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各所の空洞化

さて、今週は大阪本拠のりそなホールディングスが東京都に本店を移転する方針が明らかにされている。同行は大阪府や大阪市の指定金融機関で、各種残高においても近畿圏が約4割を占めるなど関西が本拠だが、他の関西系金融も一部追随の動きがある。

例えば住友信託銀行なども中央三井トラスト・ホールディングスとの経営統合を機に本店を大阪市から東京に移す予定がある。ところでこのりそなホールディングスや住友信託銀行に限らず有名な関西企業もまた然り。流通や食品からはダイエーや日清食品ホールディングスが、ゼネコンからは先月に大林組がそれぞれ大阪市から東京に移転している。

斯様な動きの背景の一つには各々企業の維持コストの問題に因るところが大きいと言われているが、こうしたコスト関連としては証券取引所にも同様の問題が出てきた。重複上場をやめる動きがそれで、昨年ではニコンが大阪含めた三取引所へ、富士通ゼネラルもニ取引所への上場廃止を申請、他にも三菱自動車、山陽特殊鋼、東京ドーム等々、今年に入ってからは経営再建中のアイフルも大証へ上場廃止を申請している。

一寸昔には重複上場など知名度が上がり地方投資家の資金誘致にもいいといわれていた時代があったものだが、1999年には1,042社あった重複上場も昨年には773社に減少したという。上記と含めまさに大阪空洞化現象ともいえるが、もっと広くでも国内空洞化が火曜日に書いたようにまた別な部分で進行中であり時代を如実に物語っているか。


食文化の啓蒙

本日は移動の途中で築地を通ったのだが、休場にもかかわらず外国人観光客らしき人々が辺りを歩く姿を見てフト思い出したのが、先週に都が発表した築地市場の冷凍マグロの競り見学が8日から一ヶ月ほど中止になった件か。

このマグロ競り見学といえばここ数年は見学者が急激に増えたとかマナーが悪いとかで見学エリアを年末年始に一時閉鎖した経緯があったが、一寸調べてみたら今回の場合は3月頃から同様に見学者が急増しキャパを超えたとかで9割が欧米からなどの外国人という。

この見学者が急増した時期から察するに今年の場合、当欄でも先月「世論と文化」として触れたように中東のカタールで行われていたワシントン条約締結国会議において例のマグロ問題が否決された影響も多分にあったのではないか?

こんな結果も鑑みて文化を持ち出すのであれば、本来こうしたマグロ見学などはそれこそ外国人に対して日本の食文化等の啓蒙には打ってつけだと思うのだが、何処で要人が混じっているかも知れぬ外国人観光客を業務支障の下にシャットアウトしてしまうのは勿体無い思いがある。許容人数分だけ見学継続させ、溢れた向きには株主総会のようにモニター見学等で我慢してもらう代わりに、美味しいマグロ料理でも試食して貰うなど工夫すればそれなりに満足且つ文化への理解も深まると思うのだが。


国外流出加速?

本日の日経紙で目に留まったのは景気指標の頁で、09年度の国内ベンチャーキャピタルによる新興企業への投資額は3年連続の減少で、08年度の1,366億円の半分程度に止まり、国内ベンチャーキャピタル投資の低迷が深刻な旨が載っていた。

ベンチャーキャピタル絡みというと、IPO機運の盛り上がりがすっかり廃れてしまい取引所でも少子高齢化?が進んでいる記事も見掛けた事があるが、こうした環境その他の件を背景に上場予備軍も海外へ活路を見出す向きも。そういえば直近では未上場組からクリック証券が韓国のKOSDAQに上場申請したばかりだなと思い出す。

このクリック証券も元を辿れば上場子会社を幾つか有するGMO系であったが、こうした子会社の問題に関しても金融庁は子会社上場のあり方の検討を例の報酬開示と並行して求めている。しかし東証側としては、上記の通りベンチャーに勢いがない現状では企業内ベンチャーなどに期待するほかなく、上場子会社を過度に規制するのは不適切といった意見が大勢を占めた模様。

