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電子化への流れ

さて、先週末の日経紙マーケット面では銅の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の銅先物相場が高止まりしている旨が出ていたが、中国勢の需要と共に相場高を牽引した投機筋の買い越し残高も金融緩和による余剰資金を背景に積み増しが進み、1月15日時点で4万4千枚弱とLMEの公表値がある18年1月以降で最高水準に達した旨が書かれていた。

ところでこのLMEといえばブローカーが円形に向き合う伝統的な「リング取引」が有名なところだが、昨年3月下旬から新型コロナウイルスの感染防止策としてこの形態は一時中断になっていた。これが先週には終息の兆しが見えないパンデミックを背景に恒常的に取り止め廃止する旨を市場参加者に提案、今後は電子取引システムに一本化する計画の旨が報じられている。

日本でも東証で場立が消えてから今年で21年となるがもし現存していたとしたらやはりこのコロナ禍での取引は憚られ、ましてや笛吹などトンでもないという状況だろうか?LMEの値決めは今後売買高加重平均に基づく仕組みになる見通しだが、相場形成にどのような影響をもたらすかは未知数。何れにせよ140年超の歴史を持つ取引所の欧州最後の伝統的手法もコロナ禍が消滅を促進する事になったという構図になるか。


サステナブルフード

さて、今週は朝のニュース番組で植物肉バーガーを扱う店が増殖している旨が放映されているのを見たが、ザッと挙げてもメジャーなところでロッテリアのソイ野菜バーガー、モスバーガーの植物性素材を使ったグリーンバーガー、フレッシュネスバーガーの大豆パティを使ったグッドバーガー、先月からバーガーキングも大豆ミートを使ったプラントベースワッパーを発売している。

またこれを見て思い出したが、これらと並行して喫茶店チェーンのコメダ珈琲も東銀座にこれまた大豆ミートを使ったハンバーガー等プラントベースに的を絞ったカフェをオープンしており、無印良品も大豆ミートシリーズと謳ってハンバーグ等を店舗や通販サイトでの販売を始めている。

これだけの増殖の背景には環境意識の高さという御立派な理由から健康や低カロリーを意識してというものまで其れなりの需要の高まりが窺える。残念ながら私は一度も口にした事が無いのだが、環境問題解決の大義名分を掲げ昨年は植物肉元年とまで言われぐるなび総研が一年の世相を反映し象徴する食を選ぶ年末の「今年の一皿」でもノミネートされたこの代替肉、何れにせよ一つの選択肢としてある一定数浸透しつつあるのが現状か。


不気味な大量撤退

さて日本政府観光局が本日発表したところによると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた世界各国での出入国規制が響き訪日外国人数は推計値で前年比87.1%減と1998年以来、22年ぶりの低水準となり、政府が掲げた20年の訪日客目標の4000万人の10%程度にとどまった。

こうした影響をモロに受けたと見られている件に、4年前に銀座地区最大の複合商業施設と鳴り物入りで松坂屋銀座店跡地にオープンした「GINZA SIX」が4周年を前に先の日曜日だけでファッションやコスメブランドなど14店舗、年末から昨日迄では実に19店舗が閉店しこのゴッソリと抜けた撤退劇に驚きの声が上がっているというのがある。

これに対してGINZA SIX側は4月の4周年の節目に大規模なリニューアルを実施としているが、当初よりインバウンドに大幅な比重を置いたコンセプトだっただけに冒頭の件と併せ如何にもという見方が大半だ。大通りを挟んでGINZA SIXの対面にはユニクロが店を構えているがココはコロナ禍でも業績が好調、新陳代謝激しい銀座は対極が混在するが近隣には同じくインバウンド寄りの東急プラザもあり今後この辺の動向も注目される。


50年ぶり大幅積み増し

本日の日経紙商品面には「外貨準備、埋蔵「金」上乗せ」と題して、造幣局が記念金貨鋳造の為に保管していた金塊を為替介入で得た外貨を運用する財務省の外国為替資金特熱会計が第3次補正予算の成立後に80トン積み増す事で日本が外貨準備の一部として保有する金の量が大幅に増える旨が出ていた。

