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銀行も社債も

本日の日経紙には、東京都が主導し、企業の社債を束ねた金融商品で2件目の元本割れが出ることが確定した旨が出ていた。これは所謂広域CBOと呼ばれるモノで、みずほグループが07年に「エクセレント・コラボレーション」の名で証券化商品として発行した総額約160億年のモノとか。

これは東京都知事が、単独では社債が発行できない中小企業でも無担保・無保証で資本市場から資金調達出来るように提唱した所謂「債券市場構想」に沿ってスタートしたものだが、そういえば昨年のちょうど今頃にもこの広域CBOが元本割れを起こし約130億円を棄損した旨も同紙で見た記憶がある。

背景には中小企業の経営が悪化し返済が見込みを下回った為だが、「エクセレント・コラボレーション」なる名称が今となってはなんとも寂しい。もともと半ば自治体がお墨付きを与えているようなものだけに元本割れに納得がいかない向きもあろうが、東京都といえば「新銀行東京」を見ればこれらの共通点として審査の脆さが連想されよう。

そういった点と共にこの手は組成上の都合もいろいろとある場合が多く、この辺も与信の甘さに一役買った部分があるのは否めないだろうか。上記の銀行と共にアイデア自体は否定できないが、昨今東証での新興企業破綻事件に見られるように審査の重要性を考えさせられる事例である。


地盤沈下の足音

本日の日経紙には韓国政府が市場整備による商品取引の活性化を通じ資産運用など国内の金融ビジネスを発展させることを意識して、15年の商品専門の取引所設立を視野に、対象商品を段階的に広げてゆく旨の記事を見掛けた。

この構想としては、先ず12年1月に韓国取引所(KRX)傘下に金の現物市場を開設、取引実績を積み上げながら市場認知度を高め14年をメドに農産物や原油、石油などへと対象を拡大してゆくという。

ところでアジアでは先週にシンガポールも開設準備中の同国マーカンタイル取引所(SMX)が原油相場の国際指標WTIなど3品目の取引を8月から開始する旨も出ていたが、WTIと北海ブレントがアジアの取引所に上場されるのは初めてのことである。また、4月中旬には既存のSICOMにてロブスタコーヒーの先物が上場されているが、ロブスタといえば東穀で上場されているそれはほとんどM・Mで既にその意味を為していない。

斯様にアジア圏近隣では着々と新規モノの構想が進行しているが、対照的に勢いをすっかり失っている国内商品取引所がいやでも懸念される。足元では原燃料の大部分を輸入に依存するその体質から価格ヘッジの場を整備するのが急務といわれてはいるが、逆に地盤沈下の足音がヒタヒタと迫っているのが実情である。


葉をかいて根を断つ?

本日の日経紙には国内社債市場において、ノンバンク銘柄に対する選別が強まっている旨が載っていた。この手の社債といえば直近では武富士などが414億円のユーロ建て転換社債型新株予約権付社債の繰上げ償還を乗り切ったばかりであるが、スプレッド縮小の気配は感じられない状況とか。

さて、この消費者金融業界、改正貸金業法が完全施行となってそろそろ一週間が経過しようとしているが、なんでも総量規制では現状利用者の約半数もの利用者がこれに抵触してしまうとか。そうなるとやはり需要の矛先は一部ヤミ金紛いのところへ向けられ、また厄介な問題が出てくるのは想像に難くない。

一部として同紙にはノンバンクの中でもクレジットカード会社のように規制強化の影響が比較的小さい企業の社債では逆に強い需要がある旨も書いてあったが、このカードも楽観視は出来ない。ショッピング枠など総量規制の対象外という部分が狙われ、この枠を使った不正換金需要が早くもビジネス化しているとか。

政府としても激変緩和措置なるものを設けているようだが、本来のセーフティーネットの役割を持たせるとしたらこれは現状不可能といってもいいくらい難しい問題か。消費者保護のもと「葉をかいて根を断つ」のような小さい事ではないものの、利用者と共に業者の縮小も避けられないし、そうなれば過払い請求の構図もまた変わってくる。

何れにしても商品業界と何処か似ているこの業界、暫くはお上の意向に従いその経過を見るしかないか。


関連銘柄諸々

本日の日経平均は薄商いの中を続落し、3営業日ぶりに1万円の大台を割ったが、先駆した銘柄中心に週明けに人民元弾力化から一斉高となった中国関連銘柄もはや売り物に押される展開が続いた。

この中には海運株もあるが、バルチック指数がもう何週間も続落となっている中で週明けに急騰を演じた主力大手など短期ではいい売り場を提供したともいえるか。この辺と同様なものとしては海運と双璧の商社株などもこの部類で、懸念材料を内包する中での反発は結局往って来いとなってしまっている。