新興企業もVCマネーも国外流出する兆候が気懸かりとはしているが、こうした上場子会社の規制とかその上場以前のIPO基準とか、はたまたもう少し末端ではFXやらCFD規制云々、監督する側も臨機応変に規制の手綱をコントロールしないとこうした流出の問題は根本的にはなかなか収まらないのではないかとも思う。


人気の分れ目

さて、昨日の日経紙には2009年度の東京証券取引所におけるETFの売買代金が1兆9,534億円と前年度に比べて14.7%減った旨が載っていたが、この減少は4年連続でなかなか取引の裾野が広がっていない模様。

このETFについては度々触れ、最近はその増殖ぶりから先月末に「〜こんなペースからすると今年はETFの品揃えが100銘柄の大台を超えるのはほぼ確実だろう〜」としたが、この時にコメントしたETFセキュリティーズ物は一気に14本の上場であったものの、その売買代金は合計でもたしか1,000万円に満たなかった憶えがある。

その後も時折見ているが銘柄によっては出来申さずの日があったりでなかなかパッとしないものが目立つが、同じコモディティー物でも一方では先週27年ぶりの高値に沸いている金関係ETFなどは活況。金価格連動型はここ数億円の売買代金で推移しているし、SPDRゴールド・シェアなども同様にここ数億円の売買代金で推移しているなど前述の商品とは桁違いである。

同紙によれば米国を中心に海外ではETFの一日の売買代金が平均で7兆円弱に達するという。上記の個別で見れば格差としてはこのくらいのものになるであろうが、金融商品はリクイディティーを確保し活況を呈するものと笛吹けど躍らずなものが実にハッキリしてしまう。ETFに限らずワラントその他もなかなか面白いものだが、リクイディティーが付いて来ないのがなんとも歯痒い感がある。


先物市場も席巻

今週はたしか一昨日だったか日経紙夕刊一面にて、2009年の商品先物取引所別の売買高ランキングで中国・上海先物取引所が前年の6位から一気に首位に躍り出て、前年は1位であったNYMEXをも上回るなど大きく躍進している旨が一面に出ていた。

また、さしずめ日本の東穀取にあたる穀物系を上場する大連商品取引所は昨年同様に2位をキープ、そしてトップに躍り出た上海商品取引所は日本のTOCOMに当たろうかというところだが、さてそのTOCOMは順位を昨年の10位から11位に下げて2000年以降初めてベスト10から転落していたという。

ちなみに同取引所は、平成21年度の取引高が年間で計2,803万2,662枚となり、前年度より24.7%減少したことを今週に発表している。社長曰く、国際的な取引の沈静化の影響が大きかったのが理由としているが、そんな言い訳を尻目に新興国の存在感が一段と増してきた構図である。

目下のところ中国は商いの大半が個人投資家といわれ、その生い立ちが日本と似ているような気もするが、証券市場の方もマル信がつい最近解禁になったばかり。まだ海外マネーの全面解禁とはいかないがバブルを交え?今後の急拡大は想像に難くないか。


春の消耗戦

本日は吉野家の前を通った際に、朝から何気にいつもより店が活況を呈していたようにも見えたが、なるほど本日から13日まで通常価格から業界最安値という旨が店頭のポスターに告知されていた。

この牛丼というか吉野家については当欄ではちょうど一年前の4月にも触れた事があったが、牛丼業界では昨年にすき家が初めて業界最安値を実現、その後に松屋も値下げに踏み切ったものの、肉の違いか吉野家は値下げに踏み切れず苦戦した経緯がある。

さてそんなわけで今回の起死回生を狙った値下げ作戦なのだろうが、その直後にスタンバイしていたかのようにすき家と松屋も更に安い価格帯のキャンペーンを打ち出してきた。これで業界最安値を謳えるのはわずかに数日となってしまうが、なにやら昨年のSBI証券と楽天証券の手数料引き下げ競争を髣髴させる出来事だ。