その背景には上記の第3次補正予算案に盛り込んだ大学ファンドの財源捻出という目的があるが、文中にも出ていた通り80トンもの金塊を市場で一度に売却するケースでの価格への影響と海外流出等が考慮され造幣局、外為特会、そして日銀の三者間での資産融通の構図で市場への金供給が為されるワケではない。

財務省内部でも金塊を円に替え補正予算財源の一部に充てたいという思惑と、外為特会で金資産を持っておきたいというニーズがあった模様だがその辺は兎も角も外貨準備に占める金の割合を巡っては度々話題になる。欧米諸国の高い比率に比べて恒常的に比率が低い本邦勢の大量積み増しの報は話題に値するものの、財源捻出の用以外に継続的積み増しの可能性が薄いだけに一過性のものという事になるか。


新電力の誤算

さて、このところ寒暖差が激しい日々が続いているが先週末の日経紙総合面には「新電力料金2倍に高騰も」と題して、寒波の影響から暖房用需要が高まった事などで今月に入ってからのスポット価格の上昇で自前の発電所を持たない新電力業者の経営が厳しさを増し事業環境の整備など改めて課題が浮上している旨が出ていた。

確かに電力供給は綱渡り状態で、余力を示す予備率は北陸・四国に至っては直近でたった3%という状況。同頁では昨年末からのスポット価格のグラフが出ていたが、JEPX(日本卸電力取引所)の指標価格は今月中旬に昨年12月上旬と比べて約25倍に急騰、さすがに経産省はこの影響を看過出来ず昨日から事前の販売計画と実際の販売量にズレが生じた際に支払うインバランス料金について支払い金額に上限を設けるという方策に出ている。

しかしこんなケースが出て来た時こそ先物市場がリスクヘッジで本領発揮といったところだがこの辺はまだ十分に活かしきれていない感は否めない。今回の需給ひっ迫にはLNGの調達難というのも大きな要因だが、このLNGも総合エネルギー市場を見据えての上場計画もあるだけにこれら上手く機能させてゆく事が自由化を進めてゆくうえでも非常に重要なポイントになってくるか。


びっくり10大予想2021

さて、一昨日には年明け恒例のユーラシア・グループの「10大リスク」を取り上げてみたが、同じく年明け恒例の10大予想といえば米投資会社ブラックストーン・グループのバイロン・ウィーン氏らによる「びっくり10大予想」も有名で当欄でも6年くらい前から度々取り上げ、先週の日経紙夕刊でも「びっくり予想市場が注目」と題して取り上げられていた。

この定義は平均的な投資家が発生確率を3分の1程度とみるイベントで同氏が5割以上と予想するもので今年でかれこれ36回目の公表となるが、ちなみに昨年は株式相場は5%超の下落をする調整が起こるがS&P500種は3500超になるとか民主党の過半数獲得やトランプ政策等々を挙げており概ね的中させている。

今年の21年版だが気になる新型コロナに関しては複数のワクチンの成功や治療法の確立により米国はメモリアルデーまでに何等かの形で正常に戻ることが可能になるとしており、これらによって上記のS&P500種に関しては年前半に20%近く下落するも後半に4500を上回るとしており、経済活動の正常化で原油価格も1バレル65ドルまで上昇するとしている。

これが発表された時の値からS&P500種は更に20.7%程度の上昇、原油価格は36.5%程度の上昇余地があるという事になるが、この原油価格一つ取っても昨年の史上初のマイナス価格示現など100年かそれ以上に一度の想定外の珍事が現実的に起きる時代、この予想以外にもこれまで想定もしていなかった自由な発想が結果的に的中するケースが多発しても何ら不思議ではないか。


コロナ相場?

