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幻の増資

さて先週末の日経紙総合面には「破綻ハーツ、増資頓挫」と題し、先月に破綻したレンタカー大手のハーツが投機熱で上昇した株価をテコに米中堅のジェフリーズ証券を主幹事として増資を計画しようとしたものの、SEC側がこれを問題視した事でこの増資計画が中止となった旨の記事があった。

国内でも先週は破綻して東証での最終売買を終値4円で終えたレナウンが利鞘狙いのイナゴ?の群がりから売買代金を約5倍に膨らませていたが、このハーツも上記のSEC委員長が同社に言及した当日も売買停止前に急騰を演じ、受け皿となった新興ネット証券のロビンフッド等では同社ホルダーが破綻から2週間で10万人以上増えたという。

かつて国内でも持ち帰り寿司の京樽が破綻後に急騰しついには破綻前の株価をも抜いた珍事があったが、もっと近年のところではスカイマークも最終売買日が14円と驚きの二桁終値、JALやライブドアも然りで常識で考えれば無価値になるモノへ時に驚きの商いが集まるケースがある。冒頭の増資が仮に叶えば歴史に残るファイナンスとなっただろうが、こんなところにも緩和マネーの膨張を背景にした珍事が及んでおりまた別の幻も今後出て来ようか。


商慣習とガバナンス

さて先週末の日経紙には「もの言う株主がNO」と題し、オフィスビル賃貸の京阪神ビルに対し旧村上ファンドの元幹部が率いるストラテジックキャピタルが、社内取締役の過半を親密銀行のOBが占めている事から企業統治がゆがめられているとの株主提案を突き付け波紋が広がっている旨の記事があった。

同ファンドといえば以前からこういった特定企業OBによる企業の私物化懸念を問題にしており他にも投資先である東レはじめとして中堅ゼネコンの淺沼組や世紀東急工業、極東貿易などに株主提案を実施した経緯があるが、斯様なアクティビストから提案を受けた企業はアイ・アールジャパン調査では先週段階で昨年から6社増加し22社と最多となっている模様だ。

注目された16日開催の株主総会では結局のところこの株主提案は否決される事となったが、このコロナ禍で内部留保を背景とした一昔前のような増配や自社株買い要求が減少する一方でガバナンス絡みの提案へと変化してきているという。親密企業OBの天下りなど持ち合い株と並び典型的な従前からの商慣習の一つでもあるが、こうしたファイナンス絡みの後ろ盾もコロナ禍を経て漸く変ってゆく事になるのかどうか今後も注目されるところ。


明暗分かれた在庫増

今月のアタマに当欄では「コロナの歪」と題し、昨今のコロナ禍を背景とした国境閉鎖や商業航空の大幅な減便など物流リスクの影響で現物デリバリー前提の裁定取引の困難から貴金属のNY先物価格とスポット価格との差が顕著になっている旨を取り上げたが、本日の日経紙商品面にはNY先物市場で現物の金の在庫が急増している旨が載っていた。

コロナショックの真っ只中から経済再開の動きを経て物流リスクも病み上がりの中漸く正常化に向けての歩みかというところで、併せて商機とみた裁定の方もこれが効いて来た格好か。これと併せCMEのデリバリー規定緩和も背景にスイスから米国向け金輸出は昨年比で4月は実に115倍に膨らんだという。

今週は週明けのNYダウがコロナウイルス感染第2波懸念からラバで急落する場面も見られたが、斯様に再度の物流リスクも睨みながらこの一連の動きの中で現物志向も高まっているという。在庫増といえば先のWTIも記憶に新しいところだが、同じ在庫増でも両者でその背景は事情を全く異にしているという感だ。


お土産に続き・・

さて、緊急事態宣言発令前の当欄でコロナ禍の影響で外食チェーン各社が株主優待食事券の有効期限を相次ぎ1〜3カ月程度延長し始めた旨を書いていたが、昨日の日経紙夕刊1面には新型コロナウイルスによる企業業績への打撃によりこれまで提供してきたプリベイドカードや百貨店のカタログギフト等の株主優待を休止や中止するなど決めた企業が5月末迄に約10社に上る旨が出ていた。

株主優待といえば優待満喫生活を売りにしたタレント化した投資家など度々メディアが取り上げているが、昨年は株主優待制度導入企業が1月末で1500銘柄を超えるなど実に上場銘柄全体の4割に達し、近年では長期に保有するほどより優遇を受けられる仕組みとする企業も増加してきていた。

またこのコロナ禍の影響で今月が酣となる総会も今年は様変わりの光景だろうが、ただでさえここ数年の間に個人株主の楽しみの一つでもあった総会のお土産も続々と廃止する企業が続いていただけに上記と併せこれら目当ての個人が更に篩にかけられる構図が見えるが、ここ数年持ち合い解消促進の後の受け皿としての個人の存在が重要視されてきただけに今後各社共に思案のしどころだろうか。


