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形式か実質か

さて、今週ちょっと気になった報道といえば、先にKDDIが発表したCATV最大手のジュピターテレコムの株式買い取りが金商法のTOBルールに抵触する恐れがあるとして、金融庁が調査に入った旨の報道である。

周知の通り上場企業の三分の一超の株式を取得するケースではTOB実施が義務付けられているが、このケースでは対象株式を保有するペーパーカンパニーを買収するという間接取得の形態となる為にこのルールが適用となるか否か、当初から関係筋の間でも意見が割れていたという経緯がある。

当のKDDIとしては子会社の買収であって株式取得行為ではないとしているが、個人的には議決権の絡みなどでも一般株主を飛び越えて支配権の異動が起きるわけでこの辺は如何なものかとも思う部分があるが、さて今後どういった解釈がなされるのか関係省庁の判断が待たれる。

そうそう、この件に関してもう一つあった。当日にKDDIが行ったこの件のディスクロで、この情報開示があってからもなお大引まで取引が継続されたという点。以前のジャクダックなら取り立てて話題にもならなかったが、大証のシステム移行後は取引時間が大証と同じく延長されているにもかかわらず、本件の開示は従前通り15時キッカリに行ってしまったのはウッカリミスとも取れいかにもお粗末である。金融庁が本件で動いている折、東証などもこの辺の監視のあり方が問われるのではないかとも思う。


節分

街中の商店などにはこのところ柊や豆などが店頭に並んでいるのを見るにつけ季を感じていたものだが、本日はご存知の通り「節分」である。元来、季節を分ける事から由来し立春、立夏、立秋、立冬の前日はいずれも節分なのであるが、やはり通常は立春の前日のみを指すのが普通か。

一般的によく見られる光景では年の数プラス一個の炒った豆(中には魔滅と書いてある処もあってなるほどと感心)を食べて無病息災を願うものだが、小さいうちはともかくいい加減年をとってくるとこの食べ方にも一苦労となかなか笑えない。

さて、相場関係では昔から「彼岸底」と共に「節分天井」なる格言があるが、米相場の頃なら兎も角、もう現代となってはマジメに株式のデータなんぞを拾ってみても殆どと言っていいほど相関性は無く、むしろいつも年初に書いているような十二支の年間展望の方が当たっているかのように見えてくるから面白い。

そういえば年初の相場予測では節分天井で11,000円以上を指摘する向きが一部大手証券始め幾つかあったが、理論的な根拠が無くても相場に携わる者としては自信のない相場観に色を添える意味合いも何処かにあって、使いたくなってしまうのもまた致し方ないところでもあるか。


機動性と主導権

本日は異業界の連中と話をしている折にレアメタルの話題が出たのだが、先月末の日経紙夕刊一面でも「レアメタル価格急伸」との見出しで、電子機器やエコカーの生産に欠かせないレアメタル国際価格が相次いで急伸している旨が載っていたのを思い出した。好調を維持する中国の家電消費に加えて、日本で自動車や家電の生産回復を受けて需要が上向いたのが主因との事。

そんな記事が出てから数日後には、同じ日経紙の一面に東証がこのレアメタルに投資するETF第一号の上場を年内にも目指す方針である旨の記事が載った。信託銀行が管理全般を出来るようになるという規則改正からこうした物も実現可能になったわけだが、このレアメタル、当欄でも何度か触れ昨年にはこれ絡みで脱税発覚などというのもあったなと思い出すが、注目度の高い旬モノだけにその機動性は評価出来る。

そういえば5年近く前だったか、NYMEXが時流に乗った商品の機動的な上場を行っている模様を書いた時、せいぜい同レベルな機動性を持ったモノは国内ではワラントくらいしか見当たらずこの辺が今後の課題云々とコメントした事があったが、漸くETF等の一般レベルなステージまでこうした機動的な行動の部分は本当に進化が感じられるようになって来た。

ただ原資産としてはこうしたコモディティーというところが目新しいわけだが、矢継ぎ早な機動性を見せているのは何れも証券系というところがまた考えさせられる部分でもある。


放置期間と大義名分

さて、FUTURES PRESSでも既報の通り、先月末には中部大阪商品取引所が、鶏卵・ゴム・アルミニウム・天然ゴム指数の先物市場を3月以降、順次廃止すると発表している。