さて、先週末まで米市場では連日にわたり主要三指数が揃って史上最高値を更新していたが、個別でも年末にS&P500種に新規採用されたテスラが火柱高となり年末年始を挟んで実に上場来初めての11連騰を達成、その時価総額もS&P500採用前は円換算で約56兆円であった同社は年明け8日にははや86兆円を超えてきている。

もう一つ、このテスラ並みの値上がりを演じていたモノに暗号資産のビットコインがあるが、こちらも2万ドルの大台突破からわずか2週間ほどで3万ドルの大台を突破し更に先週はあれよあれよという間に軽く?4万ドルの大台を超えてきている。また直近の珍事?ではピンクシート市場の米シグナル・アドバンスがテスラCEOの放ったツイート文の勘違いから10000%を超える値上がりを演じるなどバブル以外の言葉が見当たらなくなってくる。

冒頭の通り年末年始の11日連騰の間だけでも時価総額が日本の時価総額がトップのトヨタ自動車分ほど増加したテスラもバブルと見るか否か、週明けはテスラが12営業日ぶりに反落しこのビットコインも12日未明には高値から一気に25%安と急落、いずれにせよ過剰流動性が齎す相場は終わってみないとバブルだったかそうでなかった解らぬものだがよく言われるところの音楽が鳴り続く限り踊りは止められないというのを地で行く感じか。


10大リスク2021

さて、先週取り上げた日経紙恒例の「経営者が占う」シリーズと共に年明けは地政学リスク調査会社ユーラシア・グループの10大リスクも発表されているが、今年の10大リスクとして挙げられた首位には「時期米大統領」が選ばれ、2位にはやはり新型コロナウイルスが入りここ数年その動向が注目されているトルコが昨年の10位から7位へと順位を上げていた。

同社は昨年も首位に「誰が米国を統治するのか」を挙げて米大統領選の不確実性を巡るリスクを指摘していたが、上記の通り今年も米国内政治を最大のリスクとしている。既に先週の連邦議会議事堂への乱入事件を受け民主党のトランプ大統領弾劾訴追案下院提出で政局混乱が懸念されるところだが、確かに先の大統領選では曲がりなりにもトランプ氏が実に半数の7000万票超を獲得したという事実は大きい。

これだけ分断が深刻化している米社会を一つに纏めるのは至難の技ともいえ、この影響が国境を越えて広がってゆくのかどうかこの辺は外交政策等にも少なからず影響を及ぼしそうだが、長引く新型コロナの影響もワクチン外交など絡めて4位に挙げた米中緊張の拡大に掛かって来るしコロナ禍で経済危機に直面する7位に挙げたトルコや10位に挙げた中南米もまた然り、米中心に今年も目の離せない展開となろうか。


経営者が占った2020年

さて、年初の当欄では毎年日経紙で恒例の「経営者が占う」シリーズを取り上げているが、いつもの通り振り返ってみたい。日経平均の高値予想は平均で25450円であったが、年末の27196.40円とこれを大幅に上回る結果となった。また安値予想も21625円に対して16358.19円とこれまた予想を大幅に下回るものであったが、結局コロナ禍での未曾有の乱高下で3月の安値から年末高値まで11,000円を超す値幅は30年ぶりの大きさだったというからこれが当たる筈も無しというもの。

ただ個別の有望銘柄予想ではトップであったソニーが低金利環境の継続を受けた大型グロース株物色の流れに乗り約20年ぶりの高値水準まで上昇とヒットを放った他、2位のトヨタ自動車、それに次ぐ3位だった信越化学工業などもこの1年で5割以上の上昇を演じて上場来高値を更新しこのソニーと共に時価総額を大きく伸ばす結果となった。

他に三越伊勢丹の社長やセコムの社長が取り上げていた8位のNTTドコモはTOB銘柄となるなどこちらも面白かったが、味の素の社長が一推ししていたエムスリーも年間上昇率は上記銘柄を遙かに凌ぐ300%とダントツのパフォーマンスを演じた事で昨年ベスト10にも入っていなかった同銘柄が今年の有望銘柄予想5位にランキングされている。他に有望銘柄予想は上位3位まで昨年と同一とまたもこの辺は手堅く置きに行ったという感じ。

