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水無月の値上げ

さて梅雨入りの水無月だが、値上げの波は今月も更に広がる。馴染の深いところで日清食品のカップヌードルが3年ぶりに値上げ、同じく3年ぶりに値上げするこの類ではサンヨー食品のさっぽろ一番も約10~12%の値上げ、スナック菓子の類ではカルビーがかっぱえびせん等を約10%、森永はチョコモナカジャンボ等アイス11品目を値上げする。

手軽な外食もカレーハウスCoCo壱番屋がカレーとトッピングの価格を改定、蕎麦のゆで太郎も単品蕎麦屋セット価格を値上げする。食品の類はこのあたりにして、他に金額的に比較的大きくなるものとしては国際線のサーチャージ等が挙げられる。JALは日本―欧州・オセアニア等で約3万3千円、ANAも同路線では3万5千円値上げと今月から一気にアップする。

先月は値上げが通り易いBtoBの業種は好調だが今後は何所まで川下系の価格転嫁が進むのかこの辺を注視としたが、帝国データバンクの調査では主な食品メーカー105社が今年に入り値上げした商品は既に8385品目にも及ぶとのこと。直近の調査データが公表される度にその品目は急増しているが、来月は1ヵ月としては今年最も多くなる試算が出ており身構える動きが続きそうだ。


再開の期待と憂鬱

さて、昨日から政府は入国者の上限を1万人から2万人へと制限緩和している。那覇空港や新千歳空港は国際線発着を再開できるよう準備し他の地方空港についても地元と調整したうえで順次再開を進めてゆく方針だが、これに併せ検疫措置も緩和され10日からは外国人観光客の受け入れも2年2ヵ月ぶりに再開する。

いよいよ待望のインバウンドが再開だが、おりしも世界経済フォーラムでは観光競争力ランキングで日本は公共交通機関の本数やその鉄道サービスの正確さが高く評価され3位のスペインや2位のアメリカをおさえ初めて1位となった。円安のメリットを受けられ地方への恩恵も大きかったインバウンドだけに復活への期待が高まる。

とはいえ今年春から数千人規模の解禁を経て以降も小出しに入国者を増加させているが、コロナ前の平均が14万人だった事を考えると冒頭の2万人では引き続きの小出し感が拭えない。G7並に水際措置を緩和すると表明したわりになんとも心許ない数字であり、インバウンドの取り逃がしが懸念されなくもない。

もう一つ、コロナ前の2019年訪日客の内訳は中国の30.1%はじめ広域中華圏で約半数を占めていたという点。ウクライナ侵攻を巡る新冷戦や当局による新型コロナ政策等に絡み個人消費が国家の方針に左右される中国依存のリスクもまた懸念され、上記と併せインバウンドが直ぐに戻って来るかどうかは不透明なだけに手放しに喜べるという状況には無さそうだ。


事実は小説よりも奇なり

本日の衆院予算委員会の集中審議において野党側からオンラインカジノについてこれを放置するのか?と総理に迫る場面があったが、これに対し総理はこのオンラインカジノについては違法なモノであり、関係省庁と連携し資金の流れの実態把握をしっかり行う事が重要で厳正な取り締まりを行うとの考えを示していた。

野党側が斯様に迫った背景には先に山口県で起きた誤送金された新型コロナ給付金をオンラインカジノで使い切った輩の事件があったからに他ならないが、それにしても当初回収に関して絶望的だったものが一人の弁護士によるサクサクとほぼ満額に近い回収劇はまさに稀代のエンタメを地でゆくような出来事であった。

それにしても一般的に考えられる示談云々から視点を国税徴収法に向けたところがなんとも頭が切れる。これを盾に決済代行業者から更に其の先の銀行にまで暗に圧力?をかけるテクニカルな技はまさに海外ドラマの「スーツ」を彷彿とさせる。しかし代行業者も揃って肩代わり?をしてまで満額に近い返金をしたあたり複雑な事情が見え隠れするが、何れにせよこの事件を機に今後この手の規制が更に一段と厳しくなるかどうか注目される。


