73ページ目

お値段以上?

さて、予てよりホームセンター大手DCMホールディングスが同業の島忠に対してTOBを実施中であったが、先週はこれに対抗する形で家具小売り大手のニトリがTOBでこの島忠を完全子会社すると発表している。そのTOB価格もDCM側より3割上回る価格を設定しているが、既に先の婚約で合意が為されているだけに敵対的買収に発展するのか否か面白く?なって来た。

さて、ニトリといえば同様な買収で記憶に新しいところでは昨年のLIXILビバへ食指を動かした件か。結局この件はニトリやファンド勢が退きアークランドサカモトが手中に収める事となったが、渦中?のDCMも元々は3社が経営統合して発足した会社。斯様にホームセンターといえばここ20年くらい市場規模が横這いで推移する一方で店舗数は増加、少子高齢化でこれからパイが広がる想定がし辛い背景で業界再編の素地があるのは言わずもがな。

今後は婚約が成立している両者いや両社の対応に焦点が集まる事になり島忠には筆頭株主にGPIF、また大株主には旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンズなどアクティビストも控えているだけに友好的TOBを推し通しニトリを振る場合にはそれなりの説明が要求されることになるが、いずれにしろこの手の成熟産業は今後もいろいろな形で合従連衡が繰り返されてゆくのは想像に難くないか。


集まらないハロウィーン

さて今週末は恒例のハロウィーンが控えるが、巷のパティスリーやフローリスト等々のデコレーションは変らずそれ一色となっているものの、今年の場合は新型コロナウイルスの影響でこれまでの主戦場?であった渋谷など筆頭に何所彼処も「集まらない」がキーワードになっている模様だ。

その渋谷など集まらないでとお願いをする代わり?に区公認の「バーチャル渋谷」なる場所にとらわれない次世代ハロウィーンイベントで楽しんでくれと呼びかけているが、もはやただのバーチャル空間のイベントでギラギラした企業戦略のみが見え隠れし本来のハロウィーンから更にかけ離れたという感も否めない。

近年はSNSの発達もあってこのハロウィーンも人気イベントとしてすっかり定着しつつあったものだが、コロナ禍で迎える今年のハロウィーンはいったいどうなるのか?近年の市場規模はここ数年減少傾向を辿っていたとはいえ1000億円超を誇り景気のバロメーター扱いされていただけに、これからのニューノーマルとして定着するのはどんな形になるのか気になるところだ。


GoTo無限

先週のアニメの日には今や社会現象にもなっている「鬼滅の刃」を取り上げ、コロナ禍の影響をモロに受けた各企業が人気に乗る形で一斉にコラボ商品など企画している旨も書いたが、飲食業界では「くら寿司」などもこれに乗り大当たりとなっている。さてその「くら寿司」に絡んでもう一つ今話題になっている件に、無添ならぬ「無限くら寿司」なるモノがある。

すなわち「GoToEatキャンペーン」を利用し食事してポイント申請し付与されたポイントを次回の食事に回す、斯様な繰り返しで予約し続けられる限りほぼ毎回無料で利用出来るというモノ。これで思い出すのが以前に書いた同じGoToEatキャンペーンの盲点を突いた「トリキの錬金術」なるものだが、こちらは直ぐに対策が為されるに至ったのは周知の通り。

しかしGoToシリーズはトラベルにしても都民割りなどを組合せプランによっては実質無料または儲けまで出る計算のものがあるものの、何の問題は無く幅広く利用してくださいという裏で現場サイドからは様々な戸惑いが多く聞こえて来る。背景には制度設計がしっかり出来てないまま見切り発車的にスタートし走りながら改善してゆく事を前提とした事業という部分が大きいと思うが何れにせよ税金ジャブジャブなこの大盤振る舞い、タイミングが合うなら使わない理由は無いだろうか。


