一致でこんな波が大証にまでうまく流れ込んだということなのか、真っ当なところ以外で中国ビジネス色を売りにしている怪しいところは今後包囲網が狭まってくるか。


捨て場

先週末に当欄ではVI先物が開始されたことに触れたが、その末尾ではコメ先物のワラントにも少し触れた。さてこのコメ先物だが、本日の日経紙にコメ先物のデリバリーにおいて大半を福島県産が渡されている旨が書かれていた。

昨年8月の取引開始以降に受け渡された早受け渡し含むコメは東穀取で1,140トン、関西商取は651トンで東穀取では85%が福島県中通り産となっており、今年に入ってからのそれはすべてが福島産という。現在受け渡しには栃木県や千葉県など関東や東北など19銘柄が使えるが、東穀取社長のいう「割安だからだろう」というより単純に「捨て場」になっているのは明白か。

この記事のすぐ上には「福島米の苦境続く」として大惨事となった東日本大震災と福島原発事故からもう一年が経過しようとしているが、依然として風評被害もあって同コメの流通混乱も書かれている。本日の日経MJでは特集で「食の安全は今」としてアンケートが出ていたが、事故以降に商品の購入先を変えたり新たに増やしたりした人は27.9%、首都圏では3割を超えるとも出ておりまだまだ「捨て場」も活躍しそうだ。

しかしこんなのが恒常化すると相場の方も安値安定という具合にはならないのだろうか?
ボラがなくなれば妙味が薄くなるし、またはもう既にそうした状況なのかもしれないが、この適用銘柄から外してしまう手もある?か。とは言っても上記のように「風評被害」にナーバスになっている時期にそんな措置では東穀取もこれを助長するのに加担とか叩かれそうな気配もするが、今年の場合来月から福島全域で土壌検査を徹底するようで新米が出回る秋口に注目ということになるか。


巣食う天下り

本日の日経紙一面には、今問題になっているAIJ投資顧問に絡んだ厚生省の調査で2009年5月時点で全体の3分の2にあたる399の厚生年金基金に、旧社会保険庁職員ら国家公務員OBが全体で646人も天下りしていたことが明らかにされた旨が載っていた。

先の東電でも早くから当欄で指摘してきたような長年にわたって続いた続天下りの悪しき構図が明らかにされたばかりだが、何か問題が起これば当然こうしたところにも深く巣食う天下りの構図も次々と炙り出される。しかしAIJの販売拡大にこうしたOB人脈が深く関与していたということだが、詐欺会社に有名人が小遣い稼ぎで名前だけ貸すパターンと然程変わりがない。

こんな外面で次々と成約してしまう現状を見るに基金側も企業側も果たしてどれだけ金融に通じているのだろう?という疑問も出てこないわけではない。悪しき構図といえば、そもそもこの基金を所管するのは厚生労働省、一方で金融庁は運用する業者を所管するといった具合に現状監督官庁がまたがっており、こうした部分が問題をややこしくしかねないところもどこかの業界と似ているなと。


優待取り珍事

本日の日経平均は手掛り材料難のなかを先物への売りが重しとなって1週間ぶりに9,700円割れとなったが、そんな中を年初来高値更新していたものとして私鉄大手が目立った。この私鉄大手といえば先週末の日経紙投資・財務面には「鉄道株、昨年来高値相次ぐ」として、期末控えのこの時期、乗車券などの株主優待や配当を狙った買いも入って東急が約2年4ヶ月ぶりの高値、増資で急落した東武も往って来いの戻りを見せるなど私鉄大手群がこのところ軒並み昨年来高値を更新している旨が載っていた。

さてこうした実弾で堅調な株もあれば、同じ優待狙い株でも需給で面白くなってしまう事例もいくつかある。一頃というか今でも「優待タダ取り」と称して、マル信でクロスを振って優待だけもらうという方法が一部証券会社のメルマガなどにまで紹介してあるのを見掛けるが、中には人気が付き過ぎて気が付いてみればトンデモない株不足になってしまうものもある。

例えば先月に年初来高値を更新した東京ドームなどはたしか数円の逆日歩が突如として付いていたと思うが、ココは60,000株以上で巨人戦指定席Aの株主証が手に入る。値もそこそこ低位だから60,000株程度なら安易にクロスする向きも居るだろうが、こんな逆日歩に遭ったらタダで手に入る筈の優待に数十万円のコストがかかってしまうという笑えない珍事も制度信用の場合は可能性があるということ。

まあ、今の時代昔とは違って制度を避けて一般やら他の派生商品を利用する手もあるが需給睨んで二階建てで両取りというツワモノも居るあたりがまたこの手の面白いところでもある。