この鶏卵といえば、昨年の夏だったか鶏卵市場の活性化を目的とした委員会を設置し初会合が開かれた折には、一日の出来高もゼロで取組が僅か2枚の商品は取引所研究報告書提言であるところの、「流動性が低下し発展が見込めない市場について、ニーズのある新規商品への集約を図る方向でその上場を廃止する」という部分に合致しないのか?と当欄では疑問を呈しておいたが果たしてかなという感じか。

いずれも出来高がピーク時からわずか数%にとどまり、「市場としての役目は終った」と今更ながら判断したらしいが、ともあれこれで残る上場商品はオイルと昨年に上場させた金のみとなる。

小出しにするよりまだマシともいえるが、吸収合併した大阪商品取引所時代の3市場もやっと廃止対象というところで、この辺は東穀取が吸収合併した横浜商品取引所の引継ぎ上場商品も大義名分で一定保有期間?を経た後に廃棄処分へというお約束の構図であるか。

さて、同所は08年に関西商品取引所と共に大証とMOUを締結しており、その具体的な協力の一環として新商品に関する共同研究を開始すると同時に発表しているが、これより先にMOUを交わしているTOCOMなどは既に上場している金と白金に連動型のETFを上場意向と発表しており、この辺は金先物などと同様に二番煎じにならぬ目新しいモノが望まれるところである。


「碍務員」?

さて、今月は常用漢字の見直しを進める文化審議会の漢字小委員会などの報道もあって追加を望む漢字等について、日経紙の春秋欄等でもしばしば記事を見掛ける機会が多かった。特に希望が多い中でも長いこと議論されてきた、「障碍」などと使えるような「碍」等は確かに導入が急務だとも思われる。

ところで、漢字絡みでは先に住友生命保険が毎年の世相を表す「創作四字熟語」20周年を記念し、各年を最も象徴する優秀作品を発表しているが、ちなみに昨年のは千円高速で渋滞した現象に絡んで「遠奔千走」。過去の作品で面白いものには93年の低金利時の「利息三文」や94年の「株式凍死」等があったが、昨今からすれば当時はまだ今より夫々マシであったとなかなか笑えない。

こんな四字熟語ではないが、金融系では昔からある不名誉な創作モノに「害務員」等というのがある。証券業界なんぞは「シキリ」が朝から普通にあった時期でもありこれが多用されたものだが、それでもまだ新発のオイシイCBやら、IPOモノ等のアンコが補填用に割当られていた部分もあり或る程度はアメとムチで蓋をして来れたが、こと商品先物業界には一般的にこうした玉を扱う機会も無かった訳だから、かつてはムチばかりでそのまま「害務員」がイメージとして定着してしまった経緯もあろうか。

まあ、一部には自己のハナ替えでこうした玉も無かったわけではないが公に出来る玉でもなく、こんな末端でも考えてみればプライマリービジネス然りアンコ玉然りでインフラの部分こそ遜色のない時代になったとはいえ、こうした営業では箍をはめられていたというのは否めないか。

そうした意味では現場サイドからいえば「碍務員」だったか?ともあれ選択肢多様化に伴って多少は箍が緩むのか、はたまた融合の名の下にオイシイ部分を持っていかれてしまうだけなのかが注目されるところ。


まだまだ「ざる法」多数

さて、週初の日経紙などをパラパラと捲って見ていたら月曜日の法務欄には、未公表の重要な企業情報を使って株式を売買するインサイダー取引の摘発が相次いでいる旨の記事が大きく出ていたが、摘発で最も多いのはTOB絡みで09年は21事案のうち10事案を占めた模様。

まあ「相場に絶対は無い」などといわれる中で、確実に上がるのはこのTOBで逆に確実に下がるのは破綻とも言えるが、昨今はTOBも急増し10年前の10倍になっているのに加えて破綻から上場廃止になる数も急増しているという背景もあって、素地としてはオイシイこの双方に触れる機会が急増した分だけ好環境?になっている訳だ。

そうそう、インサイダー取引といえば直近では年末にジャスダック上場株を巡って一億円以上もの利益をあげた外資系生保の外務員が居た。余談だが、同外務員の上席にあたる人物と先日会った際にこの話題で盛り上がったのだが、彼は会社でこそ仲間は少なかったものの、ネットワークを駆使した営業で頭角を現していったらしく、これを犯罪までフルに活用し切ったパターンか。

それはさておき、証券取引等監視委員会は起訴された4,500万円の事例とは別に開設した口座で儲けた一億円以上の利益に関しては、所謂「2次情報受領者」扱いになる為に規制対象外から告発を断念した旨がいわれている。フィルターを挟んで抜けるなんとも単純な構図だが、政治資金規正法然りまだまだザル法の課題は多いなと。