マル信手仕舞い期

先週末の日経紙マーケット面には「マザーズ急落 高値警戒」と題し、このところ個人の信用買いが集中していたIPO銘柄やITサービス関連株の高値警戒感から利益確定目的の売りが加速、先週末のマザーズ指数が7ヵ月強ぶりの大きさの下げ幅で急落した旨が出ていたが、週明けも4日続落となりおよそ1ヵ月ぶりの安値を付けていた。

マザーズ指数といえば当欄でもその時価総額が東証二部を初めて上回り、年初来騰落率でも日経平均やジャスダックのマイナスに対して21%高と明暗を分けていた旨など何度か取り上げていたが、それだけにまた谷も深しで先物など先週末は途中でサーキットブレーカーを交えながらの急落を演じていた。

個別で急落を先導したモノでは当欄で安値から13倍にも大化けを演じた事で何度も取り上げたEC関連の本命BASEや、公開価格に対して5.7倍のロケットスタートで初値を形成したニューラルポケット、新政権の目玉政策でストップ高交え年初来高値更新していたHENNGE等々成る程コロナ禍の中で成長期待を囃され手垢の付いたモノが多い。

ちょうど今の時期はコロナショックでマザーズ指数が安値水準を付けたあたりから半年が経過し、マル信で仕込んだ向きは手仕舞い時期にもあたる事もこれら増長した部分もあるが、その信用倍率も今月中旬時点で300倍超えであったというから然もありなん。とはいえ環境に変化が無いだけにゴールドよろしく売り一巡後は再度同ポストに物色の波が訪れる事になろうか。


止めるに止められず10年

日銀が金融緩和の一環としてETF(上場投資信託)の購入を決めてからはや10年になるが先週の日経紙・オピニオンには「日銀ETF購入10年の功罪」と題し、欧米の主要中銀は手掛けていないこの異形の金融政策の功罪について大手シンクタンクや元米財務次官など有識者がそれぞれの見解を述べていた。

今月に入ってからは1回あたりの購入としては新型コロナ感染拡大前と同程度に落ち着いてはいるものの、今年はこのコロナの感染拡大で3月にその購入額を年6兆円から12兆円に増額、1回の購入額も最大で2004億円まで増やした影響も出て中旬に発表されている累計では6兆2141億円と、従来の最高であった18年の6兆2100億円を既に上回っている。

ETF買い入れの額がここまで増加するとは開始当初は予想だにしなかったが、国債とは性格を異にし満期が無い分買えば積み上がるワケで今や日本最大の株主見通し論まで出るなかこれに付随する様々な副作用が議論の対象に挙がり、コーポレートガバナンスの重要性が謳われる一方これと逆行する政策の特異性が際立つ。

今週の金融政策決定会合においても日銀は引き続き現行の大規模緩和策を維持し新型コロナウイルスの感染拡大を受けて打ち出した一連の政策対応も維持する方針を示すと見られているが、当欄で毎回書いている通りアフターコロナも睨んで出口戦略の具体的な在り方もいよいよ議論されてくるのか否かこの辺も気になるところ。


キメツノミクス

さて本日22日はアニメの日ということらしいが、アニメといえば今や社会現象になっているのがやはり「鬼滅の刃」か。その劇場版無限列車編は公開3日間で興行収入46億円と過去最高となり、また観客動員数も歴代1位に躍り出ている。ちなみに去年大ヒットした「アナと雪の女王2」の同初日から3日間の興行収入が約19億円、「天気の子」は約16億円であったから成る程これは凄い数字だ。

現在までの歴代興行収入ランキング1位は2001年の千と千尋の神隠しで308億円だが果たしてこれを超えて来るかどうかというところだが、これに乗っかる形で各企業は一斉にコラボを企画し今や数えきれないくらいその商品も其々が想定以上の数字を叩き出し、企業以外でも主人公に因んだ地方への巡礼等々でそちらも含めその経済効果は計り知れないとの試算も出ている模様。

斯様な状況から株式市場ではその関連株には一斉に物色の矛先が向けられ、週明けは本命の東宝が約1年の高値水準に買われ年初来高値を更新したほか、鬼滅関連の衣類販売を始めたジーンズメイトもストップ高まで買われ年初来高値を更新、他には関連グッズ販売を手掛けるエスケイジャパンやエディアも揃ってストップ高まで買われる破竹の勢いとなっていた。

