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資源明暗

本日の日経紙マーケット面には、コロナ禍からの回復で需要の持ち直しやEVの普及見通しも重なった事で世界有数の銅生産企業米フリーポート・マクモランの株価がここ約1年間で5倍超になった旨や、ブラジルの資源大手ヴァーレも同期間に2倍となった旨などこのところ資源高が鮮明になりこれら関連株に資金が集まっている旨の記事があった。

国内企業も先に銅の国際価格が約9年6か月ぶりの高値に急騰した日には住友金属鉱山も年初来高値を更新し2007年10月以来、実に約13年年4か月ぶりの高値を付けたが、後者の鉄鉱石も生産落ち込み等の影響から国際価格がおよそ9年半ぶりの高値圏で推移し、主力輸出品目を謳っているだけに豪ドルもまた先高感が強く店頭FX業者の投資家持ち高も2019年5月以来の大きさという。

同じ資源でも上記のモノと石油などでは明暗が分かれているものの、同紙商品面では国際商品価格が数年単位で長期の上昇とその後の下落を描くスーパーサイクルに入ったとの指摘も書かれていた。この辺は懐疑的な見方もあり賛否両論だが、既に資源関連株に表れている通り明暗の構図も近年のSDGsなどの動きを睨みそれらの取り込み如何で恒常化するか否かというところか。


報告徴求命令ループ

さて、周知の通り先の日曜日にはみずほ銀行の全体の8割にあたる約4300台のATMが正常に稼働せず、預金引き出しや操作中のATMからキャッシュカードや預金通帳が戻らないなどの障害が起こった。定期預金に絡む約45万件のデータ移行に加え、月末の処理で負荷がかかったとの事だが障害の歴史にまた一つ加わった格好。

みずほ銀行といえば思い出すのが一番最初の2002年のみずほ発足時に起きた旧3行のシステムを接続しようとして起きた障害か。二重引き落とし問題などが起こったものだが、それに次いだのが2011年に起きた東日新本大震災の義援金に絡む大規模障害、これらの経緯を踏まえ4000億円以上の費用を投入し基幹システムの全面刷新をし2019年夏に稼働を開始したがまたもやという感じか。

私自身はみずほ銀行は普段使いしていないものの、運悪く日曜日だったというのもあるとはいえ利用者を長時間放置した当日の対応も問題だろう。金融系のシステム障害といえば先の東証システム障害も然り、これら相次ぐシステム障害は個々の経営改革の足枷になるばかりでなく顧客の不信感を助長し金融不安を引き起こしかねない芽にもなるだけに、重要な社会インフラを担う重みを改めて認識すべきだろうか。


日銀の布石

さて本日の日経平均は半値戻しの急反発となるも、世界的な金利上昇を背景に2月の最終売買日となった先週末の日経平均は1200円を超える急反落となり2016年6月24日以来約4年8ヵ月ぶりの大きさとなったが、今月に入ってからのマーケットでは下げ相場の中で日銀によるETFの買い入れがぱったりと止まった旨でにわかに話題になっている。

事実、日銀はここ約5年ほど前場のTOPIX下落率が0.5%を超えた日は必ず買い出動してきた経緯があるが、先週末の日経紙には今月に入ってから18日、19日、そして直近では先週24日と前場のTOPIX下落率がいずれも0.5%を超えたにもかかわらず日銀に動きが見られなかった旨が書かれていた。

この辺の背景には来月の決定会合で公表予定の「金融緩和の点検」を巡って、ETFの買い入れ減額を視野に入れた柔軟化措置などが含まれる政策対応等への布石との見方も一部に出ている。当欄では丁度1ヵ月前に「残高増と出口論」と題しインフレ目標は未達乍ら更に残高を積み上げる状況ではなくなっており出口戦略についての議論は続くとしたが、リスクプレミアムが縮小するなかまさに保有構造の正常化に向けた節目に差し掛かったといえるか。


コロナ禍どこ吹く風

さて先週の日経MJ紙の一面を飾っていたのは「富裕層は揺るがない」と題して、新型コロナウイルスの感染が拡大したこの1年でも日経平均株価が3万円の大台を回復するなど株高による資産効果が富裕層の消費マインドを後押しし、個人消費が弱いといわれているなかでも高額消費が堅調な旨の記事であった。