ステーブルに非ず

さてこのところ低迷していたビットコインも直近で3万ドル大台を回復してきたが、一昨日の日経紙総合面には「仮想通貨1兆ドル消失」と題して、米の利上げなどから金融緩和であふれたマネーが逆回転した事を背景に暗号資産の世界全体の時価総額が1.2兆ドルと昨年末から46%減り1兆ドルが消失した旨が出ていた。

とりわけ今月は米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインのテラUSDの崩壊が市場で話題になった。なんといっても米ドルと1:1で連動していたモノが昨日は驚きの2セント台までの暴落を演じたワケで、やはりステーブルでもこの辺は担保型とは違った無担保型の脆弱性を改めて目の当たりにした感じだったか。

ビットコインは伝統的資産と非連動のデジタルゴールドなどと呼ばれていたものの既にリスク資産と化している現在では株式と同時に下落の軌跡を辿った今回だが、今後分散型金融サービス等への利用期待も高まるなかで斯様な市場環境の変化等で仮想通貨も一括りから選別のステージに入ったといえるか。


優待制度の在り方

さて、各株主には期末の配当金と共に優待カードなどが各企業から送られてくる時期でもあるが、優待と言えば先週末の日経紙・投資情報面には「株主優待の適用拡大」と題して、東急が株主優待制度を改定しこれまで200株以上の株主が対象だった優待適用を100株以上へと基準を引き下げるなど裾野を広げる旨が出ていた。

昨今の物価高の波を受けてふるさと納税と共にこの株主優待も家計を助ける手段として再度注目度が高くなっており、特に外食系で年2回ほど優待カードや商品引換券などを提供するすかいらーくHDや日本マクドナルドは安定した人気を誇っているが、内容を改悪?した吉野家などは最近の失態と相俟って失望の声も多く上がった。

ところで吉野家のような改悪から更に廃止へと方針転換する企業も一方で増加しつつあり、2021年9月末までの1年間で株主優待制度を廃止した企業は75社と過去10年間で最も多くなっている。優待の活用が難しい機関投資家や海外在住投資家は対象外とされている事などから不公平感を無くし公平な利益還元を求める声に対応した格好だ。

また4月の東証の市場再編では株主数の規定が緩和された事で、個人株主の確保策として優待制度の優先度は下がる事になった背景もあるか。一部の入札等も経て金券ショップに並ぶラインナップもこれから減少に向かうのかどうかだが、冒頭の例と照らし合わせ今後株主優待制度の増減は如何に各企業の取組に注目したい。


ルッキズムの是非 

さてここ最近、近大が受験生向けに発行したパンフレットのコーナー「美女図鑑」を巡って学内外から外見至上主義を煽るのは非常に問題で品性を疑うという旨の批判喧しい議論が起きている。これに限らず近年大学の間では斯様なルッキズムに対して敏感になってきており、既に上智大ではミスコンのミスソフィアを廃止している。

また更にこれらに続き、今週は東京女子大学がミスコンを廃止する旨をツィッターにて大体的に表明している。トンジョのミスコンといえば、これまで数々の人気女子アナを輩出してきた大イベントだっただけに時代の流れに衝撃が走っている。賛否両論喧しいが容姿差別といった一般的問題は理解出来るものの、個人的には何を是とするかはそれぞれの価値観と思う。

大学に限らず近年では社会環境の変化もあり企業のコンプライアンスに対する世間の目も厳しくなってきている事で、テレビにおいても芸人やタレントの容姿イジリの表現など特に作り手側も対応を迫られている。近年のテレビ離れがいわれて久しいが、「水清ければ魚棲まず」まさに過渡期を迎えているか。

上記の大学にしても中高の延長線上での学問のみならず社会に出るまでの人間関係の構築や教養を培う場でもあり、全てに多様性が叫ばれているいまニーズに応じた芽を摘んでしまうような風潮ははたして如何なものか?何を以て是とするのかその在り方について改めて考えさせられる案件である。