折しも昨日は同社の2010年2月期の連結最終赤字があのBSE問題当時を上回り過去最悪との見通しも出ているが、なんとも痛々しい消耗戦である。素人考えだが肉が違うなら価格ではなくもう少し素材の優位性というか品質を謳う戦略もオプションとしてはあったのではとも思う。

この辺はファストフード界では例えばマクドナルドも低価格で右往左往した時期があったが、ここ直近は一部高級?化が奏功している。ちょっと昔の話になるが、かつては吉野家も赤坂に高級路線店を出した事があったが逆にこんな時代、ファンにはウケると思うのだが。


再編途上

さて、新年度入りした先週は多くの企業が一斉に入社式を開いたが、1日以降の大手紙でも合併や統合などで誕生した新会社の全面広告などもまた数多く目に付く。

株式市場でもこれらのうち石油業界では二社統合組のJXホールディングスが上場、また保険業界では二社統合組のNKSJホールディングスも新規上場を果たした他、三社統合組のMS&ADインシュアランスグループホールディングスも誕生した。

斯様に一部では破談が相次ぐ一方で合意に至った統合組が新しい出発をしたわけだが、上記のJXホールディングスはこれで国内シェア3割強となったものの、内需縮小などで経営環境は不透明だ。保険にしても内需型のこの市場の特性として世界景気回復の恩恵を受け辛いとされ、市場の頭打ち感とも相俟って収益の成長性は必ずしも楽観できるものではない。統合をテコに上流部門強化や再編メリットをどの程度活かせるかが問われ、株価も今後それらを織り込んでゆくことになるか。

そうそう、大阪証券取引所もこの新年度入りにジャスダック証券取引所を吸収合併したが、他の国内新興市場にしても新規上場はもとより取引自体が低迷している現状下、こちらもまだまだ再編の芽があるといえようか。


4月の催し色々

さて、エイプリールフールが終るとここ近年は直ぐにイースターとなるが、イースターというとどうも日本ではクリスマスに比べれば静かなものだ。投資家でも先週末の海外市場休場が「Good Friday」というのは知っていても、「Easter」は知らないなどという例もあるくらいでなんとも理解に苦しむものである。

それでも一部インターナショナルマーケットでは子供向けの「Kinder」がレジ近辺にディスプレイされたり、欧州系のパティスリーショップにはイースターエッグが早くから並び、先週末は例年の如く『ニコライ堂』や紅梅坂の近辺は多くの外国人で賑わいを見せこの季節を物語っている。

例年このイースターには大使館関係者などの都合もあり知人宅でパーティーが催されるのだが、そこで振舞われるラム料理もこれまたこの時期独特のものである。料理といえば欧州ではこの時期食料品を扱う店までもが閉まる場所も多い事もあって、そういった点で逆にこの時期イースター関係の食材が豊富に手に入る日本は便利という外国人の意見もよく聞く。

新年度に入っているが、外国勢と共に厳かな鐘の音色とこうした催し物で漸くリセットされる気分になってくるものだ。


4/1よりロスカット制度の基準を変更へ

セントラル商事は、ホームトレード「With」のロスカット制度を4月1日付で変更へ。

▼ロスカット制度変更のお知らせ(PDF)


(旧)取引本証拠金基準額の総額に対する値洗い損失が30%に達した場合または超えた場合
(新)有効比率60%(損失許容範囲40%)に達した場合または超えた場合

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花冷え下の華

さて、昨年は期末と新年度の合間をぬって『池坊展』へ出掛けたが、今年もまたお誘い頂いたという都合もあって今週は同展を観てきた。今年の桜開花は平年より7日ほど早かったらしいが、花冷えも影響してか会場付近の上野公園は昨年ほどの混雑をみせていなかった感も。

