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呼び水効果とモラル

東証REIT指数は週明けも大幅続伸、1,000の大台を突破したはつい先日であったが早くも本日は1,100超えとまたも台替わりの動きとなっている。例年アノマリーでも年末はREITの物色がよくいわれるところだが、今年は更に周知の通り日銀が10月に決めた追加金融緩和を受けて、社債等と並んで資金流入が加速している。

何でも先駆けというのはあるが、つい先週当欄でJASDAQ-TOP20ETFを取り上げた通りでやはりこれもこのパターン。ただこちらの場合は相手が日銀で今月からいよいよ始動とのこともあって、当のREITばかりでなくそれら関連の銘柄も明らかにこれを意識してこのところ急騰しているものが多い。

最近では当の受託信託にまで物色の波が押し寄せてきている模様で、日銀側としてはこの活況を鑑み所謂「呼び水効果」が出始めたなどとしているが、実際例えば選定に始まり手数料等従前通りなのだろうか?次はETFという流れになろうが、双方共に公正さというか透明性を持たせなければ後々にまたモラルハザード等の問題も出て来るのは想像に難くない。


企業政策とファンド思惑

本日の日経平均は後場からジリ高へ転じたが、新興市場の方は来週にJASDAQ-TOP20指数ファンドの設定が控えていることもあり、朝方から中小型株への物色が活発であった。さてJASDAQといえば、先週は先にMBOの実施を発表した幻冬舎の株式を英領ケイマン諸島に本籍を置く投資ファンド、イザベル・リミテッドが議決権ベースで30.6%取得していた旨が話題になっていた。

同社は現況TOBを実施中であるが、その価格は一株22万円、直近の軌跡では先月末から手当てしていた模様。週末から株価は一服しているものの、曲がりなりにも買い付け価格を挟んで横這いであった水準を上回ってきているだけに予想外の第三者介入には一部で思惑も出ている。

当然その性格からは抜け目ないEXIT狙いというところだろうが、ファンドといえば2部に上場している都築電気にも約四分の一を待つ大株主としてあの高額納税で一躍話題になったタワー投資顧問が直近で登場している。こちらは元々子会社株のTOBに応じず後の株式交換に乗じ、首尾よく安上がりなコストで株式を取得出来たという計算である。

他にも、あの村上ファンドの辣腕組がシンガポールに拠点を置くファンドも一部親子上場組の株式を粛々と買い集めている動きあり、上記ファンド含めこれら昨今の上場企業の傾向を睨んでの動きとも取れるが、何れのパターンも会社の思惑通りに事が運ぶとは限らない例となっており今後も番狂わせ?なケースがまだ出てくる可能性もあるか。


狭まる効率営業

さて、今週は6日付けの日経紙にて「円高の年の冬ボーナス・外貨投資 狙い目は」と出ていたが、円高といえば先週あたりから入ってきたニュースには「通貨デリバティブ」を購入した中小企業が多額損失で経営難に陥っている事例から、金融庁が同商品の販売方法や取引先の損失状況などについて実態調査に乗り出すという報もあった。

そういえば先週3日付けの日経紙夕刊一面にも、06年から07年に発行した円高で支払い金利がハネ上がる仕組み債でここ近年各地方自治体が損失拡大しているという記事も目にした。しかしこの手の話は続々と出て来るが、今に始まったことではなく二年前だったか駒澤大学や立正大学のデリバティブ損失も大きな話題になっていた記憶がある。

さてこうした被害者?というか顧客側をザッと眺めてみるとなんとなくだが共通項は毎期決まった入り勘があって且つ特段設備投資の用もないというところが多い。辣腕の営業なら先ず効率を考えこの辺を集中的に落しに入ったのだろうが、幸運?にも手垢の付いていない向きなどは売る方が心配になるくらい決裁が単純なものという。果たして今更の大騒ぎになっている訳だが、この期に及んでどういった商品内容なのかを精査するところは少なくない。

ある程度の敗戦処理が片付いた段階で、顧客側もこの手の物への再考論など出てきそうだが、7日付け日経紙にも金融庁が金融機関に対して、投資信託を勧誘・販売する際の利用者への説明を丁寧に行うよう求める旨が出ている。証券界では所謂「仕切り」と共に長い歴史を歩んできたこの回転売買も然り、この時代になって漸く売りの手法も転機が近づいてきたという感じがする。


進展するか?総合取引所構想

さて、今週始めの日経紙社説には「もっと国際化を進めたい東京金融市場」として、株式や債券、商品などを一体的に取引できる「総合取引所」構想を政府が新成長戦略の一つとして進めている旨が触れてあった。