このコロナ禍で映画業界も公開延期や密回避の入場制限などの憂き目に遭っていたところへこの救世主の登場、主人公の水の呼吸の伍の型では奇しくも「干天の慈雨」なる慣用句が使われていたがまさにそれといったところか。何れにせよこれら映画館の全面稼働はもとよりこれまでダメージの大きかった各所の経済効果を探る試金石となりそうだ。


BTS依存

さて、先週はK-POPの筆頭格であるアイドルグループBTSが所属する事務所ビッグヒットエンターテイメントが、韓国芸能事務所としては初めて韓国証券取引所に上場した件が話題になっていた。注目された初値は公募価格に対して約2.6倍となり、その後はストップ高まで買われるロケットスタートとなった。

個人の応募が募集枠の実に1100倍以上となっていた事で予想された過熱感だがこれで計算した時価総額はザラバで実に1兆円超、これは日本の同業大手アミューズやエイベックスの約20倍の規模というから正に名の通りのビッグヒットである。とはいえ韓国もまた過剰流動性が渦巻くマーケットだけに翌日は早速20%以上の急落の憂き目に遭っており鉄火場のセカンダリーに飛びついた向きもヤレヤレと言ったところ。

週が明けてなお連日の続落となっていたが、こうなると売上げの9割をこれから数年で順次兵役に就かなければならないメンバーに依存しているという構図も一気に不安の種になってくるというものだが、この上場で斯様な依存体質から脱却出来るかどうか調達資金の活用等がこの辺の鍵になってくるだけに今後が注目されようか。


空箱の是非

昨日はSBG株が米ハイテクセクターのコール大量保有の思惑に絡んで踏み雑じりの7300円まで買われ前週13日に付けた年初来高値ツラの展開となっていたが、同社といえば特別買収目的会社(SPAC)の設立計画について早ければ年内にも数百億円規模で米市場に上場させる見通しであることが報じられている。

このSPACなるもの上場時には事業実態の無い所謂「空箱」だが、未公開企業を見つけて買収し底を存続会社として上場させるもので上場までの期間や手続きを短縮し最短ルートを提供出来る点が魅力だ。米では80年頃からこの手法自体はあったが、例えば今年の7〜9月のIPOによる市場からの調達額のうち半分をSPACが占めるなどここ急増している。

同紙では著名アクティビストがSPAC上場で40億ドルを集めたと書いてあったが、これも当初は30億ドルであったものが応募殺到で切り上がった模様。出資者利益が買収成否に関らず担保される事で斯様な人気だが、間接上場を果たす事で裏上場とのイメージも付き纏うもののコロナ禍で逆風に見舞われた向きも同手法から起死回生の芽もある事などからIPO市場の下支えとしての地位を確立しつつあるか。


日本市場に商機

さて、先週末の日経紙投資情報面には「物言う株主の要求最多」と題して、所謂アクティビストが公にした日本企業への取締役の受け入れや株主還元の強化など新規の提案や要求の件数が、9月末時点で22件と既に昨年の19件を上回り年間ベースの過去最多を上回るなど増加している旨の記事があった。

この辺に絡んでは本日も東京ドームが香港の投資ファンドから社長ら取締役3人の解任を求める通知を受け取った旨が報じられていたが、主戦場の米市場に次ぐのが日本市場となっておりガバナンス改革推進で株主要求の通り易さが以前とは異なる上に、往って来いまで戻っていない株価も商機?と見て同頁にも書いてあったような自社株買い要求に並びガバナンス絡みの提案も増えている模様。

この辺はやはり日本企業の特徴として内部留保の厚さや企業統治改善の伸びしろが大きいところが背景にあるといえるが、株主と企業の攻防もかつて総会屋が蔓延っていたシャンシャン総会の時代とは全く違う意味で今後も激化してくるのは想像に難くなくこの辺の景色も隔世の感を禁じ得ない。


