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起爆剤なるか

昨日はJALやJR東日本、東京メトロなど航空・鉄道のライバル同士大手5社が初のタッグを組んで東京に観光客を誘致する「ただいま東京」のキャンペーンの発表が行われていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてストップしていた「もっと東京」所謂都民割も先週から再開されている。

周知の通りこれは都民による都内の旅行について1泊や日帰り等でそれぞれ割り引きが為されるモノだが、この東京については一昨年のGoToトラベルが全国で一斉停止した段階から自治体も含めた割引が一切無く、漸くこの制度を使っての近場の旅行が叶うという事で各所では初日から予約が殺到し続々と売り切れになる光景が報じられていた。

今月からいよいよインバウンドも再開となっているが、旅行の消費額では国内のそれは遙か上をゆくという事で期待値も高く政府は各都道府県の割引制度の対象を新たな観光振興策として全国に拡大させる方向で検討している模様だが、おりしも足元では「日本売り」の98年以来の円安水準となっておりこの状況下で積極的な海外消費も逡巡されるだけにより一層国内消費がキーとなって来るか。


現代版マルチ

昨日の日経紙社会面では「給付金詐欺横行SNSで組織化」と題し、新型コロナウイルス対策で国から支給された持続化給付金を巡り、投資サークル等を絡め組織化されたグループによってかつてのネットワークビジネスの如く連鎖的に若年層を狙い巨額な被害がここ最近芋づる式に発覚している旨が出ていた。

まさに給付スピードを優先し性善説に基づいた簡易な仕組みが見事に裏切られた格好となった事件で、逮捕された輩も親子やら東京国税局職員やらとマスコミが騒ぎ易い面々だった事でTVなどでも頻繁に取り上げられていたが、まあ確かに税の番人という立場の国税職員がこの手の犯罪に手を染めているようでは税金を払う側もバカらしくなってくるというもの。

しかし何れも目立つのは申請した名義の7割近くの面子が高校生や大学生などの20代以下が占めていたという点か。摘発されたこの手の投資サークル自体も個人での投資一任勘定にあたり金商法で禁止されている行為なワケだが、そもそも給付金を元手に暗号資産に投資して2倍になる等の謳い文句自体を一笑に付すことなく信じてしまうあたり改めて驚きを禁じ得ない。

当欄では4月末に「カモ?成人」と題し、新たに18~19歳が成人となるなか若者を狙った投資関係などの悪質商法の被害増加が懸念される旨を書いていたが、高校生の金融教育の授業でもハウツー論と並行しこうした詐欺に巻き込まれない為の啓蒙等も今後は更に重要度が増してくるか。


名店がまたひとつ

さて、このコロナ禍の煽りを受けて当欄でもこれまで取り上げてきた柴又の料亭・川甚や銀座の老舗中華・桜蘭などの歴史ある名店が閉店の憂き目に遭って来たが、直近では先月中旬に移転の為という理由で閉店したばかりの中華街最古の名店・横浜聘珍樓が先週に結局パンクしてしまい約140年の歴史に幕を下ろすという事態に。これでまたひとつ中華街の風景が変わる。

運営組織が途中で別法人への事業譲渡等を経ており一寸ややこしいが何れにせよ中華街のアイコン的存在で、一時期ココの料理長など彼方此方のメディア露出で一躍有名人になったものだった。中華街といえばこのコロナ禍でこれまで低価格のテイクアウトや冷凍食品などやらないような一寸格上のところが挙ってこれを始め、また近年では飲茶バイキングに主軸を移す向きも多くこれが中華街における食事の姿になりつつあった。

そうした中でいま思えばこの手の老舗の立ち位置も微妙になっていた感は確かにあったが、中華料理と言えば余談ながら最近では” ガチ中華”なるメニューまで全て中国語表記の日本人向けに味付け等が忖度されていない、在日中国人向けの店が彼らはもとより日本人にもジワジワ流行つつある旨も各所で報じられている。斯様な新陳代謝の中で今回の件はこのカテゴリーの飲食店の現状のある種象徴を感じさせるものであった。