今度はMARNI

さて、有名デザイナーのジルサンダーとのコラボ商品などで大きな話題を提供してきたユニクロだが今度は伊・ミラノの「MARNI」との初コラボを発表、先週末の20日から発売開始となったがやはりというか初日は店舗に顧客が列をなし公式サイトもアクセス集中により繋がり辛くなるといった現象なども見られた。

9年ぶりにジルサンダーとコラボした前回はディスプレイのマネキンの服まで剥がされ怒号が飛び交う某店舗の光景などがテレビなどで放映されたのが記憶に新しいが、前回のジルサンダー同様にユニクロフリークの中でいったいどれほどの向きがそんなに狂気じみた行動を取るほどこれらのブランドを認知していたのだろうといつも不思議に思う

それはさておき店舗では上記のようなカオスな光景は無くなったものの、相変わらずフリマアプリ等では早々に品切れとなった商品群が早速発売日に6~7倍の値で早速続々と出品されている。一寸考えればこの法外な値をコラボ商品に出すならオリジナルが手に入るワケで値付けする連中の貪欲さには脱帽だが、コロナ禍でECが活況となっているなか最低限のリテラシーは持っておきたいもの。


IPEF発足

本日の日経紙一面には「IPEF、13ヵ国で始動」の見出しが躍っていたが、来日中のバイデン大統領が提唱する新たな経済圏構想IPEF(インド太平洋経済枠組み)の発足会合が昨日都内で開催された。このIPEF、トランプ前大統領が「永久に離脱」とTPPを離脱しアジア経済の存在感が薄まった米が対中を念頭に主導権復活を視野に入れ打ち出したもの。

創設メンバーとしては日本・アメリカはじめRCEPから離脱したインドなど世界のGDPの約40%を占める13か国が参加、今後はサプライチェーンの再構築やクリーンエネルギーなど4項目で連携を図るが、日本もそうであるように上記のTPPやRSEPを含めた三つはオセアニア地域や南米など重層的に被っている。

そういった事で今後はどうIPEFを差別化してゆくのかだが、一部にメリットがないともいわれる所以は米に商品を輸出したい東南アジア諸国などTPPのような関税引き下げ等が伴っていない点。この辺に関してはバイデン大統領も経済枠組みの各項目で合意に至るには多くの困難が待ち受けている事は明らかとして、IPEFの未熟な点を認め改善を約束している。

斯様に中国の脅威に対抗する為に多くの国を呼び込み実効性のある取り組みを打ち出せるのか米の本気度が問われてゆくことになりそうだが、いずれにせよこのインド太平洋経済枠組み発足はまさに米中対立やウクライナ侵攻を受けた地政学リスクの高まりなどを象徴しているものであるとつくづく。


成長なき物価上昇

先週末に総務省は4月の全国消費者物価指数を発表しているが、変動の大きい生鮮食品を除いた指数は101.4と1年前と比べ2.1%の上昇を見せた。かれこれこれで上昇は8ヵ月連続となり、その伸び率が2%を超えるのは7年1か月ぶりのことで消費税増税の影響を除くと実に13年7ヵ月ぶりのこととなる。

民間シンクタンクの予想では年末にかけてなお上昇傾向は続くとの見方だが、先に発表された4月の国内企業物価指数は1年前に比べて10%上昇と比較可能な1981年以降で初めて二桁の上昇となっており、この川上の数字と冒頭の川下の数字との乖離は依然として大きい事から値上げが浸透しているという状況にないのが窺える。

ともあれこれで日銀が物価安定の目標としていた悲願?の2%超えとなったワケだが、賃金上昇に伴う需要拡大からの物価上昇ではなく資源高等がそのまま反映されたコストプッシュ型の上昇と一般人に厳しい展開なのは明らかだ。当の日銀は緩和継続で景気刺激に軸足を置く姿勢だが、おりしも行動制限緩和でここからリベンジ消費に期待という局面だけに個人消費がこれを退けてなお盛り上がれるか否かこの辺には注視しておきたい。


