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非公開化の是非

さて突如として東芝に対し2兆円超の買収提案をして世間をザワつかせた英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズだが、その直後には東芝の社長辞任にまで発展した挙げ句に昨日は果たしてというか東芝側がこのCVCキャピタル・パートナーズから東芝買収に関する検討を中断するとの書面を受け取るに至りこの案件は事実上の撤回となった。

このCVCキャピタル、プライベートエクイティファンドだけあって非公開化を前提にしていたワケだが、1月に東証二部から約3年半ぶりとなる東証一部へ悲願の復帰を果たしていた東芝が、そこから僅か数カ月でアクティビストと対立した挙げ句の上場廃止となりましたという事になったとしたらこれは東証にとっても立場を考えるに内心穏やかでなかったのは想像に難くないか。

複数のアクティビストからの耳が痛い要求の回避目的を狙っての非公開化の選択であれば現在進めている建設的な対話を通じての企業価値の向上を目指す協調を否定する事になるワケで、斯様な事から今回の案件はコーポレートガバナンス改革の有効性に疑義を挟むものであったが、今後日本市場の成熟が叶うか否か東証のプライム市場構想含め改めていろいろと考えさせられるこの2週間でもあった。


Turning Point

本日の日経平均は国内で新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない事などを嫌気し急反落となったが、TOPIXの下落率が1%を超えていたにもかかわらず期待された日銀によるETF買いは見送られる事となった。ちなみにこのTOPIXが下落率1%を超えても見送られたのは2016年に年間約6兆円にペース-に買い入れ方針を拡大して初めての事とか。

さて日銀のETF買いといえば先週の日経紙経済教室には「ETF購入 副作用是正遠く」と題し、先の日銀金融政策決定会合における点検を踏まえ中央大学教授によるETF買い入れ政策の在り方について書かれていた。先の総裁の会見も自縄自縛とも見えなくもないが、雑な言い方をすればさながら吊り上げたものの降りられなくなりそろそろ解体屋に依頼しようかといった仕手筋?にも似ていると言えなくもない。

同頁では本質的な問題解決に繋がる見直しは副作用軽減への正常化策を考えることと出口戦略の議論を開始する事との一文があったが、この辺の出口戦略への議論に関しては当欄も上記の解体屋よろしく幾つかのケースを何度か書いてきており、浮動玉の吸い上げの結果コーポレートガバナンスの空洞化を招きかねない現状下はやはり一つの節目に差し掛かっているといえようか。


仮想が主流に?

前回はビットコインはじめとした暗号資産について触れたが、700万円超となっていたビットコインはモロッコに続きトルコが暗号資産の決済利用を禁止する措置を決めたほか、有数のビットコイン採掘場所といわれる新疆ウイグル自治区で発生した停電の影響もあり18日には600万を割り込む場面も見られたが、やはりコインベース上場で利確の場面待ちであったという部分が大きいだろうか。

さてそのコインベース、創業9年で公開早々にその時価総額はニューヨーク証取を傘下に持つインターコンチネンタル取引所を上回り、あのゴールドマン・サックスに匹敵する規模というから凄い。この上場で初期投資していた大物ラッパーのNasには軽く40億円以上が転がり込み、当然ながら役員連中は巨万の富を手に入れる事となったが、一般社員にも100株が付与されたというから初日の大引ベースでも約350万円の臨時収入が降って来た事になる。

そういえば日本でもカラオケの第一興商が店頭登録した際にも自社株を持っていた一般の事務員が公開バブルで一寸した資産家に化けたなどという話も当時話題になったのを思い出す。それは兎も角も今や2兆2000億ドルの規模を持つ暗号資産市場において約次のユニコーンにも当然の注目が行くところだが、何れにせよこの上場が暗号市産業界にとって重要な分岐点となるのは想像に難くない。


無国政通貨の明暗

一昨日の日経紙商品面では「金ETF、資金が流出」と題し、米長期金利の上昇や世界景気回復期待等を背景に世界の金ETFからの資金流出が著しく昨年の資金流入から一転して今年1〜3月の流出超過は四半期では13年4〜6月以来の大幅流出となるなど金離れが顕著になっている旨が載っていたが、その価格も先月は9か月ぶりに1,700ドルを割る場面があるなど軟調を強いられている。