金色のマッチ箱

さて、昨日の帝国データバンクの大型倒産速報は一気に5件もの掲載とその多さが目立ったが、其の中でも目を引いたのが(株)東京シティークラブの破産手続き開始決定の報であった。

(株)東京シティークラブというより「シティクラブ・オブ・東京」と言った方のが解り易い向きも居ると思うが、ちなみにバブル経済ピークの頃にあのカナダ大使館のビル内に設立された英国式のクラブに倣った会員制プライベートクラブである。会員制クラブを謳うところはこの頃にそこそこ増えたが、ココは当初他とは一線を画しそれなりの客層が多く揃っていたのが印象的であった。

まあ、此処は食事などはそのコストからすると失礼ながら普通以外の何物でもなくポイント寄与は全くなかったが、それでも立派な調度品に囲まれた落ち着いた空間はやはり他とは異質であったという事もあって、私もかつては打合せなどで何回も使ったものだが、昨年から既にメンバー間では不審視されており果たして年明け早々には休業体制に入っていた。

他の破綻モノが主役なだけについ見落としそうであったが、名門云々問わずこういった二次的、三次的なモノも当然といえば当然なのかなと。ともあれ紙屑に向かう会員権、年会費その他であるが一部には外国人経営陣がとんずらという話も出ている、そう考えると会員権ならぬ劣後債?とか含め何やら年末に破綻してしまった某証券会社に構図が酷似しているなあとフト思った瞬間である。


垣根が復活?

NYでは株式が3日間で500ドル超の下げとなり、日経平均も本日は一時10,500円割れとなるなど引続き世界的な株安の流れが継続、この辺は周知の通り先週にオバマ新政権が新たな金融規制案を発表したものに因るところが大きいが、取り敢えずは消化不良で一旦巻き戻しておこうというところか。

この規制案、1930年代の「グラス・スティーガル法」の復活かといわれ、銀行・証券の垣根を高くする派の元FRB議長のボルカー氏や国際競争力の観点から難色を示すガイトナー氏やらと取り沙汰されているが、夫々の立場もあれば素材も大きすぎるということもあり、ハードランディングしないよう均衡を探るのは容易であはるまい。

また、成長著しい中国経済に絡んでチャイナマネーへの影響も懸念される。ここ最近のGM傘下のサーブを一部買収した北京汽車や、フォード傘下のボルボ等を買収した吉利汽車等を取ってみてもその背景には米投資銀行の影がチラついているし、これから双方にカネが落ちる青写真を描いていた彼らに取って可也厄介な話だろう。

今後は詳細を巡って議会との調整もあろうが、何れにしても思惑で株式、商品その他マーケットが揺れる機会が増える可能性もあるだけにその成り行きには注目しておきたい。


お上も投資家も右往左往

やはりどうしても素材が大きいのでJALネタに傾斜してしまうが、本日の日経紙で目に留まったのは企業総合面、「日航 法的整理-再生はできるか」欄か。冒頭では、TV番組にて2社体制の堅持を唱えてきた国交相の一転した軌道修正発言に対して波紋が広がっている旨の事が載っていたが、これに限らず整理に至るまで折に触れ彼のブレ具合は時系列で追われても仕方無いところだろうと思う。

昨日コメントしたようにこの手の事前予告型などは尚更自己責任を論ずるまでも無いが、中には素直に彼の数ヶ月前の発言である法的整理は考えていないとか、自主再建は十二分に可能とかの発言を頼りに右往左往した投資家も居よう。自己責任の範疇で株主責任を問われるのは当たり前だが、問題はリップサービスが多ければブレも多いその言動か。

一寸この辺の指摘が出るとまた庇う役目もしっかり徹底されていて、日証協の会長などはこれら一連について「発言や報道が交錯しても株価の動きに誰かが責任を持つという事はありえない」とし政府に責任はないとの弁、加えて06年の大型ファイナンスの件でも「当時の情報開示や、引き受けた証券会社に問題があったとは考えていない」とのオマケも付けている。先週もコメントしたように、こんなインチキ増資直前の株主総会で一言もこれに触れず突如として敢行する情報開示に問題は無いのであろうか?

