値決めにメス

さて、当欄では昨年の夏頃に公正取引委員会がIPO(新規株式公開)時に適切な資金調達が出来ているか否かの調査を始めた旨を取り上げた事があったが、先週末に同委員会は証券会社各社が主導しているIPO時における価格決定を巡る報告書をまとめ、現行の値決めの慣行は独占禁止法上の優越的地位の乱用にあたる恐れがあるとの見解を示している。

慣行とされているのは証券会社が個人投資家を呼び込む狙いで主幹事などが個人に売り易いように公開価格を下げる傾向にある点などで、この辺が欧米の機関投資家中心の売買主体との相違を如実に表しており、実際に公開価格の1.1~1.2倍という欧米の初値平均に対して日本のそれは約1.5倍という点で色濃く表れているというところ。

年末にも取り上げたように昨年度のIPOは前年比3割増の130社超と2006年以来の高水準となったが、例えば米ではたった一社でその時価総額が東証マザーズ全体にほぼ匹敵するリビアン・オートモーティブなどの上場に見られる通りその調達額において日本勢はこの米などと比較するに約10分の1程度にとどまり見劣り感は否めない。

値決めのみにスポットを当てる議論に違和感を覚える意見も一部にあるが、昨今のコロナ禍を背景にした市場の不安定化さも勘案し公開価格は従前よりも更なる低めの設定が必要との論も一部に出ている模様で、ロードショーの形骸化など構造的な問題含めスタートアップ企業が適切に資金を調達出来る環境整備は証券会社間の公平な競争等とも併せて促されるべきであろうか。


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