ところでこの金と同じ「無国籍通貨」という括りの暗号資産は対照的に強く、こちらは代表格のビットコインが過剰流動性相場の中でインフレ資産が上昇する流れに乗って今週は3月に記録した過去最高値を抜いて来た。しかしこのビットコイン、昨年末に200万円の大台超えとなったのも束の間、昨日ははや700万円超と破竹の勢いだが1年間でほぼ9倍の値上がりとさながらあのテスラ並みの大化けを演じている。

他にイーサリアムも同じく過去最高値を更新しこちらも1年でほぼ9倍に、これ以外ではリップルもまた1年で8倍以上と何れも大化けを演じているが、特にこれらの背景には仮想通貨取引所の米コインベースがナスダックに上場した事も大きいか。果たしてその時価総額はザラバで1000億ドル超を達成、大引ベースでもニューヨーク証取を傘下に持つインターコンチネンタル取引所をも上回っているから凄い。

仮想通貨取引所としてこの世界で初めての上場で投資家としても暗号資産に株式として投資できる機会が新たに得られる事になるが、ETF承認等に慎重姿勢なSEC等の動きを尻目に斯様なユニコーンの上場など暗号資産の市場インフラ進化は粛々と続く一方、今後避けられないであろう規制強化の壁などとどう渡り合って行くのかこの辺にも注目といえようか。


空箱上場の是非

さて先の日曜日の日経紙一面には「膨れる高リスク資産」と題し、その一因には既存の金融規制の枠組みの外にあるシャドーバンクといわれる影の銀行がカネあまりの中でリスクの高い取引を膨らませている事などが記されていたが、文中には企業買収のみを事業目的とした「空箱」の特別目的買収会社(SPAC)の上場数が右肩上がりの旨もかかれていた。

このSPAC、当欄でも昨年10月に取り上げた際に米では同年7〜9月のIPOによる市場からの調達額のうち半分をSPACが占めるなど急増している旨を書いていたが、同年末にはSECが十分なディスクロを求めるガイダンスを出し、つい先月には一般向けに著名人の関与だけに基づいて投資を決めないよう警告している。

週明けに取り上げたCVCによる東芝買収案も利益相反の疑義が出ていたが、こちらもスポンサーと一般投資家との間に利益相反が起きる可能性が高い仕組みとなっている。そうした背景もあり日本では未だ解禁されていないがSGXは今年半ばにもSPAC上場を解禁する方向となっており、取引所間の競争の厳しさを鑑み今後慎重論に変化が出て来るのか否かこの辺も関心が向くところ。


快挙とご祝儀買い

周知の通り男子ゴルフ4大メジャーのマスターズ・トーナメントで、これまで青木功氏や中嶋常幸氏らの大物でさえ挑戦し成し得なかった厚い壁を松山英樹氏が10度目の挑戦で日本人初の優勝を飾った。日本人には出来ないというこれまでの常識を覆しコロナ禍で疲弊する世に希望を与えてくれたが、当然ながら株式市場もこれを囃し昨日は日経平均が安値引けとなるも関連株には物色の矛先が向いた。

松山選手が愛用するゴルフシャフトを製造するジャスダックのグラファイトデザインは昨日ザラバでストップ高まで急騰し年初来高値を更新、マザーズのプレー予約サイト運営のバリューゴルフもザラバ急騰し2000円大台を回復、また中古ゴルフクラブ専門店のゴルフ・ドゥもザラバで突飛高を演じ年初来高値を更新するなど地方、新興市場がピンポイントで賑わった。

テニスの大坂なおみ選手が2年ぶり2度目の全豪オープン制覇の時でさえここまで関連株は賑わっていなく、広義でスポーツ関連といえば東京五輪の開幕が決定した約1年前のアシックス等のストップ高はじめスポンサー企業群への物色以来の事のように感じる。これら所謂ご祝儀モノは息の長い相場へ発展する可能性は望むべくもないが、ウイルス関連や防衛関連が賑わうより遙かに平和的なのは言わずもがなだろう。


呪縛?からの脱却

さて、先週は英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ等が東芝に対し2兆円超の買収提案をした旨が話題になっていた。東芝といえばつい先月もアクティビストから臨時株主総会開催を要請されエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの提案が可決されたのが記憶に新しいが、これを取り上げた当欄でも末尾にて「~株主構成など大きく変わりその影響から緊張関係が続いている〜」と書いていた。