既視感

本日の日経紙一面には政府の骨太の方針が出ていたが併せて首相が掲げる「新しい資本主義」の実行計画も閣議決定されている。人への投資の強化や、有力新興企業を今後5年で10倍に、また2000兆円にのぼる個人の金融資産を投資に向けるためNISA(少額投資非課税制度)の改革を含む「資産所得倍増プラン」を年末までに作成する方針。

なんとも投資家好みの威勢の良いフレーズが並ぶが、例えば英のISAをモデルに創設されたNISAの改革など現行の非課税枠から一体如何ほどの拡充になるのだろうか?先の東証の市場再編でも上位ポストの時価総額基準額等が期待されていたものからは程遠いものとなり、機関投資家等の失望を買ったものだったがこれの二の舞にならぬか一抹の不安がある。

この新しい資本主義といえば岸田首相が先に訪問した英国の金融街シティーの講演で、平成25年に当時の安倍首相がNY証取で「バイ・マイ・アベノミクス」と訴えたのに倣ってなのか「インベスト・イン・キシダ」と述べこれを説明していたのを思い出す。本邦の特徴として上記の制度含め海外事例に範を仰ぎアレンジする傾向があるものの、得てして見劣り感著しい傾向にあるだけに世界標準との差を埋めるには更に思い切った設計が求められようか。


参謀役の失態

本日の日経平均は20年ぶりの円安を追い風にして小幅ながらも3日続伸、3月末以来約2ヵ月ぶりの高値水準まで戻りを入れた格好になったが、そんな地合いの中でも昨日に続き2日連続でストップ安に張り付いた東証プライム市場のアイ・アールジャパンホールディングス株の動きが一際目立っていた。

この背景には、コンサル会社アイ・アールジャパンの元副社長が、未公開情報に基づいて知人が発注したこの持ち株会社のアイアールジャパンHD株の不正取引に関与した疑いがあるとして、昨日に証券取引等監視委員会が同社を強制調査したとの報がある。渦中の副社長といえばつい先週に「一身上の都合」として同社を退社したばかりであった。

このアイ・アールジャパンといえば、先の関西スーパーマーケットの争奪戦において統合会社の理論株価公表等でも名前が出るなどしていたが、アクティビスト対応から敵対的TOBにおけるオフェンスやディフェンスまで実績が数多くあり、近年企業に株主提案等を行うアクティビストの存在感が高まっている中でアドバイザーとしての存在感が急速に高まっていた会社でもあった。

そういったビジネスモデルの同社はガバナンスや上場ルールについては企業の模範であるべきというコンセンサスがあっただけに今回の件で信用問題が株価に表れている。本日は比例配分で何とか値を付けたが、その出来高は5万株にも満たず引けでは120万株以上もの成り行き売りが出ていただけに先ずは何所で完全一致にて寄るか、今後の監視委員会の動向と合わせ注視しておきたい。


水無月の値上げ

さて梅雨入りの水無月だが、値上げの波は今月も更に広がる。馴染の深いところで日清食品のカップヌードルが3年ぶりに値上げ、同じく3年ぶりに値上げするこの類ではサンヨー食品のさっぽろ一番も約10~12%の値上げ、スナック菓子の類ではカルビーがかっぱえびせん等を約10%、森永はチョコモナカジャンボ等アイス11品目を値上げする。

手軽な外食もカレーハウスCoCo壱番屋がカレーとトッピングの価格を改定、蕎麦のゆで太郎も単品蕎麦屋セット価格を値上げする。食品の類はこのあたりにして、他に金額的に比較的大きくなるものとしては国際線のサーチャージ等が挙げられる。JALは日本―欧州・オセアニア等で約3万3千円、ANAも同路線では3万5千円値上げと今月から一気にアップする。

先月は値上げが通り易いBtoBの業種は好調だが今後は何所まで川下系の価格転嫁が進むのかこの辺を注視としたが、帝国データバンクの調査では主な食品メーカー105社が今年に入り値上げした商品は既に8385品目にも及ぶとのこと。直近の調査データが公表される度にその品目は急増しているが、来月は1ヵ月としては今年最も多くなる試算が出ており身構える動きが続きそうだ。