斯様に株式は中国関連探しもまた一段と選別色の強いものになってゆくだろうが、一方で商品の方は人民元弾力化からの元上昇で中国の輸入増加に繋がるものの、むしろ現地工場のコスト増など中長期的な影響を指摘する声が多く、上げ幅は抑えられる見通しと日経紙では指摘している。

ところでこの同じ紙面にはガーリックフレークの価格が先月比で2割以上上昇した旨が載っていたが、「食べるラー油」ブームなどで引き合いが強く専門商社も必要量をなかなか手当て出来ないという。大蒜投機については昨年末に触れた事があったが、幕間繋ぎとしてはまだまだこの手が健在である。


就活消耗戦

さて、昨日付けの日経紙には今年4月入社の新入社員を対象に実施したアンケート調査で、入社した会社が「第一志望だった」と答えた人は前の年より15.5ポイント少ない41.9%と、三人に一人が第三志望以下の会社に入っており、リーマン・ショック後の就職活動の厳しさが改めて浮き彫りになった旨が載っていた。

しかし就活と一言でいってもいまや学生も企業も消耗戦の様相ともいえるか。枠?の関係もあっての絞込みその他では、人事部意外からでも何らかの形でかり出され現場の方がかなりおろそかになっている弊害も起きており、学生側としても講義欠席などこの就活に伴う行動で可也犠牲になっている部分は多い。

考えてみれば大卒という肩書きだけの為に出もしない講義に費用を払っているといえば大袈裟だが、就活行動だけを見れば学生も企業も本末転倒になっている部分は昨今かなり見受けられる。

先週末の日経紙マーケット総合面でも就活に「株式ゲーム」などと出ていたが、立場的見地から企業の方としても学生が講義を欠席せざるをえない面接や企業セミナーの類を平日実施から少し他にシフトするなどの工夫があってもいいのではないか。


利上げより切り上げ

周知の通り昨日から各紙にて中国人民銀行が08年7月から事実上、ドルに固定してきた人民元相場の変動を再度認め小幅で緩やかな元相場の切り上げを再開する方針であると報じられた。

本日から弾力化することになった改革であるが、もともとその時期についてはが5月の北京での米中戦略経済対話か、来週からカナダで始まるG20・首脳会議前のタイミングといわれていたのでほぼ予測通りのタイミングである。

何れにしてもG20首脳会議を前に打ち出してきたこの政策、「外圧に屈した」との印象を払拭する意味で先手を打った感が強いが、先手といえば全然話しは違うが上海万博を前に物議を醸し出した公式PRソングのパクリ疑惑が盛り上がる中、突如として万博実行委員会から楽曲使用申請が為された一件が余談ながら思い出される。

それは兎も角その変動幅は対ドルで年内3%以内の見方が大勢でこれまた下馬評通り、この程度であれば経済への影響は限定的となろうが、ホットマネーの流入からまたぞろバブルやらインフレの懸念は燻ぶる。ただこの辺は経済先進国入りにはある程度の洗礼も避けては通れず程度問題だろうか。

そういえば株式などたしか前回05年7月の制度改正で約2%切り上がった後には、人民元建て資産の関係でH株相場が上がった経緯があった。また為替なども前回はアジア圏通貨ということで円が買われたが、今回はどの程度反応するのか、何れにしても今後のオペレーションとマーケットに注目である。


縦割り行政崩壊期待

さて、今週一番気になった件といえば15付けの日経紙一面にも載っていた「総合取引所、13年までに」という政府の創設方針が固まった旨の記事だろうか。ホールディングス形式にし経営統合する案などを軸に検討する模様で、今年度中に具体的制度設計に着手するという。

再三論議されてきた商品取引所再編も焦眉の急で、折しも直近では中部大阪がTOCOMに市場移管の方向となっている。本命?より先にココがきたかという感じであるが、残る向きも結論を出すのは時間の問題だろう。

しかし、日経紙などでも先月だったか「正念場に立つ商品取引所」として厳しい環境の旨載っていたが、TOCOMと並んで載っていた東穀取などはやはり比較するにつけトップの感覚が違う。この総合取引所構想にしてもTOCOM社長は他との一体化を含む形態に拘らず議論に前向きな姿勢を見せる一方で、東穀取社長は「巨大な取引所になるのはいかがなものか、複数の取引所が競い合うほうがいい。」とコメントしている。