ここではそごう・西武が昨年開催した富裕層向けの催事「高輪会」が取り上げられ、現代アートやダイヤモンドのルースなどが売れゆきも良く前年同月比20%増の売り上げになった旨や、高級輸入車の売り上げも昨年は1000万円超の高級車が前年比0.5%増となり5年連続での前年超えとなった旨が書かれていたが、不動産もまた然りで億の桁のマンション市場も即成約が多く不況知らずという。

ところで斯様な億ションなど私には無縁の存在だが、今月は「三越 春の逸品会」に招待されたので過日ニューオータニに出向き選りすぐりの品々を観てきた。エントランス付近に置かれたクルーザーやプライベートジェットの案内を横目に見乍ら、アールデコのガラス工芸品からペルシャ絨毯含めた店舗ではなかなか見られないような一点モノの伝統工芸品の逸品を十分堪能する事が出来た。

また高輪会よろしく店頭では見た事もないような大粒ダイヤのルースも目の保養になったが、印象的だったのは外商さんがズラリと並ぶ独特な雰囲気のなか会場内の各ブースは成約した顧客でごったがえし混雑を極めていた光景か。何かこうコロナ禍で制約されてしまった従前消費の鬱憤を晴らすが如く高額消費にぶつけている感もあり、まさに「富裕層は揺るがない」を目の当たりにした一日であった。


時価総額1兆ドル突破

さて、先週からビットコインの乱高下で市場が喧しく本日は仮想通貨関連銘柄のシンボルストック的なポジションにあるマネックスGやセレスなど直近でのビットコイン急反落を受け軒並み急反落となっていたが、一昨日の週明けはセレスがストップ高で年初来高値と同時に上場来高値を更新するなどこれらは一斉に急反発となっていた。

これらの背景になっていたのが周知の通りのビットコインの急騰で先週末にはその価格が初めて55,000ドル台を突破し史上最高値を更新、結局週間では11%強、月初からでは6割強の上昇となっており活況な市況を背景とした仮想通貨取引の売買が今後も膨らむとの見方からこれらの人気に連動する格好で関連銘柄が再度蒸し返された構図だ。

その時価総額も先週は予てよりこの大台がETF承認条件の一つともいわれてきた1兆ドルを遂に突破することとなったが、北米で初の承認を受けたパーパスインベストメントのETFの資産運用残高は上場後わずか2日で4億2180万ドルと目覚ましいスタートを切る事となり、続いて翌日には別の「EvolveETF」もはれて上場の運びとなった。

またこれに続いて同じくカナダの金融会社CIファイナンシャルも小会社を通じビットコインETFの予備申請を行ったほか、デジタル資産運用の3iQも予備申請を行っているが、JPモルガン・チェースはじめとして懐疑的な見方が燻り続け要人の一言で20%以上も変動する現状はたして新たな成熟の段階に入ったのか否か今後もこれらETFと併せその動向には注目しておきたいところ。


ペコちゃん社外取締役

さて、来月の決算に向けて各企業が発表する決算・人事情報が各紙で取り上げられているが、これに絡んで先週目に留まったのがペコちゃんで知られるところのあの不二家の取締役に女優の酒井美紀氏が就任するという件か。これまでの同社アンバサダーの経験を買われ来月の株主総会の承認を経て就任予定の運びという。

ところでこう言っては一寸失礼かもしれないが、この報で思い出したのがもっと有名?なところで昨年の6月にあのハリー・ポッターシリーズのハーマイオニー役をやっていた女優で近年はアクティビストで話題なエマ・ワトソンが、グッチやサンローランなどを傘下に展開するケリング社の取締役に就任した件か。

それは兎も角も近年こうした女性の社外取締役を巡ってはコーポレート・ガバナンス改革を背景に社外の優秀な女性人材を迎える動きが広がってきており、不二家のような東証一部上場企業に在任する女性取締役は昨年日経紙が報じたところによれば前年比で22%増加したという。

折しも直近では東京オリンピック組織委員会の森会長が女性蔑視の失言で炎上、多様性に反するとして辞任に追い込まれた経緯があるが、斯様に投資家や株主の圧力が高まるなか企業側も多様性の観点から彼らに説明がし辛いなかでこれらを重視せざるを得ない空気になってきている証左だろうが、一方では女性の社内取締役は微増にとどまっておりこの辺のハードルが変ってゆくのか否かも今後の注目点か。