文中には「縦割り行政が解消されれば、例えば値動きが商品相場に連動する投資信託を東証に上場し易くなるなど、運用の選択肢の幅が広がる。」等も出ていたが、この辺は既に個別で進んでいる感じ。そういった意味では証券系の昨今の動きなどバブル期のそれとはまた違った感触も受ける。

漸く重い腰が上がり始めたかのようにも見えることで、東証ホールディングス説や日本アジアホールディングス説など様々な絵が彼方此方で喧伝されているが、持ち株会社方式を語る前にやはりネックになってくるのが省庁間のしがみつきだろうか。ぶら下がる各取引所にしても、ちょうど今のTOCOMと東穀取の関係に見られるように不採算の臭いがする向きとは一緒になりたくないという思惑もある。

そんな向きが混在しドロップアウト組も出始めた国内の各取引所は目下のところ地盤沈下が進行しつつあるが、周りでは10月に当欄でも書いたようにシンガポール取引所がオーストラリア証券取引所の買収に向けた動きを見せるなど粛々と事は進行中。そういえばこの一件でも大株主の東証には何の相談も無かったそうで、こんなところでも蚊帳の外?


脇役の脚光・2

昨晩のNY市場では金がまた最高値を更新していたが、メタル系では5日付け日経紙一面にも同市場で先週末の銀の国際価格が約30年ぶりの高値水準にまでなっている旨が載っており、週明けもまた続騰である。これもまた今迄述べて来たように米国の追加金融緩和で投機資金が流れ込んでいる影響が多分にあり、実物資産が次々とターゲットになっている。

さて、銀といえば先の10月にも取り上げた通り、先行する金を引き合いに金銀比価論や史上最高値までへの伸びしろなども取り沙汰されていたが果たしてこうした割安?感が奏功し消去法的な買いもそれを押し上げている。ファンダメンタルズとスペキュレートの両面でコモディティーはその値を形成しているが、工業メタルなどはファンダメンタルズが褪せると逃げ足も速い。ただ今回は金とのリンクがいわれている中、そうしたサポートもあって下値は堅いとの見方もある。

ところでこれに限らずサブ的なコモディティーの逃げ足が速いという部分には、かつて破綻したファンドや投機筋などが買占めを謀った例にも見られるように当然その市場規模という問題も背景にある。昨日は出来高を伴い住友鉱など物色されていたが、これとて銅絡みではLME在庫の半分以上を一部トレーダーが押さえているとかで警戒論も一部にある。

またここ数年ETFが増殖しているが、当初はこの市場規模云々で警戒論が其処彼処で飛び交ったものだ。事実水面下では上記の銅など地金不足で対応不可なケースも出てきているものの、それでも現在ではラインナップが続々と続く。結局その手当て買いも広義では上記の筋に近いものがあろうが、産業界では依然として警戒論が強いのも当然といえば当然か。


JASDAQ-TOP20

さて、ETFについて直近ではパラジウムETFや新規モノではVIX指数を対象にしたものなどに触れたが、新規モノといえば先週末には「JASDAQ-TOP20ETF」が先月16日の上場承認を経て大証に新規上場の運びとなった。

ご存知の通りJASDAQ-TOP20は、ジャスダックとヘラクレス(旧)の市場統合と共に算出が始まった新指数であるが、果たして初値は基準値1,597円を上回る1,623円で寄ったもののあと売られていたが、本日は全般膠着の中で新高値と順調な滑り出しとなっている。

しかし、やはりモノは新興市場だけに個別で時価総額の小粒な物はそのインパクトが大きい。組成の為に前日までに買い付けの用があるものの、上場承認時の先月16日から例えば「ベクター」は80,000円から152,500円、「ユビキタス」は143,000円から289,000円などそれぞれ株価は一週間そこそこで倍化するなど急騰、まさに新興市場の本領発揮といったところか。

斯様に当のETFが上場する前に目敏い向きは単発で一回転が利いたといったところだが、このETFなど安定してくれば機関投資家などのベンチマークとなる可能性が一段と現実味を帯びて来る。またこうした組成もそうだが他との差別化という意味合いも含め新市場の真価が問われてくるのはこれからだろうか。


現物志向色々

さて今週は週初の日経紙上で、絵画など美術品のオークションが長引く景気低迷により落札価格が下がったことから、これに参加する一般の人が増えている旨が載っていた。同紙には絵画や陶磁器の「投資適格順位表」なる物も載せてあったが、斯様にこの押し目?を投資対象として捉える側面も書かれている。