色褪せないテーマ

本日の日経平均は新型コロナウイルスの感染者数が東京で5月5日以来の高水準となった事や、時間外取引のNYダウ先物が下落した事もあって後場から下げ幅を広げ大幅に3日続落となったが、ファーストリテイリングや東エレクなど値嵩群が値下がりに寄与する一方で値上がりの方は1位の塩野義や2位のアステラス薬などコロナ関連が寄与していた。

コロナ関連といえば上記の通り日経平均が800円近く下落するなかでやはり目立っていたのは約20%の値上がりを演じたナノキャリアか。つい2ヵ月前の100円台が先週末の年初来高値まで約4.4倍に化けしている。同じくマザーズのアンジェスもまたコロナ関連で先駆したがこちらも2月安値から約6倍に大化けている。

他にもこれまで数度取り上げたコロナワクチン開発の黒子タカラバイオは先週にストップ高も交え7年ぶりの高値で年初来高値を更新、その商いもナノキャリアと共に発行済み株式数に迫る破竹の勢いだ。仮に今後世界規模で感染拡大となっても経済的損失や財政負担を考慮するに再度のロックダウンは現実的に疑問符が付くだけにこのテーマでまだ暫く回転の効く展開が続くか。


大化けする報酬

さて、米テスラCEOのイーロン・マスク氏が設立した企業である米スペースX社が開発した新型宇宙船「クルードラゴン」が新型宇宙船としては1981年のスペースシャトルの初飛行以来、約40年ぶりに無事打ち上げられた旨の報道が過日あったが、これまで官主導だった有人宇宙開発がこれで民主導に切り替わる第一歩ともなるか。

ところで同CEOといえば、2018年に承認されたテスラのストップオプション規定に基づき実に7億ドル超の成果連動型報酬を受け取る事が俄かに話題になっている。最初のハードルは時価総額1000億ドルで先ずはこれが達成となったが、この報酬体系承認を得た当時の時価総額は約530億ドルであったのを考えるに成る程といえる伸びであるのは否めない。

しかし同社といえばやはり2年前にはSECまで巻き込んだ幻のMBO劇の黒歴史?が記憶に新しいが、最近ではこのコロナ禍のなかCSRを地で行くべく人工呼吸器を生産し世界の病院に向け無償配布するなど精力的な活動も経て昨日は初の1000ドル大台乗せを達成、はや時価総額は一時1860億ドルにまで達し粛々と次のストックオプションのステージも睨み駒を進めている。


BLM

さて、米暴動の切っ掛けとなった白人警官による黒人暴行死事件への抗議デモは先週末に首都ワシントンで最大模化となった旨の報道があったが、多くのセレブやあの素性不明のバンクシーも人種差別をテーマにした新作をインスタで公開しこの抗議デモへの支持を示すなど収束の見通しは立っていない。

経済不安も背景にどさくさ紛れの略奪も横行しているが、そんな混乱を他所に株式市場の快進撃は止まらない。そんな全面高に紛れ銃器大手S&W等も大幅高を演じたが、こんな銃器ポストの物色といえばオーリンの史上最高値更新はじめ銃器物色に染まった米ラスベガスの銃乱射事件など記憶に新しく、またぞろVICEFUNDが息を吹き返しそうな勢いだ。

国内市場も昨今の北朝鮮情勢やら香港国家安全法を巡る混乱を背景に銃器大手豊和工業はじめ石川製作所や細谷化工などの関連物色があったが、SRIやらESG投資などの真逆?をゆくこの手の同時物色のカオスは破竹の勢いの市場との不気味な乖離感を際立たせるのに一役買っている。


ETF彼是

さて、先週末の日経紙総合面には「金ETF資金流入続く」と題し世界の金ETFが価値の裏付けとして保有する金現物の残高が1〜5月に計623トン増加し金額にして337億ドルの資金が流入、5か月間の流入量がこれまで最高だったリーマンショック後の2009年の年間量を上回るなど資金流入が止まらない旨の記事があった。

その量は先月末で過去最高の3,510トンとなりこれは世界の金鉱山の年間生産量に匹敵する規模というからその勢いも推して知るべしだが、ETFといえばもう一つ国内では日経平均のダブルインバース型ETFの投資口数がこの2カ月強で2.6倍に膨らむなど個人の逆張り投資姿勢に乗り人気を博している旨も同紙市場点描に出ていた。

逆張りの個人が群がったモノといえば直近では先の原油暴落時のETFがあるが、野村のインデックスなどその値段も当時の二桁から三桁に回復しはや5割高と刈り取るに十分な水準となっている。オプションのコールも然り、貸借倍率云々で逡巡するより先ず乗る勢いが奏功しているのが今の相場だが、冒頭の通り再びリスク資産と安全資産が並走する同時高も何所まで続くのか併せて見ておきたい。