成長か肥大か

昨日記の通り今週は週明けから日経平均が3万円の大台を超えてきたが、個別でもこの日経平均への寄与度が約10%と影響力の極めて高いファーストリテイリング株もまた10万円の大台を超えて上場来高値を更新していたのが目立ち、本日の日経紙企業面でも「ファストリ、時価総額10.8兆円」と題し同社の時価総額が10兆8,725億円となった旨の記事が出ていた。

ところでファストファッションの双璧といえば世界ではこのユニクロを展開するファーストリテイリングとZARAを展開するスペインのインディテックスだが、これまで長年のあいだ時価総額で後塵を拝していた同社もこれで初めてインディテックスを超えはれてアパレル業界で世界首位に躍り出たということになる。

最近はサステナブルを意識したモデルを構築しコロナ禍も追い風になったのか、はたまた今や大株主にまでなった日銀のETF買い効果なのか、何れにせよ今やこれを買うのに1単元でも1,000万円以上が必要となるワケで数年前のように手軽に手の出せる銘柄ではなくなってしまったが、今後も日銀政策と併せいろいろな意味で目が離せない指標的存在になっているのは間違いないだろうか。


コロナ後を買う?

昨日の余勢を駆って本日も日経平均は大幅続伸となっていたが、米休場の狭間を縫って昨日はとうとう1990年8月2日以来約30年6ヵ月ぶりに終値で30000円の大台を超えて来た。内容としては小売りや半導体関連に資金流入が目立ったが、このセクターでも寄与度が高いファーストリテイリングとファナックの2銘柄でこの日の上げの約3分の1を担ったという構図だ。

しかし今月に入ってからというものあれよあれよと3000円以上も上昇し嫌でも高値警戒感が感じられるものの、溢れた緩和マネーの変わらぬ受け皿として否応なしの状況となっており先の米市場のゲームストップ株ではないが実需というよりETF等も含め構造的にショートが累積していた構図がスクイ−ズを誘発した可能性も無きにしも非ずか。

ところで30年前というと何所も彼処もギラギラしていた懐かしい光景が今でも直ぐに思い出されるものだが、それは兎も角この当時の時価総額を見てみると首位はNTTでそれに続いてズラリと並んでいたのはまだ合併前の大手銀行勢だった。また世界ベースで見てもNTTは2位に君臨していたが、今や国内首位のトヨタ自動車でさえ30傑にも入らない凋落?ぶりとなっておりこの辺は他国との新陳代謝の違いをあらためてまざまざと感じさせられる。


実需への期待

さて、先週は米株式市場でダウ工業株30種平均が3週間ぶりに史上最高値を更新した裏で仮想通貨のビットコインもまた史上最高値を更新していたが、その切っ掛けとなった一つにあのテスラがビットコインを15億ドル購入した件がある。現金運用先多様化との事だが近く商品代金決済をビットコインで可能にする方針もあり、実に90兆円ともいわれるビットコインの経済規模を取り込むのがテスラの目的ではないかとの観測もある。

このテスラの報道に続いて米大手銀行バンク・オブ・ニューヨーク・メロンもビットコインを中心とする一部暗号資産を顧客が保有・送金・発行するのを支援する部門を新設すると発表しており、先駆したペイパルやスクエアなど関連株がこの一連の報道で再度物色され当のビットコインも実需への期待から先週末にかけ連日で史上最高値を更新していた。

ビットコインなどの仮想通貨に関しては予てより決済手段としての活用が広がるという実需の期待があるものの、今回の件でも明らかなように影響力の大きい企業や経営者の一声で10%以上の急騰を僅か数十分で演じるなど価格安定性には依然として疑問符が付き、直近では北朝鮮による交換業者等への攻撃で推計3億ドル以上が奪われた事件も明らかになっている。

悲願のETFもこれまで数社が申請を試みるも上記のような理由からことごとくSECに弾かれたり自ら申請を取り下げたりしているが、今後は果たしてこうした大手の後追いで日米大手なども追随してくるかどうか、またそれらによる一般への浸透で実需の成熟化が適うか否かも今後派生モノ含めキーとなって来ようか。