さて、こうしたパブリックなものから有名芸術家作品が続々登場するのはクリスティーズやサザビーズなどやはり大手どころ。今週はまた作品価値66億円を超えるといわれるパブロ・ピカソの未公開作品が大量に見つかった旨が報じられていたが、このピカソなど「ヌード、観葉植物と胸像」は美術品最高額の約100億円で競り落とされたのが話題になっていた。

上記のパブリック系ではまだまだ手頃な出物が出て来ているようだが、こちらは名品を手放す向きがある一方で主要国の金融緩和で大量に出回った過剰流動性がこれらを呑み込み、作品全般で価格も急上昇という。

近年コモディティーがより一層金融商品の色彩を濃くし始めたのは周知の通りだが、そこで受け皿から溢れた一部は美術品という現物への志向も強くしている。以前当欄で書いたようにリーマン・ショックの二年前にはサザビーズがピカソの名作「アルルカン」の出品を市況低迷から延期するまでに至った経緯があるが、金融緩和はアート市場の冷え込みまでも転換させるか。


脇役の脚光

月替りから世間ではクリスマスのイルミネーションが其処彼処で目を楽しませてくれるが、ジュエリー関係も売り込みに余念がない。GINNZA TANAKAなども明日からフェア開催とか案内が来ていたが、今年はノーベル化学賞の受賞対象研究の触媒に使われたとかでパラジウムがにわかに浸透してきているらしい。

PGM系は日本では工業用と並んで特にジュエリー需要も強い国だが、本流のプラチナとは違い値も半額なら重さも6割程度と手軽なのが人気らしい。そんなこともあってTANAKAと同じ銀座の和光では、パラジウムジュエリーコレクションとして専門コーナーも設けた模様。

さてジュエリーも斯様に人気化し始めてきたようだが、当の相場も600ドルの大台に乗せてからはや700ドルの大台へコマを進めるなど急上昇しており、このところは特にETFなど上場当時からするとなかなか活況になってきている。

ETFSモノや、三菱UFJ信託モノなど当欄では先に取り上げた通りだが、金の影に隠れて?ここ数ヶ月は可也の上昇ぶりを見せ三菱UFJ信託モノなどは夏場の上場からはや約5割も上昇している。これで商いが安定してくるようであればしめたものだが、コモディティーも証券モノだと定着が早いなとつくづく。


2010年度「商品先物ネット取引データ調査・分析結果」を公開

10月末時点で商品先物ネット取引サービスを提供する14社に対し、11月8日〜11月19日の期間で実施した「商品先物ネット取引データアンケート」を集計・分析した結果を本日12月1日に公開しました。総口座数・実働口座数・預り証拠金・月間売買高など各項目別に結果を公開しランキング表示を行っております。

▼商品先物ネット取引各社データ(2010年10月度)

【調査結果サマリー】
★預り規模は前年比4.9%増の423億円(公開12社では418億円)
★口座数は前年比4.4%減の27,300口座(公開12社では26,765口座)
★売買高は業界全体の21%の106万枚に(公開12社では105万枚)


【調査分析結果全体数値】([]内は公開企業数値)

1. 総口座数         27,300口座[26,765口座]
2. 実働口座数A        9,461口座[9,241口座]
3. 実働口座数B        8,596口座[8,431口座]
4. 預り証拠金        423億円[418億円]
5. 月間売買高        106.3万枚 [105.1万枚]
6. 口座増加数        -1,267口座(4.4%減)
7. 口座稼働率        34.7%
8. 1口座あたり預り証拠金   155.0万円
9. 1口座あたり月間売買高   112.4枚
10.1担当者あたり預り証拠金  4億1896万円


月間売買高 対業界全体比較(2000〜2010年)

月間売買高 対業界全体比較(2000〜2010年)


【掲載項目】
[総合]

2010年10月度ネット取引各社取引データ一覧、関連データ業界全体比較
[各種ランク]
総口座数、実働口座数、預り高、売買高、注文件数、口座増加数、口座稼働率、枚数/オーダー、1口座あたり預り・売買高、1担当者あたり預り・売買高、企業内シェア(預り)

▼商品先物ネット取引各社データ(2010年10月度)

アンケートにご返答頂いた企業・担当者の皆様、お忙しい中ご対応頂き誠に有難う御座いました m(..)m


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星獲得は別れ時?