時価総額下剋上

先週の日経紙投資情報面には「伊藤忠時価総額 初の商社トップ」と題し、伊藤忠商事の時価総額が2日に終値ベースで三菱商事を上回り初の商社トップとなった旨が書いてあった。背景には資源価格の急落で資源色の濃い三菱の先行き不透明感の強まるなか、生活関連ビジネスに強い伊藤忠が相対的に選好されたというもの。

ところで東証マザーズ指数が2018年12月以来、約1年半ぶりに1000ポイント大台を回復した旨を当欄では先に取り上げていたが、上記の逆転劇に先駆けこの東証マザーズ指数の時価総額も初めて東証2部を上回っている。こちらもまた伝統的な製造業の多い2部の先行き不透明感の強まるなか、新生活様式に対応した成長力が評価されるマザーズが選好された格好の表れだ。

しかしこの両ポスト、昨年末も当欄で「逆行と大義名分」と題し1部への移行に必要な監査法人の適正意見が付いた有報が2部は5年分など50年前から変っていない点など新興市場と比較するに旧態依然の様を書いたが、このコロナ禍の影響を受けた上場廃止基準等含め来る市場改革を見据えても新旧交代感が改めて意識されるところか。


コロナ便乗?

さて、ドラッグストア等では品薄だった商品も漸く棚に並ぶようになって来たが過日の日経紙総合面には「コロナ対策商品 違法表示横行」と題し、ネット通販でコロナウイルス対策を謳う商品の15〜20%がその根拠を欠く効能を表示するなど違法の疑いのある状態で大量に売られている旨の記事を見掛けた。

コロナ禍に商機を見出そうとする輩が居なくなる事は無くこの手はいたちごっこだが、一頃のマスクや消毒ジェルの高額転売のような露骨なモノは論外として、上記以外でも最近雨後の筍のように増殖しているファッションマスクの一部など明らかに非末防止という本来の目的から外れた素材や作りに対してその販売価格があまりにも不釣り合いな高額なモノが多く目に付く。

またソーシャルディスタンスに便乗した商品もまた然りだが、こういった光景を目にするに、以前にも当欄で書いたイタリアやフランスの有名ラクジュアリーファッションブランド勢による機に乗じて商売にすることなく医療関係へ無償提供した飾り気の無いマスクや防護服などの品々は本当に美しく見えて来るものだ。


戦々恐々の再始動

さてステップ2に進んだ途端に昨晩は初の東京アラートが発動されてしまったが、緊急事態宣言が解除されて初の週末はゴーストタウンと化したようだった銀座にも人出が戻っていた。とは言ってもデパートのコスメ売り場などまるで閉店後の如く透明なシートがかけられ、各ブースにはソーシャルディスタンスを順守した長蛇の列が出来る異様な光景が広がっていた。

長蛇の列といえば銀座もハイブランド各社が続々と店舗を再開させているが、こちらもまた各店が取り決めた入場制限の影響なのか、人気がピークだった一頃の温度管理を謳って入場制限をかけていたチョコレート専門店の如く店の外には入店待ちの人の長い行列が出来ていたのが印象的であった。

他にもエスカレーターやエレベーターなど物々しい案内が張られていたのも目立ったが、GINNZA SIXなどアルコール消毒液の隣に手荒れに配慮してかハンドローションを置く心遣いも。いずれにせよ自粛の先月から再始動の今月へ、感染第2派に戦々恐々とするなか各所の知恵が問われる時か。


コロナの歪み

本日の日経紙商品面には「貴金属、広がるゆがみ」と題し宝飾品や産業用に使用するプラチナや銀などの貴金属の国際市場間でも、ニューヨークの先物価格と現物を取引するロンドンやチューリッヒ等の欧州スポット価格との差がプラチナで2000年以降で最大となるなど目立って来た旨が出ていた。

通常この手のケースでは裁定が効いて価格差が縮まるものだが、このコロナ禍を背景とした国境閉鎖や商業航空の大幅な減便など物流リスクの影響で現物デリバリー前提の裁定取引が難しい事で冒頭の現象が起きており、英銀行大手HSBCなど先駆けとなった金のこうした誤算で大幅な評価損を出した旨も書いてあった。

銀行の金取引といえば株式等のバスケット取引などで機関投資家と証券会社間で遣り取りされる事も多いEFP取引が主流だが、ニューヨークとロンドンのオンス当たりの差がロックダウンによる影響で数十ドルに拡大した事が直撃した格好か。マイナス金利然り、先のWTIマイナス価格も然りでコロナが引き起こした未曾有の現象が今後各所にどう影響してくるのか引き続き目が離せない。