日経平均VI先物開始

本日から3月入りとなったが、今週は週明けからAIJやらエルピーダメモリ破綻やらと話題が多くマーケットの方もこれら睨んで比較的場中はボラタイルな動きが多くなった。ところでボタライルといえば、今週は週明けから大証で日経平均ボラティリティ・インデックス(日経平均VI)を対象とした先物取引がスタートしている。注目の初日は取引高が49枚、初値は3月物で23.50、終値は23.25となり大証は初日としてはまずまずの取引量としている。

この日経平均VI、ご存知の通り一昨年から算出・公表を開始した投資家が予想する将来の株式相場の変動率をオプション価格を使って指数化したもので昨年まで終値ベースで算出されていたが今年からリアルタイムで表示、リーマン・ショック後には92.03まで上昇、また昨年の大震災発生後には69.88を付けた経緯がある。以後昨年12月以降は20をやや上回る水準で推移しているが、VIX同様なかなか使えそうと期待する向きは多い。

この恐怖指数系では既に大証で一昨年12月から国際投信が運用する米VIX指数を対象にしたETF(短・中期)が上場しているが、今回は日経平均VIを元にした商品で日本初となる。今のところ機関投資家向けのスタートだが、商いの状況を見て夜間取引を実施するか検討するとのことで、今後これら含めどういった枝葉が出て来るか注目。

ところで新商品といえば今月から大手ネット証券で、コメ先物のオプションを証券化した「eワラント」の取り扱いを始めるという報も今週あった。まあ先物と違ってその証拠金は驚くほど安いわりに相場のボラは大きく反映してくれ、ワラントだから追証もなければ元本以上が飛ぶ危険もない非常に面白い商品。胴元は移管巡っていろいろ迷走だが、横では日進月歩で商品が登場しておりこの辺はまた後述することにしよう。


二つのデッド

さて、本日の日経平均株は引け際に急速に伸び悩み往って来いとなってしまったが、その中身の方は二部市場の昔懐かしい銘柄の乱舞や、中盤で昨日記のエルピーダメモリが完全合致で寄ったことでお祭り状態、朝から外は雪が吹雪いていたものの、こちらの方はまさに熱気ムンムンといった様相であった。

数億株の商いがエルピーダに集中するのは目に見えていた環境のなかで、東証も重ね重ねの失態はこれ以上マズイということでアローヘッドの再チェックなのかどうか昨日は深夜になっても煌々と明かりが点いていたが、今日は同所の約定値段が決定されるまで呼値の値幅制限を適用しない旨の決定で朝からアンダーには10億株近い注文が這わされていた。

そんな板だったから果たして5円で寄付いたあとはもう鉄火場、後場にはメデタク?11円まであり久しぶりの火遊びで資金倍増を満喫した向きも多かっただろう。しかし、昨日の日経紙にはエルピーダメモリの現状をデット・ハングオーバーと表現していた箇所があったが、さしずめ本日はデット・キャット・バウンス狙いで資金が集まったといった感じ。更正法前ならずパンク後にこんな形で資金が集まるなどなんとも遣る瀬無い感が漂う。


消える産業のコメ

さてAIJ投資顧問の問題がいまだ世間を騒がしている最中に、昨日引け後に今度は「日の丸半導体」ことあのエルピーダメモリが会社更生法の適用を東京地裁に申請したとの報が駆け巡った。そんなワケで本日の日経紙一面にはこのAIJとエルピーダの記事で仲良く二分されていたがいやはや突然の報には驚き、ちなみに国内製造業の破綻では過去最大規模となる模様。

ところで、同社といえばつい先週に減資と株式発行枠の倍増を発表したばかりでありパンクさせる予定にしては極めて不可解、このタイミングは一寸想定外といえるだろう。想定外といえば株主も同様でこの減資発表の日、奇しくも同社株を米ゴールドマン・サックスやクレディ・スイスが大量保有していることが判明、オリンパスの連想もあってザラバ急騰したがここで飛びついた向きはほんとうに目が点という感じだが、この破綻で戻ってこない公的もこれまた国民負担ということになる。

しかし今回の件で政府の国を挙げて蘇生し外国勢に対抗するという産業政策も頓挫、繰り返しになるがこの公的資金300億円が注入された産業活力再生特別措置法適用第一号となった同社の一連の行動というか破綻劇には些か不可解な点が多過ぎる。また、特定企業に肩入れが許されるのかという議論が当時は起こったものだが、そろそろいい加減に政府責任の議論も起こるだろうし、今後控えているエルピーダと同様の背景の大手企業らによる事業再編から作られる企業に出資される案件には厳しい視線が集まりそうだ。


隠れ蓑さまざま

直近の当欄では「魑魅魍魎対決」として、手口が巧妙になってきた証券詐欺について触れたのだが、周知の通りその翌日の日経紙一面には「年金2,000億円大半消失」のタイトルで国内独立系投資顧問会社であるAIJ投資顧問が、企業年金から運用受託していた約2,000億円の大部分を消失させていることが証券取引等監視委員会の検査で判明、金融庁が業務停止命令を出す旨の記事が載っていた。