この株主構成が大きく変わったのは言わずもがな債務超過に陥った危機の際に実施した巨額増資の際の受け皿が背景となっているが、現在の株主構成では半数以上を占める外国法人等のうち実に約25%がアクティビスト。上記の通り彼らとの対立が表面化する現状では株式が非公開になればアクティビストの影響下から脱却を果たせ、経営陣の思い通りのオペが出来るなど確かにメリットがあるというもの。

加えて昨年7月の株主総会では現社長再任の賛成率が57%まで低下しているという現状だが、各紙でも報じられている通り現社長はこの買収提案をしたCVCキャピタルの元会長という経歴、加えて現社外取締役の中にはCVCアジア最高顧問も居る。斯様な背景からアクティビストとの対立で責任問題が及ばないよう自己保身の為に仕掛けたのではとの噂が出るのも致し方無しか。

またフジテレビを傘下に持つフジ・メディアHDが外資規制違反云々でザワついていたが、東芝もこうした問題が絡む可能性もあり政府系金融機関等への協調を謳うのもそうした背景からだろう。他既存株主がどう出るかも気になるところだが何れにせよ株主の利益を考えての行動か否か、その辺が一番の焦点になってくるワケで先ずは今年の株主総会までに一定の方向性が示されるのか否かその辺が注目されるところ。


コロナ禍で変貌 

さて、新年度のスタートを切った今月1日の日経新聞朝刊には新社名になる多くの企業の全面広告が載っていたが、証券会社からも保有株の社名変更の告知メールが届く。スシローGHDなどFOOD&LIFE COMPANIESへとガラリと変るが、アイシン精機はスッキリとアイシンへ、一方で楽天やソニー等は従来の社名にグループが付くこととなった。

これら事業の多角化を物語っているが、上記のソニーなど2021年3月期の業績は純利益が過去最高の1兆円を突破する見通しと好調で、背景には部門別でこれまで要であったところが横這いの一方でやはりプレステ効果でゲームが約3割超、また鬼滅の大ヒットで映画などのコンテンツが利益に寄与する格好が今回は目立っている。

思えばリーマンショック後の低迷期では個人的にこの銘柄も保有株のヘッジでよく空売り対象にしてきたが、空売りといえば10年近く前の取引で売り玉の買い戻しをスロットよろしく単純な縁起担ぎで777円と出しっ放しにしておいたダメ元の指し値が約定した時は驚いたと同時に三桁に沈んでなお下げ止まらないさまに不気味さを憶えたものだ。

そんな時から今や株価は15倍以上に大化け、ショートカバーから途転ロングしなかったのがつくづく悔やまれるが、そんなことは兎も角も製品の売り切り型モデルからゲームや音楽等のサブスクへの移行が奏功した良い例だろうか。当欄でも約1週間前に「サブスク彼是」と題しモノを持たない暮らしが支持される旨を書いたが、デジタル化の加速でこのコロナ禍に躍進する企業群には今後も注目したいところ。


名店の灯がまた・・

さて、昨日の日経紙金融経済面には「消えた需要 老舗も降参」と題し、約230年の歴史を持つ東京・柴又の料亭「川甚」が今年に入って店を閉めたように、コロナ禍を背景とした政府の緊急事態宣言や外出自粛の長期化で宴会や観光客需要が消失などから事業の継続を経営者が諦め廃業や休業が目立ち始める旨が出ていた。

上記の川甚といえば利用した事はなくとも文学好きな向きならこれまで多くのの文豪たちに愛され、例えば夏目漱石の「彼岸過迄」、松本清張の「風の視線」、他にも谷崎純一郎などの小説にも度々登場しているのでその名前は知っているだろうか。老舗といえば過日銀座方面に行った際に152年の歴史を持つ「辨松」もまたこのコロナ禍の影響で昨年幕を下ろしたのを聞かされた。

他にもこの辨松の近所では作家の池波正太郎が好んで通っていた「銀座桜蘭」もひっそりと閉店、この手とは毛色が違うが同じ銀座では50年以上続いたあのアマンドも昨年末に閉店している。つい最近は30年以上続いたタカノフルーツバーもまた先月末で閉店したのも驚きだったが、いずれにせよ老舗の灯がこんなコロナのせいで消えゆくのは何とも忍びないもの。