ところで今日は東京で新型コロナウイルスの感染者数が昨日を一気に800人も上回り2400人超と2日連続で過去最多を更新するなか、日経平均は1990年8月以来およそ30年5か月ぶりの高値を更新と何とも不気味な構図。今年の高値予想は3万円台の大台も出てきたがそんな期待通りに牛年で「ブル」な展開になるのか、はたまた相場格言の如く「丑つまずく」になってしまうのか注目してゆきたい。


百貨店初売り

さて、一昨日には大手百貨店5社の昨年12月の既存店売上速報が発表されているが、前年同期比で約1割から2割と軒並み減少となった。百貨店といえば各社とも初売りも始まっているが、新型コロナウイルスの感染対策のため来店客分散に取り組んだ事などが影響しやはり前年同期比で各社約4割から5割の減収となっている模様。

二度目の緊急事態宣言が間もなく発令されようとしているなか、今年は開店時の来店客も例年の十分の一以下となるところもあるなど例年のような混雑は無かった様子が伝えられている。こうした事を想定しネット販売へのシフトも進んでいる模様で、上記の来店客分散といえば年内販売に踏み切った福袋など最たるものだが伊勢丹など9割がネットに切り替えている。

その中身も昨年まではバブル世代やコト消費を意識したモノが多く見受けられたが、今年は一転して巣ごもり消費を意識したモノが多数見受けられた。しかし福袋争奪戦といえばこれまで日本の正月の風物詩でもあったが新様式で斯様な光景は姿を消す事となり、新常態の商機を探る動きが各社共に今後鮮明になって来るか。


鮪も自粛モード

本日は新年恒例のマグロの初セリが豊洲で行われたが、一般客の見学が禁止されるなか一番マグロは208キロモノがキロ当たり10万円の2084万円でセリ落とされた。昨日は山口県下関市でも新年のトラフグの初セリが行われコロナ禍での飲食店需要低迷からキロ当たり昨年比で5000円安と安値傾向となっていたが、こちらのマグロも昨年の1億9320万円から暴落ともいえる落札値となった。

競り落としたのは史上最高の3億3600万円の落札値が付いた一昨年にすしざんまいを展開するあの「喜代村」と最後まで競り合った仲卸の「やま幸」であったが、その背景には喜代村が今年は新型コロナウイルスにより飲食業界が打撃を受けている現状から一番マグロの落札を差し控えたという事があり久し振りに本来のご祝儀相場を見た感がある。

やま幸のマグロといえばその行先は銀座の「おのでら」だが、早速この日からランチのコースで提供された模様。しかしこの手の店は別物としてもここ数カ月は上記の通り飲食需要の急減から所謂高級魚が驚くほど安くなっている感があるが、斯様に新型コロナウイルスが初セリを本来のご祝儀相場へと回帰させ高級魚も万人の食指が動く価格にさせたのを見るに複雑な思いである。


丑つまずく?

皆様、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

さて、昨年は中東の地政学リスクの高さが際立った年初めになったのも束の間、以降新型コロナウイルスに振り回された一年となった。マーケットの方はダウ工業株30種平均が3月の暴落時には史上初めて8営業日連続で前日比1000ドル超えの乱高下を繰り返した末に、年末には史上最高値を更新と未曾有の景気後退下の株高を演じた。

本邦市場もまた然りで、日経平均は年末にはバブル期のピーク以来31年ぶりの高水準となり、こちらもまた3月の暴落時から年末高値まで11,000円を超す値幅は30年ぶりの大きさを演じている。相場格言で昨年は「子の繁盛」であったがコロナ禍にもかかわらずまさに格言通りの展開になったとも言えようか。

ところで今年の干支は丑、史上最高値を更新している米国では牛はブルの象徴となっているが、相場格言では「丑つまずく」でその年間騰落率は戦後では平均でマイナス6.3%と最下位となっており、アノマリーでは年央に天井をつけて後半に下落する傾向があるという。本日の大発会は下落スタートとなったが、引き続きコロナ下で過剰流動性相場が今年も継続され相場格言が破られる事になるのか否か興味深い。