こちらはまた随分とスケールの大きな詐欺?に見えるが日本橋高島屋のほぼ向かいに位置する同社は、確か痴漢やら何やら二度も迷惑防止条例違反で逮捕、起訴されたことのある某経済評論化がかつて顧問をやっていたところか?そのHPには「お客様の資産運用に係わる者として、常にコンプライアンスに努め、良識ある行動体制を確立してお客様の信頼に応えます。」と謳ってある。同紙によればオプションで相場変動に左右されずに安定して高い収益を上げる「絶対収益」の獲得を目指す運用戦略とのことであったが、セルボラ中心であったようにも一部報道されていることで昨年の大震災でヤラれたか?一方で流用説もあり何れにしろ続報が待たれる。

しかし近年でこの手は2008年のナスダック会長によるヘッジファンドの詐欺事件等もあったが、今回はアドバンテストや安川電機など東証一部の名門企業も引っ掛かっていたところを見るに思い出すのが、やはり一世風靡したプリンストン経済研究所だろうか。規模は今回の約半分ながら当時も東証一部の名門が何社も嵌り、帝国ホテルで行われる恒例の同社セミナー当日には同ホテル近所が上場企業の役員車で溢れていたのが思い出される。

このプリンストン経済研究所はクレスベール証券(懐かしい!)、そしてAIJはアイティーエム証券がフィルターになっていたワケだが、これで金融庁は他の同業に加え管理側の信託銀行も一斉調査に入ったようでとんだとばっちり?か。とはいえ、まあ至極マトモなことを言っている真面目な運用会社も含めやはり全てに共通しているのは資産を減らそうが信託報酬なんぞ無情にも徴収されるワケで、その辺の整合性やいろいろな受け皿にされる素地というものもこの辺で一度見直される時というところか。


魑魅魍魎対決

さて、今週は日経平均がスルスルと9,500円を越え、長らく眠っていた東証二部なんぞは株価指数が実に37年ぶりに27営業日連続で上昇するなどさながらミニバブルの様相を呈してきた株式市場である。こんな株式の温まりと共にドサクサ紛れで最近は架空増資事件やら、直近では日本風力開発株をめぐり、兵庫県内に住む主婦がインサイダー情報による株の売り抜けで5,000万円以上の損失を免れていた旨の記事もチラホラ。

こんな普通?の主婦の情報源は当該企業の社長だったという話だが、犯罪も明るみに出てくると一体彼らはどんな関係だったのやらといろいろプライベートも詮索されるものだ。それはともかく、風力といえば原発事故で風力発電所建設が増えるとかで投資を募る詐欺も最近出ているとかで、この辺が今週21日付けの日経紙でも「証券詐欺 手口巧妙に」と出ていた。

業界でも一昔前はよく取引員の上場話を使った未公開モノが一部ドロップアウト外務員の間で横行したこともあったが、FX熱を読みながらマイナー通貨モノや金やら上記の風力開発やらと時事モノを上手く織込む技はかつての営業で鍛えられた賜物か?我々から見ればおかしいのは瞬時に判断できるが、ヤラレる方も生半可な経済知識がかえって災いしている例も多分にある。

しかしこの記事の末尾、「なぜ、本物の証券市場に資金が集まらないのに詐欺の被害は拡大しているのか」の一文は当たり前といえば当たり前ながら苦笑。まあこの手は時流を読みながらまだまだ新手のモノが出て来るだろうしイタチゴッコになるのは目に見えているが、だからこそ先手先手の啓蒙が常に必要になってくるだろう。


決まっている結論?

本日の日経紙商品面には、「多様な選択肢」なる見出しで迷走する東京穀物商品取引所社長が昨日の定例記者会見にて、他の取引所への市場移管や解散の可能性について多様な選択肢の検討を行っているところで、まだ結論が出ていないと話している旨が載っていた。

このまだ結論が出ていないというところに関しては、今の取り組みを重要視するかもっと長期的視点で考えるか、コメは分ける方がいいかどうか委員の考えが分かれている部分があるとのことで、さらに取引所株主においても一部で資産が残っているうちに解散して分配すべきという声もあると先物新報で伝えられている。まあ、斜陽に入った上場企業でも資産のあるうちに解散して資産分配してきた事例もあるしこの辺は至極当然な意見だろう。

さてこんな折に、これまでコーンや大豆などの国際商品はTOCOMが受け入れ、小豆などについては関西商取が受け入れとの方向性も一部伝えられていたところが、ここへきてこの関西商取が全商品の移管を申し入れるとの話も同時に出てきた。まあ東穀取解散報道をリークした向きと同様のソースだけに何ともという感じだが、何れにしても先ず結論ありきなのかどうか正式な発表を待ちたいといころ。