他にも一貫して売買高減少の原因を不招請勧誘禁止等規制強化に尽きるとするなど、一頃の一部取引員経営者と思想が重なる。数年前に「どうも農水系というのは取引所含めた諸々までいろいろな温床になっている感」と書いた記憶があるが、ココも中部大阪以上の迷走で悪しき官僚意識が足枷になって体質転換の遅れは否めない。

何れにせよ今後政務三役で議論が進められようが、漸く縦割り行政の悪しき構造が解消する時期が近づくと共に、様々な懸案解消に期待がかかる。


新値決め

本日のTOCOMでは各上場銘柄が一様に高く石油製品などもこの範疇であったが、これに関しては期近が他限月比で上げ幅を縮小していた。対スポットで裁定が利いていたもののクラックの拡大から割安感も薄れてきたことでリバランスなどあった模様か。

さて、このスポットといえば今月からJXグループなど新しい値決め方式がスタートしている。以前に当欄では同社傘下の新日本石油など製品の卸価格をスポットと共に先物へと連動させる市場連動制を導入の旨をコメントしたことがあったが、今月から先物は外されこのスポット価格に一本化されている。

結局のところベーシスの度重なる乖離やそうなった場合の鞘寄せが想像していたよりも緩慢であった部分が大きかったのか、市況が乱高下するなかマージン確保に苦労した経緯のある数社は、思うように転嫁出来なかった部分を踏まえ最低水準を高く設定してきている。余談だが本日も全面高の株式市場にあっても、これらJXやコスモ石などはマイナス圏の引けである。

ところでこうした元売りの一部要請もあって、再び先月には軽油の先物が復活した経緯があったワケだが、既にその翌月には大手筋が市場連動制でも先物からスポット一本化など先物は梯子を外された格好。もっともその軽油も本日の日中取引での出来高はわずかに期近で2枚にとどまり体をなしていないのが現状、先ずこの辺のリクイディティーを確保しないことには進展のしようもないだろう。


史上最短記録

本日の日経平均は小動きであったが、そんな中でヒッソリと上場廃止を迎えたのが東証マザーズの半導体装置メーカー、「エフオーアイ」であった。ご存知同社、上場申請書類に虚偽の決算情報を記載していた事件が発覚し、監理から整理ポスト入りし今回の日を迎えたというもの。

最終日の出来高は20,400株、ところで規模こそ全然違うがJALの時もそうであったように最終日の売買代金なるものどんな奇特な向きが買うのだろうかいつも疑問に思う。さてそれは兎も角、今迄いろいろと企業の上場廃止を挙げてきたものの今回驚いたのは、新規上場から半年そこそこで上場廃止になったその前例の無い早さだ。

通期決算の経験さえしないようなこんな?箱?は見た事がなく、その酷さに監査法人と企業にばかり矛先が向かうが、株主責任を被った投資家から見れば幹事証券や取引所にも応分の責任があろう。幹事証券は売ったら売りっぱなし、取引所は再三の通報にも重い腰を上げず「本格的に仕組まれたら見抜けない」と開き直るような話ではないだろう。

ただ難しいのは一方では新興市場活性化とのバランスという問題、汚れすぎている水も不正横行の栄養になってしまうが、水清くしてナントカともいう。正規ポスト?との兼ね合いもあるなか、目下新規開設の「東京AIM」も上場企業はゼロである。この辺についてはまた後で触れてみたい。


ワケあり下剋上

さて、先週末の日経紙にはイトーヨーカ堂が今月下旬から大手食品メーカーと協力してメーカー在庫の処分販売を定期化する旨の記事が載っていた。5月末の試験販売では主力大手が参加したが、今後は地方の有力メーカーなどにも幅広く商品提供を呼びかけるとしている。

大手不動産会社などが出資するブランド衣料のアウトレットなどはもう周知の通り確立されているが、この辺の食品等も長引く消費低迷で漸くポストPB?の形態構築に大手が動いてきた感じだ。

ワケありにもいろいろあるが、製品の所謂型落ちや食品などの不揃い物はスペック若しくは味など全く遜色の無いものなど札によってはほんとうに叩けるので旨みがある。反面、同じワケありでも不動産その他モロモロ、最後までその裏を知らない方がいいなどというモノも在り。蛇足ながら金融商品も一部は間違いなくワケありもモノ在りである。

しかし、今回のスーパー戦略などは試験的に始めたワケあり品販売が好調だったことに起因するものだが、最近ではワケあり品=割安との判断直結で思わず食指を動かしてしまう消費行動を読んでワケも無いのにワケありの一言を添えて普通の札で売る業者も多く見かける。こうなるとそうしたプレミアムが乗った分、適正なバリューは如何ほどかとなってくるのだが、その辺がまたワケありなのだろうか。