顧客ロイヤリティ

さて、東京ディズニーリゾートでは本日よりパーク内でより効率的に楽しむ為に待ち時間を短縮する有料サービス「ディズニー・プレミアアクセス」が開始された。利用料金は1施設につき1回2千円だが、パークチケットとの組み合わせによっては1万円の大台を超えて来る事で予算ギリギリの学生など夢の国の魔法からしばし目が覚める利用者も出て来ようか。

思えばこのディズニーランド、開園当初はパスポートも5千円でお釣りがきたものだったがいつの間にかその値段は2倍以上になったとしみじみ。それでも入園者に陰りは全く無いが、思うに例えばアップルもまた個人が主な顧客だが新型アイフォーンの価格を毎回のように引き上げてなお好調を維持、EV大手テスラもまた然りでこちらに至っては同一モデルでも1年で段階的に約3割の値上げを実施してなお納車まで待たされる人気持続で資源高下においても過去最高益を更新している。

こうして見ると商習慣に縛られ?消費者側の値上げ受け入れ許容度も低い事で値上げに逡巡している国内メーカー等とはまさに対照的な構図だが、総じて値上げが通る企業の共通点は上記のようにブランド力があり顧客のロイヤリティが高いという点か。国内では遅々として進まない価格転嫁が課題となっているが、改めてブランディングの重要性を思い知らされる。


保険モノも値上げへ

先週に今月の値上げモノとして明治のチョコレートやレトルトカレー、コカ・コーラの大型ペットボトル、キッコーマンのケチャップやデルモンテ飲料、それに松屋の定食の一部からローソンのからあげクン等々を書いていたが、もう一つこれらと共に今月は保険適用の歯科治療で使う所謂銀歯も1歯あたり数百円程度の患者負担増となる。

この銀歯についてはちょうど1年前の今頃の当欄で取り上げたのを思い出すが、当時はパラジウム高騰で診療報酬の公示価格に対する上鞘が顕著化し歯科医側の利幅を圧迫している旨を書いていたが、ロシアによるウクライナ侵攻でこの高騰に拍車が掛かった事で先週に厚労省が公定価格を約8%引き上げる事を決めたというもの。

公定価格は原料価格の変動を機動的に反映させる狙いで現在3ヵ月に1度見直される事になっており、先月に7%引き上げたばかりであったが上記の事態を背景に7月を待たずに異例の前倒しをしたワケだが、本日はその7月には更に約9%引き上げる事を決定している。ウクライナ侵攻以降かれこれ3度の引き上げから侵攻前比で約3割近くの値上げという事になる。

原材料高騰を受けた緊急措置でもなかなか価格高騰に追いつけない有様はそれこそ今のガソリン補助金に構図が似ているが、キャストウェル高騰による逆鞘問題はウクライナ侵攻以前から始まっている問題で市況変動をダイレクトに浴びている者と政府の肌感覚の乖離をどう機動的に埋めてゆくかは今後も課題だろうか。


TOB繚乱

本日の日経平均は原油高を受け関連銘柄を物色する動きや割安感が意識される銘柄などへの見直し買いも入り3日続伸となった。そんな中で一際目立ったのが終日買い気配で推移し比例配分でストップ高となったプライム市場のキトー株か。米投資ファンドKKR傘下で米クロスビーグループと経営統合する事で合意し、KKR側が同社に対しTOB実施との報が背景になっている。

同社の場合、TOB価格が2725円ということで前日比60%超のアップ率だった事から本日の急騰となったが、本日の日経紙マーケット面でも「次のTOB銘柄に思惑買い」と題し足元でのインフロニア・ホールディングズによる東洋建設のTOB実施など、特に冒頭に書いたような割安感がある低PBR顕著な建設業界等でTOB機運が高まっている旨の記事があった。

ところでインフロニアといえば自身もその経緯はなかなかひと悶着のあったTOB劇を挟んだものであったが、今週期限を迎える上記のTOBも任天堂創業家の資産運用会社が割り込んで来た事で暗雲漂う。こうしたケースは昨年も幾つかありTOBの頻発に比例して近年多く見られるパターンだが、企業価値向上策を競る上でもガイドライン等再考の余地はまだあるか。