秋の味覚異変 

さて、今年は猛暑の影響で漁場の水温が上昇し台風や大雨によるしけも影響し先月の全国水揚げ量は過去最低の不漁といわれた前年の三分の一と記録的な不漁が報じられていたサンマだが、今月に入ってようやくその水温が下がった事などを背景に先週の北海道花咲港では今シーズン最も多い水揚げがあった模様だ。

斯様な背景もあって旬といわれる時期には巷のスーパーなどでようやく売られていたモノが一尾400円近くの値が付けられているのを見掛けたものだったが、これら脂ののっていない痩せたサンマの数倍はあろうかという同じ日に並べられていた立派な鯛などはこれと同じ値で売られており土用の丑の時期に書いた価格の逆転現象を思い出した。

こんな異常気象でサンマのような異常高の事例もあれば、一方でこれが最適な条件に合致し昨年の約10倍の収穫量と稀に見る豊作で異常安となっているのが同じく秋の味覚の代表格マツタケか。主要市場ではキロ当たり例年の二分の一から四分の一程度で取引され、成る程店頭に並んでいるのを見るに昨年同等のモノの約半分から店によっては五分の一程度にまで暴落?した値札が付けられていた。

しかし近年の異常気象で斯様な事例が恒常化してくるようであれば日本人が大切に謳ってきた季節感そのものも崩れようというものだが、今後は【旬】という概念が変わるのであれば我々消費者も無理をしてない物強請りをするのではなく、底値モノを大いに消費しいただくのが生産者にとっても我々にとっても互いにベストな構図となるか。


連動モノの匙加減

OPECが昨日公表した月報では来年の世界原油需要見通しが前月から下方修正されていたが、原油といえば先週の日経紙・市場点描には野村證券が原油先物指数のNOMURA原油ロングインデックスの算出ルールを11月末に変更するとして、先に価格変動の影響を抑える運用ルールに変更していた野村アセットマネジメントのETFに同指数が追随する格好になった旨が書かれていた。

ところでこの原油系組成商品に絡んではもう一つ、先の東証のシステムトラブルで終日売買停止となった際にETN系も当然ストップしたが、これらの発行体の証券会社は残高増減に合せ東商取の原油先物を売買する性質上、この日も支障なく稼働していた東商取の原油先物もこの影響で注文減との思惑からその売買高がロールオーバーも含め前日比で約2割ほど減少した経緯もあった。

こうしたケースではリクイディティーが細ることからともすればその価格変動が大きくなり易くなってしまうが、冒頭のケースは逆に価格変動が小さくなってしまいリスク選好の投資家離れに繋がる可能性も出て来る。投資家保護の観点含め何れがというところは難しいところだがここ数年選択肢が増えた裏で個別の課題もいろいろと見えてきたというところか。


関係悪化と金買い

本日の日経紙商品面には「世界の中銀 一転金売り」と題し、金価格が2000ドル大台超から史上最高値を更新していた8月に、コロナ禍で外貨収入源に苦しむ新興国を中心とした中央銀行が準備資産の一部として保有していた金を約1年半ぶりに売りに転じていた旨が書かれていた。

ネットで売却が上回ったという今回の件ではウズベキスタンやロシア等の国が挙がっていたが、ここ数年では米国債から金に資金移動するなどの動きがこのロシアなどで目立ち米による経済制裁を受ける同国の外貨準備に占める割合が20%に達しその残高は約2300トン超えと保有量4位のフランスに次ぐ水準となっている。

とはいえ上記のロシアは今年に入ってその動きを止めているものの、これと入れ代わる格好で台頭してきた存在でトルコが報じられており今年1月から5月累計で世界の中銀で最大の買い手となり前年同期比の伸び率も3倍となった模様。同国もまたここ数年米との悪化が報じられているが、ドル離れと併せ各国中銀のスタンスに大幅な変化が想像出来ない事から今後も金買いが継続されるのは想像に難くないか。