再開の期待と憂鬱

さて、昨日から政府は入国者の上限を1万人から2万人へと制限緩和している。那覇空港や新千歳空港は国際線発着を再開できるよう準備し他の地方空港についても地元と調整したうえで順次再開を進めてゆく方針だが、これに併せ検疫措置も緩和され10日からは外国人観光客の受け入れも2年2ヵ月ぶりに再開する。

いよいよ待望のインバウンドが再開だが、おりしも世界経済フォーラムでは観光競争力ランキングで日本は公共交通機関の本数やその鉄道サービスの正確さが高く評価され3位のスペインや2位のアメリカをおさえ初めて1位となった。円安のメリットを受けられ地方への恩恵も大きかったインバウンドだけに復活への期待が高まる。

とはいえ今年春から数千人規模の解禁を経て以降も小出しに入国者を増加させているが、コロナ前の平均が14万人だった事を考えると冒頭の2万人では引き続きの小出し感が拭えない。G7並に水際措置を緩和すると表明したわりになんとも心許ない数字であり、インバウンドの取り逃がしが懸念されなくもない。

もう一つ、コロナ前の2019年訪日客の内訳は中国の30.1%はじめ広域中華圏で約半数を占めていたという点。ウクライナ侵攻を巡る新冷戦や当局による新型コロナ政策等に絡み個人消費が国家の方針に左右される中国依存のリスクもまた懸念され、上記と併せインバウンドが直ぐに戻って来るかどうかは不透明なだけに手放しに喜べるという状況には無さそうだ。


事実は小説よりも奇なり

本日の衆院予算委員会の集中審議において野党側からオンラインカジノについてこれを放置するのか?と総理に迫る場面があったが、これに対し総理はこのオンラインカジノについては違法なモノであり、関係省庁と連携し資金の流れの実態把握をしっかり行う事が重要で厳正な取り締まりを行うとの考えを示していた。

野党側が斯様に迫った背景には先に山口県で起きた誤送金された新型コロナ給付金をオンラインカジノで使い切った輩の事件があったからに他ならないが、それにしても当初回収に関して絶望的だったものが一人の弁護士によるサクサクとほぼ満額に近い回収劇はまさに稀代のエンタメを地でゆくような出来事であった。

それにしても一般的に考えられる示談云々から視点を国税徴収法に向けたところがなんとも頭が切れる。これを盾に決済代行業者から更に其の先の銀行にまで暗に圧力?をかけるテクニカルな技はまさに海外ドラマの「スーツ」を彷彿とさせる。しかし代行業者も揃って肩代わり?をしてまで満額に近い返金をしたあたり複雑な事情が見え隠れするが、何れにせよこの事件を機に今後この手の規制が更に一段と厳しくなるかどうか注目される。


ステーブルに非ず

さてこのところ低迷していたビットコインも直近で3万ドル大台を回復してきたが、一昨日の日経紙総合面には「仮想通貨1兆ドル消失」と題して、米の利上げなどから金融緩和であふれたマネーが逆回転した事を背景に暗号資産の世界全体の時価総額が1.2兆ドルと昨年末から46%減り1兆ドルが消失した旨が出ていた。

とりわけ今月は米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインのテラUSDの崩壊が市場で話題になった。なんといっても米ドルと1:1で連動していたモノが昨日は驚きの2セント台までの暴落を演じたワケで、やはりステーブルでもこの辺は担保型とは違った無担保型の脆弱性を改めて目の当たりにした感じだったか。

ビットコインは伝統的資産と非連動のデジタルゴールドなどと呼ばれていたものの既にリスク資産と化している現在では株式と同時に下落の軌跡を辿った今回だが、今後分散型金融サービス等への利用期待も高まるなかで斯様な市場環境の変化等で仮想通貨も一括りから選別のステージに入ったといえるか。