末端レベルでこうした経緯があれば、それこそ間違いなく風説の流布やら開示義務違反やらで応分の処分という方向へ持っていかれるだろうが、上がやる分にはお咎めなしか。しかし市場もそうだが、もう一つ日経紙の春秋に出ていたように空港等に見られる政と官の有形無形の圧力でまともな規律が働いて来なかったという航空政策も本当に罪深い。世界から遠ざかってしまった日本が何処まで地盤沈下を回復出来るか、この際だからこの辺にもメスを入れるいい機会だと思うが。


経営も相場も?

さて、事前予告型という異例措置にもかかわらず会社更生法申請当日も数円のところで厚い買い板が並んでいる様を見るにつけ「腐ってもやはりJAL?」などと妙な感心を覚えたものだがこのJAL、これら申請に伴いリスクヘッジの為に行っている燃料の先物取引について解約を迫られる見通しであると各紙で伝えられている。

主にブレント燃油やシンガポール・ジェット燃油の先物取引ということになるが、これによって現況でJALの支払い義務のうち数百億円(これも日が経つにつれその額がどんどん膨らんでいる)が、債権カットによって取引相手が請求権を失う見通しであるというなんとも後味の悪い強制手仕舞いである。

ちなみにこの先物取引での支払い義務は原油価格高騰時に執行した引かれ玉があってのものだが、もう一つJALといえば記憶にあるのが80年代のドル先物予約だろうか。当時150円以上していたドルであったが10年以上もの先物予約をした結果、長年に亘ってとんでもない相場で機材を購入するハメになったわけだが、こんな案件がよく通ったなと別な意味で感心するが総じて相場モノはボロボロだなと。

知人のJALキャビンアテンダントも相場は上手くはないがまあそれはともかくとして、こうした燃料価格も今後の動向によってはノンヘッジのままでは再建下その影響もさすがに懸念される。この辺のデリバティブ事情も今後どういった形で調整してゆくのか関心が向くところである。


夫々のモラル

本日の株式市場は円が強含んだこともあって続落となっていたが、業種別では金融系が弱く年明けからスルスルと上昇してきた銀行株も三井住友F始めとして軟調を余儀なくされていた。

さてこの三井住友F、今週中には公募売り出し価格が決定する見込みということで引き受け筋からの売り物も云われているが、まあ原理としては値決め日よりも下鞘確実なわけで、これをターゲットとしてショートする裁定はもうお約束だろうか。

しかし当欄で昨年、大手一角の連中とプライマリービジネスはやはり旨みがあると書いた事があるが、昨年12月までに証券会社が得た引受手数料は1,500億円以上にも上っているという。年末の日経紙では「黒子役、市場を圧迫」として無謀な増資を進めれば、企業は株価下落のシッペ返しに遭う、それ以上に憂き目をみるのは個人を含む投資家だ。としているが当の本体もロックアップ期間を過ぎた途端に一転して従前とは違ったファイナンス見解を述べ始める等、投資家を欺くような言動にも問題が残る。

こんな時世で受け側も本音では受けたくない?向きのところも少なくないと思うが、そう考えると少しでも値下がりリスクを回避しようとする上記一連の行動も一概に避難するのは何やら酷な気がしないでもないが、そうなるとやはり掟破り的な大型増資を敢行した発行体に矛先が向くのはやはり仕方の無いことなのかもしれない。


選択肢多様化によるスイッチ

先に野村アセットマネジメントが実施した第五回の「投資信託に対する意識調査」によると貯蓄から投資へという国の方針について、およそ6割が見聞きした事があるとしている一方で、6割近くが投資は必要ないとの考え方を示していた模様だ。

さて、そうした投資は必要ない向きは兎も角として実際に取り組んでいる向きについては、週末の日経紙にて投資信託協会が15日に発表した09年の投信概況が載っていた。それによれば、新興国の株式などに投資するタイプに資金が集まる一方、分散投資でリスクを抑えたバランス型投信への資金流入は急減と、世界的な金融危機で損失を抱えた個人が市場の回復を狙ってリスクの高い商品に資金を移す動きが広がっている模様。

そんな折に週末に報じられたのがFUTURES PRESSでも既報の通り、国内市場の商品に直接投資する初めての投信となるTOCOMの金先物を対象とする投資信託を来月から販売する旨。

同投信が高リスク物にあたるや否やはともかく、日経紙では09年の投信販売額を金融機関別に見れば比較的リスクを取れる顧客を多く抱えた証券会社の販売額が全体の7割を超えているという。さてこの初モノ投信についてはまた後述するとして、現場レベルでも着実にこうして融合ムードが始動してきたなという感があるが、これもスイッチへの序曲となるや否やまた注目である。