11月も本日で終りだが、例年この時期になると話題になるのが「ミシュランガイド」か。はや日本進出から4年目、今回の東京版の内容は横浜・鎌倉へとエリアを拡大、三つ星は3店増え14店、これで先の関西版と合わせると26店となり、本拠フランスの星と同じ数となったと過日報道されていた。

本日たまたま立ち寄った書店にて買うまでもないのでパラパラと捲ってみたが、その内容は一応大義名分的に安価な店にも星を与えているような構成にはなってはいるが、本流はやはり上から目線の印象が強い。今や御節のシーズンだが、今年も星獲得の経験組が絡んでいる店のものは内容の割になんとも強気な価格設定になっているのがヤレヤレという感じ。

ヤレヤレといえば、アジアで初の試みとなったこの本が発売された3年前には「ザッと見て少ないながらも行った事のある店で確かにあそこは旨いと思った所もあるものの、約三分の二は明らかにもっと美味しい他の店があると思った次第」と当欄で書いた事があるが、今回その「もっと美味しい他の店」の一部が新規に星を獲得していた。

しかしながら「時既に遅し」?その当時とは違ってロケーションもお約束な一等地へと移転し、値も上記の御節ではないが、いわゆるその他の勘違い店よろしくインフレ?進行中である。これで予約も難しくなるだろうし近年大手ホテルとのコラボなどショー的要素の強いものへ手を出していたあたりから危惧していたものの、気に入って通っていた頃のイメージが強いので何とも残念な気もするが、まあ各々の道があるのでこればかりはなんとも。


規制の整合性

本日の日経平均は円高一服で輸出関連株の物色から小反発となっていた。さて株式といえば先週は東証の社長が記者会見にて、前々からいわれていた企業が公募増資を実施する前の株式のカラ売りについての規制を検討すると正式に表明している。

このカラ売り規制、以前より当欄ではインサイダー天国を指摘してきたが、増資前にカラ売りをした投資家への新株割当を禁止云々とはいうものの、そもそもそれ以前の段階で幹事証券など需要調査で海外の投資家に対してはヒアリングが行われているし、また社内でもこの手の注意喚起通達そのものがかえって外野の憶測を呼びこれまた材料にされてしまうものである。

そういえば今問題になっている件については、一年くらい前にJALが以前やったファイナンスで香港投資ファンドが意図的にフェール交えて払い込み券面を公募新株を使って鞘取りした件が問題になった事があったが、この手の半ば確実?なファイナンスを利用した鞘取りも新手のライツ・イシューやら今度の新規制で果たして消滅することになるのだろうか?

結局いたちごっこでポジションディスクロやネーキッド・ショート・セリング更にアップテイックルールなど次々導入するのも已む無しにも見えるが、何かこう本来の市場機能が次々と失われてしまうような気がしないでもない。お茶濁しもいいが、上記の通り証券サイドへの規制強化や一方で投資家へはワラントの有利発行などいろいろ考察すべき点はあると思う。


エクイティと為替

さて、今週からスタートしたもので注目だったのは、やはり東京金融取引所が22日に上場させた「くりっく株365」だろうか。もう関心のある向きには周知の通り「くりっく365」の株式版だが、FX同様に店頭CFDなどとは税制面やレバレッジなどでの優遇面が謳われている。

公設市場で行われるものとしてこの商品、やはり比較し易いものとしては大証の日経225先物ミニだろう。今週適用分で一枚33,000円と現在の日経225ミニ一枚分と同額であるが、面白いのは朝方まで取引出来る点だろうか?大証ではイブニングセッションが今年の夏から延長されて23:30までとなったが、ちょうどNY市場が始まる時間に終ってしまうある一種の「オアズケ感」のようなものがあったのだが、こちらはDOWを眺めながらの取引が出来る。

また、初値となった10,097円に見られるように、呼び値は大証の225ミニの5円に対してこちらは1円、かつては外部環境の消化難から相場が凪のように小動きとなった時など225先物より呼び値の狭さを狙って225ミニに商いが流れたこともあったが、更にこちらは1円であるからこの辺と同様な動きで更に金融取へ一部シフトなどはたして起きるか否か?

ただ、取引期限無し、金利・配当相当額受け払い有りなども優位点として謳ってあるがこの辺は個人的には賛否両論。また、「日経225」と共に人気のある「独DAX」や「英FTSE100」も同時スタートとなったが、ラインナップに何故「NY DOW」が入っていないのか一寸不思議でもある。

しかし、株価指数先物取引が御家芸?な大証は周知の通り既に昨年の7月からFXに参入しているが、それに遅れてこのFXが御家芸?で先駆していた金融取が今回株価指数に参入してきたワケだが、エクイティと為替を一つの取引所でという発想は共通。後発参入商品が御家芸な他所からお株を奪うのは容易ではないが、はたして夫々どうなるか暫く見守りたいところ。