新陳代謝の差

さて、先日私の友人が購入したテスラがはれて納車となったのだが、このEV大手テスラといえば先週末の日経紙には世界の上場企業約4万6000社の3月末の時価総額上位集計が出ており、主要IT企業GAFAの上位横並びと共に同社は1年前の81位から今年は8位へと大躍進を遂げていた。

これらGAFA勢は昨年の3位から首位に返り咲いたアップルを筆頭に2020年10〜12月期の純利益が最高益となるなどか収益力の高さが際立っているが、こうした背景があるにしろやはり驚くべきは米IT勢5社の時価総額が合計で約8兆ドルに達しこれらで世界の時価総額全体の7%を占める規模になっているという現実か。

以前に当欄でテスラの時価総額がトヨタ自動車の上鞘に出てからわずか半年足らずでトヨタ自動車含む日本を代表するトップスリーのそれをも上回った旨を書いた事があったが、改めてこうした勢力図を見るに主要株価指数構成の入れ替えにも見る事が出来るが如く積極的な新陳代謝がなされているか否か日米の積み重ねの違いを感じざるを得ない。


警鐘

先週は日経夕刊・注目ニュース番付にも出ていた通り米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの報が話題になっていた。レバレッジ取引において追証要請に応じられず、これに絡んでいた日本勢ではプライムブローカーカレッジ取引で野村HDが約2200億円、ほどなくして三菱UFJ証券HDも英子会社で約300億円、新年度になってからやれやれ?とみずほフィナンシャルグループも約100億円規模の損失可能性の発表と報じられている。

このアルケゴス、かつてパラジウムの買い占めで名を轟かせたあのタイガー・マネージメントの出身者の資産管理会社であるが、報じられているところによればそのレバレッジは常識からかけ離れた実に800%とも2000%とも伝えられている。ヘッジファンドなら斯様に無茶なレバはかけられないが詳細のディスクロが求められないファミリーオフィスだからこそ出来た芸当といったところか。

当初は先のゲームストップ株のように個人勢によるポジション狙いの投機的動きがトリガーになったとされ第2のアルケゴスも出ると実しやかに喧伝されていたようだが、それは兎も角も今回上記のような異常なレバレッジ取引が出来たのも金融機関が多額の手数料収入を目当てに取引も人物も高リスクな物に多額の与信を行った点は否めない。

規制・監督当局も事態を注視しているというが、過剰流動性相場が続きボラが大きくなっているなか金融機関のリスク管理体制が問われそこに焦点が集まれば今後金融規制強化の議論に繋がる恐れもあるかもしれない。あのリーマンショックからはや10年以上が経過、当の米では主要株価指数が揃って史上最高値を更新するなか「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の諺を改めて思い出させるような事件が今起きたのは何かの警鐘か。


環境問題とPGM

さて昨日の日経紙商品面では「触媒貴金属 再び最高値圏」と題しガソリン車用触媒に使うパラジウムの国際価格が、自動車生産回復に伴う需要復調のなか主要生産国の供給懸念がにわかに強まった事を背景に、ニューヨーク市場の先物で昨年2月末に付けた史上最高値以来1年1ヵ月ぶりの水準まで急騰している旨が出ていた。

また同じくガソリン車の排ガス触媒に使うロジウムや、電子部品製造や水素生成の際の触媒等に使うイリジウムもエコブームのなか主要国の環境対策強化などを背景に急騰。同紙では5年前比で冒頭のパラジウムは約5倍、上記のロジウムは40倍を超える高騰とあったが、イリジウムもまた然りで約10倍に高騰している。

ところでこれら白金系レアメタルはプラチナの副産物として産出されるが、このプラチナもここ最近は値上がり急で昨年11月から直近までの騰落率では首位のビットコイン、2位の原油に次ぐ3位に付け注目を浴びている。上記レアメタルは電気自動車が本格普及するまでの間のガソリン車温暖化対策を背景としているが、プラチナもディーゼル車の排ガス浄化装置のほか燃料電池車の発電装置向け需要期待が背景にある。

金の下鞘に甘んじてはや数年プラチナも漸く覚醒かといったところだが、いずれにしろSDGsの掛け声が喧しい現代において今後一段と進む持続可能な社会への転換過程で常に付き纏うリスクとしてこれらに不可欠な資源不足の問題があり、これらに対応するべく更なる技術革新などが課題となってこようか。