優待制度の在り方

さて、各株主には期末の配当金と共に優待カードなどが各企業から送られてくる時期でもあるが、優待と言えば先週末の日経紙・投資情報面には「株主優待の適用拡大」と題して、東急が株主優待制度を改定しこれまで200株以上の株主が対象だった優待適用を100株以上へと基準を引き下げるなど裾野を広げる旨が出ていた。

昨今の物価高の波を受けてふるさと納税と共にこの株主優待も家計を助ける手段として再度注目度が高くなっており、特に外食系で年2回ほど優待カードや商品引換券などを提供するすかいらーくHDや日本マクドナルドは安定した人気を誇っているが、内容を改悪?した吉野家などは最近の失態と相俟って失望の声も多く上がった。

ところで吉野家のような改悪から更に廃止へと方針転換する企業も一方で増加しつつあり、2021年9月末までの1年間で株主優待制度を廃止した企業は75社と過去10年間で最も多くなっている。優待の活用が難しい機関投資家や海外在住投資家は対象外とされている事などから不公平感を無くし公平な利益還元を求める声に対応した格好だ。

また4月の東証の市場再編では株主数の規定が緩和された事で、個人株主の確保策として優待制度の優先度は下がる事になった背景もあるか。一部の入札等も経て金券ショップに並ぶラインナップもこれから減少に向かうのかどうかだが、冒頭の例と照らし合わせ今後株主優待制度の増減は如何に各企業の取組に注目したい。


ルッキズムの是非 

さてここ最近、近大が受験生向けに発行したパンフレットのコーナー「美女図鑑」を巡って学内外から外見至上主義を煽るのは非常に問題で品性を疑うという旨の批判喧しい議論が起きている。これに限らず近年大学の間では斯様なルッキズムに対して敏感になってきており、既に上智大ではミスコンのミスソフィアを廃止している。

また更にこれらに続き、今週は東京女子大学がミスコンを廃止する旨をツィッターにて大体的に表明している。トンジョのミスコンといえば、これまで数々の人気女子アナを輩出してきた大イベントだっただけに時代の流れに衝撃が走っている。賛否両論喧しいが容姿差別といった一般的問題は理解出来るものの、個人的には何を是とするかはそれぞれの価値観と思う。

大学に限らず近年では社会環境の変化もあり企業のコンプライアンスに対する世間の目も厳しくなってきている事で、テレビにおいても芸人やタレントの容姿イジリの表現など特に作り手側も対応を迫られている。近年のテレビ離れがいわれて久しいが、「水清ければ魚棲まず」まさに過渡期を迎えているか。

上記の大学にしても中高の延長線上での学問のみならず社会に出るまでの人間関係の構築や教養を培う場でもあり、全てに多様性が叫ばれているいまニーズに応じた芽を摘んでしまうような風潮ははたして如何なものか?何を以て是とするのかその在り方について改めて考えさせられる案件である。


今度はMARNI

さて、有名デザイナーのジルサンダーとのコラボ商品などで大きな話題を提供してきたユニクロだが今度は伊・ミラノの「MARNI」との初コラボを発表、先週末の20日から発売開始となったがやはりというか初日は店舗に顧客が列をなし公式サイトもアクセス集中により繋がり辛くなるといった現象なども見られた。

9年ぶりにジルサンダーとコラボした前回はディスプレイのマネキンの服まで剥がされ怒号が飛び交う某店舗の光景などがテレビなどで放映されたのが記憶に新しいが、前回のジルサンダー同様にユニクロフリークの中でいったいどれほどの向きがそんなに狂気じみた行動を取るほどこれらのブランドを認知していたのだろうといつも不思議に思う

それはさておき店舗では上記のようなカオスな光景は無くなったものの、相変わらずフリマアプリ等では早々に品切れとなった商品群が早速発売日に6~7倍の値で早速続々と出品されている。一寸考えればこの法外な値をコラボ商品に出すならオリジナルが手に入るワケで値付けする連中の貪欲さには脱帽だが、コロナ禍でECが活況となっているなか最低限のリテラシーは持っておきたいもの。