ちょうどボルゲーゼ美術館展が開催されていた事もあって平日でもそこそこ人が多かったが、池坊展の方は余計な人の流れもなく丁度いい感じであった。さて、昨年はトロピックな素材の多用を新鮮に感じたが、今年も昨年見たアンスリウムやストレリチアに加えモンステラなど大振りの葉や珍しいオーキッド類も目立ち、その組み合わせの完成度はさすがに見事であった。

この組み合わせといえば、竹などが意外にトロピカル素材に合うのが解ってきたが、アンスリウムに桜や紫陽花とか、百合に松とか胡蝶蘭に桜等々素人目には通常合わせに考え辛い物を縦横無尽に合せしっくり全体を纏めてしまう技にはやはり感服。それにしてもどれも素材が素晴らしい。

ところで昨年の秋には当欄でフラワーデザインコンテストのクイーンズカップに触れ、花と組み合わせた物に毛糸球や羽毛など面白い素材を指摘した事があったが、今回の池坊の中にも芥子に色とりどりの風船をあしらった作品や人形を添えた作品もあり、思わずそれらを彷彿させる一面ありでまた新しい感性を感じた。


国際商品への反応度

さて、もう年度末だが今月は久し振りに「日経・東工取商品指数」など大型商品の上場があったが、もう一つ商品モノの上場イベントといえば9日付けで触れた、ETFセキュリティーズの国際商品価格連動型の14本のETFの東証上場もあった。

前回のETFセキュリティーズ物といえばメタル系5本の上場であったが、今回はDJ-UBS総合商品指数とそのサブ指数4類型商品指数、9種類の個別商品指数連動型である。このDJ-UBS総合商品指数など商品投資に際して広くベンチマークとして利用されているが、初日のそれは寄りの一本値で売買代金は9万円一寸と可也寂しかった。

他、初日の概況としては初モノと囃されたガソリンなどは寄りから9%上昇して終了と一部報道されていたが、これも後場に入ってからの寄り後のわずか20口の値付けで値が飛んだに過ぎず、TOCOMでは既に立会い休止が決定したアルミニウムなども寄り一本値で売買代金は5万円ちょっと、穀物指数に至っては出来申さずと総じて様子見気分が強かった印象である。そんな中でも目立ったのはCFD等でも一部人気のある小麦で初日の値付けも最多?で、売買代金も345万円超と上場初日の全14銘柄合計売買代金の約半分を占めた。

それにしても今回は一気に14本の投入。こんなペースからすると今年はETFの品揃えが100銘柄の大台を超えるのはほぼ確実だろうが、上記にも見られる通り要となるのはリクイディティー、値付け商いで辛うじて上場維持してきた商品先物銘柄の如くの指数系一部など含め、これの確保が適わないモノは淘汰の波にさらされる動きもあるのだろうか。


幻の関西連合

昨日は三越にて売り上げに寄与?している中国人観光客の様子に触れたが、百貨店といえば先週はこの三越の近所にもある高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリングが経営統合を破談にした旨の報道があった。

この高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリング、有力リサーチ会社の百貨店評価項目別でも上位に並んでおり、その二社の統合は2年前には当欄でも「まさに関西連合」として期待したものだが、当時もこの話が出る直前までいわれていたように高島屋の単独路線が結局は続くことになるか。

しかし大型案件の破談についてはつい先月に「相次ぐ破談」としてコメントしたばかりだが、手を結んでみたものの産業界に限らず水面下では環境の急変も手伝ってマルになるパターンも多いとつくづくだが、やはりこの業界規模的な問題は避けては通れない道だろう。

実際、百貨店業界は昨年の全国売上高が実に24年ぶりの低水準になるなど市場縮小が継続、こうした環境下での合従連衡の流れであるが、他社も含めて構造的な問題が変わらない中このポストは中堅中心にそうした動きは不可避、まだまだ水面下の動きに目が離せない。