バレンタインデー2021

さて来たる日曜日は毎年恒例のバレンタインデーだが、今年は言わずもがな新型コロナウイルスの感染拡大の影響から本命組も手作りチョコや手渡し等も憚られる雰囲気のなか、義理チョコに至っては昨年に続いてテレワークの増加や今年の日並びも日曜日とあって2年連続で手渡し無しの憂き目に遭うチョコも多そうだ。

そんな今年も渡さないバレンタインの形態となるなか、こちらの商戦もおせち料理よろしくオンラインに活路を見出したものが目立つ。バレンタインに関する調査を実施している松屋銀座は今年初めてバレンタイン専用のオンラインストアを開設、高島屋のお試し粒買いはじめ他の大手もそれぞれ自分へのご褒美等へ独自色を出した提案で義理チョコ需要減少分をカバーしようと戦略を練っている。

ともあれ上記の通り義理チョコ需要の減少も響いて今年のバレンタインデーの市場規模は昨年から約20%減の約1050億円にとどまるとの予想も出ているなか、大手のゴディバは過日コロナ禍の影響で北米での全128店舗を3月末までに閉鎖または売却すると発表、それだけでカカオ相場が一時値下がりを演じた経緯があるが対照的に日本事業は好調な模様。ここ数年のサロン・デュ・ショコラの盛り上がりを思い出すに終息後の復活が期待されるところ。


2021年IPOスタート

さて、先週末には2021年最初のIPOとなる半導体レーザー、網膜走査型レーザーアイウェアを手掛けるQDレーザーが東証マザーズに上場となったが、その注目の初値は買い気配のまま前場を終える人気で後場に入って引け前になって漸く公開価格340円の2.34倍に相当する797円の初値を付けた。

本日も同社は寄り付きからいきなりストップ高とその騰勢は止まることなく破竹の勢いとなった今年の一発目であったが、昨年のIPOを振り返ってみると前半と後半で環境に明暗が分かれたものの、前年比8社増の102社となり07年以来13年ぶりの高水準となった。また日経紙によれば上場初値は公募・売り出し価格の平均2.3倍に達し、15年ぶりの高水準となった模様。

資金吸収額が比較的小粒な企業がマザーズの約7割を占めたという構図もこうしたロケットスタートに一役買ったともいえるが、今年のIPOはといえば概ね前年並みかそれ以上の上場件数が見込めそうなものの昨年延期となったキオクシア等も見込まれる事で小粒一辺倒という感じではなさそう。公開価格と市場価格の大幅乖離は投資家のニンマリ顔と対照的に公開企業側に取っては問題も残るものだが、上記の部分でこれが多少緩和される事になるかどうかこの辺も見ておきたい。


HOTEL Living

さて、今週気になったニュースといえば帝国ホテルが「ホテルに住む」をコンセプトとしたサービスアパートメントの新事業をスタートさせるという報か。既に予約の受付が始まっており客室全体の約一割をこれに充てて一部屋ひと月30泊で月額36万円からというが、130年の歴史を誇る同ホテルでは初めてのサービスという。

この辺の背景にはやはり新型コロナウイルスの感染者数急増による宿泊者数低迷などが想像に難くないが、先にホテル専門の調査会社英STRが発表した2020年12月の国内ホテル平均稼働率はといえば前月から12.1ポイント下落の43%となり、20年通年での稼働率は39.6%と同調査開始以降で最低を記録している。

ところで「ホテル御三家」では他にホテルニューオータニも昨年の夏にワーケーションプランとして30日連泊プランを39万円から販売した経緯があるが、こちらはラウンジで約1500円相当のドリンクが無料のほかパーキングにプールやサウナまで無料のうえ専属アテンダントまで付くのを考慮すれば1日あたり1万円を切りビジネスホテル並みの料金でインペリアルに「住める」という事になる。

単に客室をディスカウントしてセールするのではなく形態を変え新事業として売るあたりにブランディングの上手さを感じるが、一方ではSakuraブッフェで有名だったホテルグランドパレスのように東京オリンピックを前に7月で営業休止を表明したところもある。其々の決断だがともあれ先ずはこの老舗ホテルの新たな挑戦に追随してくる向きがあるのか否かこの辺も注目しておきたい。